オーバーロード 不死王と超不死のまったり世界征服   作:ガババババ

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マトメルのせいで、原作のアンデッド騒ぎが5倍ぐらいレベルアップしてます。


第5話 『死群狂乱』①

 

 

 

「今度は東側からだ!すぐに救援に向かってくれ!」

「広場にまた降ってきやがったらしい!こっちにも数人でいいからよこしてくれ!手が足りなさ過ぎる!」

 

 城塞都市エ・ランテル。堅牢な城壁に囲まれたこの都市では、現在地獄へと変わろうとしていた。その鉄壁なる城壁を持ってしても、内側から発生した脅威は止められず、むしろ硬い城壁は人々から逃げ場を失っていた。

 共同墓地から突然現れたアンデッドの大群。それもただ発生しただけでなく、あらゆる方向から舞い込んできたのだ。

 

 墓地からかなり外れた場所からいきなりだったり、地中を掘り進んで広場に這い出てきたり、まさかの上空から降り注いでくることも。規則性はなくランダムで、しかも死角から襲ってくるアンデッドたちに後手となる冒険者たちは、肉体だけでなく精神もすり減らしていく。

 いつまでこの地獄が続くのか。騒ぎが発生してから既に10時間が経過して尚、形勢は良くならないばかりか押される一方だ。いずれに死傷者は増えるばかり。

 

「どいてくれ!重症者だ、奥に運び込め!」

「うぅあ・・・腕、がぁぁ・・・!」

百足状の骸骨(スケルトン・センチュピート)を確認!刺突武器以外で対処して!」

 

 冒険者たちの台詞が慌ただしく飛び交い、怪我をした者を中へ運び込むために、冒険者ギルドへ駆け込んでいけば、すぐさまアンデッド発生地に新たな冒険者が向かわされる。

 ミスリル級冒険者たちなど、ベテランたちが現場で指揮を取って退治に赴いているが、犠牲となる冒険者たちの数は増えるばかり。一部の冒険者が地図を広げながら情報を集め、なんとか盛り返しを狙うが事態は絶望的だ。

 

 まず、要となるポーションが足りない。ギルドの貯蔵から持ち出してはいるが、戦闘が長引いている現状なら当然ながら減る一方。

 それを補給できる、エ・ランテル最優の薬師であるリイジー・バレアレは死亡していた。孫であるンフィーレア・バレアレも都市を離れてしまって頼ることは不可能だった。

 

 先手を打たれたこの戦況は苦しいばかりで、果たして要請が受理されて救援が来るまで持ち堪えられるかの戦い。

 ギルドのある部屋にて、呟くは3人の者たち。

 

「こうも徹底されている攻め方・・・確実に裏に黒幕がいるな」

「アンデッド絡みだと、ズーラーノーンか。人々を守る冒険者も残さねばならない以上、踏み込む戦力を向かわせられない・・・やられたな」

「あのアンデッドを使う秘密結社か。大方関係しているだろう」

 

 エ・ランテルの冒険者組合長、プルトン・アインザック。

 都市長のパラソレイ・グルーセ・デイ・レッテンマイア。

 魔術師組合長、テオ・ラシケル。

 

 幾つかあった他の薬屋も全てアンデッドにより予め破壊されており、徹底したその囲い込みは明らかな知能犯を感じられる。ただの自然発生ではない、裏に明らかな指揮官がいると思われる。

 

 それに、ここら一帯に避難しているのは冒険者だけではない。アンデッドから逃げてきた都市の人々が集中していた。

 エ・ランテルの端までアンデッドは確認されているため、逃げ遅れてしまった人々は、もう既に今や彼らの食糧か仲間になっているだろう。

 

 そんな人数が数百人規模で、寿司詰め状態で家屋を共有して警戒していた。女子供は震えて縮こまるのを、棒切れなどをもって警戒する市民の男たちがいるが、冒険者や衛兵と比べれば兵力には数えられない。

 冒険者と衛兵たちでなんとか凌いでいるが、この危機を果たして脱することはできるのか、人々の不安は募るばかりだ。

 

「ジワジワとアンデッドの軍勢が迫ってきている。王国からの救援は間に合わなさそうだ」

「あぁ、それよりも問題は・・・!」

 

 エ・ランテル内で厳重に管理されていた食糧庫が全てなくなっていたのだ。それが発覚したのはこのアンデッド騒ぎが起きるほんの数時間前・・・そんな異常事態に重なるような、今回の悲劇が舞い込んできたのだ。

 

 都市を賄うための食糧が、全て盗まれていたのだ。どこかの盗賊による仕業か、もしくは犯罪組織『八本指』か・・・今回のアンデッド騒ぎを引き起こした黒幕による者か。

 何にせよ、いつ終わるか分からぬこの籠城戦に置いて、食料の不足は絶望的である。食う物が無ければいずれこちらが先に尽きて、彼らアンデッドの食糧となるだろう。

 

 こんな事態に重なるように起きた悲劇に、犯人を探す余裕もなく、上層部はただ頭を抱えるしか無かった。

 

 

 

▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 城門を越えて、エ・ランテルへと入ったモモン一行とチーム”漆黒の剣“。そしてンフィーレア・バレアレを乗せたハムスケが駆ける。

 最初こそ勇ましい『森の賢王』──ジャンガリアンハムスターであるが、この世界ではフィルターが掛かっているらしい──を警戒して迎える冒険者で溢れていたが、モモンが「私がねじ伏せたモンスターだ」と説明したことで事なきを得た。

 

「なんてアンデッドの数・・・!衛兵もやられてるってのかよ!」

「流石はモモン氏、一切に寄せ付けず突破しましたな!」

 

 道中、その道を塞いでいたアンデッドの軍勢をなぎ倒し、彼らは避難場所となっている。冒険者ギルドへと足を急かせていた。ルクルット・ボルブが弓で動死体(ゾンビ)の頭を貫き、ダイン・ウッドワンダーは鎚矛で骸骨(スケルトン)を砕いて進む。

 しかし、黒いグレートソードを2本担ぎ、それらを片手で操る漆黒の全身鎧の人物は、その超重量装備でありながらも全くの息切れを見せず、問題ないとばかりに駆ける姿は、やはり背後にいる(シルバー)級冒険者チームには更に畏敬の念が高まる。

 

「〈鎧強化(リーインフォース・アーマー)!〉」

「モモンさん!こちらは片付きました!」

 

 最年少の魔力系魔法詠唱者(マジック・キャスター)、中性的な見た目のニニャが、防御魔法を発動させて援護する。チームを束ねるまとめ役、真面目な好青年であるペテル・モークも、アンデッドを倒しつつアインズへと叫んだ。

 ペテルが振り返れば、強力なアンデッドをものの数秒で片付けたアインズと、剣を鞘にしまい込んだナーベラルが全てを片付けていた光景だった。

 

「えぇ、問題ありません。皆さん急ぎましょう」

「さ、流石は殿!それがしが瞳を3度閉じる間に片付けてしまったでござる!」

 

 相変わらずの剛傑による瞬殺と、第3位階まで扱える絶世の美女による戦績は見る間もなく終了していたが、その実力を知る冒険者メンバーとンフィーレアは今更驚きはしない。

 アインズが従えたばかりの、ハムスケと名付けられた元森の賢王がその力にまた驚愕し、主であるアインズを褒め称える。そうして一行は急ぎ、避難先となっている冒険者ギルドへと駆ける。

 

 そうして到着し、そこそこの注目を浴びながら帰還したアインズたち。偉大なる巨大な獣に跨るンフィーレアの姿を視認した、ギルドから出てきた(シルバー)プレートの男が叫ぶ。

 

「ンフィーレア・バレアレ、だな!頼む!もうポーション作り在庫が切れそうなんだ!すぐに製造に強力してくれ!もう・・・もうこの街には、あんたしかポーションを作れる人物しかいないんだ!」

「僕だけって、・・・!まさか、お、おばあちゃんは!?」

 

 賢しいンフィーレアが想像する、最悪の現実。

 この非常事態だ。本来ならフィーリアの叔母であるリイジー・バレアレだったら、今頃ポーション作成に駆り出されているはずだ。

 冒険者のほとんどが出張っている事態、支援となるポーション生成は必須であろう。それが自分しか頼れないということはつまり・・・ふらりと倒れそうになる。

 

「あんたには言いにくいんだが・・・今日の夕方に、殺されていたの発見されたんだ。彼女だけじゃない!ポーション製造している店や工房を所有する人物は、軒並み殺されてたんだ!」

「そんな・・・なんてこと・・・!」

「どうやら、敵はかなり用意周到なようであるな・・・!」 

 

 ガツンと、殴られたようなショックがンフィーレアを襲う。ハムスケの上に付いた両手が折れてしまいそうに、現実にいないような気がしてしまう。

 漆黒の剣メンバー、特にニニャは、家族を失ったンフィーレアの表情が痛たたまれないのか、俯いて直視できないでいる。

 

「おい!また波がきたぞーー!」

「アンデッドが大量に降ってくるぞ!?備えろ!」 

 

 こちらに向かって駆けてくる冒険者たちの姿が。高い上空で黒い影がうねり、ぐんとその大きな翼と体躯を見せつけてくる。アインズが見上げれば、赤い眼を携えた巨大なモンスターが。

 骨の翼を広げる、おおよそ3メートルまで人骨が集合した骨のドラゴン。飛行能力を持ち、ユグドラシルでは第六位階以下の魔法の無効化能力を持っているアンデッドである。

 

骨の竜(スケリトル・ドラゴン)か・・・ンフィーレアさんはハムスケの上にいてください」

 

 アインズが呟くと、上空の骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は身体を揺らし始めた。するとその背中に背負っていたナニカが、ボトボトと落下していく。

 それはは動死体(ゾンビ)などのアンデッドたち。地を進むでなく、アンデッドの軍勢はまさかの空からの強襲を可能としていたのである。

 

「殿!空からいっぱい降ってきたでごさる!」

 

 あれほどの高度から肉塊が降ってくれば、ぶつかれば即死。仮にアンデッドが運良くまだ動けるならば敵側の戦線は広がり、最悪でも冒険者たちの進行を妨害する障害物となる。

 よくみれば疫病爆撃種(ブレイク・ボンバー)黄光の屍(ワイト)なども含まれており、その危険度はハムスケであっても直感できていた。

 

「魔法の完全耐性を持つぞ!遠距離魔法は通じない!」

「刺突にも耐性があるんだろ!?くそぉ!どうにもできねぇだろあんな化け物!」

 

 スケルトン系のため弓矢は効果は薄く、魔法での攻撃も通じない強敵。カッツェ平野にも出現すれば帝国でも討伐に苦労されるとする、最強のアンデッドの1体。

 こうして遥か上空からネチネチとアンデッドを送り込む爆撃機のような真似をされては、冒険者としては打つ手がない。

 

 そう、この場にいる漆黒の英雄を除いて。

 

「届くかどうかの距離だが・・・やってみるか!ふん!」

 

 アインズは後ろに背負った大剣を1本右手で握り締めると、狙いを定め始めた。黒の全身鎧(フルプレート)、カッパーのランクである男が片足を踏み込んだ瞬間、その大剣が一直線に空に駆け巡る。

 まっすぐに飛んだ剣先は空を羽ばたかせる、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の胸に勢いよく突き刺さり、その身体を一撃で粉砕した。胴体を貫通した骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は手足を粉々にして大剣と共に崩れ落ちていく。

 

 誰もが目を見開き、信じられないとアインズを見つめる。たった数秒の出来事で起きた現実をまだ誰も処理できていない。

 

「ナーベよ、あれらを撃ち落とせ」

「かしこまりました。モモンさん」

 

 モモンと呼ばれた男の隣に控えた、麗しき美女がその手に宿す、雷鳴の輝き。頷いた彼女は上空に発動する。

 

「〈雷撃(ライトニング)〉」

 

 雷鳴が空気を大きく振動させながら、拡散した雷は落ちてくるアンデッドたちを次々に貫き、焼き焦がした。脆くなった死体が地面に衝突し、灰となって消えていく。

 あまりの魔法精度と威力、それを全く表情を変えずに行ってみせたナーベラルが着地する様は、一種の舞のような美しさまで感じられるほど。

 

 誰もが言葉を失っていた。目の前で起きた人ならざる英雄の姿に。あれこそまさにアダマンタイト級冒険者に相応しいレベルの神業。

 あれが駆け出しの冒険者であるわけではない、その力を初めて目にした者も、知る者も呆気に取られたその間にアインズはツカツカと、先ほどのリイジーの訃報を伝えた男へと詰め寄る。

 

「ンフィーレアの祖母、リイジーはどこにいる」

「あ、あぁ・・・こ、こっちだ!」

 

 そうして、アンデッドたちを一掃したアインズとナーベラルは、ンフィーレアたちと共に、ハムスケを外に残してその場所へと案内された。

 死体が入った袈裟袋──それらはギルドの奥側に設けられた、臨時の安置場所に転がされていた。その数はすでに50を上り、どれほどの被害が既に広がっているかを物語っている。ちゃんと回収できた遺体だけでこれほどなのだ。

 

「お、おばあちゃん・・・!酷い、こんなの・・・!ひぃぃぐ・・・!ぅうぅ、うわぁぁあああぁんん!」

 

 リイジーだと言う、その死体袋に跪いたルフィーレアが手を震えさせながら捲り、嗚咽を含んだ声で泣きながら覆いかぶさった。

 凄惨な死体にむせび泣くンフィーレアの姿に、ペテルたちもどう声を掛けていいか戸惑う中、アインズはそっと彼の背後から肩に手を置いた。

 

「ンフィーレアさん・・・こちらを。私の1つしか所有していない貴重なアイテムですが・・・この場面でこそ、使うべきでしょう」

 

 鼻水と涙で、端正で整った顔をぐちゃぐちゃにしたンフィーレアが弱々しく振り返る。アインズが取り出したのは、蘇生の短杖(ワンド・オブ・リザレクション)という、30センチほどの1本のワンドだった。

 そして、騒ぎを聞きつけて急いでドタドタと降りてきた、ギルド組合長プルトンと都市長パラソレイは、奇跡をその目で見るのだった。

 

 

 

▲▼▲▼▲▼

 

 

 

骨の竜(スケリトル・ドラゴン)が1体やられた」

「一旦、A班とD班の進軍を止める。すぐに監視係たちに確認を急がせろ」

「こちらに踏み込んでくるかもしれん。防御を固めるべきか」

「いや、むしろこちらから攻めるべきではないのか?」

 

 上空からアンデッドを投下していた骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の消滅──それは共同墓地の霊廟にて、マトメルが産み出した死者の大魔法使い(エルダー・リッチ)たちに伝わり、すぐさま作戦の修正が行われた。

 地図を広げながら、それぞれアンデッドたちの指揮権を得た彼らは、共有された視界でアンデッドを派遣し襲わせていたが、今は突如現れた強者に向けて排斥を行うプランへと変更されたのだ。

 

 邪悪なる死した魔法使いから離れた場所には、ズーラーノーンの幹部カジットと師弟たち。そして彼らを守る4体もの死の騎士(デス・ナイト)が四方から囲む。

 魔法陣の中央でひたすら呪文を唱えるカジットは、国をも超える勢力に囲まれ安全を保証されながら、ひたすら儀式に集中していた。

 

「なんと、素晴らしい・・・素晴らしい負のエネルギーだ・・・!」

 

 儀式は順調過ぎるほどに順調だった。生者を殺した負のエネルギーより、派生で生まれたアンデッドから発生した負のエネルギーの方が強大だ。死の秘宝がなくてもそれらは十分にカジットを包み込む。

 〈不死の軍勢(アンデス・アーミー)〉を超える、質も量も完全上位互換のこの地獄。当然ながら集まる速度も段違いであった。

 

 瞳を閉じて詠唱していたカジットが薄ら目を開けば、気づけば自身の杖を握る手が、肉が落ちて骨になっていた。苦痛はなく、むしろ生という重みから脱却した感覚に幸福感すら感じるほどに。

 

「お、ぉぉぉ!遂に、儂がアンデッドに!遂に念願の目的が叶うぞお前たち!ようやく、求めていたアンデッドに成れるのだ!」

 

 カジットを包み込む儀式の影響は、彼だけではない。

 周りの部下たちも、自我を持つ骸骨(スケルトン)になっていく。共にズーラーノーンに入ってから数年、目的のために募った同胞たちも共に、喜ばしき生者の脱却が行われる。

 肉が削げ落ち、灰となって消えていく。眼光が落ちてもハッキリと夜空が見え、空に翳せば骸骨の手の平が隙間から星を覗かせる。ガランと空洞になった自身の肉体はぽっかりと、邪悪な意志を詰め込んで稼働する。

 

(あぁ、これで遂に、目的を果たせる──はて、何故儂はアンデッドになったのだろうか?母の蘇生のため?何故そんなくだらないことをせねばならないのか)

 

 どうして、アンデッドに成ろうと思ったのだったか。

 それよりも、マトメルという御方に感謝を。そして御方に言われた命令「自由に好きにやっていいよ」というご厚意に応えて、カジットは杖を持ち上げて呟く。

 

「──死を、広める」

 

 あぁ、そうだ。それしかない。

 何故なら我々はアンデッドなのだから。カツンと歯を打ち鳴らして、その言葉は墓地に響いた。

 

「死を、広める!」

「おめでとうございます!カジット様!」

「カジット様、生者に死を!」

「死の都へ!さぁ、我々も早く死を広げねば!」

「ズーラーノーン万歳!マトメル様、万歳!」

 

 同じくアンデッドになった周囲の師弟たちも口々に言う。生者が憎い、そんな負の感情が膨れ上がり、安息を与えねばという慈悲が同時に生まれるが、異形となった精神では狂うこともない。

 殺し尽くし、同胞として迎え、更に死を広げよう。きっとその先には、皆が幸せになる世界が広がるのだから。

 

 カジットたちは狂ったように高笑いしながら。師弟たちと共に人間を辞めた。本来の目的もしがらみも忘れ、ただのアンデッドとなったのだった。

 

 

 

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