転生先生、嘯く   作:あまいろ+

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燻ぶる熱

背後から聞こえた銃声。

 

遠くからの銃声に気付いた時にはすでに遅く、私の後ろにいた先生はすでに倒れ伏せていた。

 

地面に倒れ、身に着けていたシャツが赤黒く染まる。

 

赤い染みはどんどんとシャツの白い部分を侵食していった。

 

先生が撃たれたという重大な事実に気付いた私は、急いで彼に近づき止血をしようとする。

 

手近な布が無かったので、自分の着ていた百花繚乱の羽織を慌てて脱ぎ、患部に押し当て彼を呼びかけた。

 

「先生……!!」

 

ここで先生からうめき声の1つでもあれば、ほんの少しでも冷静になれたかもしれない。

 

だが一向に反応を示さない彼と、患部に押し当てた百花繚乱の羽織が血で赤く染まっていく様を見て、本能的に彼がもう助からないと知る。

 

「お願い……止まって……!!」

 

しかし私はそんな事実を見ないように、さらに強く羽織を押し付けた。

 

撃たれた傷口から私の羽織を伝い、手に伝わってくる先生の熱の感覚。

 

「先生……!」

 

その熱が、だんだんと抜けて、消えていく。

 

「先生……!!駄目…死んじゃ駄目!!」

 

何度も先生に呼びかけるが、無情にも呼びかける度に先生の体温は下がっていった。

 

「行かないで……!私の目の届く場所にいてって言ったでしょ!?体温の伝わる距離にいてって言ったでしょ!?…生徒の望みも叶えずにいなくなるつもり!?」

 

百花繚乱の参謀なんて似つかわしくない。その時の私はそんな不格好姿だった。

 

冷静なんてとても言えない、してることといえばまさに子供のように懇願するだけ。

 

動かない先生の身体にしがみつき、彼を思いのままに罵る。

 

年下の女の子にこんなに言われるのは堪えるでしょう?

 

だからお願い

 

何も言わずに無言でいなくなったりしないで

 

彼の熱が抜けていく

 

彼の身体が冷たくなり、熱を失っていく

 

……そして私はいずれわかる

 

熱はくすぶるということを

 

・

・

・

 

先生が亡くなってから幾月。

 

百鬼夜行連合学院は通常の顔を見せ始めた。

 

いつものような祭りで賑わい、浮かれた日々を送る人たち。

 

私たち百花繚乱や陰陽部などの先生に世話になった生徒たちは、いまだ悲しみにくれる者も多いが、シャーレに関係ない人物にいたってはただ知らない人物が1人死んだだけにすぎない。

 

この幾月、いろんなことがあった。

 

事件の元になったカイザー企業への討ち入り。先生の葬式。先生の不在による百鬼夜行の治安維持。

 

忙しく巡る毎日にせわしなく動き回る。

 

本来なら自分がしてしまった失態に気が狂い、発狂してしまいそうなくらい動転していたが、この時まだ私が理性的でいられたのは百花繚乱の皆がいてくれたおかげだ。

 

レンゲもユカリもおかしいぐらい明るく励ましてくれ、ナグサ先輩も私たちを気にして心配してくれた。

 

だから私もみんなに報いようと、多くの策や作戦を立案し指示を出した。

 

みんながみんなお互いのことを思い合って行動している。

 

このまま私たちは先生の死から立ち直り進んでいけるだろう。

 

1人で突っ走ることも無く、何かにあたり参事を起すこともなく。

 

ゲヘナやトリニティはなにか揉め事が起こっているようだが、百鬼夜行はよその学園よりは平和なものだ。

 

だけどまだ……私の中で熱がくすぶっている。

 

何かをやってやろうなんてレンゲの言うあつい熱なんかじゃない。

 

彼の、先生のくれた熱がいまだ私の中にくすぶっている。

 

先生の言葉が、気持ちが、体温が。

 

私の中で消えずにくすぶっている。

 

彼のくれた熱はまるで火傷痕のように私に深く残ってしまっていた。

 

その熱は同時に、あの日先生から熱が抜けていく感覚を嫌でも思い出させる。

 

悔恨の日々。彼を守れなかったことを後悔しない日はなかった。

 

苦しい毎日…………だから私はまた彼の熱が欲しい。

 

これから先も懺悔と後悔をすることになっても。

 

私の心に熱を。

 

冬山のコテージの暖炉のような、貴方の温かい熱を私にちょうだい。

 

 

そんな焦燥にまみれた時だった。

 

百花繚乱の本部の見回りをしていた時だ。

 

皆が市内の見回りで出払っている時、私が提灯を片手に所内を見回っていると、遠くの方からギシッと何かが踏み歩く音が聞こえた。

 

その音が聞こえてからはなにも鳴らず静寂が続いたが、音の代わりに微かな気配を感じるようになった。

 

勝手知ったる百花繚乱、自分がいつもいる場所でならちょっとした違和感程度なら看破できる。

 

それに今は私以外は出払っているし、怪しい音が聞こえるなんて他に人は……いや、1人穀潰しがいたな。

 

でもアヤメ先輩なら特に気配を消さずに歩き回るだろうし。

 

なにか小動物だったらそれでよし。もし侵入者だったら……。

 

私は念のために銃を構えつつ、音の鳴った方へと向かった。

 

警戒しつつ観察し、1つ1つ部屋をチェックしていく。

 

問題なし……問題なし……問題……。

 

私は部屋の1つで、床に微かに残る木屑を見つける。

 

「……お粗末ね」

 

私はその木屑の真上の天井に銃口を向けると、1発2発と銃弾を発射した。

 

「とっさに隠れたことは褒めてあげる。でも天井裏に隠れるのなら天板をずらした際に出るほこりや木屑も考慮すべき」

 

天井裏に隠れ見えない賊だったが、幸い何発か当たったようで銃撃で壊れた天板と共に賊が落ちてきた。

 

「ぐっ……!」

 

賊はダメージを受けて落ちてきてなお、抵抗の意思を持ってこちらを睨んでくる。

 

「……あんたは確か…忍術研究部の」

 

花柄の羽織、首に巻いた襟巻、狐の尻尾。

 

「まさか……見つかってしまうとは……不覚…ですね……」

 

「別に、ただ相手が悪かっただけ」

 

久田イズナ、ここ百鬼夜行では有名な人物。キヴォトスで忍者を目指してるとか……。

 

そこまで直接的な関りはあまり無かったけど、遠くからでもわかる彼女の明るさが今では鳴りを潜め、代わりに野性的で攻撃的な印象を感じた。

 

「いったいこの百花繚乱に何しに来たの?」

 

「………」

 

私は持っていた提灯を傍らに置いて、両手で銃をイズナに構える。

 

「答えたくない…ね」

 

「………」

 

何か言えないことなのか、密命なのかイズナは一向に口を開く様子を見せない。

 

「はぁ……。だったら忍術研究部にあんたを引き取ってもらうしかないかな」

 

「……ッ!?忍術研究部は関係ありません!!」

 

先ほどとは変わってイズナが声を荒げる。

 

その様子が物語っていた。遊びでは無いことを。

 

「そう……なら捕まえて尋問するしかないね」

 

「……逃がしてくれませんよね。かくなる上は」

 

腿に巻かれたクナイの手を伸ばすイズナに私は、距離を取りながら警戒する。

 

任務や水上祭で見た彼女は、接近戦に優れていた。

 

私の苦手なスタイル……。忍者というなら絡めても多いはず。流して組技は悪手か……?

 

お互い相手がどう出るか警戒し動かない。

 

このまま相手に考えさせるのもいけないか。

 

だったらまず先手は私が貰う!

 

「あは…いくらイズナさんといえど百花繚乱の参謀相手は厳しいですかね」

 

「……ッ!?」

 

私がまさに撃とうとした時、私たちしかいなかった部屋に第3の声が響いた。

 

「かといってイズナさんを逃がすことも難しいですし、どうしましょうか?」

 

それは提灯で出来た光から影のように出てきて、やがて実体化する。

 

「……まさかあんたらが出てくるなんてね」

 

「……アザミ殿」

 

花鳥風月部怪芸家、土生アザミ。

 

アヤメ先輩が起した事件で暗躍していた人物がなぜここに……?

 

「あんたら…なんて花鳥風月部が常に集団で行動しているみたいに言うのは止めてください。今はここにいるイズナさんが私のパートナーなのですから」

 

「今度は何を企んでいるの?あんたら……あんたが動くとろくなことにならないんだから」

 

「あは…お気遣いありがとうございます。……そうですね。百花繚乱の参謀、桐生キキョウさん。貴女も私たちの計画の協力するのならば教えましょうか?」

 

「馬鹿言わないで……。あんたなんかのくだらない計画に協力するわけないでしょ。話さないならそっちの狐だけでも捕まえる」

 

「くだらなくなんてない!!」

 

「……!?」

 

私のくだらないという言葉に反応してイズナが声を荒げた。

 

「くだらなくなんてありません!!私たちは……!先生殿を生き返らせる際中なんですから!!」

 

「……………は?」

 

……先生を生き返らせる?

 

「……イズナさん。あんまり計画をペラペラ話されるのは」

 

「あ……申し訳ありませんアザミ殿」

 

「……どうゆう…ことなの?」

 

「はぁ……どうせ協力は得られると思うので話してしまいましょうか。もう少し引っ張りたかったんですがね」

 

「生き返らせるって…怪書の力じゃないでしょうね?そんな甘い言葉でその子を騙したの?」

 

土生アザミの持つ怪書、稲亭物怪録。

 

恐怖を形にし、使役する怪書。

 

以前その力でナグサ先輩の恐怖からアヤメ先輩の幻を具現化し、私たちを騙した。

 

確かにその力があれば先生は具現化できるだろう。

 

生徒に甘い先生だが、あんなんでも超法規的機関シャーレの主。先生の活動はそこらで恐れられている。

 

「怪芸家の私が客を飽きさせるような同じことをするわけないでしょう?それに幻は所詮幻でしかないですからね」

 

そう言うとアザミは私が見たこともない1冊の本を取り出した。

 

「今回はこれを使います。百鬼夜行陰陽部から拝借した禁書・反魂黄泉還秘録をね」

 

反魂黄泉還秘録……?

 

「文字通り死者の魂を呼び寄せ、この世に戻すことのできる禁書です」

 

「……信じれるわけ」

 

「信じなくて結構!……ですが信じれないなら貴女はこのまま一生先生とは会えなくなることでしょう」

 

死者の魂を呼び寄せる?生き返らせる?

 

突然の情報の濃密さに頭がこんがらがってくる。

 

「陰陽部の地下、厳重な鍵の先で保管されていた禁書です。力が無いものを陰陽部はわざわざ保管なんてしないでしょう。……まぁ少し手順が面倒ですがこのぐらいなら何とかなります」

 

明らかに裏がある提案。こんな提案は罠に飛び込んでいくに等しい。

 

「あなたのような参謀さんに協力してもらえれば、先生は予定よりも早く生き返ることができるでしょう」

 

百花繚乱なら当然断る誘い、

 

……だけど私はまたあの熱を感じたい。

 

「さぁどうしますか?」

 

一縷の希望が見えてしまった私は、自分の中にこびりついた、くすぶった熱に身を宿することしか出来なかった。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「犯人は…君だね?……キキョウ」

 

夜、月明りが照らす百花繚乱修練場。

 

計画を実行に移すため、部室棟にいる皆を置いて、百花繚乱まで目的の物を取りに来た私の前に、アイが現れた。

 

私に向って指さす姿は、確信を感じさせた。

 

「そう……気付いていたのね。特に言い訳するつもりもないけど、いつわかったの?」

 

私がすんなりと認めたことにアイは、驚きと悲しみの表情を浮かべた。

 

私ももう今更戻れない所にいるし、今更言い逃れるつもりもない。

 

「本当に確信したのは今さっきだよ。諸事情によってあんまり誰かを疑いたくないんだけどね」

 

アイは持っていた十手をクルクルと回しながら話し始めた。

 

「私の気になったことは2つ。1つ目は今のセキュリティの問題」

 

「何?ずさんだって言いたいわけ?」

 

「逆だよ。流石は百花繚乱の参謀。お散歩中に見たけど完璧すぎるセキュリティだ。1回侵入されたあとにレベル上げたんだろうけど、私もここまで入るのに大分苦労したしね。だからこそ思ったんだよ、イズナはこんなセキュリティが厳しいところを、しかも百花繚乱全員がいる時に侵入するかなって」

 

「………」

 

「もしかしたら、2回目はイズナは侵入事態してないんじゃないか?考えたくないけど内部の子ならレンゲのリボンを盗むなんて簡単だし、わざわざセキュリティを解除してイズナを招き入れるより、自分で取ったほうが楽だからね。犯行が終わったら外で待機してもらってたイズナに逃げてもらえれば、あたかも今盗まれて逃げられそうになってるって見せかけることが出来る」

 

「はぁ……そこまでわかってるのね。私の………いや私の腕も落ちたかな」

 

ここまであてられるなんて、ね。

 

私の参謀としての仕事が仇になったかな。

 

協力者だからって生半可な仕事をしてたらそれこそ私が疑われる。

 

「それでもう1つは」

 

「……それ、だよ」

 

「…それ?」

 

「キキョウ、今何言いかけたの?」

 

「は?……特に何も言いかけてないけど?」

 

「自分で気付いてない?」

 

私はもったいぶるようなアイの言い方に怪訝な顔を浮かべる。

 

「レンゲは切り込み隊長、ユカリはえりーと、ナッグだって百花繚乱の委員長だって言ってたけど。……キキョウ、君だけが自分の役職を言ってないんだよ」

 

「……ッ!?」

 

「最初はただの人見知りだと思ったけどね。だけどそのあと、誰かに参謀として紹介される度に少し言い淀んでいたよね。それで気になったんだよ。……キキョウに何かあったんじゃないかって」

 

 

『身共は百花繚乱のえりーと、勘解由小路ユカリと申します!以後お見知りおきを!』

『…………同じく、桐生キキョウ』

 

『アタシでもスラスラと頭の中に入ってくるよ。流石百花繚乱の参謀だな』

『…このくらい当り前よ』

 

『当然。修練場まで追いつめて、何発も撃ち込んでやったわ。流石に逃げていく相手に1人で追いつけなかったけどね』

『それだけでも凄いって。謙遜すんなよ百花繚乱の参謀さん』

『…そうね。結局の所2回目は侵入を許しちゃったわけだし。2回目は私が気付いた時にはすでに犯行を終えて脱出するときだったわ』

 

 

「今も本当は『私の参謀としての腕』って言いたかったんじゃないかな?」

 

……言えるわけないでしょ。

 

こんな私が、百花繚乱を裏切った私がのうのうと自分が参謀なんて言えるわけがない。

 

だってもう私は百花繚乱にふさわしくないから。

 

本当なら今百花繚乱にいることすらおこがましい私が。

 

「前に先生が言ってたよ。百鬼夜行には自分の仕事に誇りを持ってる生徒がいるってね」

 

……せんせい

 

「それって君のことだったんだね。……キキョウ」

 

今、その名前を出さないで

 

あぁ 私の中の熱がくすぶる

 

まだ……まだ駄目……!!

 

「うぅ……!」

 

私の中でくすぶる貴方の熱を思い出し胸を抑える。

 

「キキョウ…!」

 

私の様子に異変を感じアイがこちら走って近づいてくる。

 

だがそれは、まとわりつくような声によって妨げられた。

 

「あまり私のお友達を虐めないでもらえますかあ?」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「あまり私のお友達を虐めないでもらえますかあ?」

 

私の問い掛けに急に胸を抑え、異変を見せたキキョウの元に駆け寄る。

 

しかし百花繚乱修練場、月明りの照らさない片隅の影から、耳のまとわりつくような声が聞こえ私は足を止めた。

 

声が聞こえた後に、影からぬるりと白髪……いや、白蛇の髪をした少女が現れる。

 

「誰が……お友達よ……。随分と遅かったじゃない……」

 

「あは…お互いが同じ目標に向って協力する。まるでお友達や仲間のような物じゃないですか」

 

「思っても無いことを……。あくまで私とあんたはただの協力関係。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 

「ふふ……残念ですね」

 

突然出てきた土生アザミの軽口に、キキョウも額から脂汗を流しながら返す。

 

「うへぇ……出たな闇の図書委員」

 

「おや……あまり私の登場に驚いてないようですね。貴女はたしか……参謀さんが言っていたアイさんですか。どうやら各学園の揉め事を解決してきたとか……」

 

「私も知ってるよ君のこと。……前に百鬼夜行に攻め込んで来て、失敗したんだっけ?」

 

「……どうやら喧嘩を売るのがお好きなようですね。初対面相手に喧嘩を売るなんてマナーがなっていないのでは?」

 

「悪いけどこれで生計立ててるからな。……それにだって、イズナをそそのかしたのは君だろう?」

 

「なるほど…頭は回るようですね。この状況になっているのもうなずけます」

 

「イズナが盗み出した禁書のことにずっと疑問を持っていた。いったいイズナは誰から禁書のことを聞いたのかって。考えてみれば怪書なんかに詳しいお前らを怪しむのは正しいわけだ」

 

「そうですね……正しい。ですが少し遅かったですね」

 

アザミは怪しくニヤリと笑う。

 

「さて、参謀さん。少しは落ち着きましたか?……それで、あれはどこに?」

 

「……掛け軸の裏」

 

アザミが何かをキキョウに聞くと、彼女らのすぐ後ろに掛けてあった掛け軸へ手を伸ばし、そのまま掛け軸の裏を調べる。

 

「あぁありました」

 

アザミが何かを見つけ手を出す。

 

「白いリボン?……まさかレンゲのか!?」

 

「ここしばらくは文書での連絡しかしていませんでしたからね。会えなかったのでこうして隠してもらっておいたんですよ」

 

アザミはリボンを取ると、自分の懐へとしまった。

 

「……では参謀さん。これからは貴女の時間ですよ」

 

「わかってる。……覚悟は出来てる、思い切りやって」

 

そしてアザミは、怪書『稲亭物怪録』を開いた。

 

「……ッ!待て!キキョウ!!」

 

「遅い!!もう計画はもう進行している!!……そのくすぶった熱を再燃させろ!!」

 

怪書から出た闇がキキョウを包む。

 

 

・

・

・

 

 

寒い

 

寒い

 

寒い

 

貴方がいなくなって

 

貴方の身体から体温が抜けて

 

貴方がどんどんと冷たくなって

 

私が大事に思ったことは全部私が壊していく

 

この町も百花繚乱も貴方も

 

それでもいい

 

またあの熱があれば

 

貴方の体温があれば私はどうなっても大丈夫

 

私を焦がす程の熱があれば

 

だからもっと熱をちょうだい

 

周りを焦がすほどの熱を!!

 

そして

 

私をも焦がす熱を

 

 

・

・

・

 

 

「あぁ……やはり、私の怪談は……素晴らしい」

 

燃える燃える。

 

全てが燃えていく。

 

私を中心にして全てが燃えていく。

 

「使命の為に全てを投げうち、死者を奪い、運ぶ。たった1人のために狂乱へ身を投じ、他の安寧を脅かす姿を周りは恐怖するでしょう」

 

この百花繚乱も私の背負った百花繚乱の羽織も。

 

修練場ごと炎で身が焦げる感覚。

 

あぁ熱が欲しい。もっと熱を。

 

「そう…『火車(かしゃ)』とでも名付けましょうか」

 

自分から出る炎に包まれながら、やけに落ち着いた頭で怪談によって変わってしまった自分の身体を見る。

 

腕や足は鬼のように赤く染まり、炎の風でなびいて視界に映る髪は、炎のように赤く色づいている。

 

「その姿はまさしく炎の化身。周りの炎が貴女に力を与えてくれるでしょう」

 

「そう。ならもっと燃やさないとね」

 

私が手をあげると燃え盛る炎が形を成して、火のついた大きな2つの車輪が浮かび出てくる。

 

「ここから始まる……私の熱を広げていかなきゃ……」

 

車輪を操作し自分の熱を広げようとした時、闇の中で輝くような白い影がこちらに猛スピードで突っ込んできた。

 

それは何かを振り上げて向ってきて、私は車輪で自分の身を守る。

 

白い影はガキンッと勢いよく車輪に十手を叩きつけた。

 

「へぇ!?あなた火車って言うのね?ずっとファンでした!サインとか貰ってもいい!?」

 

「アイ……邪魔しないで。私はこれからやることがたくさんあるの」

 

「ファンとの交流って大切だと思うよ?」

 

車輪でアイの攻撃を弾き、勢いに任せアイ自体も弾く。

 

車輪に弾かれたアイは、勢い良く跳んでいき修練場の壁へとぶつかった。

 

「もっと見ていたいですが、私もやることがありますのでこれにて失礼しますね」

 

「あぁまだいたの。あんたはあんたのやることをしなさい」

 

「……では私は会場広場で準備をしてますので。そちらのことが終わったら来てください」

 

「わかったわ」

 

事もなげに陰に溶けていくアザミを見送って、私は修練場の出口へと向かう。

 

「……聞いてたでしょう?私たちはやることがあるの。だからそこ、どいて?」

 

「……キキョウのその能力って炎を操る能力(モード)?それとも熱を操る能力(モード)?……まさかこんなセリフを絶好の状況で言えることになるなんてね」

 

しかしそこにアイが出口を塞ぐように立ちふさがった。

 

「まぁそれでも言えることは1つ。……どかしてみろ」

 

アイは強がって見えるが、肩で息をしながら燃え盛る修練場の炎のせいで、大分疲弊しているように見える。

 

「なら容赦しないから。時間もないし終わりにしましょう」

 

邪魔するなら容赦しない。

 

私はもう1度、2つの車輪を自分の元に引き寄せアイに放った。

 

『まだ終わっちゃいない!!』

 

突然修練場の向こうから聞こえる声。

 

私はその声が聞こえた瞬間、アイに飛ばしていた車輪の軌道を変え、声の主の方へと飛ばした。

 

瞬間。轟音とともに眩い爆撃が壁を貫通しながら私を襲った。

 

幸い私の車輪が威力を軽減していたおかげで、すぐに体制を立て直す。

 

「まさかお前相手にこう名乗るなんてな」

 

壊れた壁に足をかけ、今となっては忌まわしい声が響く。

 

「百花繚乱切り込み隊長、不破レンゲ。……ここに参る」

 

 




転生先生、嘯く 32話
5章百鬼夜行編ノ6
岩手にカッパ捕獲許可証ってのがあるんだって
あれ欲しいんだけど皆知ってる?
……………行こうぜ岩手へ!

拙き作品ゆえよろしくお願いいたします
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