椿の介錯人   作:Aa_おにぎり

3 / 35
#03 Welcome to…

椿小隊はリコリスの中でも公式にリコリスと認められていない隊員で構成された特殊部隊である。

主な任務は海外における対日本への非合法治安維持活動である。

 

孤児達で構成され、戸籍を持たないリコリスとしては異例でパスポートの所持が特例で認められており、その活動圏は基本的に国外である。

任務内容は諸外国における日本への犯罪防止であり、暗殺や謀略などが主な任務である。

 

十年前の電波塔事件の際、事件発生を未然に防げず。後に非合法に輸入された武器弾薬のルートを仕入れたDA上層部は、これら日本に不法に入ってくる武器弾薬を根本から抑えるべく、活動圏を海外に移す特別任務部隊の必要性を鑑み。その際、リコリスの権限を剥奪されたリコリスの部隊を創設する。

 

武器商人などの殺害や武器弾薬の押収を海外で行う事を目的としたこの部隊は、椿小隊と名付けられた。

 

リコリスの権限を剥奪された彼女達は、本来であれば制服を着用する必要がなく。本来リコリスであれば許される権限も保有していないので、一般の警察から不審な行動を取れば職質をされ。国内に居れば仲間であるはずのリコリスに誤射で射殺される場合があった。

 

少なくとも、とても危険な任務を永遠とこなす部隊であり。まともな人間がやるような部隊では無い。その為、人選は能力に難ありとされたリコリスが集められていた。

 

ラジアータの中でも最重要機密指定情報として登録され、一般リコリスの間ではもっぱら死装束部隊や外れ値部隊として本来の意味は隠され、良く無い噂が立ち込めていた。

 

「…だ、そうですよ。隊長」

「やれやれ…」

 

椿小隊の今の構成員は隊長である浅美を含めて六名。全員が仲間である証の武器として消音器付拳銃(マカロフPB)を装備している。

今は全員がつなぎ服やヘルメットを纏い、一見すると工事関係者に見える彼女達は一瞬唖然となった。

 

「えっ、ウチらここで待機ですか?」

「嘘でしょ」

「上からご命令だ。まぁ大人しく待ちましょうや」

 

キャラバンの車内、言われて現着したは良いものの。まさかのそこで待機命令である。

 

「所詮幽霊リコリスは後ろ待機ですか…」

「元々ブラックなのに、これじゃあ深淵覗いているみたいっすね」

 

草生津は呆れながら車のリクライニングを倒し、小塚原は言ってケタケタと笑った。

すると助手席に座っていた浅美は目の前の規制線が張られて封鎖された道路を見ながら車のドアノブに手をやった。

 

「あら隊長、どこに行かれるのですか?」

 

そしてそのまま車を降りた浅美に三条が聞くと、彼女はドアを開けたまま耐えた。

 

「ちょっと暇だから散歩してくる」

「…命令違反は重罰ですよ?」

 

聞くと彼女は鼻で笑った。

 

「上が私達を裁く規則があるとでも?」

「…はぁ」

 

浅美の対応に三条は呆れた様にため息を漏らすと、言った。

 

「あまり派手に動かないでくださいよ?後処理面倒ですから」

「分かってるって」

 

浅美はドアを閉じながらそう答えると、つなぎ服姿で背中にショルダーバッグを下げて歩道の柵を飛び越えた。

 

 

 

 

 

その頃、タレコミのあった武器密売の現場では、怒号が響いていた。

 

「司令部!」

「くそっ、やってくれたなぁ!ガキどもっ!!」

 

一人のセカンドが後頭部に銃口を向けられていた。

 

「こんなに殺しやがって…!!」

 

武器商人の一人は怒鳴りながら壁裏に隠れるリコリスに叫ぶ。

 

「何処から聞きつけやがった!?」

「チッ…」

 

軽く舌打ちをしながらフキが人質に取られたリコリスを見る。

 

「ざけやがって…JKの殺し屋だとぉ?」

 

自分達を襲撃して来た者達の姿を見て困惑の城を隠さないでいる武器商人達。

 

「何者だぁ!?テメェら…」

 

男が拳銃を一人の少女に向けている様子はスコープ越しで反対のビルの屋上で待機していたミカも見ていた。

 

『ミカ、千束の到着はまだですかね?』

「そろそろのはずだが…」

 

ボルトアクション式小銃(レミントンM700)を構える彼は状況の切迫に苦言する。

 

「捕まったリコリスがやばいぞ」

 

その通信は本部に伝えられる。

 

『どうする?撃つか?』

「いえ、商人は捕らえたいです。千束を待ちます」

 

楠木は言うと、その頃現場に向かって走っていた千束は電話でミカに聞く。

 

「先生っ、現場何階だって?」

『六階だ、急げ!』

 

そう言い道を走る中、千束は途中で工事作業員の格好をした一人の少女を見る。

それが誰なのか一瞬で彼女は理解する。

 

「何で浅美が居るんだい?」

「お手伝い」

「怒られても知らないぞ〜?」

 

そう言いながら千束は浅美と共に非常階段を登る。

そして千束に言われた周波数で繋げると、彼女はミカに話しかけた。

 

「手伝いますよ。教官」

『…後で叱られても俺は知らないぞ』

 

インカムで察したミカは少し呆れたように返すと、浅美はフッと笑った。

 

「私たちに怒られる権利があればですけどね」

 

そう言い、彼女は七階に登った。

 

「おーい、何処いくねーん」

「うちは上から行くの」

 

千束は浅美と目線を合わせて軽く頷いた。

 

「聞いてんのかコルァァ!!十秒だ、そっから出て来い!コイツぶっ殺すぞ!」

 

その間、痺れを切らした武器商人が再び怒鳴り散らす。

 

「司令部、射撃許可を!」

「9…」

「大丈夫…私達でやれます!」

「8…」

 

カウントダウンが始まり、仲間の命が危険に晒されている中、冷静に判断する。

 

ザザッ『…は待ーー』

 

しかし直後、無線にノイズが走った。

 

「『!?』」

 

この事態に一瞬で何か異常があったとフキ達は認識した。

 

「司令部!?司令部!?ダメだ…繋がらねぇ」

「そんな…どうするのフキ…?」

「7…6…」

 

無線が突如途絶え、混乱する現場で一人のセカンドリコリスが横にあるものに気がついた。

 

「命令は…待機だ」

 

僅かに聞こえた無線の内容から察したフキは歯噛みする。

 

「じゃあエリカは…」

 

事実上の見殺しにしろと言う上からの命令に絶望する他のリコリス達に、その少女は死体を退けて徐にそれを手にとった。

その頃、七階のビルのバルコニーに出た浅美は一つ下の階にいる赤い制服の少女に拳銃を取り出しながらアイコンタクトを送る。

 

「先生、現場に到着。いつでもいける」

『千束、浅美。通信障害で彼女達との連携はできん。切り込んでくれ』

「オッケー」

 

そう返す千束に浅美はやや呆れ混じりに答える。

 

「やれやれ、命令無しで何もできなくなるのは日本人の縦型社会の悪い癖だね。了解」

 

二人は頷くと、浅美は片手に手榴弾を出す。

 

「ちょーいちょい」

「おっと」

 

浅美は態とらしくフラッシュバンに持ち替えてピンに手をかけた。

 

「いのちだいじに、だよ」

「はいはい」

 

千束の口癖にして彼女の真髄でもあるその言葉に浅美は軽く頷きながら二人は突入準備を終える。

そんな中、ビルでは状況は深刻化している。

 

「構わず撃ってぇっ!!」

「3…2…」

 

直後、上から顔を出して窓ガラスを破りながらフラッシュバンを投げ込み。それと同時に千束が顔を出した時。

 

ガシャン

 

スリング付きの機関銃(PKM)を肩から下げて構えたセカンドリコリスが立ち上がった。

 

「たきな!?」

 

フキが驚いた直後、

 

ッーーーーーー!!

 

彼女は機関銃を発砲し、無数の弾丸が窓や壁を突き抜いて武器商人達に命中する。

 

カンッ

 

そして跳ね返った弾丸の一発が浅美の投げ入れたフラッシュバンを弾いた。

 

「「あっ…」」

 

そして弾かれたフラッシュバンはそのまま窓の外に出てくると二人の目の前で爆発した。

 

「Door!?」

「What’s the fuck!?」

 

突入直前だった浅美は爆発の衝撃で思わず機関銃の銃弾が抜けていくビルの窓を通過しながら落ちた。

 

「あ〜れ〜」

「ぬぉぉっ!浅美ぃ!?」

 

ビルのバルコニーの端に捕まった浅美はそのまま一つ下の階のバルコニーにパルクールの要領で降りると落ちた事に慌てて下を覗いていた千束にサムズアップする。

 

「っぶねぇ、運が良かった…」

「おぉう、良かった…じゃあさっさと撤収ね〜」

 

千束は安心して階段を降りると、浅美と共にビルから離れて行った。

 

 

 

「(今…外に誰か…)」

 

で乱射して武器商人達を一掃したセカンドリコリス、井上たきなは射撃中に見えた黒い影と、射撃に誤魔化されて掻き消えたフラッシュバンの音を確かに耳にしていた。

 

「おいっ!!」

 

そんな彼女に赤いファーストリコリスのフキが問いただす。

 

「どう言うつもりだ、たきな…」

 

彼女は後ろで震えている人質となっていたセカンドリコリスを一瞥しながら聞いた。

 

「エリカを殺す気か!?」

 

人質がいる中、躊躇なく機関銃の引き金を弾いた彼女は、

 

「…生きていますよね?」

 

顔を青くして倒れていた彼女にそう言い放つと、フキはそのままたきなに憤慨し、そのまま握り拳で彼女の頬を一発殴っていた。

 

 

 

遠くから警察のパトカーのサイレン音を聞きながらミカは聞く。

 

『二人とも、生きているか?』

「はいはい、生きておりますとも」

「生きた心地しなかった…」

 

千束と浅美はいきなり飛んできた機関銃の弾丸に少し疲れながら歩道を歩いている。

 

「教官、千束を店まで送りますね」

『あぁ、頼んだ』

「おっ、マジ?!やったぜ!」

 

千束は走り損と化した行きに帰りは楽できると喜んでいた。

 

「んで、そのゴーグルは何?」

「防弾仕様の特別製。暗殺とかするときに目線を追われないようにしてんの」

 

そう言い工事作業員の格好の浅美と話していると、乗って来たキャラバンの前に浅美は身を乗り出す。

 

「椿原工務店…?」

「ちゃんと申請した店よ」

「それ絶対、デカい機械持ち込んでもバレないようにするためじゃん」

「ふふっ、大当たり」

 

そう言いながらキャラバンを特定の短いリズムで叩くと、横のスライドドアが開いた。

 

「悪い、一人タクシーね」

「おっ邪魔しまーす!」

 

陽気にキャラバンに手を上げて乗り込む千束に、中に乗っていた面々は苦笑した。

 

「やれやれ、ファースト様を護送かよ」

「偉くなったもんですね。隊長?」

「しかも、旧電波塔事件の時の有名なファーストさんじゃあありませんか」

 

そう言い、自分達よりもよっぽど良い有名人な千束を見て浅美を見た。

 

「まぁまぁ、昔からの知り合いだから許して?」

「短い間よろしくね〜。椿小隊の皆様〜」

 

千束はそう言うとスライドドアを閉じてキャラバンはUターンして行った。

Do you want a happy end?

  • Yes
  • No
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。