その顔つき――
それは、田上が、かつてドラマで共演した独身の美人女優と不倫関係がある、とTVや週刊誌などのマスコミが
今、目の前にしている良子も、まさにその表情をしていた。
雅美が中学生の
あの時、良子は雅美や、雅美の弟の進学先を真剣に考えていた。
一人暮らしをした事が無い父と激しい口論を交わし、父の両親――
その記憶が、ふとTVの中の俳優の表情から思い出されるのであった。
「――ねぇ、母さん」
「……」
口を閉ざしたままの良子に、
「お茶、
と、雅美は
自分の中では、もう大人になったのだ、親になったのだ、と自覚していても、親から見れば、自分の子供はいつまで
雅美は
「――ゴメンね、母さん。さっきは」
と、リビングへお茶を運んだ。
「何のことよ、雅美。――あらっ、このお茶、
良子は、雅美の
「母さん、――今までありがとう。これからもよろしくね」
「何よ、変な子だねぇ。『老けた』って言ったり、感謝したり……」
「ううん。何でもない。――それより、このおせんべい、私も一緒に食べても良い?」
「当たり前じゃない。――雅美、アンタ
「えっ?」
「今日、アンタたち夫婦の結婚記念日でしょ。
リビングにあるカレンダーを見た雅美は、
「あっ、そうだ……、すっかり忘れてた……」
と、日々、自分が家事や子育て、仕事に追われている事に気付いた。
「実はね、父さんと雅美たち夫婦に何を
最終的に
仕事の
「母さんにとって、結婚記念日はあまり思い出したくない出来事なんだけど、せめて雅美には、と思って、海外とか温泉旅行だとか言い出したんだけど、
雅美は少し
「結局、いつもの和菓子屋さんまで来て、一番高いおせんべいを買ったのよ。――全く、分かんないわね、何十年夫婦やってても」
と、フフフッと軽く笑う良子を見て、やっぱり私たち、
「――ねぇ、雅美。今日の夕飯、母さんがとびっきりの料理、作ってあげる。だから
「えっ、でも、父さん……」
「いいの、いいの。たまには
これから段々と老いていく母。そして自分も年を取っていくのだ。ゆっくり、確実に。
「今日は、パート休みだし……。じゃあ、お言葉に甘えて、ゆっくりさせてもらうね」
「そうこなくっちゃ。母さんも、まだまだ『母さん』って言われたいのよ」
『今日は俳優の田上悠一さんでした。映画でも、ぜひ素晴らしい演技に期待したいところです――』
(完)
【あとがき】
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
今回もいかがだったでしょう?
制作秘話として、当時、実際にあったお昼のトーク番組から着想を得て、構成してみました。
テーマとしては、『まあ、生きてる間、年齢によって、愛の見え方・考え方って、変わってくるものかなぁ』という、ザックリとしたもので、ソンナニソコマデ哲学的ナモノデハ無イデス。ハイ。
期待外れ〜、な展開だったかもしれませんが、やはり筆者に求められる人生の経験値って、プロット(話の構成)を作る段階から、かなり重要ですね。改めて、勉強させてもらいました。
ではでは、次回は、……時代モノ(超短編)?(江戸時代)か、またまた青春現代恋愛モノになるかと。
どうぞ、よろしくお願いします。