特異な麻雀狂の転生談   作:やる気のないATM

2 / 3
不定期だけど、一ヶ月以内には投稿しようと思ってました。


第一章 大親友との再開
《1-01》赤穂零


この世界にやってきて5年の時が経過した。

上井出(かみいで)夜早希(やさき)。それが新たな人生においての俺の名前だ。

名字は前と変わったが、何故か夜早希という名は前世から引き継がれている。確か神は固有名詞とか言っていたから、生物の存在自体の名前が決まっているのかもしれない。

 

それはそうと、この【咲-saki-】の世界に新生活を始めることになった事で、前世には無かったものが色々とある。

前世の記憶は勿論のこと、両親の存在と幼馴染の存在だ。

前世では記憶があまり残らないくらい前に両親は他界してしまい、家族との思い出と言えば、凪咲と父方の祖父祖母だけが残っている。

それも相まって今世での両親は何の拒否反応もなく、精神的にも本当の両親として何の不自由もなく理解できていた。ただ、両親共に麻雀好きを通り越す麻雀狂いなのは如何なものかと思う。そんな事を言ったら親友たちからは、お前が言うなって言われるだろうけど。

その辺りを考えると、ある意味血の繋がりを強く感じる。

 

そして、幼馴染の存在が現在進行形で重要な要素になっている。

 

「ロン! 16000!」

「えぇ…何その待ち…。地獄単騎でそこ狙うのかよ…?」

 

絶賛放銃中である。放銃率はそこそこ低かったはずなのだが、予測不能な待ちが多いせいか振り込むことが多い。

幼馴染の赤穂(あこう)(れい)、同い年で家も隣と言うこともあって、最近は良くどちらかの家に入り浸り麻雀漬けの日々を送っているが、この世界は麻雀の英才教育が当たり前みたいな節があるらしいから問題無いだろう。

両親や零の両親がいない時は二人でも三麻ルールを二人用に組み替えてやっている。

前世含めて麻雀歴8年の俺が2歳3歳から始めた零相手に五分五分の勝負をしてるのは、特別俺が下手なわけじゃない。

きっと。そうに違いない。現に両親含めた勝敗だってボロ負けなわけじゃない。手加減されてる気がしないでもないが。

 

心理戦を仕掛けても基本的にニコニコして笑顔を振りまく零の心理を理解しようとしても、何もわからないしわかったと思ったら罠なのだ。

 

「ふっ…コレで二麻勝敗は180勝154敗だな…」

「そーなんだー!」

 

精神年齢高校生としてはこの生活は違和感ない訳じゃないが、中々に楽しいものだ。

別に子供好きでもなんでもないが、この姿形になり年下が同年代に変わっても不思議と年下相手という感覚は少なく、あっても妹相手って気分になる。コレを言うとちょっと頬を膨らませるから二ヶ月に一回程度に抑えている。

 

「二麻終わっちゃったなぁ。…そうだ。昨日、ちょっと面白そうなルール見つけたんだよ」

「へぇーどんなの?」

 

麻雀卓は一旦放置して自作感満載のノートを広げる。

ノートの表紙にはデカデカと【上井出麻雀】と書かれているが、コレは父が書いたらしい。

内容は細々とアレコレ書いてあるが、要約すると……。

 

「配牌の時に牌を一つ一つ理解してツモることを意識すると、その牌が来るってことらしいよ」

「? なんそれ? よくわからないねー」

「…まぁオリジナルルールなんてそんなもんだろうな。ルールとして成り立ってない気もするし」

 

あくまで麻雀好きが作ったオリジナルルール。訳のわからないことなんてザラだ。なにより、コレは四麻用。2人じゃできない。

それなのに態々このルールを説明しようと思った理由はただ一つ。

このノートを見つけた時の視線を釘付けにされるほどの興味、内容を読み込んだ時の言い得ぬ高揚感が俺には抑えきれず、誰かに共有したかった。両親は当然知っているどころか作成者なのだから俺より詳しい。消去法で零に教えるくらいしか無かった。

 

当然、ルールをそのまま説明したところで4歳児5歳児に伝わるわけがなく、わかりやすく簡素に伝えただけで終わったけど。

それでも俺としては満足できた。

いつかこのルールを使用したい。俺ならこのルールを実施できる、そんな事を感じたのだ。

両親はこのルールを随分と前に作り、放置しているようだが、細々としたルールを読み漁ると中々に興味深いし良いルールが出来上がっていると心の底から思ってしまえばワクワクが止まらない。

 

「そーいえば、テレビで麻雀特集してるんだってー」

「大会とかで解説してたりするからね」

 

【咲-saki-】の世界においての大会と言えばインターハイ全国大会。なんならメインストーリーがそれである。

俺も一人の時はテレビにかぶりつき、過去放送分は全て確認済みであり、今後のものも全て予約し何度も見返すつもりだ。

生まれる前の麻雀放送分も両親が残しているため、いくらでも勉強していける。

 

「今年も強そうな人達現れるかなー」

「どうだろう。強い人って鍛錬も努力も惜しまない人が多いから突然現れるのは無いんじゃないか」

「えー。そうかなー」

 

原作でもこの時期は居なかった気がする。

俺が一番好きなキャラである小鍛治健夜ことすこやんは間違ってなければあと三年後に麻雀デビューするはずだ。それまでは突然変異的に強敵が現れることは中々にないのではないだろうか。

それにしても、あと3年もある。もし…もし、転生が1からではなく、前世の最終状態である高校生から始まっていたら、すぐにでも会いに行っていただろう。

まだ5歳児である為に今すぐ行きたい衝動を抑えている。我ながら頑張っている方だ。

 

神の温情かなにかによるのだろうが、俺の出身地はすこやんと同じ茨城県。こんなに近いならすぐにでも探したい。不審者扱いされてでも会いに行きたい。だってそれが転生した理由の1つでもあるのだから。

 

「またのその顔してるー気持ち悪いよー」

「失礼だな…」

 

たまに想いが炸裂するだけで普段は控えているんだから、たまに表情が緩むのも仕方が無いじゃないか。

しかし、不快感を与えたくは無いし、もう少し表情筋を鍛えねば…。

 

「変わった打ち手の人もいるもんだねー」

「零だって中鳴き良くするし、似たようなもんじゃない?」

「そーかな。夜早希だって意味わからないことしてるよー?」

「じゃあ、お互い変な打ち手の部類ってことかな」

 

変な打ち方と言われても、自分ではよくわからないものなのか、前世で言われたことは……週一で言われていたくらいだ。

この世界において、変な打ち方の大半はオカルト持ちに該当する。

 

零もおそらく、いや、確実にオカルト持ちだろう。

推測の域でしかないが、中を使った時の和了率が恐ろしく高い。それも門前であるかどうかが関係なく、中の使用頻度は高い。9割近くは役成立している。

研究時に中をわざと鳴かせたことがあるが、鳴かせた場合の放銃率は100%を記録してる。鳴かせてしまえば失点確実。容易に中を手放すことが難しくなり、手牌に組み込まれると困ること間違いなしだ。

 

中特化の引き寄せは、赤い牌を引き寄せるタイプ下位互換に感じるかもしれないが場の支配力は尋常じゃない。零が中を三枚引き寄せ、中の役を成立させると門前だろうと副露だろうと関係はない。役を作り上げたが最後、その時点で零の和了は確実になる。

もしコレを崩すとしたら、それ以上の支配力でもないと基本的には止まらない。

俺にその力は今は無いが、いつか乗り越えたいと心に決めてる。総合的に勝数は上ではあってもまだまだここからもっと手がつけられなくなっていくと思うと、ワクワクが止まらない。良い幼馴染を持ったと心の底からそう思う。

 

「いつか、このテレビに出るくらい強くなってプロの世界に行きたいな」

「えー? んー?」

「…行きたくない?」

 

この歳でこの強さを持つのに高みを目指す気がないのだろうか。

俺自身は前世でもプロを目指してあれこれ計画していたくらいではあるが、流石に麻雀世界の子であろうと小学校にも上がってなければ考えるのは早すぎるのかもしれないが目指すものがあるならば早いうちに決めてしまったほうが良いと俺は考える。

 

「そーじゃなくてー。…もう、この大会の誰よりも強いでしょ? 私たちは」

「…そうだね。余裕で優勝出来るだろうし、その先を見ないとね」

 

すべて杞憂だった。

それもそうだ。明らかに"牌に愛された子"側の存在だ。今後が楽しみなタイプなのだから、今の俺はこの間近でその成長を見れるのを楽しもう。

 

普段ほわほわとした口調の零が時折、笑顔が消え声色を変えハッキリとした低めの声になることがある。心の奥底を観られているような、そんな気分にさせられる。

いつもすぐにまた笑顔に戻り不思議な気分は分散させられ、すぐに元の雰囲気に戻る。

 

そんな日常を送っている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。