マテリアル・ツインズ 《Material・Twins》   作:グラタン二世

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Episode.3

 

───

─────

 

 なんだ、これ。とても鮮明な何かだ。 でも見たことがある人がいるし聞いたことのある声もする。

 

「早く、逃げろカイト!メガロ!」

 

「でも!」

 

「でもじゃない!逃げろ!」

 

「親父…!」

 

「カイト…!メガロ…!お前たちだけでも良い!」

 

 あぁ、なんだあの時の記憶か。なんで今、思い出す。 夢なのだろうか。

 

「これ、持っていけ。きっと役立つ」

 

「これは…」

 

「お前たちがいつか使うと思ってな。作っといた」

 

 父の手から渡されたのは俺達が今・使っている武器。 父が最後に作った剣《輝彩》と銃《グロブスプルプレウス》。

  いつからこんな上質なモノを作っていたのだろう。俺達は何もできないまま武器を手渡される。

 

「じゃあな」

 

 親父が別れの言葉を言った後、すぐに目の前が炎に包まれる。そこから数時間の記憶は無い。気付いた時には故郷であるミリナグ村からかなり離れた丘にいた。

 

 

────ずっと後悔してるんだ。あの時俺達に力があればって。どうにか村のみんなを助けれたんじゃないのか。 何もせず、何もできなかった。戦う勇気なんてなく逃げただけ。

 

 

  全員見捨てた。親ですら助けれなかった。 なんて自分は臆病なのか。なんてクソ野郎なんだ。死ぬのが怖かったなんて言い訳だ。

 

 

 あぁ、俺なんて─── 俺なんて産まれるべきじゃなかった。

 

 

 

「……ここは…?」

 

 目を開くとどう見ても森林ではない鉄格子のある部屋に閉じ込められていたカイトは思わず呟く。

 

「牢屋だろうな」

 

「メガロ…俺はどれぐらい寝てた?」

 

「分かんねぇよ。俺もさっき起きたところだ」

 

  横を見るとメガロはカイトと同じように手を鎖で繋がれていた。ここからはどう足掻いても出られなさうだ。幽力を使えば良いと思われるかもしれないが、手をしっかり伸ばしてからでないと調整ができずに能力が暴発する可能性があるので迂闊には使えない。逃げる方法を考えていると扉がゆっくり開いた。

 

「よぉ起きたか」

 

「お前ら…」

 

  現れたのはつい先程戦闘したフラス達。フラスは戦闘中ではないからか髪も結んでいないし武器も持っていない。ホムラは戦った時と何1つ変わってなそうだ。

 

「ここはどこなんだ?」

 

「WALL本部だ。とりあえず話をするために連れてきた」

  

  戦闘した時と同じく質問すればすぐに返答が来る。思ったよりも素直な奴なのではないかとカイトは思う。

 

「じゃあ先に質問を」

 

「なんだ」

 

 ぶっきらぼうにフラスは答える。ずっと同じような態度なので多分これが素なのだろう。

 

「あれからどれぐらい経った?」

 

「戦闘からか?ホムラどれぐらいだ?」

 

「あ?えーっと多分3時間ぐらいだろ」

 

「3時間か…」

 

  割と長い間意識が無かったんだなとホムラは感じた。起きてから数分程度でカイトも目覚めたので大体同じ瞬間に倒されたらしい。

 

「次の質問だ。何故ここに俺達連れてきた。お前らの狙いはなんだ」

 

「それを俺たちは話しに来た。今から言おう」

 

 今回はただ単なる犯罪者を裁く動きではないとカイトは感じていた。あまりにもピンポイントに自分達を捕まえようとする動きは大層な理由があると推測した。

 

「今回、お前たちを捕まえた理由は上司からの通達だ」

 

「上司?」

 

「ソルト・ベリナール。WALL本部隊長だ」

 

「それでそいつからの通達は?」

 

「お前たちをWALLに加入させろ、だ」

 

「「は?」」

 

 は?あ?え?

 

「なんて?もっかい頼む」

 

「お前らをWALLに加入させる」

 

「「は?」」

 

  意味は分かるが理解ができない。俺達は名目上だと犯罪者なのだが。自分達をWALLに加入させるなど何の意味があるのだろう。

 

「り、理由は?」

 

「さぁ。俺たちも良く分からない」

 

「お前達は上司の命令で何も知らされず動いただけか」

 

「その通りだ。理由など知らない」

 

フラス達ですらカイトらを捕まえる理由を知らない。ただ単にソルト・ベリナールの命令を遂行しただけ。

 

「今回の黒幕はソルト・ベリナール。そうだな」

 

「お前らにとってはそうなる」

 

「もし、俺達が入らないと言えばどうなる」

 

  WALLに入る理由なんてないが、断ったらカイト達はおそらく無許可での魔獣狩りということで裁かれるだけだろう。  

 

「お前達は入らざるを得ない」

 

「何故、そう言い切れる」

 

「お前達の仲間──あの団体のメンバー全員を国家転覆の罪で処刑する」

 

「あ?」

 

「お前達がWALLに入らなければ、だ」

 

 なんて非道い事をしようとしているのかと、2人は思う。もし自分達がWALLに入らなければ関わった事のある数十人がこの世から消えてしまう。その可能性があるだけで2人はもう覚悟を決めるしかない。

 

「どうする?お前ら入るのか?入らないのか?」

 

……見捨てる事だって出来た。出来たが彼らの良心は残っていたのだ。いくら少しだけしか関わりが無かったとしても彼らは仲間である。2年、いや3年近く話してきた相手もいる。

 

「「俺達はWALLに入る」」

 

「そうか。これからはよろしく頼むよ」

 

  結論。カイトとメガロはWALLに入るしかなかった。彼らは 仲間達を見捨てることなど不可能だったのだ。このような展開になった時点で未来は決まっていたのかもしれない。

 

「諸々の手続きを済まして明日の朝にもう1度来る」

 

「お前らの武器は預かってるからな。明日返す」

 

「はいはい。さっさと行けよ」

 

  メガロそう言うとフラス達は帰っていた。すると、牢屋は静寂に包まれる。数分の静寂を破ったのはカイトだった。

 

「明日から、どうするか」  

 

「さぁな。WALLに入ると生活も変わるだろうしな…」

 

「めんどくさい状況だな」

 

 入らないで良いならWALLになんぞ入りたくはない。この後も数十分程愚痴を言っていると不意に扉が開く。フラス達が何か忘れたのかと振り向くと居たのは仮面の男だった。

 

「カイトくんとメガロくんだね」

 

「誰だ?」

 

「僕だよ。オリングラ森林での仕事を依頼した老人だ」

 

「……?…あ、」

 

「あの時は騙して悪かった。カツラ被ってたんだよ」

 

「え、じゃああの時の仕事は全部──」

 

 カイト達はようやく気付いた。オリングラ森林での仕事は全部嘘で、WALL側が仕組んだ物だったのだと。思わず顔が固まる。ここまで仕組んだ理由は何なのか。自分達にそこまでするのは何なのか。彼らの頭はそれでいっぱいだ。

 

「君らWALL入るんだろ?今度一緒に仕事しような!」

 

「あ、はい…」

 

  適当に返事をすると満足したのか仮面の男はすぐに帰っていった。こいつが来た意味は何だったのかと頭を抱える。

 

「……寝るか」

 

「そうだな…」

 

考えるのが面倒くさくなってきた2人はとりあえず寝ることを決めた。そこまで眠くはないが考えるのを放棄した方が良いだろうと判断したのだ。

 

 

「……今、何時なんだ」

 

「分からん」

 

 ひと眠りして起きると、割と身体はスッキリしていた。しかしこの牢には時計など無いため朝になっているかは分からない。というかいつ寝たのかも分からない。

 

「早起きだな」

 

「何時だよ。牢屋にも時計を付けてくれ」

 

「今は7時だ。ちょうど起こしに来た」  

 

「……もう出れるのか?」

 

  起きた直後、フラス達が入ってきて牢屋の鍵を開ける。 数日程居ないと駄目と思っていたカイト達は早い出所に驚くを隠せない。

 

「あぁ。お前らにはしてもらう事があるんでな」

 

「してもらうこと?」

 

「戦闘訓練だ」

 

 カイト達はホムラに武器を返されながら話を聞く。

 

「WALLの規定により戦闘訓練は受けてもらう。もちろん拒否権はないぞ」

 

「はっ!そんなもん求めてねぇよ。やるけど」

 

 割と普通の内容だった。訓練自体は彼らにとっては楽である。もっと過酷な物をお出しされるかと思っていた2人は少しだけ安堵した。

 

「今から始める。着いて来い」

 

「了解」

 

「ちなみに敬語はいらねぇぞ」

 

「はいはい」

 

 久しぶり(と言っても数十時間振りだが)の外は気持のち良い空で太陽もとても明るい。絶好の訓練日和だろう。彼らのWALLでの生活が始まる。

 

 

「ソルトさん!」

 

「なんだ」

 

  WALL本部内の廊下にて。ソルトと名を呼ばれた男は薄い水色の髪を揺らす。その男は仕事と一筋というような風貌で縁が黒いメガネをかけている。

 服もしっかりと整っていて社会人の手本として扱っても良いレベルの雰囲気だ。

 

「次の仕事です。目を通しといてください」

 

「分かった」

 

 会話は最低限。直属の部下にはそう強く言い聞かせている。その書類を渡した部下はすぐに走り出し他の部屋に向かう。忙しい中、これを渡しに来るという事はかなり重要な書類らしい。

 

「……ロゼッタ。見つけたか」

 

 その紙にあったものは独り言を呟くに値するものだった。ようやく、長い間探していたモノが発見されたらしい。

 

「さぁ、最高の未来のために──」

 

  資料を貰った後は早歩きでその場を去る。

 

 

───彼が視るモノは最高の未来。

 

 

第3話 始動

 

 

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