マテリアル・ツインズ 《Material・Twins》   作:グラタン二世

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第1章 廻帰せよ我らの夢よ原罪よ
Episode.1


 

 この世界は理不尽でありふれている。まだあの時はこんな美しい世界が理不尽だとは気付けずにいた。子どもだった俺達は何も、何も出来ず親も、村のみんなも何もかもを失ってしまった。

 

 

───けれど1つの小さく大きな決意は生まれた。

 

───必ず魔獣を滅ぼしてやる。

 

 

 

   

 第一幕 夢罪纏う星々の邂逅

 

 

   

 

 数百年前、この世界は多くのクニに分かれており、地域によっては豊富な資源があったため、それを巡っての争いが絶え間なく起こっていた。

 それに辟易した各クニの王達は自身らが契約した大精霊の力を使い、起こっていた全ての戦争を終わらせ中央政府《センターマリア》を発足させた。

 多数のクニをキタ、ミナミ、ヒガシ、ニシに分け争いを起こさない平和な世界を作る事を宣言し安寧の世界を作り上げていた。だが、ある災害をきっかけに少しずつ、少しずつ不安は募っていく。

 

 

 これはそんな世界で夢を叶える物語である。

 

 

 まだ朝と言えるか微妙な時間帯。ミナミのクニの端にある木の小屋に2人の少年がいた。1人は黒髪の少年でかなり平凡的な見た目をしていて街で見てもすぐ忘れてしまいそうだ。

 かなり若そうに見えるがとても鍛えられた身体で見る人が見れば目を惹くかもしれない。

 

「おい、カイト起きろ」

 

 そんな黒髪の少年──カイトを起こすのは、紫髪の少年。彼はカイトに比べるととても顔立ちが良く、雰囲気も温和でかなりのイケメン。

 身体はカイトと比べる筋肉質ではないが彼よりも身長は数センチほど高そうだ。

 

「メガロ…もう少し寝かせてくれ」

 

「駄目だ。仕事の時間だぞ」

 

 カイトはボサボサな頭でベッドから起きる。寝起きだといつもはこんな感じだからが普段はもっとハキハキしているが気にしないでおいた方が良いだろう。

 

 リビングへ向かうと既にメガロが準備した朝食がテーブルに置かれていた。一緒に住み始めた頃は毎日朝食当番を交代しながらすると決めたような記憶を持っているメガロだが、いつの間にか朝食当番はメガロがやるようになった。

 準備と言っても、朝は簡単なものしかしないのでパンとミルク、それにサラダだけ。それが終われば大体メガロは自身の武器を手入れしたりするなど適当に過ごす。そんな日常が3年近く続いているのだ。

 

「「ごちそうさまでした」」

 

朝食を食べ終わると仕事の用意を始める。彼らの仕事は汚れることしかないので服装は汚れても良い適当な服装が好まれている。着替えが終わると準備は2人の愛剣と愛銃を持つだけだ。

 

「じゃあ、仕事行くか」

 

「おう」

 

 数分程歩くと彼らが住んでいるより建物より数倍程大きな建物が見えてくる。中に入ってみると髭がもじゃもじゃのおっさんが目に映る。

 

「お、カイト、メガロ来たか!」

 

「なんだよおっさん。はやく髭剃れよ鬱陶しい」

 

「あぁ?これはトレードマークだ。簡単に剃るかよ」

 

 髭のおっさんはカイト達がいつも活動をしている団体の仲介人だ。彼がいるおかげで2人は仕事ができている。

 

「今回は近場の村だ。すぐだから行って来い」

 

「はいはい」

 

 ここに来たらすぐに仕事を貰えるので目標(ゆめ)がある彼らにとっては良い仕事先である。

 

  

 ──彼らの仕事の説明をする前にこの世界の害獣である魔獣の話をしよう。魔獣には様々な(フォルム)をしたものがいる。ライオンやトラなど既存の動物に似ているものや本当に生物なのか疑わしいような形のものもいる。

 1番の特徴として魔獣は角が付いており、それが黒色な事が挙げられる。彼らは角自体をお洒落なものと思っているのか武器として使うことは多くない。

 

 

「よぉ、今日もぶっ殺したくなるフォルムだな」

 

「同感だ」

 

「……ガァルル…」

 

 今回は村近くの川に魔獣が2匹いた。1匹はライオンのような仕草をしながらこちらに近づき、もう1匹は生物の原型を留めていないので形容するのが困難だ。

 

「メガロ…!そっち逃げたぞ…!」

 

「了…解…!」

 

 間もなく、彼らは武器を取り出して仕事を開始する。先に攻撃をしてきたライオン型の魔獣にカイトは一太刀。

 それが大ダメージだったのかすぐに逃げ出すが、逃げ出す方向には既にもう1匹を倒していたメガロがいる。

 

 「っしゃ!」

 

「ナイス!助かった」

 

「どういたしまして」

 

 危なげなく魔獣2匹を倒した彼らだが2年前のとある災害で故郷も親も失っている。すんなりと魔獣を倒せるのも血の滲む努力をしてきたからだ。もし一般人が普通に魔獣と戦ってもすぐに喰われて終わりだろう。

 

「さて、次の仕事貰いに行くか」

 

「だな」

 

 なんとなく彼らの仕事は分かると思うがしっかりと伝えておこうと思う。彼らの仕事は()()()での《魔獣狩り》である。

 

   

 

 

「あ〜お前らには突然悪いがオリングラ森林に行ってもらう」

 

「またなんでそんなとこに?」

 

「なんか知らねぇけど魔獣が出るって木こりの爺さんから」

 

「そうか。なら行こう」

 

 数件の仕事を終え、昼食を食べているとおっさんが次の仕事を渡してくる。ここからオリングラ森林までは約1時間15分程。近くはないが遠くもない微妙な距離。だが、それよりも彼らには気になる事があるようだ。

 

「「おっさん、髭は?」」

 

「偶には良いだろ?そこそこ時間かかったぜ?」

 

「いや、俺達が剃れって言っても剃らなかったじゃんか」

 

 そう。出会った時からずっと髭を蓄えていたおっさんが髭を剃ったのだ。2人からすると衝撃の瞬間である。

 

「それはそうだが…」

 

「何かあるのか?そうでもないとあんたは剃らんだろ」

 

「………色々とゴタゴタしててな」

 

「ふーん大変だな」

 

 これから先も毎朝剃っておいて欲しいとカイトは思う。特段彼らには害などないが思っていたより彼の髭をウザく思っていたのかもしれない。

 

「そら、行った行った。俺も行かないと行けねぇ」

 

「はいはい」

 

 おっさんは彼らを急かし、自身も時間がなかったのかそそくさと裏口の方へ走っていった。彼が扉を閉めた瞬間ちょうど昼を食べ終わった彼らはオリングラ森林へ向かう支度を始める。

 

「久しぶりだなオリングラ森林行くの」

 

「まず行ったことあるか?」

 

「あるだろ。昔お前の親父さんに連れられて」

 

「いつだ?メガロも居たのか?」

 

「いたぞ。確か5、6歳の頃だ。武器素材の手伝いをしたんだよ」

 

「…なんでお前が覚えてんだよ。俺が覚えとかなきゃ駄目な事だろ…」

 

「まぁ、10年ぐらい前だし忘れてもしょうがない」

 

 記憶とは非常なものである。いくら覚えていようとしてもいつかは忘れてしまうのだ。カイトは親や故郷の記憶が薄れてしまうのが怖い。

 故郷を失ってから2年と数ヶ月。まだあの時の記憶は強く刻まれている。あの記憶は死ぬまで忘れることはないかもしれない。

 

   

 

 

「ここか」

 

 指定されていた場所に着くと、こじんまりとした綺麗な小屋があった。玄関の前には小柄な白髪の老人がいた。さらに、目を引いたのは老人が仮面を付けていたことだ。身体つきはがっしりとしていて魔獣が現れても問題なく倒せそうに見える。

 

「良く来たね。立ち話はなんだ。部屋に入りなさい」

 

「「はい」」

 

 老人の家に入ると妙に小綺麗で生活感の無い部屋だった。唯一生活感があるのは後ろにあるキッチンに、作りかけの料理があることだ。

 

「私はずーっとここで木こりをしていてね…。ここ最近は魔獣が多くてな。仕事なんてできやしない」

 

 老人が言うにはここ最近数体の魔獣が森林内をうろついており木こりの仕事すら出来ないと。これは由々しき問題だ。すぐに解決しなければならない。けれどきっと本来俺達以外に頼むべきなのだ。

 

「なんで《WALL》に頼まなかったんですか?」

 

「………まぁ色々とあって頼めない。だから君たちに頼みたい」

 

「…分かりました。仕事受けさせて貰います」

 

「ありがとう」

 

 《WALL》は中央政府魔獣対策組織である。本来魔獣狩りは《WALL》に所属している者が行うべき仕事だ。カイトやメガロ達がやっていることは政府無許可での魔獣狩り。

 無論犯罪であるが、訓練を行う期間が長いのと殉職する確率が高いプラス他の犯罪の対処などがあるため万年人手不足の組織なのだ。

 

「WALLに頼れない事情、か」

 

「もしかしたら俺達と同じなのかもな」

 

 あの老人は自分達と同じで犯罪に手を染めていてWALLを頼れないのではとメガロは考察する。実際はどうなのかまだ分からない。

 

「あんまり魔獣の気配はしないな」

 

「確かに。数体がうろついていたならもっとしていいよな」

 

 数分程、森林内で歩き回るが魔獣の気配が全くしない。老人の言う通り魔獣が数体もいるならばもっと気配がしてもおかしくないはず。

 

「……お、少しだけしたな」 

 

「いるのか?どっちだ」

 

「そっち。行くか」

 

 カイトは魔獣の気配を感じやすい体質らすく魔獣探しをする時はかなり便利だ。ただ数が多すぎると感覚が鈍ってしまう事が2年前の災害で判明した。

 

「お、いたいた」

 

「よし、やるか───」

 

 ようやく見つけた魔獣を倒そうとメガロが攻撃を開始した瞬間、その魔獣は《朱》い何かに吹き飛ばされた。それはボールのようなものだったかもしれないし槍のようなものかもしれない。

 

「は、?」

 

 あまりにも突然の出来事だった。ずっと同じ日常が続くと思っていたのは間違いだったのだ。そんな事はあるわけがないと知っていたはずなのに、今を過ごす内に平穏が、日常が変わらないと思ってしまっていた。

 

「カイト・ミラエル!メガロ・フレーニア!お前達を無許可で魔獣を討伐した罪で拘束する!」

 

───この言葉は彼らの今までの日常を壊すに十分だった。

 

────物語が、動き始める。

 

 

   第1話 邂逅

 

 

 




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