「たきなのパンツって見たことある?」
「は?何言ってんだ」
荷物を片付けていた浅美は聞かれて真顔で千束に返した。こいつ一日で爆弾見すぎていかれたか?
「クルミは〜?」
「ある訳無いだろ」
彼女もまた同様に先ほどまで広げていたゲーム機を片付けながら答える。
そりゃそうだ、普通まともな女が真顔で聞く様な話では到底無いからだ。
「ちぇー、何でも知りたいんじゃないのかよー」
「ノーパン派か?」
「いやいやいや」
「なら何履いてようが、たきなの自由だろ」
そう言い、浅美も納得しながら最後の段ボールを抱えて入り口に行こうとすると、そこでは手伝ってくれたたきながちょうど更衣室の扉に入って行った直後だった。
「っーー!!」
「うわぁだっ!?」
直後、立ち上がった千束はそのまま浅美と軽く肩をぶつけながら更衣室に突っ込んで行った。
「うおぃ!バッカ!!」
危ねぇだろうが!と言おうとしたところでバッと布をたくし上げる音が聞こえてそっちを見ると、そこでは千束がたきなのスカートを大々的にめくっていた。
「隊長〜?」
「ちょっとごめん」
入り口から柊がやってくると、そのまま段ボールを任せてそのまま浅美はカウンターにあったハリセンを手に取った。
そしてそのまま何してんだと千束を叩こうとした時、
「…なんですか」
「なに、こ、れ…」
「下着です」
「そうじゃなくって、男物じゃん!」
「え?」
その手を止めて思わずたきなを見てしまうと、千束がたくし上げたスカートの下でたきなは黒いトランクスを履いていた。
「…これが指定なのでは?」
「はい!?」
「し、指定ぃ!?」
たきなの疑問に二人は驚いた。どう言うことだ?今どきのDAはウィンブルドンの様に下着まで見てくるのか?厳しすぎやしないか?
「いや、ありえんありえん…」
自分でも流石にとち狂っていると思って慌てて思考を止めた。
「聞かせて貰いましょうか」
その後の千束の動きは早く、一旦たきなを連れてカウンターに出ると、そこで立ってコーヒーを淹れようとしていたミカに追求を始める。
因みに、この騒動になった原因は自分達が片付けをしていた最中におっ始めたゲームが原因らしい。
「『店の服は支給するから下着だけ持参してくれ』と」
「…どんな下着が良いか、分からなかったので」
その様子を今度は持ち込んだ銃器の入った木箱を運びながら浅美達は聞いていた。
たきなちゃん、幾ら何でも下着関係を男に聞くのは彼氏じゃ無いんだからさー。
「だからって何でトランクスなのぉー…」
「いや、店長が」
「好みを聞かれたからな」
「アホかぁー!」
流石に教官相手にハリセンで叩くことはなかった様だが、これ自分だったら確実に叩いてたよね?てか教官はトランクス派なのね…あんまりいらない情報だけど。
「これ、履いてみると結構開放的で…」
「そうじゃなぁい!…たきな、明日十二時駅に集合ね」
衝撃的な事実を前に千束は緊急で彼女を呼び出す。
「仕事です?」
「ちゃうわ!パ・ン・ツ!買いに行くの!…あ、制服着て来んなよぉ?私服ね私服〜♪」
何を推す様に千束は言うと扉を閉めた。
彼女が消え、何とも言えない静寂が店を包んでおり。ままカオスな空気が完成していた。
「指定の私服はありますか」
「…」
たきなの質問に天井を仰ぎ始めたミカ、さっき千束に強く言われたから堪えたのだろう。つくづく親バカと思いながら浅美は呟く。
「下着なら死ぬほどあるんだけどなぁ…」
「なら貸していただけますか?」
「おぉ、良いよ良いよ〜」
たきなに浅美は笑みを見せながら頷くと、ミカが聞いた。
「彼女に何を渡す気だ?」
「ん?そりゃあ、」
浅美はウッキウキで良い笑みを浮かべなら言った。
「紐ばっかりのすんごい細いカップレs」パシィンッ「ぎゃああっ…!?」
直後、彼女の目元にハリセンが叩かれ、直撃した浅美は魔女が処刑されたかの様な悲鳴をあげながらのたうち回った。
「目がぁ!目がぁぁあっ!!」
目元を潰されて地面に転がる彼女を三条が首根っこを掴んだ。
「さぁ、帰りますよスケベ隊長」
「あ〜ん、ゆいちゃんひどいよぉ〜」
そして荷物を積み終えた車にズルズル引っ張っていく。
「明日も仕事あるんですから」
「ねぇ〜たきなちゃんがカップレスにTバック着てるの見たくないの〜?」
「それを見て興奮する女はあなたとアオイだけですよ。そんなものは千束さんにでも着せれば良いですよ」
「絶対無理なやつじゃん!!」
呆れながら車の助手席に浅美を放り込んだ三条はそのままたきな達に謝る。
「ウチのスケベがご迷惑をおかけするところでした。では」
後ろで窓ガラスを叩いている浅美を他所に彼女は運転席に乗り込むとそのまま走り出して行った。
「結局、下着は貸してくれないんですか?」
「…たきな、今度服のことは千束に全て任せなさい」
「?分かりました…」
純粋無垢なたきなにミカは何とも言い難いよく分からない感情を抱えながら再び天井を見上げた。
「行きたかったなぁ〜、パンツ選び」
「まだ言います?」
地下のトンネルを歩きながら浅美のボヤキに柊が答える。
「まぁ気持ちはわかりますけどね?」
彼女はその手に
「副隊長が絶対許すわけないでしょ」
「え〜、まぁそうだけどさぁ〜」
二人は真っ暗な線路の上を歩いていると、遠くから空気が流れ、微かに音がし始める。
「くそぅ、DAめ。大事な日に面倒な仕事寄越しやがって…」
「そんな理由で恨まれるラジアータが可哀想ですよ」
柊は横で恨み節を炸裂させている浅美に少々苦笑いをしていると、二人のいる線路とは反対の線路に一本の列車が止まる。
車種は東急5000系、これから哀れにも廃車となる編成である。
二人はこれから押上駅に侵入したとされるテロリスト討伐のための作戦の陣頭指揮を取ることとなっており、今の上司となった楠木から下命された復帰後初のリコリスとしての仕事だ。
サード達だけで構成された部隊ゆえに不安が残る。おまけに同じ犯罪者同士だから思考もわかるだろ、だからテロリストを抹殺しながらサード達を生き残らせろよ?という裏の意図を感じながら列車を見上げる。
「んじゃ、とりあえず行きますか?」
「えぇ、お供します」
黒いリコリスの制服にリコリス指定の鞄、片手に防弾盾と消音器を取り付けた45口径弾を使用する
銃を変えたのは他のリコリス達と同じ
「よっと」
軽々と列車に彼女は乗り込むと、そこではすでに今回の作戦に参加するサードリコリス達が乗り込んでいた。
リコリスの教育には多大な金が掛かっており、それ故に一人の人的損害があればその分教育にかけた金もパァとなる。危険な任務ばかりでありながら人的損害を減らせというお上からの二律背反のお達しには心底胸糞が悪くなる。
「ほらよ」
「サンキュ」
そして機関銃手の柊の手を取って列車に乗せると、扉が閉まって列車は再び走り出した。
「今回の作戦指揮官を担当する紫雲イナグだ」
「同じく、補助の青山ロリエです」
整列し、途中で乗り込んだ二人を見たサード達は驚愕の色合いだった。まるで喪服の様に黒い制服に身を包んだ二人の装備は明らかにリコリスとは違っていた。そして二人はリコリスの時に使う名前を出す。
「作戦は事前に君たちに知らされているはずだ」
そう言い、この仕事を割り振られた時に浅美が参加するサードリコリス達に送った作戦概要の事を聞くと、彼女達は頷いた。
「しかし、作戦通りにはいかない可能性もある。その際、君達の迅速な行動に期待する」
「「「はいっ!!」」」
彼女達は答えると、最後に浅美は言う。
「まぁ見ての通り、私達は椿小隊の人間だ」
言って、サード達は一瞬動揺した。そりゃそうだ、リコリスの間でもリコリスにしがみつくはぐれもの集団と位置付けられているのだがら。
「君達が私達にどうこうしようと関係ないが、生き残りたいのであれば作戦中は私の言う事を聞け」
そう言うと、サード達の間で空気が一瞬ピリついた。彼女から出た犯罪者に近い雰囲気に当てられたのだろう、警戒心を出していた。
「取り敢えず作戦前に下準備でこれを渡しておく」
それを見て良い調査と言わんばかりに彼女は一人ずつにある装備品を渡した。
「これは何ですか?」
それを渡された一人のサードが聞き返すと、彼女は言った。
「グロックスイッチだ。この先に潜むテロリスト達はおそらく自動火器を備えている。その対策で渡した」
「それをスライドの後ろにつければ君達のグロック21はマシンピストルに早変わりする。使うかどうかは自由だ」
悪いが、使用感は実践で慣れろと言うと彼女達は相談した後にほぼ全員が付けていた。
そしてその後、乗ってきたサード達を浅美と柊で二分した。
そして目的地に向かう途中、
「犯罪者の思考には、犯罪者を当てる…嫌らしいやり方だねぇ、えぇ?」
柊とそんな事を話していると、
「イナグさん」
「なんだ?」
一人のサードが二人に近づいて聞いた。
「私達を無駄死にさせないでくださいよ?」
「…ふんっ」
言われ、浅美は笑うとその話しかけてきたサード。名前を嵐木ヤナギと言ったリコリスに返す。
「なら強く生き残る事だ。死んだら、アタシが連れてっちまうよ」
「…」
すると彼女は自分の渾名を知っていたのだろう、すこし答えに詰まった様子で体を回した。
「それでも生存率が高い作戦を考えるのは流石ね」
「五月蝿ぇ」
頭からヘッドホンを被り、いつものサングラスと防弾盾に短機関銃の装備。
これ故に自分達は態々地下鉄のトンネルから乗車していた。
そんな二人を遠巻きに見ているサードリコリス達。
「ヤナギ、どうだった?」
横に居た別のサードが聞くと、彼女は軽く首を横に振った。
「ただのリコリスだ、介錯人なんてあだ名が付く人なのか?」
「そう…」
それを聞き、少し恐れる目で浅美を見ていた彼女。
「椿小隊で逃げる人を撃ったとか言うけど、本当なのかな?」
「さぁ?」
「でも、まともな人じゃない?」
椅子の下の暖房機器などが入る場所で仰向けに隠れている別のサードが言うと、
「そう見えるだけよ」
そう言い、漆黒のリコリスの制服を見て彼女は言った。
「椿小隊に行って帰ってきたリコリスなんて今まで居なかったのよ?」
「「「…」」」
今まで選抜されて配属された椿小隊のリコリス。
故にリコリスでなくなった彼女達はDAへの恩義も忘れた恩知らずとして軽蔑される存在となっていた。
移動する列車の中、サード達は自分達の指揮官に少し不安を覚えながら作戦は始まった。
Do you want a happy end?
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