転生先生、嘯く   作:あまいろ+

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潜入、地下での邂逅

ギィ……

 

数分おいて私は、給食部の裏口から息を殺して中に侵入する。

 

そこにあったのは、食材の保管庫や物置ではなく、

 

地下へ続く階段。

 

「前に視察に来た時はこんなの無かったんだけどなぁ」

 

ヒナめ…存分に大改造してくれたようだ。

 

私はさらに足音を殺して階段を降りる。

 

一番下まで降りるとまた扉が現れたが、その先から声が聞こえた。

 

話し声ではないようだが断続的に聞こえている。

 

意を決して私は扉を開く。

 

開いた先に見えたのは、……見渡す限りの牢獄。そして、

 

「あはははははははははははッ!!!」「………もう嫌だ…もう嫌だ…」「………なにも…みたくない」

 

死屍累々。

 

一直線に牢屋が並んでおり、廊下を一望できるがヒナはこの階にいないらしい。

 

なので安心して牢屋の前に出る。牢屋ではゲヘナ生徒はもちろん、スケバン、はたや犬猫の姿をした一般市民も捕まっていた。

 

各々の牢屋の前には、捕まった日にち、罪状など情報が書かれており、その中には、

 

「残り視聴時間?」

 

というおかしな項目も並んでいる。

 

各々違うようで、牢屋によって、『120時間』『360時間』『480時間』と違うようだが、よく観察すると、どうやら罪の重さで変わっているようだ。

 

流石に、ここでは出来ることもないため、しばらく見回るとまた地下に降りる階段を見つける。

 

再度用心しながら先に進むと、今度は少し広めの空間に出た。

 

ヒナがいないか周りを観察していくと、壁にこの階の案内図を見つける。

 

「結構凝ってるな」

 

どうやらここも囚人用の部屋らしい。囚人の為の風呂と面談室。そしてとても大きな視聴覚室。

 

ついでにわかったがここは全地下4階。地下1階:囚人エリア、地下2階:第2囚人エリア、地下3階:職員エリア、地下4階:凶悪犯エリアに分かれているらしい。

 

「このでかい視聴覚室が気になるな…」

 

私はその案内図にしたがって、ゆっくりと視聴覚室を目指す。

 

じっくりと気配をたどり、視聴覚室に誰もいないことを確認すると、私は視聴覚室に通じる扉を開く。

 

扉を開くと確かに視聴覚室にふさわしい、すごく大きいシアターが目に入った。

 

しかし問題があるのは観客側、椅子の方であった。

 

一つ一つの椅子がまるで人体実験でもするかのような仰々しい椅子で、よく見てみると手足や首を拘束できる仕掛けが施されている。

 

そんな椅子が部屋に何十台もあるのだ。

 

まるでここは無理やり何かを見せるための部屋のようだった。

 

ヒナはこの恐ろしい部屋で何をしようとしているのだろうか?

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

私は視聴覚室の部屋を考察しながら、部屋を出て地下3階に向かう。

 

案内板を見ると地下3階には、施設員(ヒナ以外にいるのかわからないが)の為の部屋、そして『調理場』などがあるフロアらしい。

 

「やっぱりあるよなぁ」

 

思い浮かぶは2本角の黒髪の彼女。

 

私は調理場に向かうために、再び気配を殺しながら目的地を目指す。

 

途中厳重な鍵がついている部屋の前を通り過ぎる。ここが4階に続く階段だろうか?

 

あと少しで調理場へたどり着く。その時、

 

「……私は……出か………わ…」

 

「はい、……気………つ……」

 

背後の遠い部屋からかすかな話し声が聞こえた。

 

「ヤバい…」

 

私は慌てて隠れる場所を探す。

 

このまま調理場に隠れることは可能だが、誰かいた場合一巻の終わりになる可能性がある。

 

誰もいない部屋に隠れなければ。

 

私はその案内板にしたがって、ゆっくりと調理場を目指す。

 

急いで隠れ場所を探している間も話し声が大きくなってくる。

 

「誰もいない…場…所…」

 

急いで隠れ場所を探す私が目についたのは、厳重な鍵のついた部屋。恐らく凶悪犯エリア。

 

見つかるよりはと思い、扉の前に向かい急いで自分の神秘を流す。

 

私の神秘は身体を強化したり、流し込んで操作(・・)することができる。

 

近づいてくる足音を感じながら急いで鍵に神秘を流し、扉をこじ開けた私は、慌てて身体を扉の中へ滑り込ませた。

 

危機一髪で危機は回避したが、扉に入った目の前は階段であった。

 

私は滑り込んだ勢いを殺せずに、長い階段を転がり落ちる。

 

そのまま階下まで転がり落ちると、ようやく私の動きは止まった。

 

「いたた…」

 

転がり落ちた私は、身体のあちこちに痛みを感じながらも身体を起こす。

 

幸い身体が頑丈なおかげでたいした怪我は無いようだ。

 

地下4階、凶悪犯エリア。

 

窓もなく薄暗い部屋はその名の通り、他の牢とは違い、より頑丈な作りになっていた。

 

私は誰が収監されているのかと気になり、人がいるだろう牢屋の前まで近づく。

 

牢屋の中には、

 

「ひ、ひな委員長…ひ、ひええええぇっ!!!」

 

「部長落ち着いて!髪色が似てるだけでヒナ委員長じゃないよ!?」

 

ゲヘナでは、ギヴォトスでは悪名名高い温泉開発部の鬼怒川カスミと下倉メグの姿だった。

 

「ひな委員長じゃ…ない…?……ハーハッハッハッハ!!こんなところにお客人が来るなんて珍しいじゃないか!もてなしは出来ないがゆっくりしていきたまえ!」

 

「そうだねー!ヒナ委員長以外と会うなんて久しぶりだし!ねぇねぇお話しよ!」

 

「おぉ…この元気さ、本当に凶悪犯か?」

 

まさか捕まっているとは思えないほどの、熱烈な歓迎。

 

こんな状況だが元気そうで安心した。

 

「こんな薄暗いところでは元気でなくちゃ気が滅入ってしまうからねえ!元気は大事さ!さて、お嬢ちゃん。こんなところまで単身で来るなんて、なかなかガッツがある君は誰なんだい?」

 

「私?私はアイ。よろしくね」

 

「アイちゃんか~可愛い~!!」

 

「可愛さが私の自慢だから…」

 

「フフ、なかなか面白いお嬢ちゃんだ。もちろんお嬢ちゃんだけに自己紹介はさせないとも。私の名前は鬼怒川カスミ、そしてこっちは下倉メグ。どちらも偉大なる温泉開発部さ!」

 

「よろしくね!得意なことは撤去だよ!」

 

「しかし今日はどうしたんだい?まさか私たちを出してくれるとかだと嬉しいんだけどねえ!」

 

「そうなの、アイちゃん?」

 

「出すのは別にいいんだけどさ」

 

「……ほぅ?」

 

「え!?出してくれるって部長!良かったね!」

 

「だけど……1つ取引しようじゃないか」

 

私は顔の前にピッと人差し指を立てる。

 

「……この温泉開発部部長を前にして取引、とはね。先ほど言った通り面白いお嬢ちゃんだ。いいとも、私たちもこの状況にはいささか飽き飽きしているからな。今なら破格の値段で取引しようじゃないか」

 

「取引の内容はこうだ……質問に答えて欲しい」

 

「ほうほう、まぁいいだろう。知っていることなら答えよう。他には?」

 

「それだけ」

 

「それだけ…?本当にそれだけでいいのか?」

 

「ここのこと、ヒナのこと、他の囚人について、を正直に答えてくれさえすれば、5日以内に助けることを約束する」

 

私の取引に違和感を持ったのかカスミは、じっとこちらを見て伺ってくる。

 

「そうか…お嬢ちゃんの狙いは委員長なんだな。仮に私が質問に答えたとしてお嬢ちゃんは委員長をどうしたいんだい?」

 

「そんなの決まってるだろう?」

 

私は、シュッシュと拳を握り撃ちおろす動作をする。

 

「そんなんもう、1発拳骨して止めるだけよ」

 

「………フフッ…ハーハッハッハッハ!!いいだろう気に入った!気に入ったぞお嬢ちゃん!いいだろう君の頼みだ!なんでも正直に答えてやろう!いやー今日は良い日だ!!絶好の発掘日和だな!!」

 

えらく上機嫌になったカスミはひとしきり笑うと満足したように話し出した。

 

「たしか…ここについて聞きたいんだったね?ここはその通り収容所さ。委員長によって捕まった者は、一部の例外を覗き同じ罰を受けるんだ。君は上の階の視聴覚室を見たかい?」

 

「見た見た。なんかやたらハイテクな椅子だったけど…。あれが罰…?」

 

「椅子に座ることが罰じゃない。罰はシアター、つまり強制的に見せられる映像の方さ。囚人はその罪の重さによって、映像を見せられる長さが変わるのさ」

 

「罰が映像?いったいどんな映像なの……?」

 

「丁度いい!ここにも…私には見る機会が無かったから今は埃を被っているが…。見たまえ、この部屋にもテレビが置いてあるだろう?」

 

カスミが指をさす方向には確かにテレビと、プレーヤーと、その映像とやらのDVD ボックスが置いてあった。

 

「今持ってこよう」

 

しばらくの間その周辺は触っていなかったためか、どれもうっすらと埃が積もっている。

 

カスミがお目当てのものを持ってくると軽く埃を払い、こちらにDVDボックスを見せてくれる。

 

タイトルは………

『頭ゲヘナでも絶対に身につく正しい規則・礼儀作法』11巻+特典映像1巻の全12巻(1巻約5時間)。

『特典映像:イエティや火車、デュラハンやチュパカブラといった、ギヴォトスや海外で怪異と会った時の礼儀作法』

 

「こんなものを強制的に何百時間も見せられれば、誰でも真人間になってしまうわけさ。…しかしこのDVD、どこ向けのニーズに合わせた商品なんだ?」

 

…………………………。

 

あれ、わたしがあげたやつだ。

 

一時期、オカルトにはまっていた際に、特典映像のタイトルの面白さに興味を惹かれて買ったのを、ヒナにあげたんだった。

 

後日、目にクマをつけたヒナが、「あれ面白かったわ」と感想を伝えてくれた時は即効で土下座したものだ。

 

………ん?あれ?この罰って私がヒナにこれあげたせいってこと???

 

「ん?どうしたんだ?君、顔色が悪いぞ?」

 

「ななななんでででもないよよよ」

 

「なんでもあるような言い方だが!?」

 

「大丈夫…ちょっと自分の立ち振る舞いを振り返っただけだから…。

 

……まって、今何百時間って言った?

 

もしかして上の牢屋にあった視聴時間って…。

 

「カスミの残り視聴時間って…?」

 

「私か?私はさっき言っていた一部の例外の方さ。確認してみるといい!」

 

二人の牢屋に目を向けると、ここにも罪状などが書かれていて、肝心の視聴時間は。

 

「更生の余地なし…」

 

「ハーハッハッハッハ!!私たちは最初から諦められているってことさ!!見る義務はないが大人しくしとけってやつだな!!」

 

「ヒナぁ……」

 

「今も一応形だけこうしてテレビやらは置かれているがね!監禁されている以外は私たちは自由さ!だが流石に3ヶ月もここにいるのは多少辛いものだがな!」

 

「3ヶッ!!??それがある意味、一番の苦痛なのでは!?」

 

「なぁに幸運なことに私にはメグもいる。温泉について語り合ったり、これからの発掘予定を決めたりと大忙しさ!」

 

「あれ?そのメグは?」

 

「あぁメグなら話が難しくて早々に寝てしまっていたよ」

 

「だからさっきから静かだったのね…。そんなに難しいことは言った覚えはないんだけど」

 

「メグは発掘担当だからな!」

 

とりあえずカスミと話したことでヒナが、何をしているのかが大体わかった。

 

帰ったら、イロハとアコとで作戦会議だな。

 

「じゃぁそろそろ私は行くよ。話聞かせてくれてありがとうカスミ」

 

「いいとも!私と君との仲じゃないか!」

 

「そうだ最後に、そうだなぁ5日、いや3日後にこれを使って脱獄してほしい。できるだけ派手にね」

 

「C4か…。了解した。これならなんとかなるだろう」

 

私は風紀委員から拝借したC4をカスミに渡す。潜入する時にカスミや私の知っている生徒がいた時用に用意しておいたものだ。

 

「じゃ、またねカスミ」

 

「ああ!また会おう!!」

 

カスミに別れを告げた私は転がり落ちてきた階段を上り、地下4階凶悪犯エリアを後にした。

 

 

 

 

 

「ああ、また会おう……先生」

 

「先生。私は自分の評価を自負している。取引と君は言っていたが、この私相手にあんな打算なしな取引を持ち出す人間は、君しかいないのだよ」

 

「あの時、君の目を観察して驚いたさ。だって生徒のことを思う先生の目と酷似していたからね。まったく…私みたいな生徒にするような目ではないよ。その眼差しは私にとって眩しすぎるからよく覚えていたさ」

 

「しかしまだ感動の再開は後にしておこう。ここではふさわしくないからな!先生の為に温泉を用意して待っておくとしよう!!ハーハッハッハッハ!!」

 

 

一方そのころ。

 

扉を開けたアイは、

 

「「あ」」

 

給食部部長、愛清フウカと邂逅していた。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「は~少し楽になってきましたね…」

 

「すみませんがイロハさん。だらけるなら他所でやってもらえますか?」

 

風紀委員会執務室。

 

空崎ヒナを追う為、地獄のジェットコースター(人力)に乗り、究極に気分が悪くなった私はヨロヨロとふらつきながらも、こうして無事に風紀委員の執務室に戻ることができた。

 

現在はまだ続く気持ち悪さを回復させるべく、来客用のソファにだらしなく足を投げ出し、寝転んで休憩する。

 

しかし結構良い素材のソファですね…。これで行政官の小言が空ければ最高なのですが。

 

そうして私はアコ行政官の小言を右から左へと流しながらアイの帰りを待っていた。

 

すると、

 

「たっだいま~」

 

勢いよく扉が開き、お目当ての人物が帰還を果たす。

 

「おかえりなさい。遅かったです…ね?」

 

上体を起こし、帰ってきたアイを出迎えようとした私はアイを見て驚く。

 

「アイさん。帰ったんですね。どうでした…か?」

 

奥で作業をしていたアコ行政官もアイを出迎え、遅れて驚いた。

 

なぜなら、アイがある生徒を小脇に抱え現れたからだ。

 

それは簀巻き姿の愛清フウカだった。

 

 

「つまり?ばったり現場でフウカさんと出会って」

 

「勢いで拘束してしまい?」

 

「拉致って来ちゃった…」

 

私は現場で起こったことをざっくりと悦明し、フウカを攫った経緯も同時に説明する。

 

「だからって普通いきなり拘束しますか?」

 

「仕方なかったんだ…。気が付いたら拘束していたんだ。きっとフウカのプロ拉致ラレイヤーとして才能がこうさせてしまったんだ…」

 

「拉致ラレイヤーとかそんな造語を急に作らないでくださいアイ」

 

「ところでなんですが…」

 

イロハと話し合う中、アコが口を挟む。

 

「フウカさんが先ほどから何も喋らず、死んだ目をなさっているのですが…。攫う時に何かしました?」

 

「いや、縄で縛ったらスイッチが切れたようにスンって大人しくなった」

 

「プロの拉致ラレイヤーなのかもしれませんね」

 

「とりあえずほどきますね…」

 

そう言ってアコがフウカの縄を解く。

 

「ほどいてくださってありがとうございます行政官。まさか美食の奴ら以外に縛られるとは思いませんでした…」

 

「ほとんど反応が無かったですけれど、大丈夫でしょうか?」

 

「ええ問題ないです。無駄に反抗すると面倒くさいことになるって体が覚えちゃって反応しなかっただけですから」

 

「…大変ですね」

 

「大変だね」

 

「攫ってきた人が言わないでください」

 

「ところで…、私を攫った方は誰ですか?見たところゲヘナ生では無いように見えますけど」

 

「あ~名乗る間もなく拉致っちゃってたからね。私はアイ。よろしくね。フウカさんのことはよく知ってるよ」

 

「確かに私のことを知っているようでしたが…。どこかで会いましたっけ?」

 

「界隈では有名ですよ、レーサーの方だよね?」

 

「誰がそんな適当なこと言ってたか教えてもらえますか?あとでとっちめに行くので」

 

フウカがはぁ~と息をつき、本題に戻す。

 

「ところでこんなところで風紀委員と万魔殿、そして外部の生徒で何をしているんですか?」

 

「それはこちらも同じです。給食部部長愛清フウカさん。貴女はアイさんと会ったその地下牢で、何をしていたのですか?」

 

「そうですね…、アイさん。」

 

「なに?」

 

「私と会う前に、施設内は一通り見たんですか?」

 

「そうだね地下1階から4階まで一通り見たよ」

 

「そうですか。なら…もう言っても大丈夫ですかね…。その前にアコ行政官、さっきの言葉は間違ていますよ」

 

「…何が違っていたんですか?」

 

「私は今給食部部長ではありません。ただの愛清フウカです。ただのヒナの友人として彼女に力を貸しているんです」

 

[newpage]

 

この日の給食部も大忙しだった。

 

先生が亡くなって1ヶ月も経っていないが、そんなのは関係ない。

 

ゲヘナの食堂。それを管理する給食部。つまり先生が亡くなろうが天変地異が起ころうが一定数いる給食利用者がいる限り、この部活は活動し続けるのだ。

 

私も悲しい。先生とお買い物をする日々。先生の食事を作る日々、正月には先生と神社にお参りも行った。そのあとはシャーレで私の作ったおせちを2人で食べた。

 

だが、そんなのはこの給食部の活動に関しては関係ない。

 

ほぼワンオペで活動してる私が先生が亡くなったからやーめたで、どうにかなることではない。

 

申し訳ないがジュリだけで回せるほどゲヘナ給食部は甘くない。

 

もし彼女だけで給食部を運営するとなると大量のパンちゃんを生み出し、その対処だけで1日が終わるだろう。

 

だから私は頑張り続ける。たとえ何が起こっても。

 

「少しいいかしら」

 

そんな時に彼女は来た。分厚い上着を羽織り、いつものような仏頂面で。

 

しかし彼女の雰囲気は触ったら今にも壊れてしまいそうなガラス細工の様だった。

 

食堂も閉まり、あとは後片付けを残す中、彼女は話した。

 

「貴女に頼みたいことがあるの。風紀委員長としてではなく、空崎ヒナとして」

 

聞けば大分ぶっ飛んだ話だった。ゲヘナの犯罪率を0にするなんていう夢幻の話であった。

 

「いいわ。私も協力する」

 

しかし私はそれを受け入れた。別に権力に屈したわけではない。彼女はあまりそうゆう力を使わないタイプだ。

 

別に利益を提供されたわけじゃない。確かに最近冷蔵庫の調子が悪いが急を要することでもない。

 

ただ彼女が今にも折れそうだったから。

 

「ただし条件があるわ」

 

助けになりたいたいと思った。

 

「給食部部長としてじゃなく、愛清フウカとして協力するわ」

 

友達として。

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

 

 

「そして私は食事番としてあのヒナを手伝っていたわけです。」

 

フウカがあの地下牢を手伝っていた真相を話す。 

 

「こちらの事情は話しました。今度はそっち側が話す番です。風紀委員と万魔殿、そして外部の生徒で協力して、あの場所まで突き止めて…何が目的なんですか?」

 

「そうだね。私たちは…」

 

「いえ、私が答えます」

 

私は射すくめるようなフウカの目線に答えようとするが、アコに制止される。

 

「私たちはヒナ委員長を止めようと考えています」

 

「止めてどうするんですか?」

 

フウカは続けて質問する。

 

「今のヒナはゲヘナから犯罪をなくそうとボロボロになるまで日夜飛び回り奔走しています。なら止めなくても良いんじゃないですか?今のヒナを止めたとしてこの後どうするんですか?また彼女に全て投げ出すんじゃないですよね?」

 

「そうですね。今まで風紀委員会がそう思われていたのはしょうがないです。ほとんどの事件にヒナ委員長が出張り、解決してきました」

 

「なら…」

 

「でも今はもう違います」

 

アコは強い目線でフウカに応える。

 

「もう今の風紀委員はヒナ委員長に頼るだけの集まりではありません。これからはヒナ委員長と並んで戦います。委員長において行かれないように必死で追いつくつもりです」

 

これがアコの答えだった。

 

私が戦術をアコに教える際、彼女は驚くほど熱心に私の教えを学んでいた。

 

基本なんにでも文句を言う彼女が、それこそ今まで見たことないぐらい熱心にだ。

 

必死において行かれないように、戦闘面では役に立てなくても、それを有り余ることでサポートできるように、並んで共に戦いたい。

 

学んでいる彼女がいつか言った言葉だった。

 

「そうですか」

 

そんなアコの言葉を受けたフウカは彼女の言葉を飲み込む。

 

「ではお願いします」

 

「……え?」

 

「止めてくれるんですよね」

 

「え…はい止めるつもりですが…。もっとこう…言い合いになると思ってました」

 

「なりませんよ。だって私も止めたいって気持ちは同じですから」

 

するとフウカはポロポロと涙を流す。

 

「毎日友達が傷ついて帰ってくるのは辛いんです…」

 

涙を袖でごしごしと拭うとフウカは頭を私たちに下げた。

 

「だからお願いしますね。彼女を、ヒナを止めてください」




転生先生、嘯く 6話目
転職をしたい!
ギヴォトスならお祭り運営委員会で働きたいなぁ〜と思う今日この頃
転職したいとか言ってる奴が小説を書いている場合ではない!
では拙き作品ですがよろしくお願いします
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