一仕事を終え、喫茶リコリコで休憩中の浅美達。
「教官」
「なんだ?」
ミカが聞くと、浅美は言う。
「報酬は、できれば半々でお願いしますね」
「あぁ、後で部隊の口座に入れておいてやる」
「ありがとうございます」
今回の依頼は彼女達の生活がかかった真面目な商売。
それをわかっているミカは頷くと、浅美は少し微笑んだ。
「あぁ〜、じゃあ座敷に座布団敷いといてくれない?」
「分かりました」
店の座敷やテーブルで休憩している彼女達に千束は言うと、たきなは襖を開けた。
「ん?」
その時、浅美と千束は襖の上に違和感を感じた。
そしてたきなは座布団を取り出すとそのまま普通に襖を閉じた。
「「ちょっと待てぃ!!」」
二人は同時に突っ込むと、
「なんか今いなかった?!」
驚く千束に浅美は座敷から立ち上がった。
「テメェは未来の猫型ロボットのつもりかぁ!!」
襖をピシャリと大きな音を当てながら叫ぶと、そこでは押入れの上の部分にリクライニングチェアと巨大なパソコン画面を置いたウォールナットが座っていた。
「しばらくウチで匿ってくれって。あまり散らかすんじゃないよ〜」
ミズキが事情を説明すると、二人は驚いていた。
「えぇ〜」
「ほわ〜、マジでびっくりした。座敷童かと思った」
「そこ普通ドラえもんじゃないの?」
そんな事を言っていると、夜のリコリコに一人のお客が来店する。
「おぉ、いらっしゃい」
高級スーツに金髪のスマした紳士はミカを見た。
「こんばんわ」
「あひっ、い、いいらっしゃいませ…」
その紳士にミズキはあわててがぶ飲みしていた酒を背中で隠していた。
「賑やかだね」
「最近よく来てくれるね」
その紳士はミカと親しげに話す。
「君のおはぎは美味いからね」
意味ありげにミカに彼は言う。
「前はコーヒーもまともに淹れられなかったのに」
「十年も経てば…な」
ミカはそんな彼にそう返すと、聞き返す。
「忙しいんじゃないのかい?」
「ようやく仕事が一段落したところさ」
「掃除に手間取ってね」
彼は少々疲れ混じりに言う。
「リスのようにすばしっこいやつだったよ。ハハ…」
彼がどんな仕事をしていたのか、彼は分からなかった。
「それでキミ、ここで暮らすの?」
「お前らの仕事を手伝う条件でな。言っておくが格安なんだからな?」
襖に椅子を展開して、すでに昼の襲撃犯のデータを収集しながら答える。
まさか噂のハッカーがこんな見た目だったとは予想外だったが、浅美は彼女の腕は本物だと確信していた。
「じゃあさ、」
そこで浅美は携帯を取り出して例のあの写真を見せる。
「この写真の男の解析、頼んだ」
「手前じゃなくて奥の方ね」
千束が補足をしていると、
「千束ちゃーん」
「?」
浅美と千束は呼ばれて同じように顔を覗かせると、そこに座っていた一人のスーツの男を見た。
「おーヨシさん、いらっしゃい」
「やぁ「今ちょっと忙しいから後で〜」」
そして速攻二人は襖に視線を戻した。
「すっかりレディだな」
「レディ?あれが?」
そんな彼女にキョトンとした後に軽くため息を吐いた。
「ミカ…」
そしてそのまま彼はミカを見て聞く。
「千束とここで、そんな仕事をしているんだい?」
そして浅美から写真を受け取ったウォールナットは写真データの解析を早速始めていた。
「一応、見えている範囲の3Dデータだ」
「「おぉ〜」」
立体的になった映像を見て感心していると、ウォールナットは浅美を見た。
「最初から写真の解像度が高かったから楽だったぞ」
「あら、後でうちのハッカーにそう言っておくわ」
そう言うと、ウォールナットは浅美を見た。
「そのハッカーは椿小隊の人間か?」
「…えぇそうよ」
浅美はあっさりと認めると、椿のピンバッジを見せた。
「なるほど、噂の逃し屋とここでご対面とはね」
「ウチのハッカーが世話になっているよ」
そう言い、少し雰囲気が変わると、それを崩すように千束が手を軽く叩いた。
「んまぁ、今日から仲間だね!名前は?」
彼女から聞かれ、ウォールナットは言う。
「ウォールナッーーー」
しかしその時、口元を千束に抑えられた。
「ちょいちょい、そいつは死んだんでしょ〜?本当の名前を言いなさ〜い!」
彼女はそう言うと、ウォールナットは名前を言った。
「…クルミ」
彼女の名前に浅美は吹いた。
「ぶふっ」
「クルミって…日本語にwなっただけじゃんw」
そう言ってウォールナットもとい、クルミに千束は抱きついた。
「でもそっちの方がよく似合っているよぉ〜」
「んぁ〜、すりすりヤメロォ」
そう言い戯れあい始めた二人に後ろから見ていたたきなは静かに、ゆっくりと付けていたヘアゴムをとって指で銃の形を作って、そこにゴムを引っ掛けた。
「よろしくクルミ」
「…よろしく千束」
そしてその動きを見ていた浅美は巻き込まれないように少し逸れた。
「出といでよ、一緒に団子食べよう」
そう言って千束は振り返った。
「たきなもーー」
直後、たきなはゴムを弾いて前に飛ばした。
ベチンッ「てっ…!!」
しかし発射されたヘアゴムは千束の横を掠めると、その先にいたクルミの額にダイレクトヒットした。
「アイタ〜ッ!!」
その事に千束は驚いた。
「え?」
たきなも驚いた。
「…え?」
そして、
「「え…」」
二人で驚いていた。
そして仕事を終え、ミカから賄いをして貰った浅美達は店を後にする。
「ありがとうね〜」
そう言って入り口で千束は浅美と話している。
「ねぇ千束」
「ん?」
浅美は聞く。
「ヨシさんって…誰?」
「ん?あぁ、ヨシさんね。吉松さん、ウチの新しく常連さんになってくれた人だよぉ」
千束はそう言うと、浅美は納得した。
「そうなんだ〜」
「うん、なんか先生とも仲がとても良くてねぇ」
「へぇ〜、教官の知り合い?」
草生津が聞くと彼女は頷いた。
「そう、昔かららしいよ」
「「へぇ〜」」
千束の返答に浅美達は返す。
彼はいつの間にか帰っていたので、ここにはリコリス関係者しかいなかった。
「まぁ、またクルミちゃんに会いに来るわ〜」
「待ってるよ〜!」
そう言い、浅美達はミカからプレゼントで譲り受けた窓ガラスの割れ、色々とバンパーなどに穴が空いた黒のヤリスクロスに乗り込む。
「車、ありがとございま〜す」
「傷はすまんが自費で直せよ」
「分かりました〜」
そう言いながら三条が運転席に座ると、浅美は助手席に座って四人は喫茶リコリコを後にした。
そして車に乗って帰る途中、浅美は聞いた。
「…ねぇ」
「「「?」」」
外の夜景を見ながら聞いた彼女は三条達に聞いた。
「吉松さんとか言う人、見た?」
「えぇ、まぁ…」
「見ましたが…」
なんとも言い難い様子で答える後ろ座席に乗っていた小塚原と草生津。
無論運転している三条も難しい表情をしていた。
「私、似たような過去持っている人を見たことあるんだよね〜」
浅美の呟きに三人は頷く。
「私もです」
「私も」
「うん…」
そしてどこか遠い目になりながら聞き耳を立てていた四人は思った。
「「「「(絶対あの二人デキてる…)」」」」
どっちが攻めでどっちが受けなのか少し気になるところではあったが、なんとも言えない感情を胸のうちに秘めておきながら四人は新木場に向かって帰って行った。
椿小隊の本来の任務は対外工作任務、戦場は海外である。
拠点には大量の荷物が積まれ、今まで空いていたその場所は今は同じ柄の木箱が区画毎に積まれていた。
「はる〜」
「どうしたアオイ〜?」
拠点に積まれた木箱の上で腰掛けていた納谷は手を振って近づいてくる柊を見かけた。
二人は拠点で待機しており、ウォールナットの仕事を終えて浅美達が帰ってくるまで留守番をしていた。
憧れのハッカーの逃し屋依頼に納谷は興奮して拠点から支援をしていた。
終わった後にウォールナットに会えると言われたが、それをすると多分気絶して救急車を呼ぶことになりそうだったので非常に考えた後に苦悶の表情で断っていた。
「注文入ったって?」
「そうそう、外のコンテナに積んで置いてね〜」
「分かった〜」
言うと倉庫に積まれた木箱をパレットに乗せたそれを、そのまま柊の動かすハンドリフトによってコンテナに押し込まれる。
「今回はどこだって?」
「チュニジアの反政府組織」
「おほ〜大口じゃん」
パレットには同じ柄の同じ数のパック詰めされたパレットが入っていた。
「と言っても、私たちがやってるのは押収品の横流しなんだけどね…」
「これもう詐欺だよね」
そう言いながら二人はコンテナに積んでいく。
「これ一パック何人前だっけ?」
「二五人、平時の三日間分積まれている」
「半個小隊ですか…」
パレットを四つ積み込み、コンテナが満杯になると港の管理局に依頼してコンテナを貨物船に乗せる手立てを整える。
「チュニジア行きの食料品…と」
載せているものとまるっきり違うのだが、簡単に偽装をした後にコンテナを送り出した。
正直、貨物運送において日本から出ていく品物というのは全くと言っていいほど確認されない。
「あぁ、そう言えば今度。DAから押収品が届くらしいよ?」
「へぇ〜DAから?」
散々自分達を忘却の彼方に追いやっていたような対応をしていたDAに柊は少し訝しむような目線を向ける。
「えぇ、扱いに困っていたからって…」
「程の良い押し付けじゃないの」
「まぁお金にはなるでしょ?」
「保管しなくて良いの…か」
言いかけ彼女は納得した。
押収した武器というのは恐らく国内の武装組織から奪ったやつで、恐らく抹殺命令が出ているので持ち主は消えてしまっているのだろう。
「んじゃあ、整備しませんとな」
「そうだね」
お仕事がんばってね〜、と納谷が言うと軽く柊はため息を吐く。
「やれやれ、どうせこの国だから東系の武器でしょうね」
「そうだね〜」
金持っている犯罪組織の武器庫と言うのは恐ろしく豪華で、なぜが兵士一人に対物ライフル二丁持たせられるような質の高さである。
「あぁ〜、ここじゃあF2000使えないのかよぉ〜」
「やっぱりウチで一番火力主義者なのってアオイちゃんだよね〜」
隣に座って二人は話していると、柊は言う。
「そりゃあね、全員機関銃で武装すれば良いと思っているもん」
「今のリコリスには無理でしょ〜」
そう言いながら二人は倉庫のリストを見ていると、
「ん?」
「聞いたことないエンジン音だ」
そう言うと、拠点の倉庫のシャッターが開いてヤリスクロスが入ってくると
「ただいま〜」
浅美達が手を振っており、二人は出迎えていた。
Do you want a happy end?
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Yes
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No