オーバーロード 不死王と超不死のまったり世界征服   作:ガババババ

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毎日ちまちま書くから、更新遅いけど我慢してね。


第1話 終わり、そして始まり

 

 

 

 広大な世界と高い自由度を誇る、日本中を震撼させたDMMOーRPG──YGGDRASIL(ユグドラシル)

 サイバー技術とナノテクノロジーの粋を集結した脳内ナノコンピューター網ニューロンナノインターフェースと専用コンソールとを連結させ、仮想世界で現実にいるかのごとく遊べる、体感型ゲームの一つであったが、かつて一大ブームを巻き起こした作品の一つである。

 

 700種類を超える種族、2000を超える職業クラス、6000を超える魔法の数々、自身のアバターやアイテム、住居等の外装、内包データの設定が可能、プレイヤーを待ち構えるのは、9つある世界からなる広大なマップ。

 戦闘が主であった既存の作品と一線を画す、無限の楽しみを追求できるゲームとして、日本国内においてDMMOーRPGといえばかのユグドラシルを指すとまで言われる評価を受けていた。

 

 しかし、どんなモノにも終わりはある。サービス終了となる最終日に、とあるプレイヤーも「彼」に会うために、この世界にダイブしていた──

 

 

 

▲▼▲▼▲▼

 

 

 

「そっか・・・モモンガしかいなかったか。ウルベルトやたっち・みーとも話したかったんだけどね。あとペロロンチーノも」

「今日はわざわざありがとうございます。みんな、忙しいみたいで・・・ペロロンチーノさんは、どうだったか」

「まぁ・・・しゃーあないよね。あいつは新作エロゲ買ってるはずたよ、なんか写真きたもん」

「マジか」

 

 使い切りの課金アイテム──ギルドに所属してないプレイヤーでも、カウンター系の妨害などを遮断できるアイテム。

 お互いのプレイヤーの合意があれば使える、いわゆる中立アイテムを使用して、アウンズ・ウール・ゴウンのギルド長「モモンガ」は、とあるプレイヤーと会話していた。

 

「ほんとはそっちに出向きたかったんだけどね。ボクもほら、ヘロヘロさんほどじゃないけど社畜だから。こんなギリギリでしか時間とれなかったよ」

「・・・本当は、あなたもアインズ・ウール・ゴウンに入ってほしかったんですけどね・・・っと、今のは・・・!」

「ははは、悪いねモモンガ。生憎だがソロプレイが性に合っている。ギルドに入らなかったからこそ出来ることもあったからさ」

 

 吐露した思いをつい溢してしまったことに、訂正しようと焦るモモンガ。しかし、相手のプレイヤーは気にしたようすもないように、豪奢なオーバーロードに言葉を続ける。

 

「でもね、ギルドに属してなくたって。ボクとモモンガたちは親友だしね。次にユグドラシルIIがでたら、今度はギルドに所属させてもらうよ」

「そうですか、嬉しいです・・・おっと、そろそろですね・・・」

 

 この世界(ユグドラシル)の終了まであと5分もない。残された時間を確認した両者は、会話の終了を予期してお互いに会話の終了へ向かった。

 充実した思い出話は、また次の機会へと持ち越しとなる。

 

「・・・そろそろ時間だね。最後は・・・適当にそこらプラプラして、寝落ちして終わろうかな。明日は休みだし。モモンガはどうする?」

「私は・・・ギルドの長として、玉座で最後を迎えようかと思ってます」

「そっか。じゃあ胸張って最後までふんぞり帰らないとね。ふふふ、またリアルであって酒でも飲もうよ。今生の別れじゃないし・・・じゃあね、モモンガ」

「えぇ・・・マトメルさん。ありがとうございます。おやすみなさい」

 

 そうして、会話が途切れた。効果が切れたアイテムはモモンガの手の平で、灰となって消滅する。骨の間をサラサラと落ちたそれは、親友との繫がりすら切られたように、彼の心を締め付けた。

 彼とは、また会える。そもそもリアルで知り合いなのだから。それ故か、もう二度と会えないギルドメンバーとの別れがより、苦しくなってモモンガに襲いかかる。

 

「・・・みんなとも最後に話したかったなぁ。終わりだとしても、せめて・・・」

 

 幻想であるユグドラシル、彼の孤独を満たした世界。家族に等しい人たちと、せめて最後まで。

 決して叶わぬ現実に、円卓の中央に手を伸ばしても、掴めるものは何もない。少し頭を台に傾けたモモンガは、最後はギルド長として成すべきことをするため、玉座へと向かう。

 

「さぁ・・・俺も向かおうか。アインズ・ウール・ゴウンの、ギルド長として」

 

 そして、かの物語は始まる──

 

 

 

▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 月明かりが照らす夜だった。その光も、生い茂った場や枝が影を作る森林では闇の世界と変わらず。

 20歳前後の見た目の、瑞々しい女性。金髪のボブカットで肌は白く、顔立ちは整っており、ネコ科の動物を思わせる可愛らしさと、肉食獣の様な危険な雰囲気がある彼女の駆けていた足が止まる。それは、異臭を嗅ぎ取った故に。

 

「・・・!?これは──」

 

 血の臭いではない、邪悪なるアンデッドの臭い。鋭敏な嗅覚で嗅ぎ取った彼女・・・クレマンティーヌは眉をひそめた。

 

 城塞都市エ・ランテルへ、法国から王国への逃げる最中。

 追っ手を振り切り、アンデッドの感知をすり抜ける術を用いてカッツェ平野を抜け、敢えて足が辿れぬように遠回りしてトプの大森林に入り、しばらくしてからエ・ランテルに潜むつもりだった。

 

 トブの大森林は入って直ぐであれば人の手が入った程度の森ぐらいの雰囲気しかないが、一直線に150メートルも進めば先ほどの雰囲気は一変する。

 足場は悪く、頭上に茂った木々によって視界は遮られ、周囲は昼でも暗く、あちらこちらに闇がわだかまっており、15メートル先が見えれば良いほうだろう。

 

 それら理由により探検する者は少なく、詳しい地形は全く判明していない。どこかの国が本腰を入れて調査を行ったということも歴史上一度たりとて無い故に・・・人を隠すにはうってつけ。

 住まうモンスターであっても、英雄級の実力を持つ元漆黒聖典のクレマンティーヌには問題ないはずだった。そうであったはずなのに

 

「あ・・・人、だ」

「・・・!ちっ、んふふふ〜。見つかったちゃったかー」

 

 前方にいる人影の存在は、くるりと、こちらを向いた。同時にクレマンティーヌは険しい顔から、弧を描いた怪しい笑みへと変わる。

 ハッキリとした言語を介した、知能あるアンデッド。つまりは危険なモンスターの証拠である。撫でるような軽口で最大限の警戒を向けるクレマンティーヌは、恐怖を押し殺すようにいつもの笑みを浮べたのだ。

 

(肉体がある・・・ゾンビ?マジックキャスターじゃない・・・とは断言できない見た目!カッツェ平野から炙れたアンデッド?いずれにしても・・・!)

 

 声は一般的な男性の声だった。背丈は子供と同じぐらいか、クレマンティーヌよりも二つ頭ほど小さい。痩せ細った身体に張り付くように、全身が包帯だらけのミイラ男。

 蝙蝠のような悪魔の翼に、額には空洞である眼光を赤く灯す、トカゲを模した頭蓋骨の装飾・・・そして、金模様があしらわれた紫のマフラーを首に巻いている、赤い目を輝かせるアンデッド。 

 

 とにかく、ヤバイ。クレマンティーヌ自身が今まで相対してきたどんな相手──それこそあの『番外席次』よりも、肌の産毛から察せられる危ない存在だった。

 クレマンティーヌは戦慄していた。胸奥から噴き出す恐怖に歯を鳴らし、足が震えるのを必死で抑える。悲鳴が飛び出しそうなのを、舌を噛んで我慢する。ジワジワと股が濡れるのも、もう既に意識外のこと。

 

「あ、あのー・・・」

「ひ・・・っ!──う、うぁぁぁぁぁああ!」

 

 その声を聞いた瞬間に全身が震えあがり、上擦った幼子のような悲鳴が漏れた。脳が相手の言葉を処理するより前に、引き裂かれるような感覚を掻き消すように、クレマンティーヌは叫びながら駆け出す。

 逃げる選択肢は無かった、逃げられないと悟った。確実な死しか見えない先で、抗う道を探し出すクレマンティーヌ。せめてもの抵抗を選んだのは、破綻者であるが戦士である矜持故か。

 

「〈疾風加速〉〈超回避〉〈能力向上〉〈能力超向上〉・・・〈流水加速〉!」

 

 クレマンティーヌが有する武技を全て使用する。移動速度を超人的に引き上げ、万が一の回避に備え、能力の限界を超えて肉体を行使する。

 黒いローブを翻して脱ぎ捨て、ビキニアーマー姿に。靭やかな肢体を曲げて弾丸のように飛び出すかの“疾風走破”。

 魔法を込めることができる、オリハルコン製のスティレットに手を伸ばし、棒立ちのアンデッドへ飛び掛かった。

 

「燃えろおおぉぉおお!」

 

 握り締めた武技をミイラ男へ。赤い瞳にねじ込み、奥にある脳にまで、発動した《火球(ファイヤーボール)》が燃え上がる。

 確実に命中した。しかし安心など今のクレマンティーヌにはできなかった。矢継ぎ早に次のスティレットへ手を伸ばす。

 

「これで終わりじゃねぇーんだよ!」

 

 続けて、《雷撃(サンダーボルト)》と《魅了(チャーム)》も、最後にとっておきの、四本目のスティレットも、アンデッドの目玉と口と喉に突き刺した。

 空気を震わす電撃と、指した相手を魅了する温かさと、秘蔵していた効果を発動するが、それでもクレマンティーヌは安堵を覚えなかった。

 

「食らえやおぁぁあああ!」

 

 スティレットを使い切ったクレマンティーヌは、スケルトン系モンスター対策である腰のモーニングスターを握り、勢い良く振り下ろす。得意ではない武器ではあるが、そんなこと言ってられない。

 鎖を撓らせてトゲ付きの鉄塊を振り下ろし、確かな感触が手に伝わる。そんな、元スレイン法国が誇る特殊部隊『漆黒聖典』第九席次の全力はどうなったか。

 

「・・・ん?あ・・・?」

「・・・・・・!えぅあ、ぁ・・・!」

 

 こんなの勝てるわけないじゃないの。目の前のアンデッドは、全くの無傷だった。命中したはずの、手応えありの攻撃が全て効いてない。魔法も、打撃も、渾身の技術も、クレマンティーヌの全ては無になった。

 その赤く濁った瞳に、クレマンティーヌの姿は写らない。死を確信した破綻者の顔が絶望に染まり、脳裏には走馬灯が忙しなく巡る。

 

 両親や、兄のこと。どうして、憎らしい彼らがこの間際になって愛おしく思うのだろう。

 まぁ、破綻した自分なりにたのしかったかも?少し、クレマンティーヌの口に笑みが浮かび、フフッとなった。

 

 

 

▲▼▲▼▲▼

 

 

 

「え、ちょ、うわぁ・・・?なんだったんだ?いきなり過ぎると人って、悲鳴あげられないんだな・・・!」

 

 彼──ユグドラシルプレイヤーである「マトメル」は、目の前で行われた出来事に放心していた。

 この世界に転移してから数時間後、ようやく出会った第一初対面の人間に、いきなり失禁しながら凄い形相で襲い掛かられ、そしたら勝手に笑みを浮べて気絶して倒れた美女に困惑する。

 

「なんか、すげぇ引きつった顔してたな・・・なんでだろ」

 

 倒れた女性を抱き起こし、スキル《呪具作成(クリエイト・カース・アイテム)》で作ったベッド──勿論付属効果は無くしている──に寝かせたマトメルは一息付くと、先ほどの出来事に首を傾げて思案する。

 明らかな狂乱状態。いったい何が原因だったのか。

 

(あ、やべ・・・・・・《恐慌のオーラV》つけっぱなしだったわ)

 

 一定範囲のレベル60以下の相手に混乱状態を与え、操作不能によるランダム行動か自害効果を与える強力なスキル。それも、他のスキルと併用して更に効果をあげた代物。

 自身の常時発動型技術(パッシブスキル)があったことを失念していたマトメルは、彼女が発狂しながら襲い掛かっていた理由に行き着くのだった。

 

 

 

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