マテリアル・ツインズ 《Material・Twins》   作:グラタン二世

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Episode.8

 

「…で、新しい仕事の話なんだが」

 

「はいはい」

 

 つい数時間前に仕事は終えたばかりだがもう新しく仕事があるのはWALLという組織があまりにブラックなんじゃないかとカイトは思い始めた。フラス達は碌に休めずだったし。

 

「次の仕事はミナミのクニじゃない」 

 

「そうなのか?」

 

「場所はヒガシのクニ、グラウン村だ」

 

 ヒガシのクニは1番人口が多いクニだ。4つのクニの中ではそこまで国土が広くないが1番発展している人口密集地。交通等も馬車の止まる場所が多く便利である。しかし人が多い故に犯罪も多い。ヒガシのクニ中央は人が多いが、それ以外だとかなり人口が減ってしまうのも特徴だろう。

 

「WALLって支部ないのか?俺らが行く必要は?」

 

「あるさ。第3支部までな。ヒガシのクニには第2支部がある」

 

 WALLにはキタのクニに第1支部。ニシのクニには第3支部があり、通常はそのクニを守っている。

 

「そっちに任せれば良いんじゃないか?」

 

「あちらも人員が足りていないらしい。今回は割と大きな事件らしくてな。本部の助けが欲しいそうだ」

 

「俺達が行くと足手まといにならないか?」

 

「そこまでの仕事……ではあるかもな…」

 

 そこまでの仕事なのかよ。なおさらカイト達は行くのが憚られる。力が全く無いとは言えないが、実力は不足しているし、失敗が問題になるのなら俺達を呼ばない方が良い。

 

「本当は俺たちが呼ばれているんだが別件が出てきてな。代理としてお前らに頼みたい」

 

「その別件は断れないやつなのか?」

 

「司令に同行して第1支部に行かないと駄目らしい」

 

「なんか大変そうだな」

 

 こいつら仕事が多すぎる。休みの日なんてほぼ取れてないんじゃないか?と、カイトは嫌そうな顔をして「うげー」と声を出す。

 

「で?受けてくれるのか。嫌なら他の奴に渡す」

 

「まぁ、絶対に実力不足だけど受けるよ」

 

「そうか。助かる」

 

 一応仕事であるし、WALLの仕事だから魔獣絡みだろうからそう頻繁に魔人?とやらと関わる事は無いだろう。自分達がやりたいことは魔獣の討伐なんだよ!と2人は声には出さないが心で叫ぶ。

 

「てか、俺達2人だけで仕事すんのか?多分無理だぞ」

 

「心配するな。あちらは第2支部のエースが派遣されている」

 

「……じゃあ俺達要らなくね?」

 

「あちらから要望されたんだ。増援として2人はいると」

「というかWALLの人達って大体2人1組じゃね?」

 

「今更か?相方(バディ)制度だよ。設立当初からある制度らしいぞ?」

 

「へぇ〜」

 

 相方制度はWALLが設立された当初から存在する制度である。1人で戦うよりも2人の方が効率的に仕事が回せる事からという理由で、初代WALL司令がこれを決めた。実際これがある事によって円滑になったのだ。

 

 

「相方制度の方が役割も分担できるし、楽だ。考えた人には拍手をしたい」 

 

 ホムラはこれをとても良く思っているらしい。こう思っているのも、もしこの制度が無ければフラスと出会えなかったからだろう。

 

「まぁ、たまにこの制度が無駄に見えるような1人の方が強い例外もいるんだよな」 

 

「あいつ相方制度使ってたろ。というか特例で3人1組じゃなかったか」

 

「そうだっけか?まぁ、良いわ」

 

 名前は出てなかったが何となく誰の話をしているかメガロは分かった。おそらくだけどフェルの話だろう。彼は確かにWALLの最高戦力なのだが、人との距離感がおかしくなっている事が多いのでウザがられてしまうのだ。

 

「あ、合流は明後日の朝だぞ。一度第2支部まで行けよ」

 

「りょうかーい」

 

「明日の昼頃には出ないと間に合わないからな?気をつけろよ」

 

「おけーい」

 

 ヒガシのクニまで割と時間かかる。クニからクニまでの間が長いのだ。ミナミのクニは特に国土が広いので他のクニに向かうのだけでも一苦労なのだ。移動手段は馬車が多いが、特別貴族のような身分の高い者はワープポータルなども使えるようだ。

 

 

「お前らは先に寝とけ。俺たちは風呂行く。おやすみ」

 

「おやすみ」

 

 

 

そして夜は明け朝になる

 

 

 

 

 

 おはようございます!素晴らしい朝ですね!

 

 起床時間がWALLに入ってから1人だけ遅くなっている。メガロはあまり変わってないけれどカイトは睡眠時間がさらに長くなった。部屋を見渡すとフラス達は既にキタのクニに向かった。

 キタのクニ第1支部では1週間程護衛の任務に当たるとのこと。護衛対象はネオ教の幹部。カイト達は宗教など分からないのでそのような仕事を任されたくない。

 

 さて、諸々準備をしているといつの間にか馬車の出発時間ギリギリになっていて、急いで厩舎へ向かう。すると既に準備ができていたのか、運転手が待ってくれている。

 

「すいません!遅れました!」

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

「早速、ヒガシのクニまで頼みます」

 

「はい」

 

 WALLは数十人の専用馬車の運転手を確保しているので、移動に困る事はあまり無い。余程の事件が起こればポータルの方が使われるので馬車は平常時に使用されるのだ。

 

「出発します」

 

 こうしてヒガシのクニへ出発した。着くのはおそらく明日の朝、7時頃。集合時間は9時ぐらいだったので割と余裕がある。運転手さんに今回の詳細を聞くと途中で2回程乗り換えるため安眠は出来ない。

 

「暇だ」

 

「2人きりだと毎回言ってる気がする」

 

「実際暇だしな…話すにしても特に話すことはないし…」

「寝れば良いんじゃないか」

 

「今寝たら夜寝れないだろ」

 

「それもそうなんだが、夜中に1回馬車変えるんだぞ?安眠はできない」

 

「まずまず馬車で寝るはキツイよ。揺れるだろうしな」

 

 馬車の中で安眠は約束されない。これはもう慣れるしかないのだ。カイト達はまだまだ馬車に乗り慣れていないのでこうなるが他の職員はもう何百回と乗っているので気にしていない。

 

 

「早く明日になってくれ…」

 

 そんな声は馬車の走る音でメガロには聞こえなかった。

 

 

   

 

 

 おはようございます…。少し眠いですが元気です。

 

 

 予定よりは1時間程遅れてヒガシのクニに着いた。馬車を降りてから初めてのヒガシのクニの感想は「都会だ…」だった。ミナミのクニなんか屁でも無く本当に都会なのだ。立派に建物が立ち並び、人の流れも多い。活気に溢れているようなクニだった。

 

 その中でも一際目立つのは中心部にあるそこらのよりも豪華で大きな建物。あそこでヒガシのクニの政治は行われ、WALL第2支部も含まれている。そこに行く前に風呂場へ行きたかったが時間が無いので2人は断念。こっちの風呂も味わっておきたかったのが総意だった。

 

 

 集合時間20分前。カイト達は第2支部の前まで来ていた。合流地点は第2支部の前だと聞いているので多分ここで問題ないだろう。と、ボーっとその場に立つ。

 

「まだいないな。待つか」

 

「少し早かったか?」

 

「そんなこともないだろ」

 

 早く来るのに越したことはない。もし遅れたら何言われるか分からないのだから。もし、時間に厳しいタイプだったら本当に怖いし、初対面の人に会うのに遅刻するのは失礼極まりない。

 そんなことを思いながら待つこと数分。奥から人影が見えた。1人はかなり無造作に跳ねている黒髪、もう1人は綺麗に整えられた白髪だ。

 

「…よぉ、新入り。早いじゃねえかァ…!」

 

「あ、ありがとうございます…?」

 

「敬語はいらねぇ。集合時間より早く来ていて偉ぇぞ…!」

 

「は、はぁ…」

 

 

 なんかよく分からないが褒められた。無造作な黒髪の青年は雰囲気通りの、しかし、思ったよりドスの効いた声。人によっては声だけで泣いてるかもしれない。それはそれとして返答に困る。

 

「ちょっと、ライチ。初対面でそんな高圧的だと怖がられるでしょうが」

 

「あ、あぁ…。すまんお前らァ…!」

 

「い、いえ」

 

 何故か謝られてしまった。どういう訳か申し訳なくなってきた。2人は心で謝っているともう1人の方…白髪の男性から話しかけられた。

 

「いきなりだけど!で!で!君たち2人に質問!」

 

「な、なんです?」

 

 ここでちゃんと質問に答えないと好感度が変わるかもしれない。どんな質問が来ても答えよう。さぁ、来い。2人は意気込みながら質問を待つ。その質問が素っ頓狂なモノとは知らずに。

 

「今日もオレはカッコいいか!?」

 

「………………………は??」

 

 ???????????????????????????????????????????????

 

そして、2人の脳内は?が支配した。

 

 

  

 ◇

 

 

 

───空間が歪み、男女2人が現れる。その場には湖があり、近くにはかなり大きな洞窟もある。

 

「さてさて仕事終わらせましょうか」

 

「なんで俺のこと呼んだんだよ」

 

「そりゃ今回便利だからに決まってんでしょ」 

 

 彼らは武器という武器は持ってなさそうに見える。しかし仕事があるということは、何かしらをここでするつもりだろう。

 

「あ、私はそこに最後しか行かないから準備しといて」

 

「は?作戦あるなら早く伝えとけ!」

 

「しょうがないな〜」

 

「しょうがないな〜じゃねえよボケ!」

 

 とても仲が良さそうだ。彼らなら多分大丈夫という集団こリーダーアモンの判断は間違ってなさそうに見える。老人の方は少しだけ不安視していたのだが、彼らの実力は疑っていないので結局は問題ないと判断した。

 

「……お前マジでやんの?それ」

 

「もちろん!おじいちゃんさんが言うにはデカい組織があるんでしょ?最近はこの作戦するために流してもらってたし」

 

「…それはすごいけど作戦あるなら俺にも言っとけ!!」

 

「はいはいごめんごめん」

 

 そんな話をしながら彼らは目的地に辿りつく。この間に女性の方──マキナは作戦を男性に伝えたらしい。

 

「じゃ、あと頼んだよ?」

 

「はぁ〜連絡は取れるようにしとけよ」

 

「分かってるよ〜」

 

彼女は兎が描かれたマントを翻しながら走っていった。 そこに残った男性は洞窟の方へ向かい、仕事の準備に取り掛かる。

 

「さて、どうだったかな。コレをそこに置いとくだけだったかな」

 

 WALLが、政府が、知らない間に段々と始まっていたのだ。

 

──これに彼らが気付いた時、ナイフは既に喉元にある。

 

 

      

  第8話 黒白

 

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