「……………」
「あの…こういう時になんて言えばいいのかわからないのだけれど…気を落とさないようにね?」
エンジニア部での気付きを、その日のうちに伝えようと私は再びセミナーに向かった。
他のみんなは、エンジニア部の発明に興味を引かれていたミカに付き合って、まだエンジニア部内を見て回るようなので、私だけでセミナーを訪れる。
セミナーの部室の前まで着き、ネル先輩と違ってきちんとノックしてから扉を開けた。
「アイちゃん!おかえりなさい!」
「帰ってきたのねアイ。MDの方はどうだったかしら?」
私に気付くとユウカとリオちゃんが出迎え、声を掛けてくれたため、気付いたことを説明すべく話そうとすると。
「あの…すみません。少し席を外します」
そう言ってノアが私を見るなり、口元に手をあてて退出していった。
どう見ても避けられている態度。
ノアが退出してから静まりかえる室内。
その空気を察してかリオちゃんが、慣れないフォローをしてくれる。
泣きそうになった。
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「なるほど…人工の天使ね…」
「うん。どんな形であれそれが関わってるのは間違いないと思う」
「わかったわ。今後の参考にしてみるわね」
「ただね…。今回の事件、それだけじゃなさそうなんだよね」
「それだけ、とは?」
「グレゴリオっていうのはそれこそ音楽、音に特化したようなやつなんだけど。今回のMDの能力はともかく…こんなハッキングじみたことを出来るようなやつではないんだよ」
「簡単にいうなら協力者がいる可能性かしら?」
「その通りだよお姉ちゃん。だから」
「その事も念頭において調べるべきね」
「お願いねリオちゃん」
「…ちゃんづけはやめて頂戴」
これでMDのことで伝えることは済んだかな。
さて、と。
「じゃぁ続いて私がノアに避けられてる理由の話を始めようか」
「しっかり引きづっているのねアイちゃん……」
だって悲しかったもの。
「あまりノアを恨まないでちょうだい。理由はあるのよ。けれど部外者に話すわけには…」
「リオ会長、アイちゃんは私たちの協力者です。円滑なコミュニケーションの為にも理由を話した方がいいんじゃないですか?ノアがこうなっている以上、きっとアイちゃんも無関係ではないはずです」
「……ユウカ。貴女がそう言うなら任せるわ」
「ネルからも色々とも言われたけど…ノアに何かあったの?」
「ネル先輩…あれだけ話すなって言ったのに…。教えるわ、さっきも言ったけどアイちゃんにも無関係ではないと思うから」
そうして早瀬ユウカはポツリポツリと話始めた。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
先生が亡くなってから1ヶ月。
先生の仇であるカイザーも消滅してその後の葬儀も終わり、私たちは日常を歩み始めていた。
しかし以前の日常とは違う少し歪んだ日常。
どこの部活も活気をなくし、機械音の鳴り響いていた学園が静かな静寂で包まれていた。
ただ1つセミナーを除いて。
「ユウカ。ここの稟議書、関係者に回しておいて」
「わかりました。こちら予算は…」
「ファイルを送っておいてちょうだい。確認しておくわ」
ミレニアムをまとめるセミナー。
先生の死を慈しむ時間もなく、バタバタと業務をこなす。
先生の葬儀が終わった後、突然帰ってきたリオ会長。
『あの時は迷惑を掛けてごめんなさい。この穴埋めは絶対にするわ』
そう言って謝ると、こちらの反論を聞くことなく仕事を始めた。
その様子に何か言いたい気持ちはあったが、キヴォトス中が先生の死で混乱の最中、彼女が戻ってくれるのは心強いというのも真実である。
私は1つため息をつき、彼女に言った。
『横領したお金は返還してもらいますからね』
『…………わかってるわ』
やはり彼女の手腕は1流なもので、今の学園の問題をまとめ上げ2つ3つと同時に作業をこなしていく。
そんな彼女の下で私も働きながら彼女を手伝った。
この忙しさのおかげで先生の死を悲しみ、泣きくれる暇もなかったのだからありがたいことだ。
いまだ先生の死に対して悲しい気持ちが心に残っているが、私は幸いなことにセミナーの業務の忙しさのおかげで乗り越えることができた。
私は。
「すみません。遅れました……」
扉が開き、書記のノアが入ってくる。
業務開始時間はすっかり過ぎていたし、走って来たのか息を切らして入ってきたが誰も責めない。なぜなら。
「ノア…また眠れなかったの?」
「………すみませんユウカちゃん。でも大丈夫です。これ以上業務に支障はきたしませんから」
席に座っても、まだ苦しそうに身体全体で息をしているノア。
先生が亡くなってからずっと彼女はこうだ。
目の下に隈を作り、時折辛そうに吐き気をこらえる。
聞けば、寝ても覚めても、先生の訃報のニュース画面が頭から離れず、寝不足が続いているのだと言った。
彼女の強みの記憶力の高さ自身が彼女の身体を、気持ちを蝕む。
1回心配して、部屋で休んではと提案したものの、仕事に打ち込んでいる方が落ち着くというので、今は止めないようにしていた。
今思えばそれがよくなかったのかもしれない。
しばらく書記の仕事をしていたノアは必要な資料を取りに席を立つ。
しかしノアは立ったと同時に大きくバランスを崩し、彼女は床に倒れた。
慌てて、保健室に運び入れると睡眠不足からの寝不足、そして栄養失調と診断される。
とりあえず空いているベッドに寝ノアを寝かせ、布団を上からかける。
よほど眠かったのか5分もせずに眠りにつけたようだ。
私も安心してノアと私の軽食を買いに退出しようとすると、先ほどまで寝ていたはずのノアが飛び起きる。
「せん…せい…!!」
「ノア!?まだ寝てないとダメよ!!」
私は慌ててベッドまで戻り、ノアに近寄る。
「ユウカちゃん…先生が…!…せんせいが!」
泣きながらうわごとのように先生と、つぶやく彼女に私はただ抱きしめることしかできなかった。
・
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『貴女が次に目を覚ましたらその人に関することをすべて忘れるでしょう』
そう言われると、ノアはゆっくりと瞳を閉じ意識が沈む。
「ええ。これで大丈夫でしょう」
「ありがとうございます。百鬼夜行からわざわざ…」
「いえ…ご依頼ですから。普段は薬学が専門ですが、薬学の発展のため暗示の類なども修めています」
そう言って百鬼夜行から呼んだリクという医者は、使った薬や香などを片づけていく。
薬も香も相手をリラックスさせ、暗示を掛けやすくするために必要なようだった。
「気持ち、感情で薬の効果も変わっていきます。それを確かめるために学んだ暗示なのですが…。やはり専門外のため本職よりは効き目が薄いです。それでも強く暗示を掛けていますが」
「注意することはあるんですか?」
「そうだね…刺激に注意してください。その人の思い出、記録などに触れると脳が思い出そうとし、強い頭痛などを発症するでしょう」
その後、リクは2、3注意事項を話して帰っていった。
「終わったようね」
帰っていったリクと入れ違えるようにリオ会長が入って来て、意識を手放したノアを観察する。
「はい。今は気を失っていますが、目を覚ますと先生のことは忘れているようです」
リオ会長にノアの現状を説明するとともに、先ほどの注意事項も伝えた。
「そう……。ならこれからミレニアムにある先生の痕跡を全て消すわよ」
「そんなことしたら各部活から反対がでますよ!?」
「そんなことはわかってる。……構わないわ」
「せっかく帰って来たのに、またリオ会長の評判が悪くなってしまいますよ!?」
「そうね。……でもねユウカ」
リオ会長は、気を失っているノアに手を伸ばし、その頬をいとおしそうに撫でる。
「私の評判なんかよりも、貴女達の方が大事なのよ」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
『これが私が話せる全部。ノアが避けているのもアイちゃんのどこかに先生を思わせる何かがあるのかしらね』
そう言って話は締めくくられた。
その後は私が話す間もなくリオに。
『今日はありがとう。ここにいる間の寝食は用意しておくから帰っていいわよ』
と言われ、ホテルのルームキーと共に締め出された。
思えばリオなりのユウカに対する、気づかいなのだろう。
流石にこうも追い出されては再度入室出来そうにないため、大人しく引き下がりイロハたちを迎えに行ってから、リオの用意してくれたホテルへと向かった。
「なかなかいいホテルですね」
リオの渡してくれたルームキーのホテルは外観こそシンプルなホテルであったが、細かい装飾やサービスなどの、こだわるところにお金を掛けたいいホテルであった。
「ここ評価も高いんだって!早く受付済ませよ!」
「そんなに急いでもホテルは逃げないよミカ」
ミカがテンション高く私の手を引っ張り受付に向かう。
受付では丁寧に出迎えられ、気品の良さを感じた。
「すいません。こちらのルームキーなんですけど…」
「はい、ご確認します。……調月様のお客様ですね。こちら501と502のお部屋、どちらもツインのお部屋になっておりまして、そちらのエレベーターで5階のお部屋となっております」
私はルームキーを2枚渡し確認を取ってもらい、エレベーターまで案内してもらった。
「みんな5階だって。……みんな?」
後ろからついてきているはずのイロハたちに声を掛けるが反応がなく、振り返ると剣呑な空気に包まれているイロハ達がいた。
「ねぇアイ。私たち2部屋って聞いてないけど」
「言ってないけど…。ホテルで4つのベッドってあんまりなくない?受付に言ってツインの部屋にベッド2つ追加してもらう?」
「そんなぎちぎちの部屋誰が泊りたいんですか…。ツインルームの4人使用ってホテルを困らせちゃうじゃないですか」
「絶対チェックアウトの後あだ名つけられるよね☆」
「も~何が不満なの?」
「不満…じゃないけど」
「カヨコさん。この朴念仁に何を言っても無駄です。ならもう直接聞いてしまいましょう。…アイ、アイはこの中で誰と一緒に寝たいですか?」
イロハの問い掛けの真意に私は考える。
つまりイロハが言いたいことは…。
「高級毛布、羽毛布団、人をダメにするソファーの中から1つ選べってこと……?」
「質問の本質とは違うけどそう言うことかな。……て私、人をダメにするソファーって思われてるの?」
「うん」
これは悩む。どれも一長零短。比べがたい魅力がある。
どうしようか。………て、あれ?
「なんで私、ナチュラルに一緒に寝ることになってるの?部屋ツインなんだけど?ベッド人数分あるんだけど?」
「そこは気にしなくていいかな☆」
生徒の純粋な質問(圧)には先生として答えなければならない。
そう、私の答えは……。
「じゃ……じゃんけんで…」
「逃げましたね」
はい。その通りでございます。
・
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・
「……ふぁ。先生おはよう。よく眠れた?……あれいない。もう起きたのかな。ん…書置き?」
『ちょっとデートに行ってきます☆みんなはゆっくりしてていいよ!』
「………は?」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
私はセミナーに向かうためミレニアムに向かう中、気持ちを落ち着かせるため今日何度目かわからない深呼吸をする。
始まりはつい前日。
突然現れたアイという生徒になぜか、頭痛と激しい動悸を感じた私は身を守るために彼女を避けた。
その理由はわからないし、知る必要もないのだと思う。……多分。
しかし彼女はトリニティからの助っ人。セミナーとして無下には出来ず、関わるしかないのだが。
私は自分の彼女に対する気持ちを考えながら、セミナーへ続く廊下を歩いていると、向かう先で誰かが壁に背を向け佇んでいた。
それは私と同じように白い長髪をたなびかせ、派手な羽織りを背負う人物。
「お、来た来た。ヘイ彼女。これから私とデートしない?」
また頭が痛くなる。
・
・
・
ミレニアム学園から出て、徒歩5分。
学園から近いのもあって、学生に人気のフルーツサンド店の行列に私たちは並んでいた。
なぜかアイという生徒と手をつなぎながら。
頭痛をこらえ、出来るだけ笑顔で取り繕いながら黙って踵を返した私の手を取って、しつこくデートとやらに誘ってくるアイ。
今すぐにでも離れたかった私がここまで来てしまってのは、手を握られた瞬間、あれだけ激しかった頭痛が和らぎ、妙な安心感を覚えたからだ。
不思議に思いながら、これならなんとか耐えられると思った私は、アイのしつこさにため息をつきながら了承。
そのまま手をつないだまま今に至るというわけだ。
「ここ知り合いのチョコミン党が教えてくれたんだけど、美味しそうだね~」
「……そうですね。ミレニアムでも人気が高いらしいですよ」
「なんかテンション低くない?もしかしてフルーツサンドとか邪道な人?」
「…いえそういうわけでは。ただなんでこうなったか考えていただけです」
「あんまり深く考えなくてもしょうがないさ。今日は1日楽しもうね!」
「いきなり誘われて1日付き合わされるんですか…私」
そうこうしているうちに、私たちの番までまわってきた為、各々注文し商品を受け取る。
商品を受け取った私たちは屋外のテラスで食べようとしたが、アイはわざわざ自分の椅子を私の椅子まで移動させ、私たちは隣り合って座った。
いまだ私たちは手をつないでいる。
「あの…」
「あ、ちょっと待って。今モモトークでスイーツ報告してるから」
モモトークを片手で起動させ、緑と黒のアイコンに、買ったフルーツサンドの写真を送るアイ。
色々な説明のなさに少しイラっとしたが、怒ってもしょうがないので黙ってその様子を見守りながら、自分のフルーツサンドに口をつける。
私の買ったオレンジのフルーツサンドは、酸味と甘さがきいていて美味しかった。
「ごめんごめん。美味しい?」
「美味しいですよ」
携帯をしまって、感想を聞いてくるアイに私はそっけなく答えた。
「それ、で。今回はなぜ私を誘ったのですか?」
聞きたいことは多くあったが、結局の所それだった。
だって私たちはまだ昨日知り合ったばかりだ。
社交辞令的な事でもそうない。
「あれ?理由言わなかったっけ?」
「え?」
「今日は1日楽しもうねって言ったじゃん」
「……本当にそれだけなのですか?」
「そうだけど。まぁ追加で言うなら…」
アイは話の合間に自分のフルーツサンドを1口かじる。
「楽しい思い出をいっぱい作ろう」
アイはそう笑顔で答える。
ピシリ、と頭の中で何かがひび割れる音がした。
それと同時に頭痛も増した。
この子は、何なのでしょうか?
もっと知りたいという気持ちもあるが、なぜか脳がアラートを出す感覚。
「アイちゃん…」
自分の脳に抗いながら、意を決して問い掛けようと声を出す。
しかし、
『ギーーンゴーーンガーーンゴーーン』
それは突然鳴り響く、くぐもったチャイムに阻まれた。
「…これは、ミレニアムの全校放送?」
しかしこんなくぐもったチャイムではなかったはず…。
「ノア!イヤホン持ってきてるか!?」
いつの間にか鋭い目をしたアイが私にたずねる。
イヤホン。昨日エンジニア部から送られた対MD用の特別イヤホン。
まさか!?
「も…持っています!」
私もアイも急いでイヤホンをつけるが…。
「……っ!?」
手を離した瞬間、増す痛み。
しかし、それもイヤホンをつけたアイに、再び手を握られ減少する。
「……本当に何なのでしょうか」
「え?なに?」
無事にイヤホンをつけ終え、身構えると放送からオルガンのあの音が聞こえる。
すると周りにいた生徒の様子がおかしくなり始めた。
「これはやられたねぇ…。デートは中止かぁ」
「言ってる場合ですか!?急いでセミナーに!」
セーフルームであるセミナーの部室なら安全だろうと思い、私たちは急いで移動を始めた。
手をつないで走る私たち。
私の前を走るアイに合わせて、足を動かすも早すぎて何度もこけそうになる。
「……ノアさん。最近運動とかしてる?」
「うる…さいですよ!」
そんな無駄口を叩いている間にも、MDを聞いた生徒がそこらで問題を起こしている。
「しょうがないなぁ」
「ヒャッ!?」
私の足の速さを気にしてか(別に私が遅いわけでは決してなく、アイが速いだけ)アイは私をヒョイとお姫様抱っこで持ち上げると、そのまま猛スピードでセミナーの部室へと向かったのだった。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「みんな揃ってる!?」
私はノアを抱えながら勢いよくセミナーに入る。
「やっと来ましたねエセ紳士」
「甲斐性なし」
「朴念仁」
「なんで入室早々罵倒されなきゃいかんのだ」
ノアを降ろし、部屋内を確認すると、イロハ、ミカ、カヨコ、リオ、ユウカ、ウタハが揃っていた。
「ノア平気だった!?」
「ええ…おかげさまで。アイちゃんがここまで運んできてくれました」
「ありがとうアイちゃん!」
そう言って感謝のしるしとしてユウカが私に抱きついた。
私も安心させるようにユウカの背中をポンポンと叩く。
「「「女誑し」」」
なぜだろう。着々と私への罵倒が増えていく。
「遊んでいる暇はないわ。みんな聞いてちょうだい」
そう言ってリオが今の現状を話し出した。
「突然ミレニアムの校内放送がハックされて、ミレニアムの生徒が何人もMDの犠牲になっているわ。C&Cのみんなにはもう出撃してもらっていて、放送箇所の破壊を頼んでる。けれど、MDの特性は言ったわよね?」
「耐性がうんぬんってやつだっけ?」
「そうよ。MDには適性があって耐性のある者とない者がいる。今回はそれが厄介なの。C&Cには本来放送箇所の破壊に専念してもらいたいのだけれど、その特性のせいで耐性がある者の避難や救助もしなくてはいけなくなっているわ」
「つまりその分解決が遅れるってこと?」
「ええ。私たちもこれから向かうけれど、人手がどうしても足りないわ」
確かに耐性のある者とない者の区別が難しいから人手が確保しにくい。
ドローンもハッキング持ちが相手にいるなら使用しにくい。
「どうしたものか…」
「1つ対抗策ならあるんだが」
皆で考える中、1人声を上げた。
「ウタハ先輩…」
「確証はない提案なのだけれどアイ、彼女の力を頼ってみてはどうかな?」
「アイの…?」
「私の…?」
「うん。今回の相手、音楽に神秘を流し、聞かせることで相手に指示を与えるんだろう?なら同じ神秘を流せるアイにも同じことが出来るんじゃないか?」
「そんな都合よくいけるかしら…」
「一応理由もある。今君たちが使っているイヤホンだが、それの仕上げはアイの神秘のあり方を参考にしているんだ。MDみたいに指示は与えられないと思うが、音の神秘同士お互いがぶつかり合うことによって相殺できるんじゃないだろうか?」
「でも今放送がハッキングされてるんだよね?例えアイちゃんが出来たとしてもどうやって学校全体に流すの?」
「む、その要因もあるのか」
また話が振り出しに戻ろうとする中。誰かがポツリと言った。
「……………音。……確かエンジニア部のラボにでっかいスピーカーがありましたよね?」
「確か公害レベルの音が出せるんだっけ…?」
「エンジニア部またそんな物を作っていたんですか!?」
「まあまあ。その話は後にしよう。だけどどうだいリオ会長。検討する気になったかな?」
「………わかったわウタハ。確証がないし不安だけれど、出来なかったら別の案を考えましょう」
「決まりだね。なら最初に、スピーカーを運ばないと…」
「私手伝うよ☆」
「C&Cにも連絡しないといけませんね」
「ノアお願いしていい?私もラボに行って手伝ってくるわ」
作戦がまとまり全員遂行できるように動き出す。
私も動こうとすると携帯からピロンと1件の通知。
確認するとアイリからで、
『フルーツサンド美味しそうですね!チョコミント味もおすすめですよ!』
と返信が来ていた。
まったくこんな時にと思いながらも、私は笑みを浮かべた。
ん?…音…か。神秘を流せれば音ならなんでもいいのか。
私はアイリに返信であることをお願いすると、すぐにOKの返信が来る。
「ちょっとみんな待って」
私は準備のために、部室を出ていこうとするみんなを声で制した。
「みんなバンドをしよう」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
階下ではかわらずMDが流れ、争いが起こっている中、私たちは屋上にスピーカーを設置し、各々楽器の調節を行う。
「ん、こっちセット終わったよアイ」
「私もおっけ~☆」
カヨコがベースを、ミカがキーボードをセットし終え、スタンバイ状態に入った。
私もギターを肩から掛け、最終チェックを行う。
イロハは、
「なんですか。文句あるんですか」
左手でカスタネットを持ってカチカチさせていた。
「文句はないけど。なんか可愛いな」
「悪かったですね。楽器の1つも弾けなくて。では私たちは端で見ていますから。行きましょう」
「……ええ、はい」
イロハは文句を言いつつ右手でノアの手を握り、屋上の出入口まで移動した。
「…私はなぜ今度はイロハさんの手を握っているのでしょうか?」
「私もわかりません。とにかくアイに貴女のことよろしくねと言われたので」
最終チェックを終えた私は、自分の神秘が流しやすくなるように、なるべくスピーカーに近づき、つないであるコードを足に巻く。
「出来ればドラムも欲しかったなぁ」
「ないものはしょうがないでしょアイ。いないのにドラムセットまで用意しちゃって」
「だって誰か出来ると思ったし」
「なになに!?なにか弾くの!?」
「うわっ!?」
急に背後から聞こえた天真爛漫な声に驚いて振り向くと、そこにはメイドの姿があり。
「ドラム?ドラム私出来るよ!やっていい?」
「アスナか…びっくりした。いや、やってくれるのは嬉しいんだけど…君持ち場は?」
当然の疑問を無視されるとアスナはドラムに腰掛、シャンシャンと鳴らす。
「アイ、弾く曲って?」
「これよ。カヨコとは前に一緒に弾いたことあるよね」
「あ!それ謝肉祭でカズサちゃんたちがやってた曲じゃん!」
「覚えてるよ。でもアイの弾くギターって……」
「いつでもオッケーだよー!!」
「お、アスナも準備終わったね。じゃぁやったりますか!!」
全員と目を合わせるとみんなで頷き合う。
アスナがドラムスティックを掲げ、カンカンとタイミングを図る。
「いっくよー!ワン、ツー!ワン!ツー!スリー!フォー!」
転生先生、嘯く 19話目
私事ですが、モデルガンが欲しい!
ウィンチェスターかSAAが欲しい
ガンプレイして失敗した後床に傷つけたい
拙き作品ですがよろしくお願いします