ミレニアムを出て、アビドスへ。
キュルキュルとキャタピラが回り、戦車が進む。
「直ったんだね虎丸」
「ええ、おかげさまで。どこぞの風紀委員長に蹴り飛ばされて壊されましたからね」
みんなと別れた数分後。いざアビドスへ向かおうと駅に向かう最中、イロハの携帯に戦車が直ったと着信があった。
直ったのならせっかく、ということで電車ではなく虎丸に乗り、私たちはイロハの運転で今アビドスに向かっているのだ。
「あはは☆戦車を蹴り飛ばすなんて大げさじゃない?」
「「「……………」」」
ミカは冗談でしょ?というように笑っていたが、ミカと一緒に話を聞いていたカヨコは、ゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナを知っていたため、苦い顔をしていた。
というかミカさん。その大げさのことを君も出来るでしょ。
ゲヘナ生にとっては恐怖の話をしながら私は、リオちゃんからプリントアウトされた地図を見る。
地図には逆探知に成功したアビドスの、ある地点に赤丸がついている。
にしてもこの場所…、なんか覚えがあるんだよなぁ。
「先生、それが今から向かう場所?」
「ん?違う違う。まずはアビドス高校に行って協力者に会わないとね」
「……協力者。同じミレニアムの生徒とは言っていましたが」
「どんな人なんだろ~」
「おっと…もうアビドス自治区に入りましたよ」
ミレニアムの協力者を話しながら進んでいくと、街並みからだんだんと砂の風景が入り込んでくる。
「アビドス…か…」
「どうしたのカヨコ?なにか気がかり?」
「いや私じゃなくてね。……ムツキが最近アビドスに通い詰めてるらしくて」
「ムツキが?」
「そう。しかも頻繁に私たちも誘ってきてさ」
「ムツキが…、なんか珍しいね。それでカヨコも行ったの?」
「……なんか怖くて行ってない」
「メンバーからのお誘いが怖いことってある?」
「だって聞いても、見てからのお楽しみだよ!の一点張りなんだもん。逆に警戒しちゃって…。あ、でも1つ」
「アビドスは変わったって言ってたよ」
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「いや変わりすぎでは?」
戦車から降りた私たちはアビドスの変りぶりに驚く。
アビドス。砂に覆われた街。
砂漠化が進行しているところの住人は街を離れてしまっていて過疎化が進んでいる。
一応中心地などの砂漠化から離れている場所では、ビル群や商店街もあるが、生前アヤネから聞いた話ではそこでも住人が離れつつあるらしい。
私が最初に来た時も、いたるところに砂山が点在し砂漠化の影響が出ているのがわかった。
そんなアビドスなのだが……。
『今日の授業なんだっけー?』
『忘れたの?今日は…』
『放課後あそこ行かない?』
『いいね!行こう行こう!』
アビドス高校への通学路。そこではアビドス高校へ向かうであろう生徒が、楽しそうに談笑しながら通学している姿があった。
しかも1人2人の話ではない。何十人もいるのだ。
「パンデモニウムの調べでは、生徒は対策委員会の5名だと聞いていましたが…」
「まさかこんなに復興してたなんて…」
驚くイロハとカヨコ。
2人が驚くのも無理はない。特に以前のアビドスを知っているカヨコならなおさらだ。
何も驚くのはたくさんいる生徒だけではなかった。
私たちがいるこの通学路も、ここに来るまでの道のりも砂がある程度除去されており、街の景観が保たれているのだ。
「いったい何があったんだ…」
「そんなに変わってるの?……あれ?」
アビドスの変化にあまりピンと来ていなかったミカだが、歩いている2人の生徒を見つけるとそちらに駆け出してしまう。
「ねえねえ☆ちょっとお話良いかな?」
「あ、ミカさん。あまり迷惑掛けては……おや?」
急に声を掛けるミカを止めるため、イロハもミカのもとに向かう。
「はい?なんでしょう……げっ!?…ミカ様」
「え!?せ…戦車長!?」
「貴女はこの間ゲヘナから転校した…?」
「戦車長…!なぜこんなところに!?」
「み…ミカ様。ごきげんよう」
「うん、ごきげんよう。それと今げって言わなかった?」
「いえ…その…追ってきたのかと思いまして…」
「そんなことしないって」
「イロハ、ミカ。2人とも知り合い?」
「アイ、実は……」
その後、イロハとミカから話を聞くと、どうやら2人ともゲヘナ、トリニティから転校した生徒だったようだ。
イロハもミカも、立場が上なこともあってたまたま顔を覚えてたらしい。
とりあえず、通りがかった生徒を解放し見送る。
「他にもちらほらとうちを転校していった生徒がいますね」
「私も知ってる子が何人かいるなー」
確かにゲヘナ、トリニティでは転校、退学していった生徒が多くいると聞いていたが。
「まさか転校した生徒がアビドスに流れていってるってこと?」
そんな疑問を持ちながら私たちも、通学している生徒たちについて行き、アビドス高校を目指す。
しばらく歩き、校舎が見え、ついに校門まで無事にたどり着く。
その間も通学する生徒は増えていっていて、学校に大勢の生徒が登校していった。
アビドスにこんな生徒が集まるなんて、と涙を浮かべそうになるが、校門に刻まれている学校名に目が向かうとその涙も引っ込んでいった。
「カヨコ…。ここってどこだっけ?」
「え?ボケちゃったのアイ?アビドス高等学校でしょ?」
「そうだよね。私間違ってないよね?じゃあカヨコそれ呼んでみてもらえる?」
私はそう言うと校門の学校名を指さす。
「いいけど、えっと……は?アビドス芸能学校?」
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アビドス高校…改め、アビドス芸能学校に入った私たちは、対策委員会本部へと向かうため校舎を歩く。
校舎は新しいとは言えないが、所々をリノベーションしているようだ。
各教室はダンス、声優、メイクなど多岐にわたるクラスが展開されていて、どこもにぎわっていた。
「アイちゃん!アイドル科もあるって私見に行ってきてもいい!?」
「ミカ…何しに来たかわかってる?」
「いいじゃん!カヨコちゃんも一緒に行こうよ!」
「はいはい後で見学しようねミカ」
騒ぐミカをカヨコと一緒に引っ張りながら本部に行く私たち。
対策委員会と掛けられた教室の前まで着くと、話し声がする教室の扉をノックする。
「え!?あ、はい!今開けます!」
ガラッと扉が開くと、
「えと…どちら様でしょうか?」
奥空アヤネが出迎えてくれた。
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「ああ、ミレニアムの方々だったんですね!話は伺っています」
「可愛い子がたくさんいますね~」
「ん、ゆっくりしていくといい」
部屋に招かれるとお茶を出してくれたため、各々が座ってありがたくいただく。
部屋には、アヤネ、ノノミ、シロコがおりどうやら先ほどまで会議をしていたようだ。
「すみません紹介が遅れました。アビドス芸能学校、生徒会長の奥空アヤネです」
「……………よろしくね」
そう。ここまで聞いてくれた君たちはわかっただろうと思う。
今彼女は生徒会長の、と言ったのだ。
例の列車事件の際に1時的に彼女が生徒会長になったが、その後ホシノに生徒会長の座を渡している。
だが、今また彼女が生徒会長になっているということは。
つまり、そう、ホシノはまたなにかやらかしたということである。
「初歩的なことだよイロハ君」
「え?いきなりどうしたんですかアイ?」
「えっと…続けてもいいですか?コホン!こちらは副会長のノノミ先輩…」
「ん、アヤネ。役職はきちんと言うべき」
「そうですよ~。しっかりと紹介してくれないと~」
「………こちら、えっと…プロデューサーのノノミ先輩です」
「はい~プロデューサーの十六夜ノノミです~☆」
「やっぱりおかしいですよ!?生徒会長、書記、会計、プロデューサーって1つだけ異質じゃないですか!?」
「だけどそれのおかげで上手くいってる」
「そ、うですけど!?」
アヤネ、苦労してるんやね。
「私は砂狼シロコ。よろしく」
「うん…よろしく…。じゃぁこっちも自己紹介するね。私はアイ。こっちは…」
向こうの自己紹介を聞いた私たちも同じように自己紹介する。
「アビドスも凄い変わったんだね」
「カヨコさん…。お久しぶりです。ええ、色々とありまして」
「他のメンバーは?」
「あ、会計のセリカちゃんは見回り。書記の…」
「ん、書記は私」
アヤネが説明する前に再び扉が開き、シロコが入ってくる。
………シロコォ!?
今入ってきたシロコは、別のシロコ。つまりプレナパテスと共にこのキヴォトスにやって来たシロコであった。
どうやらカヨコも私と同じ気持ちのようで目を見開いて驚いていた。
「姉妹の方ですか?」
「は…はい!そのようなものです!」
事情を知らないイロハからの質問に慌ててアヤネがごまかす。
しかし本人は気にしないかの様に、自分でお茶を注ぎ開いている椅子に腰を掛けていた。
アビドスを転々としながら暮らしていた彼女が、こうして対策委員会の子たちになじんで生活を共にしていると考えると嬉しくなる。
まぁそれはそれとして、だ。
そう。ここまで聞いてくれた君たちはわかっただろうと思う。
今明かされた役職は4つ。
生徒会長のアヤネ。副会長(プロデューサーですよ~)…プロデューサーのノノミ。今見回りに行っている会計のセリカ。そして書記のシロコテラー。
以前彼女はアヤネの務めていた書記に降格されていた。
だけど今の書記はシロコ。
つまり、だ。
「あれ?シロコちゃん、ホシノ先輩を起こしに行ってたんですよね?」
「うん。顔洗ってから来るって。…ほら来たよ」
ふらふらと不規則な足音が、この対策委員会本部まで近づいてきて前で止まると、扉が開き、薄桃色の長い髪の生徒が現れる。
「うへ~みんなおはよう~」
「遅いですよ!…えっと紹介しますね。」
そう言うとアヤネは彼女に手を向け紹介する。
「庶務のホシノさんです」
悲報:小鳥遊ホシノ、さらに降格する。
「うへ~ミレニアムの人だよね?よろしく~。…え?なんでおじさんのこと憐れんだ目で見てるの?」
どうやら私の可哀想な目線に気付かれたが、とりあえずニコっと返しておいた。
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「今のミレニアムの現状はわかりました」
私たちはアヤネたちにアビドスに来た経緯を説明した。
「それで私たちミレニアムの協力者を探してるんだけど…」
「はい知ってますよ。彼女らには対策委員会もお世話になっているので。多分この校舎の裏手にある倉庫にいるはずですが…」
「裏手の倉庫…ね。わかったよ、ありがとう」
「いえいえ。困ったときにはお互い様ですから」
アヤネとお互いペコペコしていると、私は戦車の中で気になっていた地図を思い出す。
「そうだ。ちょっと気になってるんだけどさ、ここの場所って知ってる?」
「はい?」
私はアヤネにリオちゃんから貰った地図を渡すと、パソコンを取り出し、その地図を確認し始めた。
意気揚々と調べていたアヤネだが、調べていくうちに顔がどんどんと怪訝に代わってくる。
「ノノミ先輩。この場所って…」
「はい~?……ここってまさか、ホシノ先輩が捕まっていた場所ですか?」
ノノミの一言で、のほほんとした空気が張り詰める。
そこで私はピンと来た。道理で見た覚えがあるはずだ。
ホシノを助ける際に私は、アビドスのみんなを指揮して進行した。
その際の作戦を考えるときに、シッテムの箱経由で地形も見ていたのだ。
「あなたたち、ここに行く気?」
「そうだね。ちょっとミレニアムの問題を解決するためにね」
シロコ(小)からの質問に私も返す。
「うへ~。だけど行くのはちょっと大変だと思うよ」
「そうですね…いまあそこの周辺には、以前私たちが戦った怪物、ビナーがいるんです」
「ビナー君が!?」
「なんで君付けなんです?そうです、ある日突然現れて、地図にある地点をまるで守るように徘徊し始めたんです」
「幸い本当にそこを守ってるだけっぽいから、近づかない限り影響ないしね~」
「……でもさ」
ホシノの答えに気になったかのようにカヨコが問い掛ける。
「それでもアビドスの脅威になりそうなら、あなたたちで対処しそうなんだけど」
「そうだね~。あの機械の蛇だけだったらね」
「他にも何かあったんだね?」
「はい~、あの蛇さんが徘徊を始めた後、今後の活動に支障をきたすと思って倒しに行こうと思ったんです~」
「だけど行く準備をしているときに、今度は多くの機械兵が現れた」
「機械兵…」
「最初はなにかわからなかったんだけどね~」
「でも私は知ってた。あの機械兵は…ケセドの機械兵」
「流石に私たちでもデカグラマトンを2体相手は出来ません…。ですので、こちらを攻めてこないなら、と今は様子を見ているんです」
ビナー…は別にいいとしてケセド君も出てきたか…。
ケセド。ミレニアムの郊外で無限の軍隊を生産していたAI。
………AI…AIかぁ。
「………古今東西」
「「「え?」」」
「古今東西。AIと言ったら?じゃぁイロハから」
「急に何か始まりましたね~」
パンパン
「は?A、AIと言ったら賢い?」
パンパン
「………AIと言ったら機械」
パンパン
「何なのアイちゃん?えーと、AIと言ったら…ハッキン……グ」
「まさかアイ?」
「うん。多分間違いない。ミレニアムのハッキング事件の正体はケセド。…まだ裏で操ってるヤツはいるだろうけどね」
ということは、地図の場所にはビナー、ケセド、グレゴリオがいるということか。
ボスラッシュか?
「あはは…アイさん、お互い大変なことになってきましたね」
「いや、本当にねアヤネ」
「そしたら1度協力者さんに会いに行かれてはどうですか?」
確かに情報の共有と整理はしたいかも。
「そうだね!行ってきますか!」
私は面倒な気持ちを置いてくように勢いよく席を立つ。
「ありがとうね。また来るよ」
「アヤネちゃん、せっかくだからあれ渡したら~?」
「あ、そうでした!」
私たちが部屋から出ようとすると、ホシノの1言で何かを思い出したアヤネがこちらにチラシのようなものを渡してくる。
「今度…と言っても開催は明後日なのであまり期限はありませんが、よかったら参加してください!」
アヤネは丁寧に人数分のチラシを私たちに配った。
チラシには、
『アビドス砂祭り 開催』と書かれていた。
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対策委員会を離れ、裏手の倉庫へ。
いざ倉庫と対面すると思いのほか小さいなと思った。
「ね~?本当にこんなとこにいるの?」
「いるってアヤネは言ってたけどねぇ」
倉庫の正面はシャッターで閉められていて扉もない。
とりあえずどうやって入ろうかと模索していると、倉庫の周りを探索していたカヨコからこちらを呼ぶ声がした。
カヨコの声にしたがって敷地の奥へ向かうと、そこには小さい扉。
「ねぇコレ」
「インターフォンと……電子ロック、ですか」
「とりあえず押してみよっか」
私がインターフォンに指を伸ばそうとすると、扉からガチャッと鍵の外れる音がした。
「入ってこいってことですかね?」
「1回放置してみる?」
「それ何の意味があるの?ほら行くよ」
ちょっとした冗談をカヨコに軽く流されながら、私たちは扉を開ける。
すると、
「エレベーター?」
こんな倉庫に似つかわしくないエレベーターがあった。
疑いながらも私たちはエレベーターに乗り込むと、エレベーターは自動で動き出し、地下に向かう。
少し待つとエレベーターが目的地に着き、チーンと音を出して止まった。
扉が開くとそこは薄暗く、ほとんどディスプレイの明かりで照らされた部屋。
「よく来ましたねみなさん」
部屋の奥からキュルキュルと音を立てながら来た人物、
「そう、私が貴女達の協力者。超天才清楚系病弱美少女ハッカー!明星ヒマリです。どうぞお見知りおきを」
ミレニアムの全知が現れた。………膝の上に飛鳥馬トキを添えて。
転生先生、嘯く 21話目
ギリギリ年内、大晦日での更新
☆今年1年本当にありがとうございました☆
去年と比べ多くの人たちに見て貰い、感想をくれることとても嬉しく思います。
引き続き来年も拙き作品ですがよろしくお願いいたします!