老いたりせども、愛は変わらず。   作:高山典子

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【おことわり】
 本作品は、2013年5月に作ったものであり、今とは多少感覚の違う表現が含まれているかもしれません。また作者はアナログ人間(機械オンチ)のため、更新に時間がかかりますが、それでも良ければ、読んで下さいませ。








第1話

『それでは、本日のゲストです。田上悠一(ゆういち)さんです――』

 TV司会者の案内を受け、タイトルコールと共に、その俳優はTV画面の右側から現れた。

(わたくし)が、毎度おなじみ「た・の・う・え」悠一ですよー』

 ニカリと笑みをこぼすと、観客席からはドッと笑いが出た。

 俳優歴35年のベテランで、よくドラマの刑事役や、ホームドラマの父親役として見かける。

 最近では、バラエティー番組やトーク番組のゲスト出演として、その姿を目にする事が多くなった。

『今回、初の映画出演ということで、とても注目を浴びてらっしゃいますが、どうですか、今の心境は?』

「この人、ドラマに出てる時とバラエティーに出てる時じゃ、全くイメージが違うのよねぇ。何ていうか、()は、ひょうきんな小学生みたいな」

 雅美(まさみ)の母親ほ、おせんべいの入った缶から手を往復させながら、そう言った。

『いやぁ、お恥ずかしい話なんですが、ずっと俳優業やってて、映画の出演依頼が来た時は、そりゃあもう嬉しくて。子供の時からの(あこが)れでしたから。家の中をソワソワしっ(ぱな)しましたねぇ』

『そうなんですか。そんな昔からの夢でしたら、相当(そうとう)苦労されたんじゃないですか?』

 雅美の母親は、TV画面に()いついたまま、変わらず缶から口元へと往復する手を止めない。

『そうですねぇ、私は(わり)と何でも楽しんでやるタイプなんで、苦労したとか、大変だったといったという記憶は、あまり残ってませんねぇ』

 彼は再びニカリと笑った。

 二児(にじ)の母親でもあり、パート(つと)めもしている雅美は、今、マンションのリビングで、自分の母親、良子(りょうこ)と向かい合ってTVを見ている。

 良子は、月に一度、都合の良い日があると、雅美夫婦のマンションへお昼ご飯を差し入れに来るのだった。そして、雅美のパートが始まる(いち)時間前になると、必ず実家の近所にある和菓子屋さんのお菓子を置いていくのだった。

 ところが今日は、お昼が過ぎた頃、いきなりマンションを(たず)ねて来て、いつもと違う高級そうなおせんべいを二缶も持ってきて現れたのだ。

 そして、玄関から上がるなり、リビングの机の上で、おせんべいの缶を開け、つけっ放しだったTVのチャンネルを今見ているトーク番組に変えて、ソファにどっかり座り込んだのだった。

『へぇ~、意外ですね。何でも、舞台で俳優をされていた頃は、劇団の皆さんが帰り終わった後でも、(ひと)りで稽古(けいこ)(はげ)んでいらっしゃったとか…』

『いやぁ~、参ったな、それ、私が随分(ずいぶん)若い頃の話ですよ。誰から聞いたんですかねぇ。

 

                         (つづく)     

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