マテリアル・ツインズ 《Material・Twins》   作:グラタン二世

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Episode.13

 

───ミナミのクニ、WALL本部司令室。

 

「「失礼します」」

 

 ヒガシのクニでの仕事を終え、ミナミのクニへと戻って来たカイトとメガロは今回の事の顛末を司令に報告するために司令室まで来ていた。

       

「ん。お前らか」

 

「司令は…あ、今はキタのクニへ行って…」

 

「あぁ。だから副司令である私が今は指揮を執っている」

 

 扉を開けるとそこに居たのはWALL司令・トーマスではなく、副司令・カレイドだった。顔を見るまでカイト達は司令らがキタのクニへと出張している事を忘れいたので反応が少し遅れてしまったのだ。 

  

「それで、今回の報告は?」

 

「それは───」

 

 カイト達が出来事を話し終えると、カレイドは大きく溜息を吐いてゆっくりと何でこんな事になっているのかという風な顔で話し出す。

 

「そのデカい魔獣とやらもおそらく彼ら(魔人)の能力で作り出されたものだろう」

 

「やはり、そうでしょうか」

 

「ここまで活発に動き出すとは思わなかった」

 

「これから魔人との遭遇が増える可能性が…」

 

「大いにある。もう1度上と掛け合ってみなければ」

 

「俺達はどうすれば──」

 

「お前たちは疲れたろ。少しの間、休暇を渡しておく。しっかり休め」

 

「「了解」」

 

 カレイドが話し終えると、カイトらは司令室を後にする。彼らは腕があるだけで、まだまだ組織の行動には慣れていない。そう多くの仕事を渡すのも可哀想だ。そう思っての少しばかりの休暇をカレイドは上げた。

 彼らは有望な株。これからもどんどん成長していき最終的には隊長などを任されるかもしれない。そんな大きな株をここで潰す訳にはいかないのだ。

 

「さて、あちらの進捗はどうだろうか」

 

 深く腰掛けていた椅子からすっと立ち上がり、司令室を出る。彼がよく通う場所は1つしかない。副司令という立場で無ければここにずっと居たいぐらいなのだから。

 

「よぉ。どうだ?」

 

「副司令。今の所は順調です」

 

 彼が訪れた場所は、WALL所有の武器を多数製作する──通称、【開発室】。カレイドは元々此処で働いていた。だが10年近く前、現在の司令トーマスに能力を買われ副司令になったのだ。

 

()()は後どれぐらいかかる?」

 

「短くて、1週間。長くて1ヶ月です」

 

「もう少し短縮できるか?」

 

「……全力でやってますよ?」

 

「これ以上にだ。司令も後数日で帰ってくる」

 

 カレイドと問答していた黒髪ロングで眼鏡をかけている女性、リズナ・グレイは結構な無茶振りを受け、苦笑しながら話す。

 

「アタシの開発してる方も大詰めなんですよ」

 

「そっちは私も手伝おう。今はこちら側を頼む」

 

「…何か、あるんですか?」

 

「詳細は話せないが、ある。だから頼む」

 

「分かりました。今度、奢ってくださいよ」

 

「それぐらいなら何時でもやるさ」

 

「っと。そろそろ戻る」

 

「はい」

 

 そう言って副司令は開発室を出る。結局数分程度しか居なかったが、彼の言葉を聞いてやるべきことができた、と眼鏡を拭いてもう1度、気を引き締めた。

 

「気合入れないと」

 

 彼女──リズナ・グレイは元々、戦闘員志望だった。けれども彼女に戦闘の才なんて有りもしなかった。幽力の扱い方も並程度。いや、それよりも低い。もし、自分に力があったならと何度でも思った。

 しかし、彼女の才能は戦闘では無い所で発揮される。それは武器の開発。彼女は観察眼があった。技術もあった。そして────とても器用だった。

 

「よし」

 

 彼女は復讐を諦めた訳ではない。自分が戦えないからこそ、自身が作った武器で誰かが復讐を果たすしかない。それで満たされるのかと、いや、満たされやしない。けれどこれは魔獣を殺せない、戦えない彼女のささやかで儚い反抗なのだ。

 

    

───17年間、1度もこの火は消えていない。

 

 

         

 

 

「ようやく、会えたな。カイト・ミラエル。ついでにメガロ・フレーニア」

 

「あんたは…」

 

「私はソルト・ベリナール」

 

「なっ…」

 

 司令室から出て部屋へ戻ろうとしていた時、突如彼らは呼び止められた。彼の声は嬉しそうな声色をしていた。

 

「どうして…ここに…」

 

「どうして、か。普通に君に会いに来ただけだよ」

 

「何で、俺達を狙ったんだ!」

 

「……これから世界は動き出す。それの礎だ。君ら2人はね」

 

 彼は一体何を言っているのか。まだ理解ができない。これから起きることは分からない。何故、知っているように話すのか。

 

「どういう事だ」

 

「既に奴らは動き出している。私達は永遠に後手後手だ。我々が出来る事は戦うことだけ」

 

「奴ら…魔人か?」

 

「そうだ。奴らは何をしでかすか分からない」

 

「……対策はできないのか」

 

「さぁな。私達が目指すのは最高の未来。それを追いかけていくだけだ」

 

 何なんだこいつ。一応WALL本部隊長のはず。言葉が不可解にも程がある。

 

「話は終わりだ。次はお前の番だぞ。フェル」

 

「なんだ、気付いてたのか」

 

 フェルはいつから居たのか、カイト達は全く気付かなかったが、ソルトは当たり前のように気付いていた。これが、差なのだろうか。

 

「こいつらに話すことあるからお前は早く去ね」

 

「言われなくとも。私は日程を組みに来ただけだからな」

 

 ソルトはそう言うと司令室へ向かって行った。代わりに現れたフェルはようやく邪魔者がいなくなったとばかりに話し出す。

 

「君たち、休暇を貰ったんだろ?なら良い場所を知ってるから教えようと思ってね」

 

「へぇー。何処すかそれ」

 

「興味無さそうだな?まぁ言うけど」

 

 正直、休暇を貰った時は返却したくなったが、雰囲気的に言えるものではなかった。今からでも休暇は返却しようか、とカイトとメガロは考える。もう無理だろうが。

 

「そこは温泉地だ。そして武器の完璧な手入れも出来るだろう」

 

 ピクッと2人の身体が動く。温泉地という言葉だけで行く価値が多分にある。ついでに武器も綺麗にしてくれるのなら行かない手が無い。興味なんて無かったのに急に興味がガンガン湧いてきたぞ。

 

「どうだ。行きたくなったろ」

 

「えぇ。とても」

 

「同じく」

  

「で、場所はニシのクニ。工業地区マガザリアだ」

 

 ニシのクニ。工業と農業が最も盛んなクニ。国土はミナミのクニに次いで広大である。最大の特徴は巨大な火山。イフェスティオ活火山が存在することだ。

 その活火山を中心に2分されたクニであり、上側は工業、下側は農業中心で行われている。どちらの地区も仲が良く、対立は起きていない。

 

「明日の朝から出発する。準備しとけ。迎えに行く」

 

「おっけーっす」

 

「了解」

 

「じゃ。これを伝えに来ただけだから仕事してくる」

 

 そそくさとフェルは帰っていった。カイト達が休暇を取る事をあらかじめ知っていたのだろう。そうでもないとこんな風に2人の所に来ない。

 

「よし、帰るか」

  

 今は、2人しか使っていない部屋へと向かう。フラスとホムラは今頃何をしているだろうか。もちろん仕事をしているんだろうが、詳細までは聞かされていない。

 キタのクニ、WALL第1支部。そう大事は起きないだろう。無事に戻って来る事を祈る。

 

 

         

 

 

生活感の溢れるリビング。3人が集まって話をしている様子だ。それもとても深刻な話のように聞こえる。

 

「やっと動けるんだ」

 

「ここ最近は代償も抑えめだからな。今回は仕事を任せる」

 

「やった。ようやく戦える!」

 

「くれぐれも無茶はするな。ただでさえ───」

 

「もちろん。頑張るよ」

 

 そう答えると小柄な少女、レヴィは自身の部屋へと向かう。そして、その小柄な身体には似合わない巨大な剣を携えて言う。

 

「みんなズルかった。みんなだけアモンに仕事任されて、動いて。わたしだけ何も出来てなかった!」

 

「それは、その剣の力を──」

 

「もう大丈夫だよ。わたしは子どもじゃない」

 

「しかし…本当に良いのかアモン!」

 

「……レヴィだけに辛い思いはさせたくない」

 

 ……どこまで彼は仲間の事を思っているのか。昔と比べての成長に老人は少しだけ、アモンを見る目を変える。

 

「いつからやるの?」

 

「あぁ。既に道順は決まった。決行は明日だよ。それまでは英気を養ってくれ」

 

「わかった」

 

 アモンの言葉を聞くとすぐにレヴィはもう1度自分の部屋に戻る。他のメンバーは、自分の出番が少しぐらいしか無いだろうと思っているのでとてもリラックスしているように見える。

 

 マキナはソファに寝っ転がりながら雑誌を見ていて、エルとベルは2人で楽しそうにボードゲームをしている。すぐ近くでは真面目な話をしている中で、良くもここまでリラックス出来るものだ。  

 レヴィもこいつらと同じくらい適当に生きて、リラックスして欲しいとアモンは思っているが、彼女の生来の性質だから中々に難しい。

 

 

「これも、俺達の為か」

 

 

 

 

「やっと、みんなの役に立てる!」

 

 小柄な少女はみんなの為に、己を使う。

 けれど、少女はみんなをズルいと思う。

 

 

     

第13話 羨望

 

 

 

 

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