椿の介錯人   作:Aa_おにぎり

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#05 Who are you

千束達の後ろから現れた浅美、彼女の姿に赤いファーストリコリスの少女は親しげに話しかけてくる。

 

「浅美〜」

「どぅどぅ、久しいねぇ」

「この前会ったじゃ〜ん」

 

千束と浅美は軽くツツキながら戯れていると、紺色のセカンドリコリスの少女は現れた一人の少女に目を白黒させていた。

紺色の缶バッジ付きのキャップ帽に色の濃いサングラス。白と黒のパーカーに両耳にイヤホンとイヤーカフをしており、とても自分の知るリコリスとは程遠い格好をしていた。

 

「千束、もしかしてこの子?」

 

浅美はたきなを見て聞くと、千束は嬉しげに頷いた。

 

「そう!私の相棒のたきな!」

「あっ、相棒…?」

 

勝手に相棒呼ばわりされているたきなは千束の扱い方に不満げな様子だった。

 

「ほほぅ、千束の相棒ですか…」

 

浅美はたきなを見ていると、彼女は恐る恐る拳銃を抜こうとすると。

 

「おっと」

 

彼女はパーカーの右ポケットから布が突き出る。

 

「一旦落ち着いて、ね?」

「…」

 

たきなはその下にあるものが分からないほどおバカでは無かった。

 

 

 

「本当に、リコリスなんですか?」

 

その後、千束が次の目的地に行くまでの間。たきなは浅美に訝しむ目を向ける。

千束達と合流した浅美はたきなとの交流も兼ねて次の目的地まで歩いていた。

 

「えぇ、一応ね」

「一応…?」

 

首を傾げたたきなに浅美は片耳のイヤーカフを指差す。

 

「これの意味、君なら分かるんじゃない?」

「…まさか」

 

イヤーカフに付いているのは椿。すると彼女はそのピンバッジを外すと、たきなに手渡す。

 

「信じられないなら、ほれ」

 

たきなは手渡されたピンバッジの裏を見ると、そこにはリコリスのマークと番号が打刻されていた。

 

「…」

 

それを見て、たきなは改めて固まった。

 

「じゃあ貴方は…」

「そっ、椿小隊のリコリスよ」

「…」

 

たきなは浅美を見返す。

リコリスにしてリコリスに在らずと中ではもっぱら噂の部隊。

 

「なんでそんな犯罪者がここに?」

「おっと、初手からきついよ君〜」

「当たり前です」

 

たきなは浅美を前に少しきつめの目線を送る。

 

「能力が足りない上でリコリスにしがみ付く厄介者集団じゃないですか」

「おおぅ…」

「たきな〜、ちょっと言い過ぎだよ?」

「しかし…」

 

椿小隊の悪い噂は養成所の頃から知っている。

能力が足りず、リコリスを辞めさせられる所を意地を張ってしがみ付くために、隠密行動を行わなくて良い海外で活躍する非合法部隊。それが椿小隊であるとたきなは噂で聞いていた。

 

「要は出来損ないが集まっている部隊って事じゃないですか」

「はははっ、ひっでぇや」

 

たきなの評価にやや苦笑しながら浅美は千束に言う。

 

「千束、この子あんたの部下なんでしょ?なんとかしなさいよ」

「え〜、そりゃ無理だよ〜」

 

三人はそう言いながら次の目的地の押上警察署の前に到着する。

 

「いやぁ〜、リコリコに楽しみが増えちゃったなぁ」

 

その警察署で一人の刑事が嬉しそうに頭を軽くかいていた。

 

「それに千束ちゃんの幼馴染も一緒とはねぇ」

 

そう言い、両手をポケットに突っ込んで少し背中が曲がった浅美を見る。

 

「お店の常連さんなの」

「警視庁の阿部です。よろしく」

「井上たきなです」

「山田浅美っす」

 

二人は阿部と軽く挨拶を交えると、彼は千束にある依頼を持ちかけた。

 

「いやぁ、君たちにこんな事頼むのは申し訳ないんだけど…」

 

警察署の受付、大勢の人が行き交う中。阿部は三人にある依頼をする、

 

「ストーカー被害ってのに警察は動きが鈍くてねぇ…俺担当でもないし」

 

ストーカーというのは大半が付け狙う行為が次第に暴力へと変化していくもの。

おまけに最近は男でもストーカーになると言うのが話題になってきてはいるが、まだまだ被害者の大半は女性。

ウホッ、良い男はまだまだネット世界の言葉であるのだ。

 

「それに女の子同士だし、話しやすいと思うんだ。ちょっと詳しく聞き出してくれない?バイト代は弾むからさ」

「マジでっ?!」

「え?刑事が個人情報漏らしていいんすか?」

 

喜ぶ千束に純粋に浅美は驚いて声に出てしまうと、阿部は言う。

 

「大丈夫さ、千束ちゃん達の友人ならね」

 

どうやら阿部刑事は千束にすごく厚い信頼を置いている様子で、バイト代と言っているあたり。今までも何度か彼女に依頼をしてきているのだろう。

バイト代に顔が緩む千束をジト目で見るたきな、そのバイト代はどこから出ているんだと勘繰る浅美を他所に阿部は警察署に訪れた一人の女性を見て手を挙げた。

 

「きたきた、篠原さん!」

 

阿部が千束達に依頼したストーカーの調査。千束は多岐にわたって業務…いや小遣い稼ぎをして地域住民との信頼関係を築いているな〜、と軽く感心していた。

 

 

 

「この写真をSNSに上げてからっすか?」

 

今回の依頼人である篠原沙保里と言う女性は携帯に映る一枚の写真に頷く。

 

「脅迫リプも来たから怖くなってすぐに消したけど…。彼も私も変な奴に付き纏われてて…」

 

その写真は彼女が彼女の恋人と撮ったツーショット自撮り写真であり、その写真が原因で夜な夜なストーカー被害に遭って相談に来たと言う。

 

「前の交際相手とかじゃなく?」

 

彼女の横に座った浅美が聞くと、彼女は首を横に振った。

 

「それ警察も痴情の縺れだって取り合ってくれないけど…。その…私前の人なんていなくて…ホント心当たりないのよ」

「どこで恨みを買うか分からないですからねぇ…」

「おまけに基本的に警察は民事不介入、よっぽどセクハラでもされない限り本格的には動いてくれ無いっすしね〜」

 

浅美は風船ガムをそこで膨らませると、パンと弾けて風船が萎む。

すると携帯を見ていたたきなが写真を見てある違和感を感じた。

 

「この後ろのビル…!」

 

たきなが指さすと、女性はポンと思い出したように言う。

 

「そうそう!ガス爆発事件のビル。窓ガラス割れて大変だったとかいう。偶然同じ日だったのよ」

 

彼女の言葉に嘘は無く、浅美もサングラスの奥で少し目線を細めた。

 

「怖いですね〜、沙保里さんは大丈夫でしたか?」

「えぇ。それ撮ったの、爆発の3時間くらい前かな…」

 

そう言い写真をたきなが拡大すると、

 

「千束さん!」

「ブッ」

 

その写真の背景に写っていた()()に思わず彼女は吹き出した。

 

「な、何か分かったの?」

「あ〜いや、この写真もらえます?」

 

吹き出した彼女に依頼主は首を傾げていると、千束は聞いた。

 

「え?えぇ…」

 

彼女は首を傾げながら承諾すると、千束達はヒソヒソと言う。

 

「取引現場モロ映ってんじゃん」ヒソッ

「銃は消えたのではなく、既に引き渡されていたんですね。その相手がSNSの写真を見て…」ヒソッ

 

その会話は浅美も勿論聞いており、全ての辻褄が繋がった。

 

「めっちゃヤバい奴に狙われてるよ沙保里さん!」

 

千束はそう言いデコを軽く叩いた。

消えた千丁の銃火器は、取引がなかったのではなく。フキ達が到着した頃には既に終わっていたのだ。

DAが今は躍起になって探している千丁の銃の手がかりが、まさかこんな方法で見つかるとは思ってもいなかった。

 

「(予想外の収穫ね…)」

 

自分達に下命されている其れ等銃火器の押収。

送られてきた写真には武器商人とその取引相手までしっかり映っていた。

 

「(嘘でしょ…)」

 

流石にこれには浅美も驚いたが、すぐに彼女は聞く。

 

「あの〜、彼氏さんのお仕事先って、教えてくれたりします?」

「え?どうして?」

「いやぁ、ガタイがいいですから。何か運動系でもしているのかなって思って」

 

送られた写真を見ながら聞くと、篠原は頷いた。

 

「そうよ、彼はジムでトレーナーをしているの」

「へぇ、どこのジムなんっすか?」

「ここのジム。今度紹介してあげようか?」

「えぇ、マジっすか。そりゃ嬉しいっす」

 

浅美はそう言い篠原から彼女の恋人が通っている仕事先を教えてもらっていた。

 

 

 

 

 

その後、警察署を出た四人。これから帰ろうとした矢先、

 

「ねぇ、沙保里さん」

 

千束が提案をしてきた。

 

「今夜はとりあえず一緒にいません?」

「いいね!じゃあウチ来なよ」

 

ストーカー被害で心身共に疲労していた彼女は千束の提案に喜んで頷くと、その流れで一晩篠原の家に泊まってパジャマパーティーをする事になった。

改めて千束のトーク能力に軽く感心しながら浅美は荷物を取りに行くと言って別れる千束を見送る。

 

「浅美はどうする?」

「私はこの服でいいよ」

 

そういい二日連続で同じ服を着ると言った浅美に千束は少々信じられないと言った顔をした。

 

「え〜、きったねぇ」

「なんだテメェ?喧嘩売ってんのかこの野郎」

「まぁまぁ落ち着いて」

 

喧嘩しそうな雰囲気に篠原が宥めると、千束はたきなの肩を掴んで言った。

 

「しばらく任せるけど、無茶しないように。『いのちだいじに』だからね」

「はい」

 

たきなは答えると、次に浅美を見る。

 

「たきなの事頼んだ」

「おかのした」

 

浅美は頷いて返すと、千束は荷物を取りに反対に走って行く。

 

「今夜は大いに盛り上がっていきましょ〜!」

「ふふっ、はしゃぎすぎで轢かれないようにね」

 

そんな明るい彼女に篠原も少し笑って見送ると、

 

「面白い子ね〜、不安が吹っ飛んじゃった」

「昔からああ言う感じっすよ。アイツは」

 

浅美はそう言うと、たきなはそんな彼女に

 

「私は…あの人、不安ですよ」

 

そう言い、千束のあの様子に少し不安を覚えていた。

 

「あぁ、あの〜」

「「?」」

 

出発する直前、浅美は少し申し訳なさそうに手を上げた。

 

「どうかしましたか?」

 

たきなが聞くと、浅美は言う。

 

「すまん、トイレ行きたいんだが…」

「…はぁ、あなたと言う人は」

「ここで待っているわね」

 

浅美の要望にたきなは呆れ、篠原も少し笑うと浅美は少し急いで警察署に戻っていく。

 

「すいやせーん。すぐ戻るっす!!」

 

そう言い、彼女は慌てて警察署の女子トイレの個室に突撃すると彼女はインカムを耳に付けた。

 

「ゆい?」

『はい、なんでしょう隊長?』

 

すぐに繋がり、彼女は言う。

 

「◇◇フィットネス。すぐに出て」

 

携帯を触り、例の写真を転送する。

すると写真が送られたのだろう、一瞬で彼女は全てを把握していた。

 

『…分かりました。どっちですか?』

「男だ。ストーカーされている」

『了解しました。すぐに出ます』

「DAには渡すな」

『分かりました。捕縛ですね』

 

するとを繋いだまま全ての作業を中断し、彼女達は出る。

連絡を終えてインカムを外し、短く通信を終えた後。彼女はトイレの水を流して洗面所で手を洗った後に警察署から出た。

 

「や〜、すまんすまん」

「では行きましょうか」

 

そんな彼女を見て三人は帰り道を歩き出した。

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