椿の介錯人   作:Aa_おにぎり

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#23 Her Strengths

「ところで一つ聞きたいのですが…」

「ん?珍しいね、どしたの?」

 

喫茶リコリコでたきなは千束に聞いた。

 

「私はあまり浅美さんの事をよく知らないのですが…あの人と千束はどのような関係が?」

 

たきなは店仕舞いの掃除をしながら聞くと、台所で皿洗いをしていた千束はそんな問いに笑みを浮かべた。

 

「ほほぉ〜、それが気になるとはさすがはたきなさん。目敏いねぇ〜」

「目敏いですか?これ」

 

たきなはそんな千束の反応に首を傾げると、千束は皿洗いをしながら話す。

 

「まぁぶっちゃけて言うと、浅美に突出した能力はないよ」

「…」

 

千束ははっきりと断言し、白く磨き上げた皿を横に積む。

 

「ただ、浅美はある凄い能力があるの」

「どのような?」

 

その問いに千束は少し昔を思い返しながら答えた。

 

「それはね…」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「嘘でしょ…?!」

 

ある地点で隠れていたヒバナ率いる小隊は驚いていた。

 

「五人一気にっすか…?!」

「そんな…」

 

サクラも同様に驚いており、一瞬で全滅した部隊の報告に耳を疑った。

 

「まだ始まって二分よ?」

「どうやって索敵をしたの?!」

 

始まって五分も経っていない状況で索敵、対処を行なった事実にすぐに残った十名は警戒度を高めた。

 

「くそっ、さすがはファーストね…」

 

あるサード・リコリスが口にするが、それを聞いたサクラはどこか引っかかった。

 

「(先輩が強いから…?いや、先輩は確かに素早いけどここまで早くは動けない…)」

 

すると遠くで複数の銃声が聞こえ、その連続した銃声はもはや機関銃のような速度だった。

 

『ぐはっ』

『くそっ!』

 

愚痴る少女の声、その音を聞いたサクラはすぐに指示を出す。

 

「襲撃!増援に行くぞ!」

 

そして慌てて指示を出してサクラ達は銃声のする現場に向かって走ると、

 

「っ!居たぞ!」

 

部屋を蹴破って入った瞬間に見た赤い影を目標にリコリス達は銃の引き金を引くも、すでに二人の影はなかった。

 

「くそっ!やられた…!!」

 

そしてペイント塗れのサード達やヒバナを見て軽く毒吐くと、

 

「サクラ…」

「大丈夫か?」

 

そこですでに死亡判定を受けたヒバナは忠告するようにサクラに言った。

 

「仲間に、注意しろ」

「え?」

 

そこでヒバナは死亡判定になったので、それ以上聞くことができなかった。

彼女の最後の言葉にサクラは首を傾げつつも、生き残ったサクラ達の小隊は困惑していた。

 

「え?」

「もう十人やられたの?」

「どうやったらこんなに強いの…!?」

 

虐殺のような状態を前に困惑する彼女達だが、

 

「(マジっすか…先輩)」

 

サクラはその景色を前に、試合前にフキが言っていた言葉を思い出した。

 

『上手くイナグを使えていなかったな』

 

先ほどまでペアとして組んでいた紫雲イナグと言うリコリス。

漆黒のリコリスの制服を着ており、彼女が椿小隊に所属していたのは明白だった。

 

「(ちっ…そう言うことっすか!!)」

 

椿小隊の噂は当然自分も知っており。正直、フキに言われて練習をしなければ会うこともなかったであろう連中だった。

しかし練習をしていて思ったのは、椿小隊はできると言うこと。それもとても。

 

まずファーストであるフキと同等に戦ってきており、特に視界を抑えられた夜間想定の戦闘ともなると向こうに圧倒的に分があった。

 

「固まれ!全集警戒!」

 

指示を出し、サード達は一斉に銃を構えて周辺の警戒を行っていた。

 

「…ん?」

 

しかしその時、一人のサードが違和感を感じた。

 

「(あれ?)」

 

銃を構えようとした一人のサードの持っている銃の形状が違うと言う事実に。

 

「っ…!!」

 

その理由を回転させた頭で理解した時、

 

「敵っ…!!」

 

その消音器付自動拳銃(マカロフ PB)を持っていたサードはニヤリと渡った次の瞬間、

 

パンパンッ!

 

突如横に居たサードに向けて発砲をした。

 

「なっ…!?」

「どうして?!」

 

その行動に警戒をしていた他のサード達が驚愕をした。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「浅美はね、突出した能力はないけど…代わりにいろんなことができるの」

 

千束は言う。彼女はファーストにはなりにくいが、セカンドであれば不動の地位を確立できると。

 

「射撃も一級ではないけどかなり正確に狙えるし、背中の警戒も出来て脱出路も必ず確保している。変装も上手で、おまけに体も強い」

 

千束はそこで浅美の得意分野を論説する。

 

「頭も良いからどこに敵がいるのかも地図を見ただけで想像しちゃうの」

「え?それって当たるんですか?」

「これがねぇ〜、よく当たるのよ。浅美の指差した場所に大体先輩たちはいたし、たまに湧きポイント当てちゃうくらいにはね」

「…」

 

どこか大阪のおばちゃんのような雰囲気を醸し出しながら話し、たきなはそれらの話しを纏める。

 

「…つまり浅美さんは、リコリスの援護が得意ということですか?」

「Exactly!」

 

千束は大きく頷くと、たきなに指をさす。

 

「浅美の強みはその援護能力の高さにあるのだよ。たきなくん」

「…くん呼びですか」

「一々気にすんなって」

 

やや呆れた目線を向けて千束は言うと、話を続ける。

 

「浅美は、明確な強みがないことが最大の強み。彼奴を例えるならそう!味方に超強力なバフを与えるヒーラーなのだ!」

「ヒーラー…」

 

その時たきなの脳裏には前に店に置いてあるゲーム機でやっていたあるPRGゲームの職が思い浮かんだ。

 

「多分、たきなだったら浅美の援護が付いたらファーストになれるんじゃないかな〜」

「そ、そんなにですか…」

 

千束の呟きにたきなも思わず驚いてしまう。

 

「いやぁ、強い強い。おかげで実戦で私たちが組んだのなんてあの事件の時だけだったし〜。まぁ訓練は当然負けなしだったよね〜。殿堂入りしちゃうくらいには」

「…」

 

あの事件、とは何かいうまでもないが。そんなことがあったのかと、千束と浅美の関係にたきなは驚いていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「常に味方には気をつけるべきね」

 

サードを撃ったリコリス…正確には、サードに扮していた浅美はニヤリと笑いながら銃を構えており。すでに二人を倒していた。

 

「このっ…!!」

 

サクラは反射的に変装していた浅美に銃口を合わせた時、

 

「ぐぁっ?!」

 

突如背中を撃たれ。死亡判定を受けた。

 

「背中が開いているぞ」

 

直後、フキの声が聞こえるとサクラの真横から縫うように出てきた彼女は反対で待っていた浅美と合流する。

 

「くそっ!」

 

咄嗟に残った二人のサードの一人が殴りかかろうとしたが、

 

「よっほっ」

 

その腕を軽くいなし、浅美は逆に彼女の腕を強く掴むと、

 

「がっ…!!」

 

頭を思い切りそのサードのデコにぶつけ、片手に持っていた拳銃を腹に押し当てて

 

パパンッ

 

「ごほっ!」

 

サードをインク塗れにして一人倒す。

 

「イナグッ!」

「はいはい〜!」

 

そしてそのままの速度で突っ込んだフキに即座に反応すると、片腕を使ってフキを思いきり持ち上げた。

 

「なっ…?!」

 

するとその勢いのまま逆上がりの容量で回転したフキはその銃口を最後のサードに向け、引き金を引いた。

 

『訓練終了!』

 

ここまで、僅か五分の出来事であった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ねぇたきな」

「何でしょうか?」

 

喫茶店で千束はいつになく真面目にたきなと話をしていた。

 

浅美達(椿小隊)私達(リコリス)の違いって何だと思う?」

「違い…ですか?」

「そうそう、たきなは何だと思う?」

 

その問いにたきなは掃除機を止めて一考する。

 

「…主戦場が海外か国内か。でしょうか?」

「うんうん、それもあるね」

 

たきなの答えに千束は頷く。

 

「じゃあ戦闘においては?」

「戦闘…ですか。うーん…」

 

たきなは聞かれ、再び考える。すると千束は考えるたきなにヒントを出す。

 

「浅美達はね、日本生まれ。海外育ちの彼岸花(リコリス)なの」

「日本生まれ…海外育ち…」

「そう、だから私たちの持っている技は浅美達に通用しない事があるし、浅美達の技術も私たちには通用しない事がある」

 

千束はそこで最後の洗い物を終えると、そこで軽く手を叩く。

 

「まぁつまり何が言いたいかっていうと…」

 

そこで千束はたきなの眼前に指先を持ってくる。

 

「浅美達は彼岸花(リコリス)であっての彼岸花(リコリス)じゃないの」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「くそーっ!!」

 

僅か五分で全滅した部隊の前、背中がインク塗れのサクラは地面に大の字になって叫ぶ。

 

「言った意味を理解できたか?」

「はいっす」

 

フキを前に彼女は頷いた。

 

「…いやぁ、すごいっすね。先輩が扱うだけでこんなに変わるなんて…」

 

そして直後に彼女は浅美を見ると、彼女はサードの制服に着替えたまま他の倒したサード達を介抱していた。

 

「アイツは、人を援護するのが得意なバックアップ系最強の人間だ。アイツの使い方次第でそのリコリスの能力がもろに出る」

 

フキは浅美を見ながらそう答えると、サクラは納得していた。

 

「でも驚いたっす。まさか味方に紛れるなんて…」

「アイツとバカは扱いようっていうんだぞ」

「おいおい、私はハサミかいな。えぇ?」

 

フキの言いように反論する浅美はサードの意識を確認する。

 

「大丈夫かい」

「…えぇ、どうもありがとうございます」

 

そこで話しかけられたサードは少々不満げな表情を浮かべながら訓練場を後にしていく。

 

「こいつの使える技は豊富だ。使いようではファースト並みの実力を発揮できる」

「えっ?!マジっすか!?スッゲェ〜!!」

 

ファーストという言葉にサクラはやや興奮気味に、羨望も含めた眼差しをむけていた。

 

「…まぁ、代わりに突出した能力がないから私はファーストにはなれないんだけど」

「…」

 

彼女はそう答えると、着ていたセカンドの上着をマジックテープで外すと中から漆黒のリコリスの制服が現れた。

胸につけているのは金バッチの椿のマーク。

 

「まぁ海外じゃあ味方にまぎれて破壊工作するのは常套手段だからね〜」

 

浅美は軽く笑みを見せながら言ったので、

 

「…つくづくお前の性格の悪さが滲み出ているな」

 

フキはやや呆れた目線で浅美に言うと、

 

「あら酷い。あとで教官に言っちゃお」

「はっ!?ちょっ、テメェ!!」

 

彼女はフキによく効く特効薬を持ち出し、それを聞いた途端にフキはマジな顔をして浅美に襲いかかり、あたりは一旦騒然となった。

なおこれは、二人の喧嘩ということで訓練場で問題を起こしたとしてあとで軽く楠木司令に叱られるのであった。

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