浅美に頼まれて被害にあったリコリスの顔写真と先の武器取引に出動したリコリスとの照合。
そして、ハッキングをしたことで得た情報の精査。
事前に依頼を受けて撮影をしていたリコリスの動向。
その後の自分の身に起こった出来事と、その際に起こった出来事。
「…ん?」
それを行った時、クルミはその違和感に勘づき、同時に合点が入った。
「あぁぁあああぁぁあぁぁああっ!!!」
「んごっ」
その瞬間、大声をあげて襖を飛び降り、同時に依頼した浅美の顔も飛び越える。
「な〜によガキンチョ?おねしょでもした?」
その慌てっぷりにミズキは呑気に子供らしい理由かと聞いたが、そう言う様子ではなかった。
「見てくれ!銃取引の時のドローン映像!」
彼女の持ち出したタブレット。そこにはある映像が映り、そこには四人にサード・リコリス達がビル裏のドア前で待機している映像が写っていた。
「あの時現場のビルを包囲していたのが殺された四人だ!!これが犯人に流出して顔がバレたんだ!」
その映像を前にミズキが首を傾げる。
「何でそんなもんが流出するのよ」
そもそもの話として、DAに指示や情報を伝達する機構としてラジアータがメインシステムとして用意されている。
ラジアータのシステムは完璧そのものであり、鉄壁の要塞として立ちはだかっていた。それにこの銃取引の一件は事故として完璧に処理がなされてしばらく経っていた。
「あの時のハッキングか…」
しかしミカはすぐにリコリスの映る映像が流出した原因を察する。それは武器取引が行われる直前、千束と浅美が突入する直前に起こった通信の不通とハッキングである。
「DAもまだ、そのハッカーを見つけられていないようです。ラジアータをハッキングできるほどの人物…かなり限られるはずなんですが…」
「アンタの仲間なんじゃないのぉ?さっさと調べなさいよ」
ミズキが言うと、座敷席から納谷が話した。
「犯人は既にわかっていますよ」
「「え?」」
「…どう言うことですか?」
彼女はパソコンの画面を前にマウスパッドを操作してキーボードを叩く。
「ハッキングから数日後で、すでにハッキングをしたとされる正体は推定しています。しかし本人の所在がつかめない以上『正体が分かっていない』と公表するしかなかったんです」
「ったく、またDAの隠し癖?」
「いや、無闇に部隊を動かさないための安全措置だよ」
愚痴るミズキに小塚原が答える。組織というものは確固たる証拠がなければ動けないのはその世界においても同様であり、今回のハッカーもそれに該当する人物であったと言うことだ。既に上層部はDA、さらにはラジアータをハッキングした犯人を推察していたと言う事実に、たきなはやや食い気味に聞いた。
彼女にとってもあのハッキングがなかったら、もっと運命が変わっていた可能性があるからだ。
「誰なんですか?ハッカーの正体は」
その質問に柊が答えた。
「ハッキングしたのは…
ウォールナット。そこにいるクルミちゃんだ」
「「はぁっ!?」」
その答えにたきなは驚愕し、ミズキ達は声を出して驚愕する。その回答を聞き、クルミも観念した表情で小さく頷いた。
「依頼を受けてDAをハッキングした。…そのクライアントに近づくためには仕方なかったんだ…」
彼女はその時の事情を、言い訳にも聞こえるような口調で話した。
「ちょっとぉ…アンタが武器をテロリストに流した張本人ってわけ?」
「それは違う!」
しかしミズキにクルミは強く反論する。
「指定の時刻にDAのセキュリティを攻撃しただけだ!」
「ソウデスカ!おかげで正体不明のテロリストが山ほど銃を抱き締めて、たきなはクビになりましたぁ!」
「もういい!やめろミズキ」
そこからとことん悪態をついて追及をしようとした彼女をミカが叱る。
「映像はそれで全部ですか?」
そんな中、冷静な口調のたきなを前にクルミは首を横に振る。
そして店を見回して彼女がいないことに気が付いて目を見開く。
「おい!千束はどこだ!?」
「配達に行きました」
つい先ほど、いつもの配達のために店を出て行った千束の事を気に掛けたことにたきなは首を傾げ、その事情を前にクルミは冷や汗をかく。
「…全部じゃないんだ」
そこで彼女はタブレットをスライドさせると、新しい映像を見せる。それは千束と浅美の顔がしっかりと映りこんだ映像だった。
「いかんな、これは…!」
それを見てミカ達は顔を青くした。
その頃、夜の東京の路地で配達に向かったたきなは店を見上げながら鼻歌を歌っていた。
「うどーん、どんっどんっ!たっきな〜のう〜どんっ!」
帰った後の楽しみを口にしながらルンルンと歩いていると、持っていた携帯が鳴った。
「もしもしもしもし〜?」
いつも通り浮いた口調で電話に出ると、開口一番ミカは言う。
『千束!敵はお前を狙っているぞ!』
「え?」
その注告の瞬間、彼女の背後から眩い光が照射されると、間髪入れずにスキール音を立てて背中から車が突っ込んできた。
「えっ、ちょ…ちょいちょいちょいちょいっ!?」
その直後、ガシャン!と強い音が聞こえた。
「千束!?千束!?」
「なんかすごい音したよ…!?」
その音を前にミズキも思わず驚いた様子で立ち上がってミカの携帯に食い入る。と同時に、たきなもすぐに着替えてから制服姿で出てくる。
「とりあえず組事務所へ向かいます!」
彼女はそこですぐに鞄を持って店を飛び出し、ミカは指示を出して行く。
「クルミ!千束を捜せ!」
「わかった!」
クルミは指示通りに動くと、次にミカが座敷に座っていた浅美に言う。
「浅美達は誘導に従って動け」
「了解」
彼女達はすぐに外に停めていた白バンに乗り込む。
「まさかすぐに出るとはね…」
「新装備試す良い機会でしょ」
「まだ転向訓練途中なんだけど…」
草生津、小塚原、柊の三人はそんなことを言いながらバンに乗り込む。
「ミズキさん、私こっちから行きます」
「了解、頼むわよ」
そこで全員が乗り込んだ瞬間にバンが飛び出して行くと、ミズキも追って車に乗って店を出ていく。
キキッ!
そして路地に多数の車が停車をしてきて一斉にヘッドライトを今轢いた少女に照らしていた。
その中の一台、千束を轢いた車から一人の男が降りてくる。するとそれに合わせるように背後から多くの仲間と思われる男達が降りてくる。
「よぅ…」
男はそこで今し方轢いた少女に話しかけるが、一切の反応がない。
『どうだ!今回は被害ゼロだろ!文句ないだろ?!』
「わかったわかった…」
イヤホンの向こう側でロボ太が叫ぶと、それを耳障りに思いながら男は適当に返すと、足元で轢いた少女を転がす。
「ほぉ…」
すると車のライトに反射して少女の胸からぶら下がるフクロウのチャームを見て反応を見せた。
「っ!」
「!?」
その瞬間、カッと目を見開いて千束は着ていたポンチョを引っ張って男達の前に広げる。
「おらぁあ!!」
一斉に目の前がポンチョの黄色一色に染まり、男達全員が轢き殺したと思っていた少女を前に思考がデイ死して動けなくなると、その瞬間に千束は銃を引き抜く。
「ぐっ」
「うおっ?!」
「ぐあっ!」
そして正確無比な非殺傷弾の至近距離の直撃を受け、男達は地面に倒れ込むとその隙に一斉に走り出して逃げ出す。
「っ!行け行けぇ!」
逃亡を始めた千束に対し、思い切りポンチョが覆い被さった男が叫ぶと、他の構成員達も慌てて車に乗り込んだりして千束を追いかけ始める。
「あ〜、ちくしょう!あのポンチョお気に入りだったのに!」
すぐに彼女は曲がり角を曲がって追跡の振り切りを始めた。
『おいおい!目の前まで追い詰めたのに!僕のせいじゃないぞこれは!?』
その動きを見てロボ太はすぐに責任をなすりつけるが、依頼主の男は今撃たれて倒れた仲間の違和感に気づいて体に触れる。
「はぁ?」
先ほど赤く煙の上がった銃弾の欠片の感触から、それが何かをすぐに把握する。
「ゴム弾…か?」
実弾を使わず、お陰で気絶だけで済んでいる仲間を前に首を傾げる。
その頃、千束を追っていた仲間達は困惑していた。
「消えたぞ!」
「くど、どこに行った!?」
「捜せ!」
全ての路地という路地が入り組んだ東京において、一人の少女が逃げる道というのは多数ある。
そもそもここは千束にとってみれば地元同然。どんな裏道も知り尽くしており、彼らはこの地が庭である千束の逃亡をあっさりと許してしまった。
そしてその報告を受けてロボ太はすぐにドローンを動かして周辺の捜索を行うと、近くの公園で一目散に走る制服姿の千束を捕らえた。地上の目しかないと思っている彼女は空からの監視に気が付かなかった。
『いたぞ!マップにマーキングしたからすぐに向かえ!』
「ハッ、やるじゃねえかハッカー」
『ふんっ』
仕事の具合に依頼主はロボ太を煽てると、事あるごとに『自分は世界一のハッカー』と言っているロボ太は反応して鼻を鳴らした。
そして公園を走る千束の後ろを、速度を上げてバンが追いかけてくる。
「また吹っ飛ばしてくれ!」
「くぁ〜、しっつこいなぁ!!」
先ほどの追突で携帯が壊れてしまい、まともな通信手段を失ってしまった彼女はしつこいストーカーを前に思わず毒吐いてしまうと背中の鞄から新しい弾倉を取り出して
対して箱乗りをする男も片手で構えて
「「…」」
お互いに顔を見合い、突進する車をしっかりと見て先に男が引き金を引く。
「っ?!」
しかし男の放った銃弾を容易く千束は避けると、男が驚愕する間も無く両手で構えた拳銃で反撃を行う。
「うわっ…!!」
放たれた銃弾は車のフロントガラスを複数貫通する。
「っ!!」
その内の一発が箱乗りをしていた男のデコに命中すると、その反動で男は車から放り出されてしまった。
そして突進した車はそのまま千束に向けて突進を行うが、直前で回避したことでそのバンは横転してしまう。
『あ〜、もう何やってんだよ!』
それを見ていたロボ太は苛立った様子を表に出して叫んだ。
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