ッ!ッ!ッ!ッ!
早朝からその場所ではたいへん大きな音が響いていた。
喫茶リコリスの地下にある射撃場。そこでは千束とたきなは銃を撃っていた。
「…凄いねたきな、機械みたい。実弾でそれだけ上手なら急所を避けられるでしょ。無理に先生の弾撃つ事ないよ」
先の的に赤い煙が上がって急所に穴が空いていた。
彼女の使う特殊な弾丸、消しゴムの様なプラスチック粉を押し固めたフランジブル弾は接近しないとまともに使えない代物だった。
「…急所を撃つのが、仕事だったんですけど?」
「もう違うでしょ?」
親しげに二人は話していると、たきなは射撃場の後ろや倉庫に積まれている大量の段ボールとプラスチックケースを見上げる。
「しかしこれ、何なんでしょうか?」
「さぁ、浅美達の荷物らしいんだけどね〜」
千束は少し邪魔そうに天井近くまで積み上げられたその荷物を軽く叩く。
「海外任務で使う荷物なのでしょうか?」
「うーん…、浅美や先生から絶対開けるなって言われてるんだよね〜」
そう言いながら意味ありげにたきなを見てくる千束。
「…何ですか?」
聞かれた千束はんふふと良い笑みを見せながら話を持ちかける。
「ん?いやぁ、中身見てみたいと思わない?」
「開けるなと言われているのでしょう?駄目ですよ」
「でもさぁ〜」
千束はそこでたきなにすり寄る様に近づきながら話しかける。
「謎に包まれた椿小隊の荷物だよ?どんな事しているのか知りたいと思わな〜い?」
「…」
少しいやらしく聞いてくる千束にたきなは二律背反する気持ちを抱える。
開けるなと言われている椿小隊の備品、しかしその量は射撃場を埋め尽くさんばかりほどある。
「…」
目を閉じ、たきなは考え再び積み上がったダンボールを見る。
「一つくらい開けたってバレないよ〜」
「…」
悪魔が囁く様に千束はたきなに言う。
海外で様々な任務をこなしているとはいえ、この量の荷物が来る理由はよく分からない。
「しかし…」
たきなは開けるなと言う約束を破るわけにはいかないと己を律する。
「大丈夫だって、浅美は滅多に怒らないしさ。そもそも私のいる場所に預けるのが悪いんだし」
「自分のことを棚に上げるんですか…」
たきなは軽く呆れると、千束は少し笑って頷いた。
「で、どうする?開けちゃう?」
「全て千束の責任になるのなら…」
「じゃっ、開けちゃいましょー!!」
たきなは後が怖いので逃げ道を作ると、千束は意気揚々と積み上がっていた段ボールの一つを地面に置いた。
「んふふ〜、何か海外のお土産入っていると良いなぁ〜」
そう言いながらガムテープで厳重に仕舞われた段ボールを前にたきなは言う。
「やっぱり、やめておいた方が…」
「大丈夫だよ〜、それでは!!」
バババッと千束はガムテープを取って段ボールの蓋を開けた。
「何が出るかな〜!何が出るかな〜…あっ?」
ウキウキで段ボール箱を開けた千束はそこに入っていたオリーブドラブ色の金属箱に首を傾げた。
新木場の拠点で浅美達はDAから送られて来た荷物の作業をしていると、
バンッ!!
「「「「「「っ!?」」」」」」
いきなり勢いよく開いた扉に浅美達は持っていた拳銃を向けると、そこではリコリスの制服を着た千束が目元が暗い状態でドア枠に肘を当てて立っていた。
「何だ千束か…」
「びっくりしたぁ…」
「てかなんでウチら拠点の位置知ってんのよ…」
「ウォールナットがいるからじゃね?」
「確かに、それなら行けるかもしれませんね」
「あぁウォールナット様ぁ〜」
入って来た千束に安心した浅美達は拳銃をしまうと、顔を上げた千束は言う。
「浅美ぃ?」
「ん?」
呼ばれて振り向くと
「ちょっと来いや…なぁ?」
やけにいい顔でこめかみに怒りマークが浮き出ている千束はズカズカと入って浅美の頭に向かって何処にしまっていたか、ハリセンを思い切り被って頭に叩いた。
「いっった!?」
頭に思いきり叩かれ、そのまま浅美は首根っこを掴まれた。
「ちょぉぉぉっとこいつ借りてくぞ〜」
「え?ちょ、まだ仕事ちゅ…ぎぃやぁぁぁあっ!!」
そしてそのままずるずると引きずられて拠点を飛び出した二人を三条達はやや唖然となって顔を見合わせる。
「あ〜これは…」
「隊長の予想が当たったんだね…」
「本当に仲良いんですね。あの二人…」
一瞬の出来事だったが、理解が追いついて少し穏やかになっていた。
そして彼女達の足元には大量に分解された銃火器の部品が散らばっていた。
「全部引き取れ」
「やだ」
直後、浅美は再び頭をハリセンで叩かれる。
喫茶リコリコは現在、緊急で早めに店を閉じて千束が連れ込んだ浅美に追求をしていた。
「なんちゅうもん預けに来てんだゴルァ?」
「千束さん、怖いっす」
「あったりめぇだ馬鹿野郎!!」
そう言うと彼女は座敷に置かれた物を指差した。
「喫茶店の地下に弾薬とか爆弾を置くんじゃないわ!!正気か!?」
「喫茶店の地下に完全な防音の射撃場がある方がおかしいんじゃないのか?!」
「どっちもどっちだろ」
二人の言い合いに正論をかましながらクルミが段ボールの中身に入っていた信管の抜いてある
「重っ」
「あんたは平気で触ってんじゃないの!!」
そんな彼女にミズキは手で頭を叩いた。
座敷には蓋の空いた段ボール箱やプラスチックケースが散らばり、中には武器弾薬、分割された対戦車擲弾発射器や対物ライフルまであった。
「これほどの武器をよく集めましたね」
「まあ海外任務の時に敵の武器拠点を襲撃したりしてたからね。あと、それ一応商品だから触らないでね〜」
そう言い、箱に入っていた7.62×39mm弾の弾帯を手に取ろうとしたたきなは手を引っ込めながら言うと、浅美は足元の整備されたの入った木箱を触る。
「アンタら戦争でも始める気?」
喫茶リコリコの地下に詰め込まれた武器だけでこれだけあり、消えた千丁の銃も揉み消せるんじゃ無いかと言うほどだった。
「んな事したらラジアータからリコリスが大量に送り込まれますって…あっ、因みに拠点にはもっと一杯あります」
「正直に言うんじゃないよ!」
そう言い千束から再びハリセンで叩かれた。
「この武器はどうするんだ?」
クルミが聞くと、大量の武器弾薬を運び込んでいた浅美達に口を閉じていたミカが言う。
「初めに千束が許可してしまったからなぁ…」
「先生ぇ!こんなの危ないから引き取ってもらった方がいいですって!」
「でも拠点にこれ以上置くのもなぁ…」
既に満杯な今の拠点だから、この店にお願いして使用期限の遠い物から順に置かせてもらっていた。因みにミカには事前何を運び入れるのかは伝えていた。
「もともと危険物しかない状況で増えたって関係ないわ!!」
「なんてこと言うんだ!?」
そうしてしばらく千束と喧嘩した後、喫茶リコリスには爆発物では無く銃火器を置くと言う覚書を浅美は書かされる事になった。
「ウチに二度と地雷運ぶんじゃねぇぞ?」
「信管無いからいいじゃん」
「そう言う問題じゃねぇ、店吹っ飛んだらどうするんだ?」
クルミが速攻で作って印刷した覚書にサインする真横で千束は凄い笑みで浅美に詰め寄る。
「危険物じゃ無いなら、荷物に困ったらうちを使うと良い」
「わぁ、教官やっさしぃ〜!」
「先生、浅美を甘やかさないでください」
「アンタが言うんじゃ無いよっ!!」
ミズキが最後に突っ込むと、クルミは地下の射撃場から運び出した危険物の山を見る。
「こんなに運んでいたのか…」
「そうね、何せ世界中から一気に集まっちゃってさ〜」
「一体どのくらいの武器弾薬が収容されているのやら…」
クルミは呆れながら対戦車ロケット弾の入った蓋を開けて中を見る。
「さぁ〜、リコリス全員に自動小銃持たせて三.四年戦えるくらいはあるんじゃ無い?」
「「「「…」」」」
聞くんじゃなかったとリコリコの店員達は思った。
「まぁね、押収した武器を他国に売らないとうちらやっていけないのよ」
「何だ、DAから運営資金は出ていないのか?」
クルミは聞くと、覚書を書いて弾薬毎に段ボールの仕分けを始める浅美は言う。
「うちら、DAから完全に独立しているからそっちから資金提供されないのよ」
「え?そうなんですか?」
それに同じく手伝っていたたきなが驚いた。するとミカが話した。
「椿小隊の指揮権限はDAでは無く、上層部から直接行われている。人員をDAから出したというだけで、リコリスとは完全に別物だ」
「なのに一時的にリコリスに復帰すると言うね…よいしょ」
そして同じ弾薬で纏められた段ボールを積み上げると、そこで彼女は一息吐いた。
「ふぅ〜、終わった終わった〜」
すると千束はやや驚いて浅美を見た。
「え?浅美リコリスに帰ってくるの?」
「聞いていなかったんですか…」
相変わらずな千束にたきなは呆れていた。
「そうだよ〜、おかげで明日もDAから仕事だよ〜」
「あんた、とっととこの荷物取りに来てもらいなさいよ!!邪魔すぎる…!!」
そう言い、彼女とミズキは地下室に繋がる階段に向かう。
他に射撃場に置きっぱとなっている弾薬類を運び出して、銃器を再び片付ける仕事があるからだ。
因みにさっき連絡して飛んできているので後ちょっとで車が来ると思いやす。
「とりあえずゲームだゲーム!」
そして千束は今の店の状況を忘れる様に彼女は言うと、クルミは襖の下からゲームに必要な機材を取り出し始めたのだが、
「あだっ」
「「っ!?」」
クルミが頭をぶつけて、それでグラついた積み上がった段ボールが崩れかかり、慌てた千束とたきなは二人で倒れかかった段ボールを必死で支え合い。
「大丈夫か?」
「な、何とか…」
見た目は段ボール、中身危険物のおそらく日本一危ない宅配物にたきなは安堵する。
「大変ですね…」
「もぅ、邪魔〜!!」
さっさと引き取ってくれと心の底から千束は叫んでいた。
「ねぇ浅美」
「ん?」
そしてその後、荷物を取りに来たキャラバンに店内に積み上がった物を載せて運んで荷物を片付けていた浅美に、座って真剣な表情で少し考え事をしていた千束は聞いた。
「たきなのパンツって、見たことある」
「は?何言ってんだ?」
何だこいつ、ついに頭いかれたか?
Do you want a happy end?
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Yes
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No