「ヒナは力が入りすぎなんだよ」
私は先生の膝に頭を乗せ先生の話を聞く。
所謂膝枕。
事の発端は私が当番の日に目の下に隈を携えて出勤したのが原因だ。
昨日は夜中に暴れる生徒がいたため夜遅くまで出撃し、さらにその報告書で徹夜までしたのだ。
先生は私を見るなり、ソファに寝かし膝枕をして頭を撫でてくれた。
こんなに至れり尽くせりならまた隈を作って来訪したいぐらいのもてなしだった。
「仕方ないでしょ…。夜遅かったからあまり風紀委員はいなかったし、かといって夜遅くにアコたちを呼び戻すのもね」
「緊急事態だったんでしょ?仕方ないって」
「それに私が行った方が早く終わるし…」
「それが一番の理由だったでしょ?まったく……」
そう言うと先生は私の髪を少し乱暴に撫でつける。
くすぐったいが心地良い。
「ヒナはもう少し誰かを頼った方がいいよ」
「でも……」
「でも、じゃありません。どうせ今みたいに私が行った方が~とか、誰かに迷惑かけるなんて~とか思ってるんでしょ?」
私は図星をつかれ気まずくなり、先生のお腹に顔を向け隠れる。
「結構頼られた方は嬉しいものだよ」
それはわかっている。
風紀委員の仕事の際にも、私にしかできない仕事をしている時には、少しばかりの優越感を感じる。
………それと同時にめんどくさいとも思っているけど。
シャーレでの任務の際もそうだ。
先生は良く私を作戦の要においてくれる。小鳥遊ホシノの件もそうだった。真っ先に私を頼ってくれた。
それがどうしようもなく嬉しい時がある。あぁ私はこの人の役に立ててるんだと実感できるから。
「多分これからヒナはどうにもならない時や、挫けそうな時があると思うけどさ」
そんなときは---。
・
・
・
夢を見た。
幸せな夢。
…もう戻らない夢。
夜遅くまでパトロールをしていた私は、アジトに帰った後フウカに仮眠を勧められた。
酷い顔をしていたんだろう。私も次のパトロールまで時間があったため了承し、地下3階の仮眠室で仮眠をとった。
目を覚ました私は、昨日の疲れを残しつつ次のパトロールの準備の為、身体を起こし顔を洗う。
雑念を払うように、幸せな時間を振り払うように。
この活動を始めてからよく同じような夢を見た。
あの時の幸せな時間。
だが見るたびに、だんだんとあの光景が薄れていく。
まるで幸せだった時間を奪うように、自分に与えられた罰のように。
当然だ。あの時先生のことを守れなかった私には甘すぎる罰だ。
だから私は私への罰として、犯罪者を狩る。もう二度と先生を同じ目に合わせない。
きっとゲヘナがもっと住みやすい所に、変わったら先生も戻ってきてくれる。
「あれ…?先生…どこ?……先生」
違う。先生はいない。
違う。先生は戻ってきてくれる。
いや、どっちでもいいか。
先生……会いたいよ。
もう夢の中での貴方の言葉も思い出せない。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
身支度を終えた私は、パトロールの為、階段を上がり外に出る。
犯罪者は相変わらず騒ぐだけ。耳障りな騒音を流しつつ外に続く扉を開けた。
食堂裏手。フウカに無理を言って改造した地下への入り口は木々に囲まれ、用があっても給食部ぐらいしか来ない。
ゲヘナ学園事態が、ほとんど管理されておらず鬱蒼とした林などがいくつかあるぐらいだ。
私は食堂から離れ、少し開けた場所で飛翔できるポイントを探す。
「なにかお探しですかお嬢さん?」
するとやや遠くから声を掛けられた。
大きくはないが自然と耳に入ってくる声。
私は振り返って声を掛けた者の姿を視認する。
万魔殿が誇る無敵鉄鋼虎丸。そしてその主砲に座る長い銀髪の少女。
私は警戒してその少女に答える。
「なにも探してなんかいないわ。用がないならどこかへ行ってちょうだい」
「用はあるんだなぁ。なぁイロハ」
銀髪の少女に呼ばれた人物は、搭乗口から顔を出す。
「お久しぶりですね風紀委員長」
「久しぶりねイロハ。その戦車からして、もしやとは思ったけど」
「おや、虎丸を覚えててくれるなんて。この子も出世しましたね」
「それで何の用かしら?私、貴女達の雑兵に伝えたはずだけど。邪魔をするなら」
ガチャン!と音を立てながらイロハたちに銃を向ける。
「…潰すって」
ピリピリとした空気の中、少しの沈黙の後イロハは口を開いた。
「まだ万魔殿にはこの場所を伝えていません」
「…まだ、ね」
「なので決闘しましょう」
「…は?」
「決闘ですよ決闘。よく河川敷とか廃工場で行われているでしょう」
「そんなとこで見たことないんだけど」
「もし私たちが貴女に勝ったら、風紀委員会に戻ってください」
「嫌よ。そんな決闘なんて、しない」
「いいんですか?面倒くさいことになりますよ」
「万魔殿に報告でもして攻め込んでくる気?確かにめんどくさいけど…貴女達こそわかっているのかしら?……貴女達を帰さなければそんな面倒なことにならないのよ」
私は構えていた銃の引き金に指を掛ける。マズルが回転をはじめ銃弾が発射される。
ドカーーーーン!!!
前に後方で大きな爆発音が聞こえた。
音の位置から恐らく、食堂。そして重低音からしておそらく地下。
何が起こったの…?
爆発音が響き渡ると食堂の方から大きな声が聞こえた。
今一番聞きたくない声。
『ハーハッハッハッハ!!ようやく娑婆の空気だ!!今委員長はいない!皆の者私に続けーーー!!!』
鬼怒川カスミの声と共に多くの捕まえてきた囚人の声が聞こえる。
「……っ!!」
事態を理解しつつ身体は考えるよりも、脱走した囚人の方へ動いていた。
それに地下牢にはフウカが…!
加速の為に翼を広げ、食堂に向かうその時。
先ほどイロハにアイと呼ばれた少女が突然現れ、鉄の棒を振り下ろして来た。
私は寸でのところで持っていた銃で受け止める。
「つれないねぇ。私ともたくさんお話ししようよ」
「邪魔を…しないで!」
「なあに心配しないの。フウカはこちらで保護しているよ」
フウカの無事で少し安心したためか、力が緩んだところでアイと呼ばれた少女に十手で振りぬかれ軽く弾かれる。
体勢を立て直し、再び追いかけようとするが、またしてもアイが立ちふさがる。
「そう、先に貴女を倒さないといけないようね」
捕まっていた囚人を思い出す。鬼怒川カスミ以外は有象無象といってもいい。
どこに隠れても1週間もあれば全員再び捕まえられる。
「ところで脱走の計画を立てたのは貴女達なのかしら」
「そうだね」
「ならいいわ。決闘、受けてあげる。ただし私が勝ったら犯罪者として捕まってもらうわ。動画視聴1万時間コースよ」
「いいだろう!約束を忘れるなよ!?私たちと決闘だ!!」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
戦闘が始まり両者、銃撃の打ち合いが続く。
にしてもこの子、とんでもなくやりにくい!!
まずとてつもなく速い。
決闘開始直後、いきなり終幕:イシュ・ボシェテを放った私に対して、アイは初撃を十手でいなそうとして銃弾に叩きつけたが、銃弾の威力に弾かれよろめいていた。
しかしそれを学習。弾けないとわかると回避に専念しだし、弾丸の間を縫うように回避しだした。
終幕:イシュ・ボシェテのような制圧射撃では効果はないと感じた私は、マガジンを交換しようとしたところ、一瞬で近くまで接近される。
急いでマガジンを交換した私は、絶海:イシュ・ボシェテを放つ。
絶海:イシュ・ボシェテ。威力は落ちるが精密な射撃ができる。
終幕で弾けないと感じた彼女は、これも回避に専念するだろうと思った。
しかしアイはそれに対して何の迷いもなく十手で弾き返した。
まるで先ほどより威力が低いのをわかっていたかのように。
アイの動きに当てるためには開演:イシュ・ボシェテのように、威力も精密さも併せ持った一撃を放つしかないが、そのためには私も動きを止めなければならない。
そんなことをしたら距離を詰められ、終わるのが見えている。
そして、
「主砲発射…!」
虎丸、棗イロハの存在。
向かってきた砲弾に私は狙いを定め撃ち落とす。そのまま斉射し分裂した弾も撃ち落とす。
アイをサポートするような砲弾のせいでこちらも攻め手に集中出来ずにいる。
先に虎丸をどうにかしようにも、その時にはアイが邪魔をして虎丸を攻撃できない。
思ったよりも厄介だ。
…しかし。
「ふざけているのかしら?」
私は一旦射撃を止めるとアイに問い掛ける。
「いたって真面目だけど…。なにかお気に召さない?」
「なぜ貴女、きちんと狙わないの?」
アイとの打ち合いで私は被弾した個所を確認する。
左前腕、右足首、右肩、右腿。
どの弾も私の頭部や胴体に当たっていない。
彼女の持っている銃はサブマシンガンMP5K。9ミリ弾丸で高い命中精度が特徴だ。
なのに彼女は狙って頭部などに撃たないように配慮している気がする。
「そんなのでは私は倒せないわよ」
「あ~そうだねぇ。実はまだ誰かを撃つって感覚に慣れないんだよ」
「このギヴォトスでそんなこと言うなんて…。今までどうしてたのかしら?」
「その面は頼りきりだったかな。恥ずかしい限りだけどね。だけど」
アイは話しながらマガジンを交換する。
「だけどさ、頼れる時には誰かに頼った方がいいと思わないヒナ?」
「………必要ないわ。それに、私には頼れる人はもういないもの」
「そんなことないんじゃない?それにさ、悪いことしていない人を撃つってのもね」
「貴女変わっているのね。でもわかったわ」
私をアイに銃を構え、
「そろそろ始めるかい?」
「そうね」
イロハ。虎丸へと突っ込んだ。
「終わりにしましょう」
驚いたような顔をしながらもアイがやはり立ちふさがってくる。
私は立ちふさぐアイに向かって、デストロイヤーを全力で横から叩きつけた。
アイは十手で防ぐが、私の全力の1撃は威力は殺しきれず身体が吹っ飛ぶ。
アイの姿を確認したイロハは、主砲を発射するが私は同じくデストロイヤーで砲弾を破壊した。
私は破壊した砲弾の爆風と共に戦車に近づき側面に周る。
アイは明らかに加減している。致命傷の攻撃はないと思ったからこその大胆な行動。
「回り込まれて…!」
イロハはキャタピラを動かし距離を取ろうとするが、もう遅い
私は大きく右足を後ろに振りかぶり、
「アイっ!!」
「今行く!イロハ手を!!」
虎丸の側面を思いっきり蹴り上げた。
虎丸は蹴り上げた衝撃で宙を舞い、何回転した後に横転した。
「これでこれは使えなくなったわね」
私は鉄くずになった戦車から目を移し、アイたちに視線を移す。
どうやら間一髪で搭乗口から、イロハを引っ張り出し助け出したようだ。
「まだ戦うのかしら?」
虎丸から助け出したイロハを抱えながらのアイに聞く。
虎丸が無ければイロハは戦力にならない。
これからはイロハを守りながらの戦闘になるだろう。
「まだ策はあるさ」
「面白いわね。見せてもらおうかしら」
「これ、とかね」
ピンっと軽い音と共にアイがなにかをこちらに投げつけてくる。
「グレネード!注意しなよ?」
「5個も…こんなに隠し持ってたのね」
こちらに向かって来る5つの手榴弾。
私は翼で自分を包みガードの体制を取って衝撃に備える。
手榴弾が地面に落ちるが、聞こえてきたのは爆発音ではなくシューッといった何かが噴出する音。
「これは…スモークグレネード?」
私はガードの体勢を解き、翼を羽ばたかせ煙を払う。
煙が晴れるとそこにアイたちはおらず、代わりに遠くで小さくなったアイたちを見つけた。
「逃げの一手ね」
私は再度翼を広げ彼女たちを追いかけた。
・
・
・
「アイ、ヒナ委員長が追いかけてきてます」
「来たか」
ヒナとの戦闘から一旦撤退した私たちは、以前ヒナを追いかけたように猛スピードで走っていた。
以前と違うところはイロハが、おんぶから姫抱っこに変わってる点だ。
「ここまでは計画通りですね」
「そうだね。でも正念場はここからだ」
「はい。もう私は役に立てそうにないので陰ながら応援しています。先生」
「何イロハ?」
イロハは不安そうに私の襟をギュッと掴む。
「…無事に帰って来てください」
「無事にはちょっと難しいかなぁ~。でも必ず帰ってくるよ」
「待っていますよ」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「いったいいつまで逃げるのかしら」
猛スピードで逃げるアイは校舎を渡り、校庭を突っ切り、ついには廃校舎裏手のゲヘナ学園で一番薄暗く鬱蒼とした林にたどり着いた。
昔はここでも不良生徒が良からぬことをしていたが今はもうただの無造作に伸びた木々があるだけだ。
林の中ほどでようやくアイが止まった。
私も追いかけ、地面に降りる。
「こんな人目がつかないところまで逃げてなんのつもりかしら?」
「別に変なことしようってんじゃないさ。ただここならどんなに暴れても大丈夫だろう?」
「そんなに自信あるのね」
「じゃあ改めて私たちと決闘だ」
「私たちって…もう戦えるの貴女しかいないじゃない」
「何言ってるの?いっぱいいるじゃないか」
「こちらが言いたいわ…。貴女こそ…」
『擲弾兵迫撃砲発射!!』
木々の影から突然聞こえてくる指示のような声。
「……迫撃砲ッ!!」
「イロハは今のうちに」
その言葉に思わず上を向く。するとそこには言葉の通りいくつもの迫撃砲が。
ダーーーーン!!!
いくつもの衝撃によって地面が抉れる。
『第3から第5小隊急いで配置へ!!』
ザッザッザっと木の陰で隠れながら行動する兵士の影。
「第1小隊、第2小隊は私に続け!!迫撃砲に当たるヘマはするなよ!!」
「「「はい!!」」」
そして木々の奥から出てくる小隊。
「この声、そしてこの生徒は……!!」
風紀委員!?
「さぁヒナ!役者は揃った!…私たちと決闘だ!!」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
視界が悪い鬱蒼とした林。いつ落ちてくるかわからない迫撃砲。
ダダダッ!ダダダッ!
『第3から第5小隊の弾幕隊!常にヒナ委員長を縛るように行動を狭めてください!!』
陰に隠れた指示によって木々の間から撃たれる銃弾による弾幕。
移動するたびに弾幕で防がれ移動が制限される!
「弾幕隊に続いて撃ちまくれ!相手は委員長だ普通にやって勝てる相手じゃないぞ!」
そして弾幕の合間からの私を狙ったイオリの小隊からの銃撃。
さっきのアイとは違って本気の銃撃。
防ぐことしかできない…。
どこにいても攻撃される…!
ヒュ~~!!
「また迫撃砲が来る!?」
ダーーーーン!!!
「くっ!?今度は近い…!」
このままではと私はデストロヤーでイオリの小隊を銃撃する。
「ガハッ!?」
私の弾はイオリと小隊の何人かに直撃し、当たった風紀委員は地面に倒れる。
「何人か倒したけど、まだまだいるわね」
しかし、
「ま…まだまだぁ!!」
なんと倒れたイオリたちは再び起き上がりまた私に挑んでくる。
「なっ!?」
確かに直撃したはず!?
「立て!この一撃よりあの訓練の方が何倍も辛かったよなぁ!」
「「はい!!」」
何なのこのタフさは…!
『迫撃砲準備できました行政官!』
『了解しましたチナツ。迫撃砲発射!』
ダーーーーン!!!
再び迫撃砲が地面を抉り、土煙をあげる。
「はぁ…!はぁ…!」
成長している。私のいない間に風紀委員が成長している。
アコやチナツはこんな作戦と細やかな指示は出来なかった。
イオリもこんなに打たれ強くなかった。
風紀委員も私が抜けてから格段に成長している。
「成長しているでしょう?」
「……アイ」
「私が訓練したんだ。ヒナに勝てるようにね」
「聞きたいのだけど、この作戦も貴女が?」
「いえ、この作戦は私達が立案したものです。最初から」
そう言って林の奥で指示を飛ばしていたアコとチナツが現れる。
「アコ、チナツ…そうなのね」
本当に成長したのねアコ、チナツ。
「ヒナ委員長!戻ってきてください!」
「そうだ戻ってこい委員長!」
「帰ってきてください委員長!」
「はぁ…!はぁ…!はぁ………はぁ…………ふぅ…」
「ヒナの荒かった息が…」
「落ち着いた!」
「そうね。成長してるわ。皆ね。でも、まだ私には勝てない」
私は銃を構えなおし、前進する。
「…っ!弾幕部隊、撃ちなさい!」
「私たちもだ!撃て!」
ダダダッ!ダダダッ!ダダダ!ダダダ!ダダダ…!ダダダ…!
『なぜ…?』
『なんで動きを止めないんだ!?』
私は撃たれながらもアコたちに向かって前進する。
「当たれば痛いけどね…耐えようと思えばどうってことないのよ…」
「弾幕隊勢いを殺さないで撃ちなさい!」
「アコちゃん!チナツ!奥へ!」
「また隠れる気?もう飽きたわ」
銃を構え、引き金を引き、マズルが回転する。
「…っ!!全員伏せろーーー!!!」
「終幕:イシュ・ボシェテ」
ダダダダダダダダダダダダダダダッッッ!!!
私はイシュ・ボシェテをグルッと回りながら撃ち尽くす。
すると鬱蒼とした林は私を中心に木々が倒れ、晴れ渡った空が見えるようになった。
周りを見ると、イシュ・ボシェテの直撃で沈んだ者、倒壊に巻き込まれた者と残った生徒は少なかった。
「まだ決闘の最中よ。私に勝つのよね?早く立ちなさい」
そう。貴女はやっぱり立つのね。
「さぁ…やろうか」
アイ、不思議な人。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
とりあえず立ったが、風紀幹部組はまだ意識はあるな。。
「ヒナ委員長…!」
「まだ…行ける!」
「私が…!」
3人とも立てない感じか。ゆうて私もボロボロだけど。
「アコ、イオリ、チナツ3人はしばらく休んでな」
「大丈夫?貴女ももうボロボロだけど?」
「平気だよ。ボックスステップを踏めちゃうぐらいにね」
「風紀委員ともども、もう私の邪魔をしないって言うなら特別に見逃してあげてもいいわよ」
「そりゃいいご提案だ。ぜひ断らせてもらおう」
「残念ね。でもここから覆る作戦はあるのかしら」
「余裕があるからかな?随分とお喋りだね。あるにはあるさ」
「あら、貴女がお喋りしたいって言ったのよ?」
「じゃあお話しようか。私はねある事情で特別な力を持っているんだ。自分の神秘を流して強化するってことがね」
「自分の神秘を…?」
「例えばこの銃。これに神秘を流すと、強い弾が撃てるようになるんだ」
「へぇ凄いじゃない」
「だけどね欠点もあってね。まず1つ、必ず直接身体で触れないと強化されない。そして2つ、さっき銃を強化してるって言ったが、正確にはこの中の銃弾を強化しているんだ。そして私の強化は何かを隔てるたびに弱くなる。この銃なら銃本体、マガジン、銃弾って通るから、割と弱い神秘しか流せないってこと」
「そんな弱点教えてもいいのかしら。余裕のつもり?」
「そんなつもりじゃないけどね。ここからが本題、大事な話。直接手で触れて、直接発射出来て、なおかつ殺傷力が低いものってなーんだ?」
「………」
ジャラジャラッ!!
「答えを見つけた時にはキャッシュレス文化を恨んだね」
私は棒銀のようなコインの束を構えてヒナと対峙する。
「第3ラウンドだ。ヒナ」
「静かに聞いてたら、答えなんてあっけないものね。そんなコインで銃よりも…」
バチーーンッ!!
瞬間ヒナがよろける。
「なっ!?」
私は自分とコインに神秘を流し、強化した上で親指でコインを思いっきりはじいた。
はじいたコインは猛スピードでヒナの額へとぶち当たる。
「ここからは本気だヒナ。油断するなよ?私の一撃はライフルよりも痛いぞ?」
「ライフルなんて頭に食らっても平気よ!」
額をさすりながらヒナが銃を構える。
「終幕イシュ・ボシェテ」
私は最初の戦いと同様、縫うように銃弾の雨を避け、
「甘い!」
隙をついてデストロイヤーの銃口に向けてコインを発射する。
「なんて…威力!?」
先端に衝撃を加えられたデストロイヤーは制御を失い、あらぬところに銃弾を発射した。
「もう1発!」
バチーーンッ!!
「くっ…!!」
もう一度ヒナの可愛い額にコインをぶつける。
続いて手、膝、肩とコインを当てていく。
それでも負けじとデストロイヤーは放つヒナ。
最初の私との戦闘や風紀委員との戦闘を強行突破で踏破してきたヒナだが、なにもダメージがないわけではない。
ギヴォトス人とはいえ無敵ではないのだ。
私も林を薙ぎ払う斉射に巻き込まれて、いくらかイシュ・ボシェテをくらってしまった。
お互い本当にボロボロの状態だ。
「こんな奥の手があったなんてね…驚いたわ」
「あいにくまだ調整中でね。ぶっつけ本番なわけさ」
「お互い満身創痍。私も奥の手を使うわ」
そう言うとヒナはマガジンを変え、集中射撃体勢に入る。
「開演:イシュ・ボシェテ」
マズルが回り、ヒナの角が淡く光る。
「流石にどんなに速く動く貴女でもその状態じゃかわせないわ」
「そうだね。もう私はかわせそうにない。だけどヒナ、君は誰と戦っているんだい?」
「誰と?今はアイ、貴女と戦っているのよ」
「違うよヒナ。私は私たちと決闘しろって言ったんだよ」
「私たち…?……ッ!!アコとチナツはいる…!!イオリがいない!!」
その時、ヒナの背後からイオリが迫る。
「ここからはあなたの意思にかかってきます、イオリ」「後は…お任せしますね」
二人のサポートを得て、ヒナに銃口を向ける。
「これでトドメだヒナ委員長!!!」
ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!!
転生先生、嘯く 7話目
ついにヒナ登場
1回さらっとプロット書いたら
ヒナに勝てなくて練り直しました
拙き作品ですがよろしくお願いします