椿の介錯人   作:Aa_おにぎり

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#09 The broker

喫茶リコリコと共同でとある仕事行う事になった浅美達。

 

「誤射注意ね」

「分かっています」

「あと射殺禁止。積極的攻勢も無し」

「はいっ」

 

浅美は横でフードを被る小塚原に言うと、彼女は脇で銃床の折り畳まれた消音器を付けた短機関銃(Vz.65)を挟む。

弾倉を抜いて銃弾の有無を改めて確認を終えると、弾倉を装填してコッキングレバーを引いた。

人通りのない区域、そこを歩く着ぐるみと少女はそのまま閉店して入り口の壊れたショッピングモールに入った。

 

「…」

 

そして彼女達を追っていた数人の男達はショッピングモールの駐車場にバンを止めると、車を降りた。

 

「二人だ。始末するぞ」

 

防弾チョッキを被り、その手にはを持っており。襲撃者達はショッピングモールに入って行った二人の捜索を始めた。

 

 

 

「しかし、ウチはどこに行くんです?」

「さぁ?一応駐車場に行くらしいわ」

 

その頃、三条と草生津のペアは納谷から言われたルートを通って街中を歩いていた。

 

「教官から鍵も預かってきた」

 

そう言い三条は片手に車のキーを取るとそこでインカムが入る。

 

『副隊長達はそのまま車に乗ったら高速に乗ってもらって良いですか?』

「了解、そっちの様子は?」

『ハッキング無し。隊長達も順調に移動しています』

 

納谷には隠していたはずなのに、なぜか翌朝には依頼主が()()ウォールナットと知って顔がどえらい事になっていたのを思い出す。

それからと言うもの、彼女は作戦開始前にシステムの書き換えを終えて最高の状態に仕上げてから仕事に臨んでいた。

 

「いつもの逃し屋もこれくらい張り切れば良いのに…」

『ユウミちゃん?』

「イイエ、ナンデモアリマセン」

 

インカムからでも分かるその雰囲気に苦笑する草生津に着ぐるみの中で三条は言う。

 

「余計な一言言うからですよ」

「へぇへぇ、すいませんね」

 

そう言い駐車場に到着すると、その時にすごい勢いで飛び出して行った白い軽自動車(ホンダ トゥデイ)を見た。

 

「すげぇ加速…」

「スピード違反で違反点数喰らわないと良いけど」

 

三条はそう言いその軽自動車のガラスが全てミラーガラスに張り替えられていたのを見て察すると、駐車場に停まっていた一台の赤い高級車(レクサス LF-A)を見た。

 

「うわぁ…」

「こんながっつりスポーツカーですか…」

 

目立つなぁ、と軽くぼやきながら車の鍵を使って乗り込む。

 

「フェラーリみたいだ」

「これは日本車ですよ?色だけですよ似ているのは」

 

軽くツッコミを入れながら車にトランクを押し込んで運転席に座るとエンジンをかけた。

 

「さて、行きましょうか」

 

そうして三条がハンドルを握ると、助手席に座った草生津は苦笑いする。

 

「いつの間に持ち込んだ?」

 

そう言い、彼女の足元にあるクロスボウを見る。

 

「さぁ?いつでしょうか」

 

三条は少し笑みを浮かべてアクセルを踏んだ。

 

 

 

ショッピングモールに入った浅美・小塚原ペアは追いかけてくる襲撃者達を見る。

 

「このまま逃走しようか」

「そうですね」

 

地図を改めて確認し、二人はショッピングモールの反対側に向かって移動する。

幸い廃墟となったショッピングモールはとても広く、容易に襲撃者達を撒くことが出来た。

 

「ちょろいちょろい」

「あっ、アレですね」

 

そこには黒い小型CUV(ヤリスクロス)が停まっていた。

 

「あらまぁ新車じゃない」

「小さくて可愛い車ですね」

 

そんな事を呟きながら浅美達はミカから渡された鍵を使って車に乗り込み、後ろにトランクをしまった時。

 

「ん?」

 

浅美の視線の先。一台のドローンが飛んでいた。

 

「ちっ…」

 

直後、浅美は急いで運転席に乗り込むとそこでエンジンをかけてアクセルを思い切り踏んだ。そして視線の先には銃を持った襲撃者達が現れた。

 

「飛ばすよ!」

「はいっ!」

 

窓を開け、そこから手にシートベルトを絡めて身を乗り出し、短機関銃の引き金を弾いた小塚原は襲撃者達を牽制すると黒い小型CUVは急加速してショッピングモールの駐車場を出た。

 

「追え追え!」

 

それを見て車に襲撃者達は乗り込んだ。

 

「来ている?」

「はい」

 

バックミラーに一台の白いハイエースを見ると、浅美は窓を開けて前の高速の出入り口を見る。

 

「よっと」

 

そして開けた窓から例の携帯型指向性対人地雷の電源を付けて地面に放り投げると、その上を通過したハイエースに携帯に取り付けられた赤外線カメラが反応して起爆した。

 

ッ!

 

前にストーカー相手にやったのと同じ手法でハイエースのタイヤを吹き飛ばして強制的に路肩に停車させると、そのまま浅美は高速道路に入った。

 

 

 

 

 

その頃、同じ依頼をこなしている千束達もトゥデイに乗って後ろの確認をしていた。

 

『JKの殺し屋の方が異常だよ。リコリス』

 

浅美達が見ている着ぐるみと同じ格好の一人が運転していると、後ろで千束達は言う。

 

「熊のハッカーよりは合理的ですよ」

「たきな、犬だよ」

『リスだ』

 

返され、二人は納得がいかない様子で運転しているウォールナットを見た。

 

『…どう合理的なんだ?』

「日本で一番警戒されない姿だって事ですよ」

『JKの制服は都会の迷彩服ってことか』

 

そう言い、目の前をサードリコリスと似た柄の制服を着た集団が横切る。

 

「あの…この大きいのはなんですか?」

『僕の全てだ。国外逃亡には身軽な方がいいだろ?』

「いたあんたの姿が身軽じゃないですけどね?」

 

そう言い、たきなは助手席に載せた黄色いスーツケースのことで軽く話す。

 

「でもいいなぁ、海外…私も行ってみたい」

『一緒に行くかい?』

 

ウォールナットは聞くと、千束は軽く首を横に振った。

 

「私たち、戸籍がないから。パスポート取れないんですよ」

 

そう答えた千束にウォールナットは首を傾げた。

 

『海外で活躍しているリコリスもいるのにか?』

「あれは例外ですよ」

 

ウォールナットが言っているのは椿小隊の事。それも知っているかと思っていると、ウォールナットは言う。

 

『優秀な逃し屋らしい。海外で二百を超える件数の逃し屋家業をしているな』

「へぇ〜、そうなんですか」

 

何気に初めて聞いた椿小隊の仕事。ファーストである自分は椿小隊の本来の意味を知っているが、そんな事もしていたのかと軽く感心した。

 

『知らないのか?』

「椿小隊は悪い噂しかないですからね〜」

 

千束は言うと、ウォールナットは続けた。

 

『逆に言うと、本来殺し屋のはずのリコリスでありながら、逃し屋としての情報しか残っていないと言うことだ』

「え?どう言う事です?」

 

その言葉にたきなは首を傾げると、ウォールナットは言う。

 

『彼女達の存在はネット上にはわずかにしか残されていない。しかもその逃し屋の情報も、椿小隊のハッカーの中にしか無かった』

「ハッキングしたんですか…」

『噂には良く聞いていたからな。僕はこう見えて、データばかり気にしているような人間ではない。なかなかに優秀なプロテクトを敷いていた』

「ハックしたアンタに言われてもね…」

 

千束は苦笑し、ウォールナットはそう言うと、ハッキングした椿小隊のその後を言った。

 

『依頼した所、先に依頼した君たちと一緒に仕事をすると知った』

 

ウォールナットはそう言うと、改めて椿小隊の事を感心したようにこう語る。

 

『あのリコリス達の情報は全てアナログで管理されている。ネットがない時代のようにね。

今みたいな情報化社会で最も有効で強力ななハッキング対策は、ネットを一切使わないアナログなシステムを間に挟む事だとつくづく実感したよ』

 

 

 

 

 

「あぁ〜」

「ハッキングされましたね」

 

レクサスに乗っていた二人は言うことを聞かなくなったハンドルを見て呟くと、草生津はバックミラーを探す。

 

「中継機は?」

「仕掛けられていないでしょう。多分…」

 

バックミラーを見ると、そこには一台のドローンがこちらを見ていた。

 

「全く、これだからナビのあるオートマ車は嫌いなんですよ」

「窓も開かないですね」

 

電気制御の窓を開けることができず、仕方なく三条は自分の特製コンパウンドクロスボウの銃床で窓を叩き割るとそこから身を乗り出して引き金を弾いた。

 

ヒュンッ

 

そして放たれた鋼鉄製の矢はドローンをカメラ毎貫通すると墜落していった。

 

「これで仕事は終わりですかね?」

 

制御を取り戻した運転席に座った三条はそう呟いた。

 

「私出た方が良く無かったですか」

「…」

 

直後、しまったと三条は呟いた。

 

 

 

同じ頃、浅美達もまた車をハッキングされていた。

 

「あぁ、やっぱり」

「ハッキングされていますよ…!?」

 

ガクガクとなって動かなくなったハンドルを前に小塚原は驚く。

 

「こうなるからオートマナビ付きは嫌いなのよね〜」

 

そう言いながら浅美は聞いた。

 

「はる、聞こえる?」

 

インカムで聞くと、幸い通信は繋がっていたようで返答があった。

 

『はい隊長、中継機ですね?』

「そう、どこにある?」

 

阿吽の呼吸で聞くと、はるは持ち前の技ですぐに特定する。

 

『後ろ3mに反応があります』

「ドローンね…」

 

そこで浅美は窓を持ち出した消音器付拳銃(マカロフPB)の銃床で叩き割ると、ミラーでドローンの位置を把握した後に身を乗り出して引き金を弾いた。

 

パシュッ

 

発射された弾丸はそのまま後ろにいたドローンに命中すると、墜落していった。

 

「うーし、終わった終わった〜」

 

そう言って制御を取り戻した運転席に座った浅美に見ていた小塚原は呟いた。

 

「私が出た方が良かったのでは…?」

「あっ…」

 

直後、浅美はしまったと呟いた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「くそっ!」

 

とある場所で一人の人物が机を叩いた。

その人物の名はロボ太、ハッカーであり。これから日本一のハッカーになるであろう者であった。

その理由として、今まで自分の目の上のたん瘤であり、長年日本一ともてはやされていたウォールナットをこれから始末するためであった。

 

そして三台に分かれたウォールナットに一斉に攻勢を仕掛けた所、三台とも同時に撃墜されてしまっていた。

 

「だがどれに乗っているかは分かったぞ」

 

撃墜された三台の内、二台は着ぐるみを着た者が撃った。

少なくともウォールナットが銃を扱えると言う話は聞いていないので、着ぐるみで撃たなかったトゥデイに乗っているのが本物だろう。

 

「本物が別ればカカシはどうだって良い」

 

そう言い彼は次の行動に移していた。

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