マテリアル・ツインズ 《Material・Twins》 作:グラタン二世
前回のあらすじ。カイト達はヒガシのクニに着き、今回の仕事仲間と出会う。初対面で訳の分からない質問をされ、必死に頭を回し言葉を探しているところである。なお、出てきた言葉は普通すぎるものだった。
「か、カッコいいです…」
「そうか!そうか!どの辺がだ!?どうカッコいい!?」
「ぜ、全部です!」
「そうか!分かってんね!新人!最高!」
「そ、そうすっか…」
テンション感が分からない2人はしどろもどろな回答をするしかなかったが、期待に添えたようでホッと安堵する。
「すごく気遣わせてんじゃねぇか…!謝っとけ…!」
「あ、ごめんごめん。自分がカッコいいことを確認しときたくてね」
俺達こんな良く分からない人達と仕事するの…?しなくちゃいけないの…?本当にWALLの人達なの?2人は怖くなってきた。もう戻ることなどできないが。
「と、自己紹介がまだだったな。俺はライチ・トールス。WALL第2支部所属だ。よろしくなァ…!」
「よろしくです」
先に自己紹介したのは黒髪が無造作に跳ねていて高身長の男性。目の色が黄色なのでとても目立つ。今の一瞬の印象だが割と常識人に見える。多分少し高圧的なだけなのだろう。
「あ、オレはヒョウ・セレーク!ライチと同じく第2支部所属だ!あと世界で1番カッコいい!よろしく!」
「よ、よろしくです…」
次は白髪で青色の目。髪が異様に綺麗で目を惹く。彼が言っている通り本当に風貌がカッコいい。 かなりスラッとしていて身長も高い。
彼が世界で1番カッコいいと自称するのも納得する綺麗さだ。だけどこのテンション感でずっと来られると返答には困る。本当に困るのだ。
「お前らの名前はフラス達に聞いてるぞ」
「頑張ってるらしいじゃん!カッコいいぜ?」
「それはそれとして今さっきも言ったけど敬語はいらねぇぞ。さぁ、外せやァ」
やっぱり黒髪の──ライチの方は少し高圧的だな。とりあえず敬語は外してみる2人。高圧的なだけで多分優しい人なんだろうという事は分かっている。
「じゃあ敬語外す」
「カイトに同じく」
「よし。じゃあ仕事の詳細話すぞ」
ようやく仕事の詳細を話してくれるらしい。
「今回はグラウン村での魔獣発生問題だ。近場の湖でよく魔獣が発見されているらしい。幸いにも未だに村へ襲ってきてはいないが時間の問題だ。それを何とかするためにグラウン村に今から向かうぞァ」
「りょうかーい!」
「「了解」」
魔獣発生が起きているのに魔獣が村を襲ってないのは、珍しいことである。純粋に村内に強い人でもいるか、あるいはWALL第2支部の誰かが常駐しているか。
「じゃあ行くぞ…!」
「おー!」
ヒガシのクニ中心部から約1時間程度。4人はグラウン村近くの湖──ティベリアス湖に到着した。今回は先に問題である湖を見に行く。
それが終わったら村の方へ向かい依頼者と諸々話す。その時カイト達は必要ないのでグラウン村を周りを散策すれば良いとのこと。
「ここがティベリアス湖か」
「中々に綺麗じゃん?オレには及ばないけどな!」
「はいはい。黙って見とけ」
その湖は綺麗ではあるが周りの雑草の生え方などを見ると手入れはあまりされていないように見える。総合的には美しい湖だが少し物足りないような場所だ。
「アレは…墓?」
「本当だな。1つだけ建てられてる。なんて書いてる?」
偶然ポツンと建てられている墓を見つけた。名前が書いてあるようだがとても見れる状態じゃない。
「何を書いてるか分かんねぇな…!というか汚れ多すぎるな。掃除するか?」
「いいねライチ!綺麗にしてやろうぜ!」
掃除するのはいいが…誰も掃除用具なんか持ってない。
「掃除用具は?」
「おっと、忘れてたな。ちょっと村まで行ってくるぜ!」
そう言ってヒョウは村の方へ走っていった。
───数分後
「お待たせ!貸してもらえたぞ!」
「早いな。後で貸してもらった人には感謝しにいくぞ…!」
ヒョウが持ってきたのはバケツに雑巾。湖の水を使えばまぁ何とか綺麗にできるだろう。
「しゃあ…!始めるぞ…!」
何故か突発的に始まった墓掃除。俺達は魔獣を狩りに来たはずでは…?でも、偶には掃除も良いかもな。とメガロは思いながら掃除を続けた。
「よし、綺麗だな!」
「中々良いじゃねぇか…!」
数十分で墓掃除は終了。最初に比べるとかなり綺麗になった。けれど書いてある文字は半分ほどしか分からなかった。
「プ…ス…ファ…ン…?」
「うーん読めないな。後で村の人に聞いてみるか」
この間に魔獣の気配はせず。依頼するほどなのだからかなり魔獣がいるはずだが現れなかった。この湖の周りはそこまで広くはないはずだけどな。
「魔獣もいなさそうだし村に行くか。これも返さないといけないし」
「そうだな。貸してもらった女の子に感謝しようぜ!」
今回来た村──グラウン村は今までの中で1番のどかな村だ。カイト達の故郷──ミリナグ村も中々に静かだったけど数段ほど自然が多い。村の人々もあまり歩いていないようだ。
「お、いたいた!さっきはありがとうー」
「あ、カッコいいお兄さんだ」
「ははは!そうだろカッコいいだろ!」
ヒョウは掃除用具を貸してもらった少女を見つけ話しかけた。その少年はカイトやメガロと同年代ぐらいだろうか。それにしては身長はかなり低くく、黒色の髪で純真な少女のような風貌をしている。
「そうだ、嬢ちゃん。名前は?」
「……うーんと…私はキーナ!」
「キーナか!改めて今さっきは助かったぜ!ありがとう
な!」
「どういたしまして!」
ヒョウの感謝がとても清々しい。ここまで行くとさぞ気持ち良いだろう。
「もう1つお願いあるんだけど良いか?」
「うん。いいよ」
「そこの2人にこの村教えて回ってくれないか?」
指指したのはカイトとメガロ。指指さされた彼ら2人はきょとんとしている。
「俺達はこの後村長と話さないとだから。まだこの村良く分かってない2人に教えて欲しいなって」
「うーん…。……まぁいいよ」
「よっしゃ!よろしくなキーナ。じゃあ俺達は村長の所行ってくる!行くぞライチ!」
「は?お、おい!」
ライチとヒョウは村長のいる場所へ向かって行った。残された俺達はどうすれば…。困っているとキーナに話しかけられる。
「ねぇ、教えて回っても良い?」
「お、おう」
カイトの制服の裾を引いた少女は上目遣いをして聞いてくる。正直、かわいいとカイトは思ったが、ここには仕事で来ている。仲を深めるのも良いが、深めすぎないようにしなければならない。
「先にちょっと聞きたいことあるんだけど良い?」
「何をだ?答えれる範囲なら」
「今さっき湖で何をしてたの?」
「…ここ最近魔獣が村の近くの湖で現れると聞いたから。それを倒しに来たんだ。あと何故か墓掃除」
「墓掃除…?」
「なんか湖のすぐそこに墓があってな。それがあまりに汚れていたから掃除したんだ」
「なんで、湖に近づいたの…?」
「…え?」
なんでって、そりゃ仕事だからだろ。と言おうとしたが彼女の表情を見て一瞬声が詰まった。あの湖はいったい…?
「あの湖は呪われてるのよ?」
「そう、なのか…?」
「だから村の誰も近づかない。行く方がおかしいもの」
「なんの呪いが…」
「湖に入っちゃうと2度と上がってこれないらしいわよ。この呪いは昔ここを治めていた王が乱戦で死んでしまう時に呪ったって」
「そんなことが…」
キーナの口から語られたのは湖の呪い。聞いているとこの村の中では相当タブーな話のように聞こえる。
というかあの墓が汚かったのは誰もあの湖に近づかないからで…あの読めなかった文字は治めていた王の名前…?
「もう近づいちゃ駄目だよ」
「それは……無理だ……」
「なんで?」
「俺達は魔獣を倒しに来たんだ。辞めることはできない」
「けど…」
「俺達の夢は魔獣をこの世界から消すことだ」
誰に何と言われようとこの夢は変わることはない。絶対に魔獣をこの世界から消すんだ。こんな事を言われたところで諦めるなんてことは絶対にない。
「……そっか。じゃあ頑張らないとだ」
「あぁ。まだまだ時間はかかりそうだけどな」
「……多分あなた達ならやれるよ。今さっきはごめんなさい」
「謝らないでくれ。こっちも態度悪かった。すまない」
初対面なのにあまりに悪い態度をとってしまった。余裕なさすぎだろ。馬鹿野郎が。
「……あなた達の夢応援するよ」
「「ありがとう」」
「じゃあ村回ろっか。色々教えてあげる」
この後小さな村を彼女は教えてくれた。例えば、村の特産物である果物や特殊な家の建て方。それ以外にも様々なことを教えてくれた。久しぶりに……楽しかった。
「よう、村はどうだった…!」
「キーナが色々教えてくれたから結構分かった」
「そうだな。楽しかったよ」
「…良いね!じゃあ宿入ろうか」
キーナの村解説が終わり別れたあと、村長に会いに行っていた2人と合流した。宿はそこまで大きくないが風呂もご飯も付いてくる。かなりの良心的だ。部屋も不便な所はない。
服を着替えた後、ご飯を食べにきた。肉もあるしサラダもある。とても豪勢な食事だ。普段なら食べれない。
「…そういえば湖は呪われてるとか言ってたな」
「アレは本当なのか?村長さんの方は何か言ってたのか?」
「いや?湖が呪われてる?そんな話は1度もなかったよ」
「だな。そんな怖い話があるかよ…!」
ライチやヒョウはそんな話は聞いてないと言う。キーナは何故こんな事を言ったのか。まさか嘘を吐くとは思えないし、よく分からない。
「まぁ、気にすんなよ」
「そうだ…!そんなの気にしてても意味ないぜ…!」
「それもそうだな…」
確かにそんなの気にしててもしょうがないな。嘘かどうかなんて判断などつかないのだからと思考を放棄する。
「オメェら今は飯に集中しろ…!こんなの滅多に食えないぞ…!」
「オレはカッコよく食うぞ!お前らもカッコよく食え!」
ヒョウやライチは飯に集中している。ライチの言う通りご飯に集中しないといけないな。ヒョウの言い分は……無視で良いと他の3人の意見は一致した。
「あぁ、クソッ!マキナは何してんだ!」
夜、暗い暗い奥深い場所に怒号が響く。あんなにも通信に出ろと言っておいたのに何度話しかけても返事はこなかった。諦めようとした時、ようやく通信が繋がる。無駄に明るい声色の彼女は悪びれる様子などない。
「『あ、聞こえる?』」
「『聞こえるよ!クソが!何してたんだよ!』」
「『うーんと…敵情視察?』」
「『ハァ?どうでも良いから帰ってこい!』」
作戦は伝えられていたが、敵情視察とは聞いていない。本当に何をしでかす気なのか分からない青年はまたもや怒号をあげる。だがそんなモノが通用する彼女ではない。
「『えー無理。というか明日作戦決行ね!詳細は後で話す!』」
「『あぁ!?ちょっと待てバカ!!』」
通信は途切れた。黒髪黒目で首にマフラーを巻いている青年はもう怒る気力も失せたのかその場に寝転ぶ。何度も彼女には振り回されてきたのでこうなる事は予測していたが、
そろそろ我慢の限界なのかもしれない。彼はマフラーを片手に持ちもう片方の手は──
「俺の心を癒してくれんのはお前達だけかよ…」
──近くにいた、何とも形容しがたい何かを撫でながら彼は呟いた。その何かは唸りながらも彼に優しく触れた。それは使用がもうすぐなのを理解しているのか嬉しそうな表情だった。