「みなさ〜ん、本日はこれにて営業終了で〜す」
夜、千束は喫茶リコリコで言うと、店の入り口の看板を『OPEN』から『CLOSED』に回した。
「さぁ、時間だよ!」
「勝負だ!勝負ー!」
「今日こそクルミちゃんにリベンジよぉ!」
しかし店内には灯りがつき、客も残っていた。
「リコリコ恒例!閉店後ボドゲ大会、スタートォ!!」
そして千束が宣言すると、座敷席で座っていた常連やクルミ、浅美含めた大会参加者達は声をあげた。
「「「「オォーッ!」」」」
そして卓を囲んでボードゲームのカードを手に常連客達は言う。
「ネームの締切、明日って言ってたっすよね?」
「そっちこそ、原稿の進捗大丈夫なの?」
「良しましょう、仕事の話は」
そう言い合うのは米岡、伊藤、後藤さんの三人。全員ここの常連客であり、不定期的に閉店後のボードゲーム大会は開催されていた。
「実は私も勤務中で…」
「刑事さんワルだねぇ」
そう言う阿部に山寺が乗っかる。
「パトロールですか?」
「そうそう、パトロールの一環だよこれは」
そんな彼と浅美は親しげに話す。
相変わらず両耳にジャミング付きのイヤーカフを付け、サングラスをしている彼女。周りには光過敏と言う事で通していた。
「私はレポート終わらせました」
北村はそう言うと、クルミはそんな中で言う。
「じゃあ順番決めるぞぉ〜」
千束も混ざってやるボードゲームだったが、そこで彼女はレジで作業をしていたたきなを見た。
「ねぇ、たきなも一緒にやろうよぉ。レジ閉めなら私も手伝うからさ」
彼女は話しかけると、彼女は言う。
「もう終わりました」
「早っ!?」
「レジ誤差ゼロ。ズレ無しです」
テキパキと仕事を終える彼女に伊藤達が話しかけた。
「ってことは暇でしょ〜?」
「たきなちゃんもおいでよ」
「どうだ〜?たきな」
クルミも聞くが、たきなか首を横に振った。
「いえ、結構です」
「…」
そう言い彼女は奥に入っていくと、常連客達は言う。
「おじさん多すぎたのかな?」
「恥ずかしいお年頃なのよ」
「店で遊ぶ方がおかしいんだけどね」
「そうかぁ〜?」
「そりゃそうだ」
クルミに浅美が突っ込むと、店の奥に消えたたきなを追うように千束が抜けた。
「ね〜え〜、たきな〜」
そう言いながら店の奥に消えた千束を見て浅美は軽くため息を吐いた。
「焦りは禁物ってね…」
すると浅美の携帯から祝典ギャロップが流れた。
「ん?誰の携帯」
「あっ、私ですね。はいもしもし〜」
慣れた様子で彼女は電話に出ると、彼女の着メロに阿部達は彼女の独特なセンスに少し苦笑していた。
「あぁ、そう?うん、わかった…」
そして彼女は電話に数回答えると、切ってカードをテーブルに置いた。
「すみませ〜ん、帰ってこいって言われちゃったんで失礼します〜」
「あらそぅ?」
そう知り、伊藤が少し残念そうにする。
「明日もやるから、またおいでよ」
「え?でも明日は定休日じゃあ?」
「ミカさんが開けてくれるのよ」
「あっ、そうなんですか〜」
じゃあ行けたら明日と言い、浅美は持っていたカードを常連客達に分配した後に店を後にしていた。
そしてそのまま迎えの車に乗って高速に上がった時、
「な〜んで、ウチらが…」
非常に不満げな顔を見せて窓の外の景色を見ながらぼやく。
「上からの命令です。従うしかないでしょう?」
「ウチらリコリスじゃないんですけど?」
浅美は言うと、後ろで座っていた草生津達が言う。
「隊長〜、そこだけウチらの特権使うのはずるいでしょ」
「流石に虫が良すぎますよ」
「ですね…」
キャラバンの後ろでは今回使う機材の整備を車内で行っている柊が簡易作業台の上で部品を分解していた。
「副長〜、揺らさないでよ」
「分かっていますよ。いつもの事じゃありませんか」
そう言い、大型車を簡単に扱う彼女は続けてこうも言う。
「日本は道路が平らですから、よっぽど大きく揺れませんよ」
「あははっ、ケニアの道路と同じにすんじゃないよ」
そう言うと、六人全員は夜の富士山を見上げながら高速道路を走った。
「よろしいのですか?」
秘書官が命令書を見ながら楠木に聞き返す。
「何か問題が?」
「いえ、その…」
そして改めて視線を命令書に戻した。
「なぜいきなり椿小隊にこのような命令が降ったのか…」
「上層部からの命令だ。椿小隊は今後、国内で活動する機会が増える可能性がある。その為に…」
「リコリスの権限の一時付与…ですか」
「そうだ」
消えた千丁の銃火器、弾薬を含め何が運び込まれたのか。どのような種類の武器が運び込まれたのかは既に把握していた。
「対戦車擲弾発射器も輸入された武器には含まれている。海外で活動していた椿小隊の方が、扱いにも慣れているだろう」
「すでにこちらで保管されていた押収品は椿小隊の拠点に運送しています」
秘書官はそう言い、椿小隊に送られる荷物の内容の乗ったリストを見る。
「海外に向かっていたリコリスではないリコリス…か」
この部隊が結成された理由を思い返し、楠木は少し表情を強張らせる。
「旧電波塔事件以降、日本に密輸入される武器は確かに減っています」
「代わりに、世界では紛争が頻発している」
そう言い、部屋にあるテレビの画面には街を進軍中の戦車が市街地を進んでいる映像が流れていた。
『現在、アンゴラで勃発している政府軍と反政府組織による内戦は以前苛烈さを増しており…』
記者はそう言うと、楠木はそのニュースを見ながら呟く。
「あれも椿小隊が行った仕事の結末だ」
「えっ…?」
楠木が言うと、秘書官は少し驚いていた。
「世界中で立て続けに先進国が発展途上国のモノカルチャー経済の基盤を狙って争っている。第二次アンゴラ内戦もその一つだ」
「…」
『なお、政府軍には中国政府が後押しをしており。反政府組織にはアメリカ政府が後援を行なっていると言う予測もあり…』
淡々と読み上げる記者を前に楠木は続ける。
「椿小隊の仕事は、私も手書きの報告書でしか読んでいない」
「え?それでは誰が司令を…」
秘書官は思わず聞いてしまうと、楠木は言った。
「上層部から直接だ。ラジアータを介しない方法で行われている」
自分達とは独立した指揮系統を持っている。椿小隊設立以降、初めて知ったその事実に秘書官は唖然となった。
「驚いたか?私が関わっていない事に」
「…」
「私はただ上層部の命令に従って椿小隊の人員を選抜した所で関係は切れているのだよ」
楠木は呆れたように答えると、頬杖を付いて彼女達の到着を待っていた。
ッーーーーー!!
短機関銃を放って壁に赤色の無数の着弾痕が付く。
その物陰にはサードリコリス達が正式装備のを持って隠れており、軽く舌打ちをしていた。
「チィッ」
すると銃声が止まり、直後にサードリコリスは発砲すると反対にいた黒いつなぎに狐の半面を付けた集団はそれを避けるように横の通路に逃げた。
「追えっ!!」
そしてサードはそのままつなぎ服の集団が逃げた先を追いかけると、そこで曲がった瞬間に戦闘を走っていた一人が腕を伸ばして他の面々を静止させた。
「トラップ!」
目の前には膝の高さに張られた細いピアノ線が設置されていた対人地雷につながっており、このまま走れば爆発して死亡判定を喰らっていた。
すぐに彼女達は迂回路を探して走り、扉を開ける直前に持っていたフラッシュバンを投げ入れた後に爆発して直後に発砲しながら中に入る。
「ぐあっ!?」
「くそっ」
しかし突入した瞬間に先頭に入った少女が赤色のペイント弾で頭に直撃を喰らい、その後に連続した発射音が聞こえて次の瞬間。
「きゃあっ!!」
「うあっ」
ドアノブが外れて同時に投げられたフラッシュバンが炸裂してその反動で倒れたドアに巻き込まれて数名のサードリコリスが吹き飛ばされた。
「何だとっ…!?」
その直後、吹き飛んだ扉の奥から一つの影があった。
「腕は上場…か」
「なっ…!!」
直後、持っていたIMI ネゲヴを発砲すると訓練に参加していたリコリス全員が死亡判定を受けた。
訓練を終え、誰もいない会議室で休憩をしていた椿小隊。今はDAの依頼でリコリスの訓練場を訪れていた。
「ぷはーっ!」
「仕事終わりの一杯ですか?」
「そうさ、ウチらみたいな人間がこんな場所にお呼ばれしたんだ」
そう言い六人は使っていた銃を置いて汚れた黒いつなぎ服のまま椅子に座り込んだ。
「実力は、本部なだけあってまあまあですかね」
「まぁ、海外と国内じゃあ勝手が違うよ」
そう言い実際にやられた納谷や草生津を見る。
「いやぁ、接近戦苦手なの知っているでしょう?新手の嫌がらせ?」
「何でハッカーの私まで…」
インク塗れになって疲れている二人。無論、インク弾とはいえ当たるとまぁまぁ痛いので、二人は二度とゴメンと言った様子だった。
どちらかと言うと納谷が完全にボコボコにされていた。
「しかし…」
するとそこで機関銃のカバーを開けて確認する柊が言う。
「よくアグレッサーの仕事なんて受けましたね」
「絶対に来いって、楠木さんから言われたんだよ」
「ほぉ〜」
そんな事を話して次の訓練に備えて休憩をしていると、
「全員いるようだな」
小会議室の扉が開いて、そこからいつもの鉄仮面のような表情の楠木と彼女の秘書官が入ってきた。
「おやおや、DA司令官が直接私たちにどのような御用でしょう?」
彼女を見て浅美は少し頬杖をついて行くと、後ろに控えていた秘書官は少し鋭い目線を送った。
「お前達に渡す物がある」
そう言い楠木は持っていた小さな封筒を手渡す。
「日本に輸入された約千丁の武器の内訳だ」
「はいはい…」
中身を聞き、封筒に折り畳まれた印刷された紙を見る。
「うわっ、マカロフばっか…」
「パンツァーファウストⅢまで持ち込んでいるんですか…」
「すげぇな、RPGじゃないのか」
武器の内訳を見ながらそんな事を言っていると、楠木はすぐに次の話題に写った。
「そしてこれが、お前達を今日ここに呼び出した理由だ」
楠木はそう言うと秘書官から六人全員に封筒が手渡された。
「これは?」
「リコリスの権限を記したものだ。お前達は一時的にリコリスに復帰する」
「は…?」
唐突な報告に流石に浅美も驚いた。
「椿小隊の根底が覆りません?」
「一時的なものだ。上層部からお前達の指揮権限を預かった」
「…まじか」
話を聞き、浅美達は苦笑していた。
「話は以上だ。何か質問は?」
「特に何も?」
浅美はそう返すと、楠木達はそのまま会議室を後にしていった。
Do you want a happy end?
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Yes
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No