特異な麻雀狂の転生談   作:やる気のないATM

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転生前のちょっとした話。


前章 転生において
《0-01》プロローグ:二人の転生者


夢心地の中、浮遊感を覚えた。

足が地につかないのに重力に引っ張られる感覚が無く、もしかしたら宇宙空間はこんな感じなのだろうか、そんな事を思いながら意識が覚醒を始める。

 

「眩しい……訳では無い? 目に優しいなぁ」

 

目を開いた瞬間感じた刺激は長続きせずに収まり、明るく眩しく何も見えない、と本来なら目を瞑る視界に呑気なことを考えながら辺りを見渡した。

見渡したと言えど、違いは無く首を動かした感覚があるだけで何一つ見えるものは変わらない。

 

「おーい。誰かいねぇの〜?」

 

大きく叫んだ当てのない音はどこまでも飛んでいく。返事が返ってくることもない。

 

なんで俺はこんなとこに居るのか。何をするにもまずはコレを大まかにでも整理しなければならない。

 

この空間にいる前の記憶……それはたった一人の家族である妹ともに親友の家に遊びに家を出た景色が思い浮かんだ。

一つ違いの妹、心優しく分け隔てなく振りまく笑顔に俺は何度も救われた。いや、それは今は置いておこう。

親友の家に向かう道中、簡単な手土産を買いに寄り道したが、入り組んだ道を選んでしまったこと。

道が分からず、二人してケータイでマップを見ながら歩いてしまったこと。

猛スピードで突っ込んでくる車両に気付くのが、遅くなったしまったこと……。

 

「あ、死んだのか……。あ、ぇ、妹は…凪咲(なぎさ)はどうなった…? 俺の真横に居たはず、だ。じゃあ、一緒に巻き込まれ……」

 

顔を上げた時、目の前に真っ赤な鉄の塊が近づくのを最期に思い出せる記憶は何もない。即死だったのだろうか。

 

一番の心配事、心残り、未練。

妹の存在が俺の脳内に埋め尽くされた。

どうなっただろうか。きっと同じ目に…いや、俺だけを轢いただけだと信じたい…。

 

「凪咲……」

「呼んだ?」

「あぁ………ぉあ? 凪咲!?」

 

嘆きに反応した声を頼りに全身で振り返り、その声の主を視界に収めた。

たった今、その安否を知りたかった存在、凪咲がそこに居た。

 

「お兄ちゃんが居るってことは、やっぱり…そういうことだよね?」

「そう…だろうな……」

 

俺達は揃ってその生涯を終えたのだ。

 

つまりココは死後の世界…こんな明るいんだな。なんてことを思いつつ、どうしようかと凪咲を見た。

 

「死んだらお母さんとお父さんに会えるのかな?」

「…そうだな。探してみるか? でもどうやって動けばいいんだろうな?」

「え? 動けぇ〜、って思ったら動けたよ?」

「マッジで?」

 

ナイスアイデアを聞き早速実行しようと念じた。その時だった。

 

「ようこそ、私の管理空間へ…」

「誰だ?……凪咲、警察を呼べ。変質者だ」

「わかった! あ、ケータイが無いや」

「クッ…! 凪咲、お前だけでも逃げろ…!」

「いや、あの…変態でも変質者でもないので許してください」

 

上裸の筋肉ムキムキマッチョが土下座の体勢で降ってきたら流石に警察呼ぶだろ。自分たちで対処できんわ。

 

なんて、迫真の茶番劇をしつつ、目の前の上裸変態マンが膝を付いたまま上体を起こした。

 

「この度は私めの不手際により、このようなことになってしまい申し訳ありません…」

「ごめん。何に対しての謝罪なのかも、あんたが何者なのかも分からないんだけど?」

 

再び土下座の体勢を取る変態マンに率直な疑問を投げかける。

ハッとしたように素早く上体を起こして、そのことに謝罪をしつつ続けた。

 

「私は貴方がたが生まれ育った世界を管理するものです。所謂、上位存在のような者…簡潔に言えば神、と呼ばれる者です」

「コレは失礼いたしました、神様〜」

「真似せんでいいぞ、凪咲」

 

神と聞き素直に頭を垂れる凪咲に和みながらも、先ほどの言葉と合わせ、理解した俺は自称神の変態に視線を向けた。

 

「俺達がココに居ることと、あんたの存在が物凄い重要な接点を持ってる、ってことでいいな?」

「はい。私の不手際により、本来の寿命の2割に満たない人生で幕を閉じる結果を生じてしまいました。その事をあれこれ言い訳するつもりも説明することもありません。ですが、今回の事で貴方がたの今後の運命を提示させていただきに参りました」

 

変態神はその言葉を皮切りに、5つの色の光を自身の周囲に現した。

 

「赤はこのまま輪廻転生をし、記憶を無くし次の人生を歩む選択肢」

 

赤の光が俺に近づき、右肩あたりをフラフラとし始める。

 

「青は記憶を消し、もう一度同じ世界の幼少の頃からやり直す選択肢」

 

青の光が凪咲の足元に落ち、足を中心にクルクル回りだした。

 

「黄色は異なる世界に記憶を持ちながら転生する選択肢」

 

黄の光が俺の左腰にひっつき、一つの棒のように伸びる。

 

「白は無の世界を管理し、自身で好きな世界を築き上げる選択肢」

 

白の光が目の前を浮遊し様々な色に変化を始める。

 

「黒の世界は私に全ての選択権を持たせ、新たな世界を生き抜く選択肢」

 

黒の光…いや、塊は変態の顔を覆う様に広がった。

 

光の動きの意味はわからない。でも、コレだけ選択肢を与えられて、考えずに決めることが俺にはできない。俺には。

 

「じゃ、私は黒〜」

 

凪咲はギャンブラー気質。なのに豪運を持ち合わせるからたちが悪い。

だが。

 

「凪咲が黒なら俺も黒」

 

ココで何も考えずに黒にする理由。他の選択肢はどれも魅力的に感じる。

今までのすべてを消して新しい人生を送ることも、同じ人生をやり直すことも、異世界転生らしいことも、創造神まがいのことも。

 

でも、凪咲が直感で選ぶものに便乗するといつもいい結果に導いてくれる。

要するに強き者に服従するようなものだ。

 

俺達の言葉を聞き、微笑む変神は黒以外の光を消滅させ、元から決まっていたかのように、一冊の本と二枚の紙を出現させた。

 

紙を俺と凪咲の目の前に、一冊の本は見覚えがある…いや、見覚えしかない。 

 

俺のバイブル。唯一愛した作品。

【咲-saki-】第1巻。

何故それを、なんて言葉にはしない。きっと神なのだから、事前に知り尽くした上で、黒を選んでも楽しめる安泰の世界を紹介しようとしてくれていたのだろう。  

 

「黒の選択肢。今回はこの世界にイレギュラー存在として、でもしっかりと住人として生活をしてください。又、この世界を存分に生きたいように生き、全てを糧に新たな物語を完成させてください」

 

ただ普通に生きるだけ、でも二次創作主人公が如く、新しいルートを完成させなければならない。

 

簡単なようで難しい。だけど、実に楽しそうだ。凪咲も目をキッラキラにさせてワクワクを隠せていない。無論、俺もワックワクだ。

 

【咲-saki-】の世界に入れる。こんなにスバラなことはない。

 

「では、もうすぐ転生の準備を始めます。それぞれ、3つまでなら願いを聞き入れます」

「だからいきなり聞くなよ」

「はい! 咲と同い年、幼馴染になる、後は〜……」

「2つ速攻かよ」

 

咲大好き人間の凪咲からしたら最高の展開なのだろう。…ちょっと怪しい笑顔で俺のこと見ないでくれ。不安になってしまいます。

 

願い…か。

強いて言うなら、次の世界でもまた親友たちに会いたい。特に大親友と言っても過言ではない透也(とうや)には生前の事で礼を言いたい。

 

「一つは親友たちも同じ世界に来てもらってまた遊びたい」

 

微笑む変態さんは頷き承諾した。

もう2つ。

……よし、ココは強欲に行こうか。

 

「一番好きなキャラ、小鍛治健夜と接点を持たせてほしい。あとはオカルト的な能力がほしい」

「そうかそうか。せっかくだ2人とも能力をつけよう」

「じゃあ、私は完全コピー能力!」

「俺はお任せで」

 

俺達の願いを聞き、何やら機械のようなものを取り出した。

 

「ココに制約を記し、破られた場合すべてを無に帰すことになるでしょう…。今回は破られるようなことは残ってないので大丈夫」

 

サラサラと必要事項でも記入を始める神らしき筋肉。

待つこと数十秒。

 

「これより転生準備を開始する。……準備完了。それでは固有名詞《夜早希》《凪咲》。これより、この二名に新たな生を与える。願いの揃った夜早希から先に。凪咲は最後の願いはどうかな?」

 

明るい空間に負けない光量の粒子が辺りを包む。

 

「決めた! お兄ちゃんは三十歳まで無職になる!」

 

視界を覆うほどの光りに包まれ、意識が遠のく間際、何やらとんでもないことが聞こえてきたが、すでに俺の意識に残ることは無かった。

 

 

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