私たちは通りでの1件を解決し、暴れていたミレニアム生徒を保健室まで運ぶと、セミナーへ向かった。
向かう道中でそういえばイロハたちに、連絡していないことを思い出しモモトークを起動する。
起動すると気付かなかったのか、何件かの通知が来ていた。
イロハたちにC&Cで待ってて☆と送り、通知を確認する。
通知はアイリから『ボス!ミレニアムのスイーツここおすすめですよ!』との言葉と店の店舗情報、ハナコから『アイちゃん!ミレニアムのお土産、走る水晶埴輪がおすすめですよ!』との言葉と土産屋の店舗情報。
とりあえずどちらにもあとで確認してみるね!と返信を送っておく。
しかしスイーツ店はともかく、土産屋は確認する気はない。
「そういや、セミナーでちと、注意してほしいことがあるんだけどよ」
ネルが私の返信が終わったのを見計らって声を掛けてくる。
「ん?注意してほしいこと?」
「ああ。あんたも先生にはお世話になっただろ?」
「……そうね。身近な存在だったよ」
身近も身近の本人だけれど。
「あたしもすげぇ世話になったよ。だけどな…、セミナーでは先生の話は出さないで貰いてーんだ。……特に書記の前ではな」
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「おい、入んぞ」
「ネル先輩…ノックぐらいしてください」
事件はあったがセミナーの部室にたどり着くなり、ネルがノックもせず扉を開けた。
それに対し中から苦言を言われるが、ネルは聞こえないかのようにズカズカと部室に入る。
「まったく…ネル先輩今日はどうしたんです……」
ネルが訪れたことによりユウカが席を立ち迎えてくれる。
私も遅れながら中に入ると、バッチリとユウカと目が合った。
「やっほ」
「アイちゃん!?どうしてここに!?」
「あ?お前ら知り合いなのか?」
「え…ええと…」
ネルが訝し気に聞くと、ユウカは裏口入学のことは言えずに口ごもる。
「あら?ネル先輩こんにちわ。どうしたんですかユウカちゃん」
出迎えたユウカが戻ってこないため、奥からノアも現れた。
「いや…えっと…」
後ろめたさでまだ何も言えないユウカに、私は助け船を出すことにした。
「お姉ちゃんごめんね…。遊びに来ちゃった…、ダメだった…よね?」
「この子は私の妹よ。文句ある?」
しどろもどろだった彼女からうってかわって、堂々とした言葉。
「あ、はい」「そ…そうか」
気になっていたノアも、訝しんでたネルもその迫力に圧倒されそれしか言えなくなってしまった。
「遅かったわねネル」
2人がユウカに絶句してると、もう一人部室の奥から誰か現れた。
「おう。ちょっと色々あってな」
「そう。どうやら今回の事件に関係ありそうね」
現れた人物それは、世界の為に独りで行動したがため、ミレニアムから長らく姿を消していた人物。
「貴女がトリニティのからの救援ね。ネルから簡単にモモトークで送られたから知っているわ。私の名は調月リオ、ミレニアムの生徒会長…なぜそんな驚いた顔をしているのかしら…?」
私のびっくりしている顔を見て、逆に不思議そうな顔をするリオ。
びっくりするでしょ。失踪してた生徒会長が戻って来てるなんて。
「あぁ…ごめんごめん。ちょっと知り合いに似ててね?戦車とか常習的に乗ってる?」
「乗っていないわね…」
リオは何で戦車と思っていたが、すぐに切り替え話し始める。
「ではネル。早速だけど、ここまで来る間のことを教えて頂戴」
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「いえ…全然違うわ」
ネルが私と出会った時のこと、ここまで来る時のこと、出会った事件とその原因を話し終えた後のリオの一言。
「あぁっ!?何がちげぇんだよ!?」
彼女の遠慮のかけらもないぶった切りに、ネルはキレる。
そりゃそう。
「MD。Music Dragの話よ。あれは聞いた者が狂暴化するような音楽ではないわ」
貴女にも説明したはずよ、と前置きしたあとリオは私にも説明するように話し始める。
「MDは狂暴化させる音楽じゃないの。あれは聞いた音が脳に作用して人を動かす音楽なのよ。つまり狂暴化させる音楽じゃなくて、いうなれば誰かに指令を与える音楽ってことになるわ。例えば誰かを襲うって指令されたMDなら、指令通り近くの人間を襲うし、何かを壊せっていう指令のMDなら、人じゃなくて物を壊すの。だけれど今のところあまり複雑な作業は要求できないのだけれど。今のところはっていうのは(難しい話)(専門用語な話)」
「ねーお姉ちゃん。お菓子食べていー?」
「いっぱい食べていいのよアイちゃん」
「ネル先輩、この間提出された書類なのですが…」
「あ?あーわりぃ帰ったらアカネに聞いてみるわ」
「……………つまりあれは聞いた者が狂暴化するような音楽よ」
「ああ!!悪かったって!?難しい言葉が多くって!?泣かないでリオちゃん!!」
「泣いて…ないわ…」
ああ!?リオちゃんが話を聞いて貰えなくてメモロビのようになってる!?
とりあえず要約すると、
1MDは狂暴化させるというよりは、その音で脳に作用し聞いた者に指令を出すような音楽らしい。
2今回はイヤホンだったが、音楽機器や携帯、パソコンなどの精密機器から突然MDが鳴りだすこともある。それでも指令は出せる。
3指令は出せてもあまり複雑な指示は出せない。
4しかし、MDは日に日に進化して来ている。
そして、
「音楽に耐性を持つ者もいるってことね」
「ええ…そうよ。そこにいる美甘ネルも耐性を持つ者になるわ」
改めてリオの話を聞き、私はユウカの膝の上で考える。
…今日はよく膝に乗せられる日だ。
「耐性を持つ人の特徴ってあるの?」
「それはまだわからないわ。けれどC&Cの子達は全員耐性があったわ」
「なにそのラッキー?幸運すぎる」
C&Cの誰かでもMDにかかったら、被害がヤバいだろうなぁ。
「MDって突然鳴りだすんだよね?ということは電子媒体なわけだけど…。逆探知とかは?」
「それは…」
「それはあたしから説明するわ。まだMDがあんま認識されてない時に、MDにかかったやつらがデータセンターと発電所に襲撃しやがってなぁ」
「今のミレニアム自体があまり万全じゃないんです」
「そのせいでヒマリが……」
「ヒマリ先輩……」
え、なに?ヒマリに何があったの!?
「ヒマリって子に何が…?」
「あ、いえ。こちらの話なのですが、寒さに滅法弱い方がいまして…」
「丁度彼女の行動範囲の部屋が襲撃のせいで、空調類が冷房しか出なくなっちゃったのよね…」
その話を聞いて防寒着で簀巻き状態のヒマリと、生き生きしてるエイミの姿が頭に浮かぶ。
私は現在ユウカの膝に乗せられ抱っこされながら考える。
指令を与える音楽。音楽かぁ…。
「……んー。とりあえず目標はMDの発信元を突き止めることかぁ」
「そうね。発信元さえ突き止めれば、あとはC&Cに任せられるわ」
「その後はこっちに丸投げかよ!?」
「誰にだって適任があるのよネル」
「1回そのMDってやつ聞いてみたいなぁ」
「それなら解析して無害になった物がエンジニア部にあるはずだから行ってみるといいわ」
「了解。じゃ色々と捜索しながら行ってくるね」
「ええ。それとここのセミナーの部室とC&Cの部室はセーフルームに改造してあるからMDの影響は受けないわ。困ったときには駆け込みなさい」
「おっけ」
リオの言葉を聞いた私はユウカの膝からおり部屋を出る。
「………」
「………」
私はユウカの膝からおり部屋を出る。
「……………」
「……………」
部屋を出る。
「お姉ちゃん、部屋を出たいんだけど」
「いやよ。あと10分、10分でいいから」
私は30分の格闘の末、やっとセミナーの部室を出られた。
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セミナーを出た私は、C&Cへイロハたちを迎えに行った。
「おや…遅かったですね」
とは、優雅にアフタヌーンティーを決め込んでいたイロハの一言。
どうやら彼女たちもC&Cにもてなしをされていたようだ。
彼女らにセミナーでの件を説明した後で、一緒にエンジニア部に向かった。
「うわーロボットがいっぱい!」
エンジニア部のラボにつき、多くのロボットや発明品に目を輝かせるミカ。
イロハもカヨコも反応は薄いが、物珍しさに目がきょろきょろと動いていた。
「おやお客さんかな?」
私たちがラボに入って、発明品を眺めていると、作業中であったのだろう片手にドライバーを持った紫の長髪の生徒がこちらに近づいてきた。
「勝手に入ってごめんね。私はアイ。MDを聞きに来たんだけど」
「ああ君か。セミナーから話は聞いているよ。私はエンジニア部部長白石ウタハ。用意は出来ているよ」
私たちは軽く自己紹介すると、早速ラボの奥に案内される。
「ここは、マイスターたちが日夜、知的好奇心を満たすために発明に勤しむ部活さ」
「へ~。どんな発明を作ってるの?」
「お、興味があるかい?その様相から見て、君はトリニティの生徒かな、ならこれはどうだろう」
ウタハは私たちを案内しながら、道すがらにある発明品を紹介してくれる。
「これは自信作なんだ。全方位対応型超高性能スピーカー」
紹介してくれたのは3メートル近い巨大なスピーカー。
「スピーカー…ですか?」
「もちろんただのスピーカーではないよ。前にトリニティで謝肉祭があっただろう。その後に交流会もあったおかげで、一時ミレニアムは音楽ブームが来てね。その際に開発したんだ。360度に高音質の音楽を楽しめる。それにアンプなどの音楽機器も一通り内臓してあってだね、これ一つでバンドぐらいの機器なら全てまかなえるぐらいさ」
「それは便利だね。結構気になるかも」
激し目の音楽好きのカヨコもこの発明に興味があるようだ。
「ここから凄いのが、このスピーカーは音量のタガを外してあってね。ひとたび音量をMaxにすればミレニアム自治区のどこにいたって自分の音楽を届けられる。まぁ中心地は音圧のせいで大惨事になるがね」
「公害の類じゃないですか」
「私の応援もいつかミレニアムの全てに届けたいものさ…」
「いいことのようだけど、言ってることテロリストだからね?」
しみじみと夢を語るウタハに一応釘はさしておく。
「発明以外にも、もちろん他に製作や修理なども請け負っているよ」
「あ、修理で言えば見せたいものがあるんだった」
私は、あることを思い出し懐から銃を取り出す。
「これは、うん壊れているね」
「そうそう。使ってたらいきなり壊れちゃってね」
私が取り出したのはトリニティで使っていた物、ゲヘナで拝借したMP5Kのサブマシンガン。
スイーツ団から爽やかチョコミントを貰ったが、壊れた原因が知りたいためここまで持ってきたのだ。
「軽く見るに中の劣化が酷いね、摩耗してる。どういう風に使ってたんだい?」
「あー……説明が難しいなぁ。神秘を流してぇ……」
「神秘を流す…?」
「うん。私の能力としてね、自分の神秘を流して強化したりすることが出来るんだ」
ほら、こうやって。と壊れた銃に自分の神秘を流す。
そうすると、銃は私の手から流れるように青い燐光が伝わっていった。
「……………」
「あれ、ウタハ?」
暫くの沈黙のあとに腕をガッと掴まれる。
「なんだ…!?この現象は…!?見たことがないぞ!!」
「あれ?ウタハさん?」
「ヒビキーーー!!コトリーーー!!研究だ!!研究対象が来たぞ!!!」
「あ、やべぇ!!凄いめんどくさいことになってる!?逃げるか!?」
『研究対象と聞いて!!』
「くっ!!囲まれた!遅かったか!?」
「さぁお嬢さん。私たちと一緒に奥まで行こうか?大丈夫痛いことなんてないさ」
「人攫いの常套句!?」
「お嬢さん可愛いね!いっしょに採寸もしちゃおうか!?可愛いお洋服いっぱい作ってあげるよ!!」
「初めてみる物ですね!では説明できるまで調べつくしましょう!!」
「やめて!?解剖される!?」
「じゃぁ私たち待ってますね」
「見捨てるのかイロハ!?くそぅ戻ったら思いっきりモフってやるからな!絶対だから……力つよ!?ああぁーーー!?」
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モッファァ…!
「アイ…少し苦しいのですが…」
「………」
研究という解剖から解放され、私はイロハを後ろから抱きしめモフ度を補充する。
「アイちゃん大変だったね」
そう言いながら、ミカは私の頭を撫でてくれるが。
「ミカも止めてくれなかったよね?」
「……アイちゃん大変だったね」
「ごまかされないからなっ!!」
なおも撫でてくるミカに負けずに私は抗議を続けた。
ちなみにカヨコは巻き込まれたくないのか、知らぬ顔をしていた。
「ふぅ…とても有意義な時間だったよ。ありがとう」
「どういたしまして。今度するときは嘆願書を出してね。許可するかはわからないけど」
「すまないね。未知のことに興奮していたんだ。しかし君の協力でわかったこともある」
無理やりの研究は協力ではない。
「まず君の銃が壊れた理由だが、神秘の流しすぎが原因だね」
「流しすぎ?」
「ああ。トリニティでは多くの敵を前に、常に神秘を流していたのだろう。そのせいで銃本体が耐えられなかったんだ。これからは少しでもいいからインターバルを置くといい」
「確かに結構流してたかも」
「それと君の神秘の特性だが、確かに強化や操作なのだろう。だけどそれは普通に使ったりした時。先ほどの銃みたいに短時間で多く流したり、一気に大量に流してしまうと逆に壊してしまうから気を付けて」
つまりゲームでの耐久のゲージがある武器みたいなものか。何もしないとゲージが下がっていくタイプの。これからはそのゲージを超えないように調整しながら使わないといけないのか。(例:侍道の刀ゲージ)
「それとこれを」
「これは?」
そうしてウタハがくれたのはイヤホン。
「君の技術を応用して作ったイヤホンさ。もともとセミナーから今回のMDに対抗できる物を作ってくれという依頼があってね。これをつければある程度の神秘が乗った音を無効化できるはずさ。むろんそれだけじゃない。防水防塵はもちろん、通信機能、決算機能もついている優れものさ」
「おお!ならこれをみんなに配れば……」
「そうしたいところなのだがね…。資材が足りなくて、君たちとセミナーの分しか用意できなかった」
あー、それはしょうがない。
しかし対応できる事が増えるのは1歩前進だ。
「それとそのイヤホンに例の無害なMDを入れておいたから聞いてみてくれ。研究に感謝するよ」
最後にこちらに一礼するとウタハは颯爽とラボの奥に消えていった。
まだ色々とすることがあるのだろう。
私は早速イヤホンをみんなに配り、例のMDを流す。
………流れてきたのは。
「ピアノの音…?」
なんだか聞いた覚えのあるピアノの音。その音色は早く、プロの演奏と大差ない腕前だった。
私、イロハ、カヨコは聞き進めていたが、何かにミカが顔を上げて何かに気付いた。
「いや違う…この音色は、オルガン?」
常に高級品が身近にあっただろうトリニティの聖園ミカ。
私たちが気付かない音の違いに気付いたようだ。
「しかもパイプオルガンじゃない?いいの使ってるかも」
その言葉に私は気付いた。
トリニティの体育館裏での会話。
『それで荒らされた箇所なのですが、今回のユスティナ聖徒会、デカグラマトン、それとマエストロの作品の資料も盗まれていました』
聞いた覚えのある音楽、パイプオルガン、めんどくせえ複雑なギミック。
「………これって、グレゴリオ?」
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アイちゃんがセミナーの部室を出て、少し経った後。
私は体調不良を訴え、お手洗いに向かった。
ユウカちゃんは心配してついてこようとしたが、大丈夫と断った。
頭がガンガンする。
私はお手洗いで、落ち着くため脂汗の滴る顔を洗った。
頭が痛い。痛みを覚えたのはあの子を見てからだ。
アイちゃん。
彼女のあの目が。
彼女の歩き方が。
彼女が考えるときに出すんー、という唸り声が。
彼女が、私の頭を痛くする。
彼女がいる間は何とか必死で何もないように演じた。
しかしその痛みは彼女が去ってからも続いた。
何かが頭の中から出てこようと暴れだすような感覚。
「あの子は、何もの…?」
ふとあの子が何ものなのか考えてしまう。
「……ッ!?」
考え、彼女を思い出すと、なぜか頭の中に光景が映し出される。
製図の広がったカフェテーブル。
間接照明のついた暗い部屋。
そして、
雨が伝わるガラスの前で話す私と…。
その時なにかを拒むように、より一層頭の痛さが激しくなる。
私…何かを忘れてるの?いえ、これは忘れたかったもののはず。
「そうです…。手帳を」
私は自分の手帳を…。
「……いえ手帳は」
私は記憶力がいいから、手帳なんて持ち歩かなくてもいいんだけど。
……でもいつから手帳を持たなくなったんだっけ?
転生先生、嘯く 18話目
マジカルズ、無事にお迎えしたぞ!!
私には勝利しかない
拙き作品ですが、よろしくお願いいたします