転生先生、嘯く   作:あまいろ+

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回る炎、重くなる身

突然の爆風とともに破壊された壁。

 

破壊されて崩れた壁からは、赤い竜のような尻尾を生やした不破レンゲが現れた。

 

「レンゲちゃん!」

 

「悪いなアイ。ちょっと遅れちまった」

 

レンゲはこちらを見てニカッと笑うと、燃え盛る修練場へと入っていき私とキキョウの間に立った。

 

「アイ、コイツの相手はアタシが変わるよ」

 

「……いや、2人で相手したほうが」

 

「何言ってるんだよ。この炎の中じゃアイも辛いだろ?アタシは熱血の切り込み隊長、このくらいの熱さなんてへっちゃらだからさ。安心して任せてくれよ」

 

「……レンゲちゃん」

 

「……それにちょっと2人で話したいこともあるしな」

 

レンゲはそう言うとキキョウを見ていた目を鋭くする。

 

「それにここに来る途中、町の方も何かあったみたいで大変なんだ。アイはそっちの方を頼むよ」

 

「そっか……。じゃぁこっちは任せるよ!」

 

「先輩やユカリにも伝えておいてくれ。任せておけってな!!」

 

私は、心配もあったがキキョウをレンゲに任せ修練場を出る。

 

そしてその間、不思議とキキョウの妨害は無かった。

 

 

 

 

「……なんて姿してんだよキキョウ。それが花鳥風月部の奴に組してまでやりたかったことなのかよ」

 

「……はぁ。まったく、アイとの話を盗み聞きしてたの?それにこんな姿になりたかったわけじゃない。あくまでこれは手段。私は私のやりたいことをするだけ。そのために必要なことなの」

 

「……お前は昔からそうだよな。冷たいくせに意固地で頑固で。そのくせ1人で抱え込んで突っ走る」

 

「何…急に?そんなこと自分でもわかってる。昔話でもしたいわけ?」

 

「違えよ。だからわかるんだよ。なんで言わなかったのか…とか。そんなことやめろ…なんて、今更言って聞く奴じゃないってことぐらいよ」

 

「………」

 

「今のお前は百花繚乱の参謀じゃない」

 

「……その通りよ。……もう私は百花繚乱じゃない」

 

「でもアタシとお前は幼馴染だ」

 

「………」

 

「昔は自分の意見が通らなかった時には、よく喧嘩したよな。だけどお互い成長して役割を貰ってからは、自然としなくなった」

 

「……やっぱり昔話じゃない」

 

「それでもアタシの言いたいことはわかるだろ」

 

「……そうね。私は…全てを燃やしてしまいたい。目に映る全てを」

 

「アタシはそんな馬鹿なことをするお前をぶっ飛ばしたい」

 

「丁度邪魔者もいない2人きり。目覚めの運動にはちょうどいいかもね」

 

「それにしてもお前、随分とアイをすんなり行かせてくれたな」

 

「これも作戦よ。……さっきあの子と戦ってみたけど、大分強かったから。あの子とアンタの2人がかりで来られたら面倒だったけど、アンタだけならね」

 

「なんだそりゃ?もしかしてアタシだけなら勝てるとでも言いたげだな?」

 

「……そう言ってるの。何度も言われないとわからない?」

 

「随分と余裕そうだなキキョウ!?水上祭でアタシ相手に負けたこと忘れちまったのか!?そのぶっ飛んだ姿になったら記憶まで飛んじまったのかよ!?」

 

「あんな狭いステージで勝ったことが随分と誇らしいのねレンゲ!?私のテリトリーでそんなこと言えちゃうなんて、あのステージみたいにアンタの視野も狭いのかしら!?」

 

「ハハッ!!お前も熱くなってきたな!?また昔みたいに喧嘩するか!!」

 

「……上等よ!力押しの馬鹿になんか負けないから…!」

 

『さぁ…』

 

「燃やしてやるぜ!!」「燃やしてあげる…!!」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「はぁ……ふぅ……」

 

キキョウのことをレンゲに任せた私は、どうにかして百花繚乱の門までたどり着く。

 

キキョウの展開した炎のステージによる、酸欠と火傷によって頭が少しクラクラするが、それは問題じゃない。

 

キキョウのことは置いておいても、アザミが禁書を使ってなにをしでかすかわからない以上、私も急がなくてはならない。

 

私はふらつく頭を抱えて門から出て1歩2歩と歩くと、何やら遠くの方が明るいことに気付く。

 

遠くからでも激しく揺らめく光に目を凝らすと、それはいたるところで上がっていた炎の群れであり、今百鬼夜行が火災で火に包まれているのだとわかった。

 

「……前から燃えるイメージが強い町だと思ってたけど、また燃えたのか」

 

なおも働かない頭で私も現場に向おうとするが、少し歩いただけで力なく膝から崩れてしまう。

 

「何やってるんですかアイちゃん!」

 

私がなおも立ち上がろうとしていると、私のすぐ背後から大きな声で止められた。

 

「今貴女は炎の中にいて一酸化炭素中毒になってるんです!むやみに動かないでください!」

 

「……セリナ…いたのか」

 

「ずっといました!ほら、そっちに座ってください!」

 

私は突然現れたセリナによって道路横に座らせられ、次にシャツのボタンが開けられていく。

 

「はい……このままゆっくり深く呼吸してください。……そのまま何回も」

 

彼女の言われた通り、深呼吸を何度も行い肺に新鮮な空気を取り込んでいく。

 

その間セリナは私の胸に手をあて、呼吸の様子を確かめていた。

 

「アイちゃんの不思議な身体のおかげでどうやら軽度の症状のようですね」

 

セリナの素早い処置のおかげか、だんだんと意識がはっきりとしてきた。

 

「ではこのまま火傷の治療に入ります。アイちゃんはその間どなたかに連絡して、状況を確認してはどうですか?」

 

「あ、はい」

 

私はセリナに促され、素直に携帯を取り出した。

 

さてと、誰に掛けるか……。

 

少し悩んだ後に、我がチームのブレーン棗イロハの番号にコールする。

 

私の掛けた電話は1コールもしないうちに繋がった。

 

『はい棗です早速ですがアイあなた今どこにいるんですか?』

 

わぁ……凄い早口……。しかも心なしか怒ってる気がする。

 

「はい……今私は、百花繚乱の前にいます。ごめんなさい」

 

私は電話越しに今の状況をイロハに伝えた。

 

『はぁ~~~。何やってるんですか本当……』

 

「勝手して申し訳ない……」

 

『怪我は無いんですか?身体は大丈夫ですか?』

 

「いや……まぁ……バチバチにあるけど、今セリナに手当てしてもらってる」

 

『…………勝手するのは、まぁ……アイなので、もうそこらへんは諦めていますが。せめて連絡はしてください』

 

「うっす……。ちょっと家に持ち帰って検討して精査します……」

 

『そんなに難しいこと言ってますかね?』

 

「ほら……私、転生したてだから0歳みたいなもんだし」

 

『そうですか。では今度から食事は全て哺乳瓶であげますね。安心してください、しっかり私がお世話してあげますから』

 

「嫌だよ!?どんな特殊プレイ!?」

 

『本来ならお金を払ってするサービスを、ただでしてあげるんですよ。お得でしょう?』

 

「社会的地位を失うってことで大損なんだよなぁ」

 

それに特殊性癖はアコとユウカで十分だ。

 

『これだけ元気に話せるなら安心そうですね。……まったく。とりあえず勝手するのも生徒のためなのでしょう。仕方ないことだとはわかっていますが、どこにいるかぐらいの連絡はしてください。……私が貴方を心配しないとでも思っているんですか?』

 

「……わかったよ、ごめんね。今度から連絡するよ。…………出来るだけ」

 

『……40点って所ですかね。最後の言葉が無ければ100点でした』

 

「マジで?部分点引かれすぎじゃない?」

 

・

・

・

 

『さて、無駄話も終わりにして今の状況を確認しましょう』

 

「そうだね、お願い」

 

『今百鬼夜行では、突然いくつかの家屋で爆発が起り、それが原因で多くの所で火災が発生しています』

 

「あぁ。それが今見える火事の原因なんだね」

 

『はい、それにニヤさんが言うところ、火の回りが異常に早いらしいです。おおよそキキョウさんと、花鳥風月部によって綿密に計画されていたのでしょう』

 

「……百花繚乱の参謀なら…できるか」

 

『火事の対応として、陰陽部とミカさんが指揮して、あたりの避難や鎮火に尽力しています』

 

「うんわかった。他は何かある?」

 

『あとは……火事に紛れて変なものが……あっ!?』

 

『にゃはは!その説明は私がしますよぉ~』

 

「ニヤ?」

 

イロハの携帯を借りたのか、電話口からニヤの声が聞こえた。

 

『せん……周りに人もいますのでアイちゃんで通しますか!アイちゃん、以前貴女が遭遇した、怪書で作られた化け物……覚えていますよね?』

 

「化け物……うん、覚えているよ」

 

以前遭遇した化け物。おそらくニヤが言っているのは、達磨や傘、提灯などの付喪神が元になった化け物。そしてツチノコのような化け物の事だろう。

 

「それがどうしたの?」

 

『にゃはっ。イロハさんとの電話をこ~っそり聞いていたのですが、どうやら花鳥風月部が関わっているようで?』

 

「アザミが現れたんだよ。あ~……その感じだと、出てる?」

 

『はい〜!!』

 

「元気があってよろしいですね……」

 

『にゃはは!とりあえずは、これからナグサさんとユカリさんに連絡してアイちゃんの所に向かわせますので、彼女らと合流してください~』

 

「了解。ナグサ達と合流したら、会場広場に向かうね」

 

『にゃは?会場広場ですか?』

 

「そうそう。どうやら会場広場で何かするらしいって話してたからね」

 

『にゃは~。わかりました。くれぐれもお気を付けてください~』

 

私はピッと電話を切り、ニヤとの会話を切る。

 

「お話は終わりましたか?」

 

「うん。ありがとうねセリナ」

 

「どういたしましてアイちゃん」

 

私の話している最中に治療を終えたセリナが、こちらを心配そうに見ている。

 

「……行くんですよね」

 

「行ってくるよ」

 

「アイちゃん……いえ先生」

 

セリナはしばらく私を見ると意を決したように話し出した。

 

「先生。私は正直貴方にこれ以上、怪我をしてほしくありません」

 

「……うん」

 

「今からあの火事の現場に行って欲しくないし、これからも戦いに行って欲しくありません」

 

「……うん」

 

「今すぐにでも監禁して、トラブルとは無縁な生活を送ってほしいと思ってます」

 

「……うん?」

 

「縛り付けて、拘束して、閉じ込めて。私に全てお世話されながら暮らして欲しいと思っています」

 

「……それを聞かされて私はどうすればいいの?震えればいい?」

 

「真面目に話してるんです。ふざけないでください先生」

 

「いや、ふざけないとやってけないぐらいの恐怖はあるからね?」

 

「そのくらい先生をあの時、救護できなかったことを私はとても後悔しているんですよ。ですがそれをしないのは同時に先生のことを尊重しているからです」

 

前に私が死んだ時の話を聞いた。

 

私が撃たれた時はほぼ即死の状態だったが、それでも救護騎士団の元に運ばれたらしい。

 

そこでセリナも私の救護を必死になってしてくれたと聞いた。

 

「この旅のなか何度、無理をする貴方を攫ってしまいたくなったかわかりません」

 

「………」

 

つい軽口を言いそうになったが止めた。

 

なぜなら素っ頓狂なことを口走るセリナの顔があまりにも悲しそうだったから。

 

「先生、この際なので約束してください」

 

「約束?」

 

約束かぁ。私どんどん重くなっていく気がする。

 

「……あまり無理をしないでください」

 

「……それは」

 

「わかっています。……わかっているんです。貴方が度の超えた生徒思いだということも。生徒のためなら無理も承知でいとわないことも。……この約束に簡単に答えられないということも」

 

「………」

 

「ですからその時は、私を頼ってください」

 

セリナは私を強く見ると、言い聞かせるように私に話す。

 

「私じゃなくても構いません。イロハさん、ミカさん、カヨコさん、トキさん。今でも先生の事情をわかって手を貸してくれる生徒は多いはずです。だから」

 

セリナは私の手に、自分の両手を重ねた。

 

「どうしても無理をするなら、私たちを頼ってください。貴方が私たちを守ってくれるように、私たちにも貴方を……」

 

セリナの手に力が入り、私の手を強く握る。

 

「……守らせて。1人で無茶しないで」

 

消え入りそうな、でもはっきりと聞こえた声。

 

その声に私は答える。

 

「約束するよ」

 

「……本当ですか?聞き分けがない患者は嫌いですよ?」

 

「私そんな信用な「はい」…あ、ほんとすいません」

 

食い気味で否定された……。

 

「ふふ、約束ですからね?破ったら承知しませんよ?」

 

「ちゃんと頼るようにするよ……」

 

セリナは先ほどの悲しげな顔を引っ込めやっと笑顔を見せる。

 

「……ですがそうですね。ダメ押しも、必要ですかね」

 

セリナは握っていた私の手を持って自分の顔に近づけると、私の手のひらを頬にあてる。

 

「実はですね」

 

「ん?実は?」

 

セリナはニッコリと笑う。

 

「実は、もう部屋は用意してるんですよ」

 

「部屋?…………え?」

 

しかしニッコリと笑うセリナの目の奥に。

 

「不自由は、させませんから」

 

光は無かった。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「あ、アイ。来たね」

 

「アイさん!!遅いですわ!!」

 

「ナッグ!ユカリ!」

 

私はセリナを連れて、ニヤの言う通りナグサ達と合流する。

 

ついでにセリナの事も軽く説明した。

 

2人とも私を待っている間、避難の手伝いをしているようだった。

 

「アイさんのお仲間ですのね!よろしくお願いしますの!」

 

「はい。お怪我をしたらすぐに言ってくださいね」

 

「ニヤ様から話は聞いてる。会場広場に行けばいいんだっけ?」

 

「そうだけど……。キキョウとレンゲは大丈夫なの?」

 

「……。キキョウ先輩……レンゲ先輩」

 

「………」

 

イロハ伝手でニヤから元凶の話は聞いてるだろう。

 

私との合流を待ってくれたのは嬉しいが、百花繚乱の仲間同士がこの先で戦っている。

 

仲間思いの2人なら今すぐにも行きたいだろう。

 

「こっちは私たちで行くから百花繚乱に行ってもいいんだよ?」

 

「大丈夫。元はといえば私達から出たことだから。私たちの都合で町の皆の危機を放っておくわけにはいかない」

 

「……そうですの!それにレンゲ先輩は任せておけと言っていたらしいですの!なので身共達はアイさんと一緒に事件の解決をお手伝いしますの!」

 

「そっか。じゃぁ行こう!」

 

「うん……!」「はいですの!!」

 

そうして私たちは、2人を連れて炎の町を突き進んだ。

 

しばらく道なりに進んでいると、私達の進む予定の道に達磨やツチノコが動いているのが見えた。

 

「出たね……。アイ、あれらの対処法…知ってる?」

 

「わかってるよ。通常の銃は効かないんだよね?」

 

「そう。唯一効果があるのは私の白蓮だけ」

 

「でも物理法則には従いますので、地面や壁などを撃って地形を利用すれば動きを止めることが出来ますの!」

 

私たちが近づくと、向こうの達磨たちも私たちの存在に気付き、戦闘態勢に移行する。

 

放たれる銃弾を潜り抜け、私とセリナとユカリで敵の体勢を崩し、そこにナグサが確実に撃ち込んでいく。

 

何体かいた敵あっという間に消えてしまった。

 

「皆さん怪我はありませんか?」

 

「平気。……2人ともやるね」

 

なおも出てくる敵を倒しながら進んでいると、わき道からゴトゴトと何かが転がりこっちに向ってくる音が聞こえてくる。

 

「……何か聞こえる」

 

「ナグサ先輩?」

 

私たちは聞こえてくる音を不審に思い、立ち止まって耳をすましていくと、どんどん何かが転がる音が近くなってくる。

 

「何の音でしょうか?」

 

しばらく警戒していると音の聞こえる方向から、火が縦回転しながら近づいてきた。

 

全員がその姿を視認すると銃を構える。

 

ついに回る火がはっきりと見えるぐらいまで近づくとその異様さに気付いた。

 

それは直径2メートルぐらいの大きい車輪であった。

 

木でできた車輪。車輪の外側はゴウゴウと燃え、転がるように回転している。

 

だが1番の異様さは、車輪の真ん中に顔がついていることだった。

 

その車輪は私たちまで近づくと、横に半回転して鬼のような顔を見せるとニタニタ笑った。

 

「これは……輪入道だ!」

 

「もしかして…これも…?」

 

「怪書によって生み出された化け物…なんですの?」

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

輪入道はまた半回転すると、私たちに勢いよく炎を纏いながら突っ込んでくる。

 

「みんな横に避けろ!」

 

私の声に皆反応し、全員が横に飛んだ。

 

なんとか全員避けられたが、輪入道が通った所は燃え炎が残る。

 

「早い…!けど攻撃の予想はしやすい…!」

 

ナグサは素早く体勢を整えると白蓮を構え、輪入道に何発か撃ち込む。

 

しかしナグサの撃った弾は車輪の外角を少し削る程度だった。

 

「……ッ!?ダメージがない!?」

 

「そんな!?ナグサ先輩の白蓮が効かないなんて!?」

 

いや……。ナグサの撃った弾は、確実に輪入道に届いてる。

 

車輪の外角を削るとはいえ、ダメージはダメージだ。

 

試しに私の爽やかチョコミントで、輪入道を撃ってみる。

 

だが私の弾は輪入道をすり抜け、向こう側に行ってしまった。

 

多分車輪の部分は、凄い固いのだろう。

 

ならば……。

 

「ナッグ!私が引き付ける!ナッグは顔を狙って!」

 

「……わかった!」

 

「セリナとユカリはナグサのフォローを!」

 

私は輪入道の注意を引き付けるため、前に飛び出す。

 

「な・に・が効くかなっと」

 

私は自分の装備を思い出しながら、輪入道の元に走った。

 

「……あった」

 

私はコインの束を、取り出すとコインに自分の神秘を流す。

 

「ショット!!」

 

そして神秘を込めたコインを思い切り輪入道に投げつけた。

 

しかし思った通り、攻撃はすり抜けてしまう。

 

ていうか神秘を込めた攻撃も効かないのか……。

 

「ま、今ので注意は引けたかな」

 

コインの攻撃で、私に狙いを決めたのか、輪入道はニタニタしながら先ほどのように勢いよく転がってくる。

 

「確かに早いけど……避けるのは容易い!!」

 

こっちに突っ込んでくるとはいえ、ただ真っ直ぐ来る相手なんて、銃弾を見切る私には避けることは容易い。

 

もう1度避けられたのが癪に触ったのか、私を通り過ぎた輪入道は横回転で、所謂スピンをしながら咆哮をあげた。

 

「いつの間にかニヤけ面もお終いかい?」

 

私の煽りに化け物なりに気付いたのか、今度は先ほどよりもスピードを増して突っ込んでくる。

 

だがまだ、全然かわせる許容範囲内。

 

その油断がいけなかった。

 

いざかわそうと思い避けようとすると、近くの壁にひびが入る。

 

するとひびがだんだんと広がっていき、もう1匹の輪入道が壁を壊しながら入ってきた。

 

「……おっと!?」

 

壁を壊して突っ込んできた輪入道はかわせず、モロにくらいそうになるが寸前で十手を私と輪入道の間にはさみ、なんとか直撃を避ける

 

しかしぶつかった勢いは殺しきれず、私は飛ばされ地面に転がった。

 

「いったぁ……。あぁ…あの回転と咆哮は仲間を呼んでたのか。……小賢しいやつらめ」

 

やっばい。あんなこと言ったすぐ後に怪我なんてしたら……セリナに怒られる。

 

私が顔をあげると、すでに輪入道たちは回転を始め、こっちに突っ込む準備が完了していた。

 

十手で防御は出来るとはいえ、攻撃が出来ないのはキツイな……。

 

なんとか攻撃手段を見つけようとしていると、地面に転がった拍子に背中に背負った武器の感触を思い出した。

 

「……妖刀『廻間破』」

 

私は背負っていた妖刀を抜き呟く。

 

「いっちょ試してみるか」

 

私はすでにこっちに迫ってきている輪入道たちに、妖刀を構え向かった。

 

「ようし!その切れ味を見せろ!」

 

私と輪入道たちの距離があっという間に近づく。

 

私は妖刀に自分の神秘を流して強化し、妖刀を振ろ……

 

「え?」

 

うとするが、私が神秘を注入するとなぜか、海に電気を流すよかのように神秘が妖刀全体に流れ霧散する。

 

「うっそでしょ!!??」

 

もう目前まで迫る輪入道。

 

この状態では妖刀を振りぬく死か……しか!選択肢が無く。

 

「わあああ!!いっけーー!!〇ッド〇ット〇リペッパー!!??」

 

私は妖刀『廻間破』を輪入道に叩きつけた。

 

瞬間、風を切るような感触とともに、輪入道の1匹が真っ二つに切り裂かれ、ボロボロになって闇に消える。

 

「……え?」

 

抵抗なく輪入道が刃が入ったことに私自身も驚いた。

 

もう1匹の輪入道も驚いたらしく、鬼の顔が驚愕の色に染まり動きを止めた。

 

「やっと隙を見せた……」

 

その声とともに、銃弾が飛んできて輪入道の顔に突き刺さる。

 

どうやらナグサの白蓮の銃弾であったため、ダメージが通りもう1匹の輪入道も闇に消えた。

 

どうやら危機は脱したようだ。

 

「アイちゃん!?」

 

輪入道を倒した安堵の1息をつく間もなく、セリナが私に向かって飛んでくる。

 

「大丈夫ですか!?怪我はありませんか!?当たったところを見せてください!?」

 

「まあまあまあ!?大丈夫だよ!?衝撃はあったけど怪我はないから!?」

 

私の身体を触って怪我や傷がないかを確認するセリナを宥めて落ち着かせる。

 

「ごめんアイ……。遅くなったね……」

 

「気にしないでナッグ。それにナッグのおかげで1匹倒せたんだから。ありがとうね」

 

セリナに遅れて、ナグサとユカリの2人も私の元に来る。

 

「それにしても凄いですのアイさん!どうやってあの化け物を倒したんですの!?」

 

「……さぁ~~?私もわからないんだよねぇ」

 

謙遜とかではなく本当にわからない。

 

強化をしようと、神秘を流しても流したはしから抜けてしまう。

 

かといって神秘で強化をしなくても、するりと抵抗なく輪入道を切り裂ける。

 

妖刀の名に相応しい不思議な剣だ。……いや木刀なんだけど。

 

「原因は…その木刀…?不思議な気を感じるけど」

 

「妖刀って紹介されたからかなぁ」

 

「妖刀……ですの?もしかして曰くとかがおありで?」

 

「曰く……あ」

 

『御神木』『切り落とす』『生徒』『不幸』『厄』『封じ込める』『世界』『拒絶』

 

あ…あ~~。

 

御神木を生徒が、つまりキヴォトス人が切り落とした。

 

怒った御神木が、キヴォトス人に厄・呪いを残す。

 

封じ込めた厄は、世界をキヴォトスを拒絶する。

 

神秘あふれるキヴォトス。つまりキヴォトスを拒絶するってことは。

 

「これ……神秘を打ち消してるのか……」




転生先生、嘯く 33話
5章百鬼夜行編ノ7
私、10月に幽霊マンションから幽霊が出そうなマンションに引っ越します☆
引越しだ〜!すっごいめんどくせ〜!
同県に引っ越すんだけど、どうせなら海が見える、縁もゆかりも無い土地に引っ越したかったな〜
とゆわけで少しばかり更新が時間が空くかもしれません
え?いつも時間空いてるだろって?
そうだよ
ではでは拙き作品ゆえよろしくお願いいたします

あまいろの活動纏め:https://lit.link/amairo_phxwb
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