メダリストはエゴイスト   作:モリブデン42

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ジュニアで一番巧い奴

『蓮華茶FSC 紅熊寧々子さん 67.21 現在の順位は1位です』

 

「うりー!どんなもんじゃい!」

「うるさい」

「はい、さーせん」

 

 点数を聞いた寧々子が大きく声を挙げると、亀金谷からぽつりと注意が入った。

 

「よくやったな、紅熊」

「うんうん、良くやったよ私」

 

 常に前向き、自信にあふれる彼女のスタンスはある意味で強者のそれだ。

 

「・・・油断はするなよ、FSでもしっかりと・・・」

「油断とかありえないよ!だって誰がどんな演技しても私の演技は変わらんし」

 

 亀金谷はどこか悩むように口を歪めていた。

 その思案の先は、恐らくノービスの推薦者たちだ。ノービスで見た幾人かの姿がこびりついているからだろうか。

 

(経験、実力を考えればうちの紅熊だって負ける理由はない)

 

 ただひとつあるとすれば、あの鬼気迫る雰囲気。

 ノービスであそこまで覚悟が決まっているものというのも珍しい。

 そしてそれは寧々子に少し欠けるものだとも思っていた。

 

(すずは負けん気があったから、奮起できた。でも紅熊は違う。いまいちハングリー精神に欠ける。それでここまで来てしまう才能も恐ろしいが、それではいつか頭打ちが来るだろう)

 

 別に性格を変えろとか、必死になれという訳ではない。彼女のただ楽しむという性質は何よりも長所であり、それこそが彼女がトップ選手足る所以だ。

 しかし、このままでは爆発的な成長は見込めない。

 

「どうするか・・・だな」

 

 亀金谷は寧々子を見つめながら考えるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

「確かに・・・これはとんでもない『才能』・・・いや『上手さ』・・・ですね」

 

 ただそこで、唯は一つ疑問を覚えた。

 

「いるかさん」

「なんだ?」

「ジュニアいちの『才能』を持っていて、それを十分に活かせるなら彼女がジュニアで最優秀の成績じゃないのっておかしくないですか?」

「ん、あ~」

 

 ジュニアで一番の『才能』がその類まれなる『上手さ』をもってして、演技をすれば負ける道理などどこにもないのだ。

 だが、事実として彼女はいるかに負けている。

 それは個人評ではなく、ゆるぎない成績が示していることだ。

 

「さっきも言ったけど・・・楽しいで満足してると成長は頭打ちになる」

「成長してないってことですか?それはちょっと無理があるんじゃ・・・」

「成長をどう定義するかだな・・・あいつの場合は『才能』を拡張してるってかんじだから成長とはちょっと違う気がする」

「どういう意味ですか?」

「寧々子が努力してないなんて言うつもりはない。基礎をしっかり鍛えないと才能もクソもないからな。ただあいつにとっての努力は新しいことを習得するんじゃなくて、出来ることを見つける作業なんだよ。ま、ようは才能ありすぎて苦労知らずってわけだ」

「出来るんならいいんじゃないですか?」

「意見は分かれるだろうがな、私は出来ないことを出来るようになることを『成長』だと呼んでる。そして『成長』ってのはただ出来るようになったっていう事実だけじゃない。その苦しみの過程に様々な気づきがあるもんだよ。麒乃がいい例だな。そしてそれはお前も良く分かってるんじゃないか」

 

 その感覚は唯にも覚えがあった。

 確かにそうだ。

 出来ないことを出来るに変える。

 その過程で苦しみながら答えを出してきた道中で自分は様々なものを拾ってきたのだ。

 

「無駄なことなんてなにひとつないんだよ、失敗も苦労もな」

「確かに・・・そうですね」

 

 いるかにも覚えがあるのだろうか、彼女は歯がゆそうに口を結んでいた。

 

「まあ、逆に恐ろしくもあるけどな」

「何がですか?」

「私の方が優秀だとして、私と寧々子の差はその『成長』の道中で拾ってきたもの、或いは『成長』そのものだとする。それならあいつが『成長』しちまった時、どうなるんだろうな?」

 

 恐ろしい、そう言いながらもいるかの表情は決して暗いものではなかった。

 新しい可能性。『天才』とは得てしてそれを生み出すものだ。その瞬間に立ち会うかもしれないと思うと、恐ろしくも胸躍るものがある。

 

 

 

 

 

 

「キラキラでしたね」

 

 控室で一人、液晶を眺めながらそう呟いたのは烏羽ダリアだ。

 物理的な光ではなく、雰囲気の話だ。

 寧々子のスケートは常に輝いていて、微笑ましい。

 

「ダリアさん、もう行けますか?」

 

 扉の向こう側から梟木ヘッドコーチが声をかけてくる。

 

「はい、いけます」

 

 扉を開く。

 頭がクリアになる。

 リンクに上がる前からすべては始まっている。

 あらゆる行動を演技につぎ込むため、彼女の意識はより一層深く沈んでいく。

 

『岡山ティナFSC 烏羽ダリアさん』

 

 

 

 

 

 リンクに立つと、湧き上がる高揚がその身を軽くする。

 天井の光が氷に反射し、キラキラと自分を照らす。

 

(これだ、これが好きなんだ)

 

 キラキラに囲まれた自分が滑ることでキラキラがさらに増す。

 その『感覚』がたまらなく好きだ。

 それこそが彼女の『衝動』だった。

 

 そんなダリアの心の内とは裏腹に滑り出した彼女の演技はとてもシンプルだった。

 麒乃や寧々子、彼女らのような特徴を存分に生かした演技とはどこか違う。しかし単純ながらもその磨き上げられた機能美は観客の目を引く。

 静謐ながらも激しく動作を起こした二人と同等の情報量が詰まっている。

 それがダリアのスケートの異様さを示していた。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、烏羽選手はどうなんですか?」

「何がだ?」

「さっき紅熊選手が言ってたじゃないですか、一番上手いって、いるかさんは上手いのは紅熊選手だって言ってましたけどじゃあ烏羽選手はどういう選手なのかって」

 

 ダリアの演技を見ながら、ふと思いついたように唯が尋ねる。

 

「そーだな、ダリアは・・・敢えて言うならジュニアで一番巧い奴だ」

「うまい・・・?」

 

 先ほど、寧々子を上手いと評したばかりだというのにどういう意味だろうか。しかし、きっと答えがあるのだろうと唯はそれ以上言葉にはせずに待った。

 

「寧々子は上手な感じで、ダリアは巧みという意味で『うまい』・・・かな」

 

『上手い』と『巧い』。いるかの感覚だろうが、その言葉に違いがありそうなのは理解できた。

 

「さっき紅熊選手が烏羽選手は繊細でストイックだって」

「ああ、まさにその通りだ」

 

 先ほどの寧々子の言を思い出す。

 

「ダリアの演技はなとにかく無駄がない」

「それが繊細でストイックの真意だと?」

「ああ、あいつの演技はまさしく『合理性』に全てを振っている」

 

 いるかは続けた。

 

「スケートで中途半端でいることは許さない。とにかく突き詰めて突き詰めて磨いていく。そうして、完璧なものだけを演技に組み込む」

「それが烏羽選手・・・」

「ああ、あいつの演技にはわからないという不確定要素が限りなく排除されている。緻密で正確無比な『合理的』スケートだ」

 

 リンクの上で滑るダリアは今までの選手のような派手なパフォーマンスを見せてこない。

 だが、分かる。伝わるのだ。彼女が演技に込めた意味。動作に秘められたイメージが。

 

「確かにスケートってのは派手な動作に目が行きがちだが、技術点にならない派手さなんてのは無駄でしかない。勿論派手なのは良いことだ。それだけ観客の目を引くし、インパクトを残しやすい。だが大事なのはその動きが演技の世界観を構築する上で真に必要なものなのかどうかだ」

 

 一見派手な動きの方が点数が良いように思える。そしてその傾向があるのも否定できない事実だ。

 難しいパフォーマンスをすることで技術点を上げることは出来なくても、PCS(演技構成点)を上げることができるからだ。

 

「さて問題だ、PCS(演技構成点)を上げる上で一番単純な方法は何だと思う?」

「・・・SK(Skating Skills)ですね」

「そ、技術やら動きやらのバリエーションを増やすってのは分かりやすいからな」

 

 PCSは主に3項目で評価される。

 CO(Composition)、PR(Presentation)、SK(Skating Skills)だ。

 簡単に言うとCOは音楽と構成の関連性、PRは音楽の理解の表現、SKはスケーティングの動きとテクニックのことだ。

 感覚的な世界であるCOやPRと違ってSKは技術的な観点に寄っている。だから、分かりやすい。

 

「音楽やら表現やらジュニアなると勿論こなさなきゃならない。でも、答えのないあやふやなものより分かりやすく技術を磨きたいってのは当然だ」

「この話を出すってことは、烏羽選手はその辺を克服していると?」

「見たら分かると思うがな、あいつの演技派手さこそないものの技術の高さは分かるだろ?」

「それはそうですね、エッジの使い方とかかなり卓越してますし・・・さり気なくステップやターンも混ぜてます」

 

 大きな動きこそないものの彼女の滑りには確かに技術の集積があった。

 

「大きな動きってのはインパクトを残しやすいし、技術も見せやすい。ただな、考えて入れないと演技がそこで途切れちまう」

「確かに・・・」

「それを差し引いてでも技術を魅せる方にシフトするって割り切るのも一つの手だが、ダリアはそれを許容しない」

 

 ダリアは氷の上でゆっくりと舞っている。

 その静寂は音楽をよく響かせるとともに、何かの予兆に思えた。

 徐々にその速度は上がっている、音楽と共に。

 その最中で流れを途切らせる事無く、ステップを組み込んでいた。

 トントン、と氷を突く音が聞こえる。

 そこからクルリと体を翻し、波打つ動作をピタリと止めた。

 その動作の連続性が統一感のある演技を実現させる。

 

「今の見たか?」

「ええ、音楽と完全に合わせながら技術を組み込む、かつその技で演技が途切れないように動作のテーマは一貫していた」

「一見大げさな動作の方がイメージが伝わりやすいように思う。でもそれには大きく魅せようっていうノイズが混じる。それにわざわざ大きくするってことはその分余計な力が入る。すると演技の『世界観』が少し途切れた感じになる。ダリアはそれが許せなかった。演技の世界に雑音を混ぜない。とにかく余計な装飾を削り落として、真っ直ぐにインスピレーションをぶつける。あいつの演技の全てには意味がある」

 

 ダリアの演技が目につく。

 いるかの話を聞くと彼女の演技は研ぎ澄まされたものだと理解できる。

 

「それにちょっと面白い考え方だよな」

「え・・・何がですか?」

「演技をレベルアップさせようとすると普通は足りない何かを加えるという発想になる。でもダリアの価値観は違う。削ることで洗練させるという発想。それはみんな無意識化で当然のように行ってるかもしれない。でも敢えてそこを突き詰めるってのは違った世界が見えてきそうで面白そうだ」

 

 いるかはクツクツと笑っていた。

 

「ダリアの『合理性』はとことん数字を追い求める。超自分至上思考のくせして、そういうところはちゃっかりしてるからな。シンプルに点数が伸びやすいんだ。まあこの場合、趣向と需要が合致したって言うべきかもな」

「だとするとダリアさんは『自分型』か・・・」

 

 点数を求めるという点でいえば、『世界型』のようにも思えるが、あくまでも自分基準のスケートの求道だとするならその思考は『天才』・・・『自分型』のそれだ。

 点数だけを追い求めるという試行は全日本ノービスで唯も行ったことだった。

 同じ『自分型』でもやり方がピタリと型にはまっているのは、あくまで『自分』基準のもとで行っているからだろうか。

 

「真似しようと思えばできるかもしれない。でもあれは自発的にしないととてもじゃないが続けられないぞ」

 

 確かにその通りだ。

 唯は思考を打ち切って、ダリアの観察に努めた。

 

 

 

 

 

 

 ダリアにとってスケートとは自分がキラキラするための手段に過ぎない。

 勝負欲がないとは言わないが、結局のところ大事なのは自分が満足する演技ができたかどうかだ。

 そしてその満足する演技こそ、点数を追い求める結果になる。

 

(スケートは宝石。磨くことでキラキラに輝く)

 

 ダリアはこのスケートを磨くという過程にこそおもきを置く。

 

(私は個人的な印象や感情といった数値に出来ないものを信じない)

 

 ダリアは自身の価値観すら疑っていた。このキラキラという『衝動』を疑うことはないが、それを見る自分の目は曇っていないか。

 結局は自己満足だ。しかしその磨き上げたスケートは誰が見ても綺麗であるべきだ。

 

(だからこそ点数という極めて『合理的』な答えに至った)

 

 ジャンプやスピン、演技表現といった形に出来ないものを磨き上げる上で絶対的な基準が必要だった。そこに己の感性に寄ることを嫌ったダリアの潔癖っぷりはある意味では主観的なこだわりだといえる。

 

(表現において、派手な演技は目を引く。しかしそこには無駄が多い)

 

 評価されうる技術を残したうえで、さらに演技の『世界観』を構築する。

 表現は基準があってもたやすく数値に出来るものではない。

 だからこそ審査員は5人もいるし、上限と下限を切り捨てて評価する。

 

(曖昧な演技を私は許容したくない)

 

 演技に無駄などあってはいけない。

 宝石に石クズがこびりついているようなものだ。

 

(演技に『わからない』が入った瞬間、それは既に破綻している)

 

 すべての動作に意味があった。

 振り付けには意味がある。ステップやターンにも意味がある。

 

 それでもどこかに言語化できない瞬間があった。

 

 氷の上に描く軌跡の中で、技と技、動作と動作を結ぶその間隙。その動作の繫ぎ。

 そこにこそ、『わからない』は潜んでいる。

 

(例えば大きな動作をする瞬間、その言葉に出来ない隙間が大きくなる)

 

 その瞬間、演技の『世界』は途切れているのだ。

 それが分かってからは簡単だった。

 音楽と振り付けを再解釈して、一分の隙間も出来ないように動作を数珠のように繋ぎ続ける。

 

(完璧な演技が完成した瞬間だった)

 

 ステップやターンを入れるとき必ず予備動作が生まれる。

 その技らしい予備動作が表現を崩す。

 だから、全身の動作を使いながら表現の中心を足のトレースから上半身の動作へと変える。

 振り付けざまに予備動作を取り、音楽に合わせることで途切れることのない演技が完成する。

 それを演技中常に行う。

 

 はっきり言って常人になせることではない。

 

 彼女の演技には間隙がない。

 息を吐く間がないとも言う。

 常に思考して、常に意識を張り詰めて、演技を繋ぎ続ける。

 異常な集中力と疲労を要する。

 しかし彼女にとってそんなことは問題にならない。

 演技に雑音が混じることの方が余程問題だった。

 

(ジャンプだってそうだ。宝石のように磨き上げてようやく使えるものになる)

 

 今までの話と矛盾するようだがジャンプには絶対などない。

 環境や体の調子、数値にできなくとも結果に影響する要素がある。それは彼女の嫌う『分からない』だ。

 

(磨いても磨いてもたどり着かない答えがある。だから不確定要素は限りなく排しなければならない)

 

 ダリアはジャンプ習得してからも練習で何度も転倒する。

 それはジャンプが出来なくなっているわけでは無い。敢えてこけているのだ。

 ジャンプの失敗する要因を知るために、ジャンプにおける動作をひとつひとつを分析して変化を加える。

 そしてその加えた変化がジャンプにどう影響するかを検証する。

 成功時のフォームから少しずつ崩して、何をすればどのくらい結果に影響するのかを虱潰しに調べるのだ。

 そうすればジャンプをするとき意識するポイントを認識できる。

 ジャンプを失敗したとき、正確に原因を特定できる。

 

 どこまでもストイックに演技を詰めていく。

 

 そんなダリアの演技だ。

 

(2回転アクセル・・・!)

 

 無駄なく洗練されていて、余分な力もない。

 だから乱れないし、次の動作にも繋がる。

 

 2回転アクセル 着氷

 

 まるで当然のように降りていた。

 ジャンプ特有の気負いのようなものも感じられない。

 

(ここまで、突き詰めて。リンクの上で感触を確かめて・・・失敗する要因がない)

 

 ジャンプは些細な要因が失敗へと繋がる。

 その要因の全てを把握することなど不可能だ。

 しかしダリアは疑わない。それは盲信ではなく確信だった。

 何度もわざと転倒したことで、失敗の条件を身体が覚えている。

 確かにそれは数値に出来ないかもしれないが、経験という間違いのない実績だった。

 

 ジャンプすら表現の一環である。

 決して演技が途切れないように音楽との相関性を意識する。

 

(磨きあげた私のジャンプが輝いてる)

 

 ジャンプとは結果がすべてだ。どれほどダリアが努力していようとその苦労そのものは評価に値しない。

 しかしその努力と苦労の結晶こそがジャンプなのだ。

 磨き上げた過程はダリアが誰よりも知っている。

 

(キラキラで、愛くるしい、私の宝物)

 

 誰よりもストイックに磨き上げるからこそ、並々ならぬ執着がそこにはある。

 ジャンプはただの結果だ。

 

(でもその過程を知っているとより愛おしい)

 

 心の中ではそう思いながらも、その感情は演技に反映されない。

 思い入れが気負いとなればそれは雑音だ。

 

 『合理性』を以ってジャンプを磨く。

 

 トウの突き方ひとつ、単なる感覚ではなく、その位置を突く理由がある。

 体の起こし方。勢いの付け方。体の捻り方。

 全て言語化可能なほど突き詰めた。

 思考を巡らせ、体に神経を張り巡らせる。

 体が風を切る『感覚』には確かに覚えがある。

 

(失敗はない)

 

 確信したとおりだった。

 

 3回転ルッツ 着氷

 

 カツッと着氷した音が聞こえる。

 着氷の瞬間、銀盤から舞った氷の塵が光に反射してダリアを周りを輝かせる。

 

 そんな光を見てダリアは薄く微笑んだ。

 

(どんなに切り詰めてもジャンプに100%はない)

 

 失敗はない。そう考えるのはあくまで経験からくる『感覚』の話だ。ダリアはそれすら信用していない。

 

(欲しいなぁ・・・)

 

 それは誰の手も届かない輝きだ。

 

(そうだ、結局のところまだジャンプには『わからない』が残っている)

 

 どれだけ突き詰めていっても、ジャンプには失敗が付き纏う。

 それを克服できるならそれはきっと神だ。

 

(いつか、それを手にするために)

 

 ダリアは今もなお、磨き続けている。

 

 観客もそこまで理解していなくても伝わるものがあった。

 ダリアのジャンプはどこか違うと。

 

 計算と検証が導く。今できる最高到達点。

 連続ジャンプでも音楽に合わせることは忘れてはならない。

 どんなに難易度が高かろうとそれは表現の一部だ。ただ跳ぶだけでいいという訳ではない。

 

 トウを突く。

 反動に体を乗せる。

 ジャンプの理屈、いちいち考えている暇はない。

 連続して生まれる動作の間隙にノイズが入る余裕を与えない。

 最後の最後まで彼女は己がルールに則っていた。

 

 3回転フリップ+3回転トウループ 着氷

 

 『合理性』を突き詰め、普遍的な演技を手にして、それでも彼女は満足しない。

 演技は全て一貫していた。

 途切れることなく、彼女は演技をやり切った。

 

 どこまでも繊細で、どこまでもストイック。

 

 それゆえに表現も、スケーティングも、技も全てを巧みにこなす。

 

 烏羽ダリア

 

 ジュニアで一番巧い奴。

 

 

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