イオリからの銃撃をまともに食らった私は、倒れながら意識を手放す。
全てはあの日から始まった。
先生が亡くなった日。
私が先生を守れなかった日。
あの日も先生に頼られて一緒に任務について行った。
一緒にいたのはトリニティと百鬼夜行、そしてヴァルキューレの子。
どの子も扱いにくい生徒ではあったが、任務に支障は無かった。
だから油断していたのかもしれない。突然後ろから撃たれた先生に私は何もできなかった。
みっともなく泣き叫んで、無様に先生!先生!と呼びかけることしかできなかった。
先生が亡くなった後、誰も私を責めなかった。
アコもイオリもチナツもフウカもセナも挙句マコトだって私を責めなかった。
責めてくれたらなにかが救われていたのもわからない。
ただ私は罪や罰が欲しかったのかもしれない。だってそれは先生から何もできなかった私への罰だから。
後日各学校でカイザーを殲滅しようとする集まりがあった。私もそこに参加しカイザー兵を殲滅した。
こいつらみたいな犯罪者が先生を殺したんだ。絶対に許さないという憎しみの力で多くのカイザー兵を殲滅した。
殲滅した後私は学園に帰り、いつもの業務に戻った。
だって私がいないとどうしようもないから。
先生の訃報のニュースで一時は落ち着いていたゲヘナだったが、2週間もすればどこかで誰か暴れだし、それにつられて他の生徒も騒ぎを起こすようになった。
ゲヘナではいつものことだ。
いつものことだ。
いつものことだ。
………なんでこいつらは先生が死んだ後もこんなことをしているんだ?
先生を殺したのはお前らみたいな犯罪者なんだぞ?
憎い、先生を殺した奴が。憎い、犯罪者が。憎い、犯罪者の巣窟と言われるこのゲヘナが!!!
私がやるしかない。
私しかできないんだ。
私がこの学園を変えるんだ。
誰が来ても、先生のような人間が来ても安心して暮らせるような街を。
私が作るんだ!
だから先生。
そうなったらかえってきてくれるよね…?
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
ダンッッ!!!!!
「私は戻れない…」
私はデストロイヤーを地面に突き刺し、倒れそうになる身体を支える。
「ヒナ!?」
「委員長、まだ!?」
「私は戻れない…風紀委員には戻れない…」
「ヒナ委員長…」
「だってこれは私の罪だから。先生を守れなかった私の罪だから」
「ヒナ…」
「他の皆には背負わせないから…」
「ヒナ委員長、あの時の会話覚えていますか?」
「アコ…」
「貴女が風紀委員会をやめようとした時です。貴女は私たちを足手まといと言ったんです」
「……」
「ですが今私が、イオリが、チナツが、ここにいる風紀委員がそしてアイさんが貴女を追いつめたんです」
「……」
「ヒナ委員長、私はもう貴女の囮や盾になるなんて言いません。貴女について行くのではなく貴女と並んで戦いたいと思っています」
「……」
「私たち風紀委員は以前のもう頼るだけの風紀委員会から卒業します。だから!私たちにもその罪を背負わせてくれませんか…?」
「ヒナ、よく周りを見てごらん」
「今君の前にいる人たちはそんなに頼れない人たちかい?」
「……っ!?」
『そんなときは…一回落ち着いて周りを見てごらん?』
『きっとヒナを大事に思って、一緒に進んでくれる人がいるよ』
アコとアイの言葉を聞いて思い出したのは、あの日の先生の言葉の続き。
そんなこと言わないで。だって気持ちが揺らいでしまうから。
でも、
「でもこれは…先生を守れなかった私の罪だから…」
「関係ありません」
「でもこんなに色々しちゃったし…今更風紀委員に戻るなんて…」
「私も今回で色々とやらかしちゃったしなぁ。一緒に反省文書こうぜ!」
「でも皆に色々と言っちゃったし…」
「誰も気にしていませんよ」
「でも…私は…」
「いいから黙って戻ってきなさい!!!空崎ヒナァ!!!」
「「アコちゃん…」」
アコの叫びによって長い静寂が流れた。
静寂の後、私はポツリと口を開いた。
「………足手まといなんて思ってるわけないじゃない」
「委員長…」
「皆よくやってくれているわ。私にできないことをね。でもああでも言わないと、私が折れてしまいそうだったから。本当に揺らいでしまいそうだったから。誰にも頼れなかったから…」
あれ、おかしい。なんだか視界がぼやけるな
「頼っていいの…?」
涙が自然に落ちてしまう。
「好きなだけ頼ってください。今までたくさん頼られてきたんですから」
あぁこんなに人前で泣いたのは久しぶりかも。でも今はいいかな。
「ありがとう。またよろしくね…みんな!」
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~~♪~~♪
何か何かしらこの歌、知っている気がする。
「おや?起きたかな。お早いお目覚めで」
私はゆっくりと目を開けるとそこは見知った部屋。
私の部屋だった。
「あの後すぐに気を失ったんだよ。覚えてるヒナ?」
「アイ…。覚えてる」
寝起きのせいかまだ頭がぽわぽわしている。
「フウカから聞いたけどこの何ヶ月かまともに寝てないんだって?まだ眠いはずだよ」
「そうね。…アイ、貴女にも迷惑かけたわね」
「いいよ。この数日ゲヘナでの生活は楽しかったからね」
「ならよかったわ。ねぇ貴女このゲヘナの生徒じゃないわよね?なんでここまでしてくれたの?」
「そうだねぇ。ヒナのためかな?」
「…わかんない。まだ眠いわ」
「膝枕でもしてあげよっか?」
「私たち一応初対面よね?」
「いいからいいから。ほらちょっと開けて」
「んん!」
そう言ってアイはベッドに乗りこみ私を無理やり膝枕する。
「ヒナの髪はフワフワだねぇ」
アイはそう言って私の髪を撫でてくれる。
「ああ、気持ちいいかも」
この手つきも知っている気がする。
~~♪~~♪
あぁさっきの歌は子守歌だったのね。少し恥ずかしいけど抵抗する気が起きない。
またまどろみの中に吸い込まれていく。
「せんせい…」
『よく頑張ったね、ヒナ』
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「アイさん今回の件ありがとうございました」
「いいってことよアコ。こっちもやりたいこともあったしね」
ゲヘナ学園正門。今日私はゲヘナ学園から出て次の学園へ向かう予定だ。
正門には今回関わった生徒が見送りに来てくれた。
「アイちゃん…。いっちゃうのやだよ~」
「イブキ…近いうちにまた会いに来るよ」
イブキは私との別れが悲しいのか、涙目で引き留める。
訓練の合間などにちょくちょくイブキの所には遊びに行っていたから思い出がいっぱいあるのだ。
「そうですね。私も寂しいです」
「チナツもサポートありがとね」
「あ、あーあー」
「どうしたんですかイオリ?」
「そのなんだ。ありがとな色々としてくれて。あと不審者扱いしてごめん」
「なんだよ~イオリ~!嬉しいこと言ってくれるじゃんよ~!」
「あぁもう寄るな!足をペチペチ叩くな!」
「最後までよくわからない人でしたね」
「フウカ……。食堂吹っ飛んだけど大丈夫?」
「まぁしばらくは青空食堂ですかね……」
「ねぇアイ」
「何ヒナ?」
「貴女ってもしかして……」
「もしかして?」
「………いえ、なんでもないわ。今回はありがとう。何か困ったことがあったら呼んで。助けに行くわ」
「ありがとうモコモコ」
「………まぁいいわ」
「そういえば赤モコモコは?」
「……イロハなら来てないわ。どこかでサボってるんじゃないかしら」
「そっか。せっかくだから挨拶でもしようとしたんだけどね。おっと」
時計を確認すると、もうそろそろ電車の予定時間。
「じゃ行かなくちゃ」
「ええ、またね」
そうして私は見送られながらゲヘナ学園を後にした。
・
・
・
「ここから始まったんだよなぁ」
ゲヘナ駅。最初ここから見える違和感から始まったのだ。
「いやはやなんとかなってよかったね」
「本当にそうですね。ところで別れの挨拶はすみましたか?」
「赤モコモコ…」
「誰が赤モコモコですか。まったく待ちくたびれましたよ」
「どうしたの?別れの挨拶?」
「逆です」
「何の?」
「これからよろしくって挨拶です」
「え?ついてくんの?」
「…不満そうですね」
「いや私はいいんだけど。大丈夫なのそっちの仕事は?」
「安心してください。すでにマコト先輩に許可は取ってあります」
「仕事の早いことで…」
「それに事務やサポートなどは私得意ですので、連れて行かないと先生損しますよ?」
「それもそうだね。じゃぁこれからよろしくねイロハ」
「はい!よろしくお願いしますね先生」
イロハと握手をかわし電車へと向かう私たち。
彼女との旅はまだまだ続く。
「ところで何で先ほど不満気な顔をしたんですか?」
「いや、だって次の行き先トリニティだから…」
「……まぁなんとかなるでしょう」
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「ついた~」
あのあと電車を乗り継ぎやってきましたトリニティ。
今は駅を出てトリニティ総合学園へと続く道を、イロハと共に歩いてる。
「そういやトリニティ行ってすぐに上の人と会えるかなぁ」
「すでに電車内でアポはすませてあります」
前回はイオリに追い返されたが、今回はどうやらスムーズに入れるらしい
さすイロ。
「そんな簡単に取れたっけ?」
「まぁ人脈をフルに活用したのもありますが、向こうもこちらと同じで現在大変な状態ですので、猫の手も借りたいということでしょう」
こっちも大変なのか……。
何があったんだろうか?
そう感慨に更けていると、
「ようお嬢ちゃん達?ちょっと金持ってない?」
「わぁなんてストレートなカツアゲ。イタズラしたくなっちゃう」
「いいからよう…」
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・
「いいんですか?あのまま放置しておいて?」
「なぁに愛の拳骨を食らわせただけだ。そのうち目を覚ますでしょ」
「お!そこのいい服持ってるお嬢ちゃん?」
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・
「ここも治安が悪くなったねぇ」
「そうですね」
「
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・
・
「キャッチか。一本道でどんだけ声かけくんだよ。」
「異常な不良の数ですね」
「ゲヘナ生でも流れて来てるんじゃない?」
「ゲヘナ生とは少し違う気がしますが…」
こうして私たちはいくつも喧嘩を乗り越え、無事に学園にたどり着いた。
たどり着いたが、
「何ここ?廃屋?」
「いえ、ここがトリニティ総合学園ですね」
規律と伝統を重んじるお嬢様学校トリニティ総合学園。
美術館を思わせる学び舎の姿がどうでしょう?
今は軽く見積もって7割ぐらいが学び舎ではなく、瓦礫の山へと名前を変えてしまっている。
「え?何?災害でもあった?」
「そんな記録はないはずですが…」
そうイロハと話していると向こうからパタパタ走ってくる人物。
「言い忘れていましたが、トリニティでは先生のいたころの生徒会長、ティーパーティーでしたっけ?が変わりまして」
走ってくる人物は私もよく知っている人物だった。
「お待たせしましたー!」
白を基調とした高そうな上着を身に纏い大人びながらも、その笑顔は以前のように周りを明るくさせるような眩しい笑顔。
「先ほどアポを取ってくれた方たちですよね?」
彼女はいつもの鞄は身に着けていなかったが、それと同じデザインの薄手の手袋を身に着けていた。
「始めまして!トリニティ総合学園臨時ティーパーティー代表、阿慈谷ヒフミです!」
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一口メモアカ
アイ
ギヴォトスで転生した元先生。
自分の神秘の特性に気づいたときには、ゲーセンのメダルコーナーで荒稼ぎした。
フィジカルで解決するタイプ。
棗イロハ
旅のお供1号。
無気力そうに見えるが、また先生が死んだら容赦なく後追いするぐらい先生に矢印が向いている。
これで先生死ねなくなっちゃったね?
虎丸は即日修理に回した。
空崎ヒナ
今回事件を起こした人物。
風紀委員に戻ってからは後進の育成を進める。
基本寝不足の為、色々とはっちゃけた子。睡眠はしっかり取ろう。
アイの正体には疑問を持っているが、まだ気づいてはいない。
ちなみに地下牢建設は全てヒナのポケットマネーで作られている。
某議長のように横領はしていない。
貯金はまだある。
天雨アコ
ヨコチチがはみ出している人物。ヨコチチ、カウベル、手錠、なんて格好してるんだお前は。ブルーアーカイブをえっちな作品にする気か。…ブルーアーカイブはえっちな作品だったわ。
銀鏡イオリ
最後の最後にアコとチナツのサポートを受けてヒナに一撃を加えた。
アイにお御足をガン見されたり、ペチペチ叩かれたりしているが、それに対して懐かしさを覚えながらも普通にいや。
火宮チナツ
眼鏡っ子チナツ。
もっと活躍させたかった…。
丹花イブキ
万魔殿でのマスコット的人物。先生はもう会えないとだけ万魔殿に伝えられている為、先生が死んだことにはわかっていない。でも何か隠していることはわかっているので、マコト先輩に強くあたる。
羽沼マコト
万魔殿の議長。やることは基本ポンコツだが、傷心の万魔殿メンバーを再び集めたり、要所要所に仕事を振ったりと、カリスマを発揮している。
アイの正体には気づいていないが、何かあるとは勘づいていて、万魔殿に利用できないかなーと思っている。
愛清フウカ
地下牢の料理担当及び清掃担当。ヒナに頼み込まれ友達として力を貸す。
ヒナが粛清を始める前に、美食研に銃を乱射しゲヘナから追い出している。
ヒナの対象から逃がす反面、美食研が投獄された際にかかる、面倒くささの方が勝った。
牛牧ジュリ
何も知らされずに食堂の地下を改造され、最終的には爆破された。
カスミ・メグ
脱獄後、再び温泉開発に勤しむが、メンバーが根こそぎ更生
されたので、しばらく活動は部員の募集。
氷室セナ
今回フウカと一緒に地下牢でヒナに力を貸す予定だった人物。
プロット変更の犠牲者。
転生先生、嘯く 8話目
ゲヘナ編完結!
さらばゲヘナ!いざトリニティへ!
旅はまだまだ続く!
拙き作品ですがよろしくお願いします