オーバーロード 不死王と超不死のまったり世界征服   作:ガババババ

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お久しぶりです。仕事と育児に忙殺されてました。
誤字脱字報告ありがてぇ
これからも頼るぜ(他力本願)


第6話 『死群狂乱』②

 

 

 

 モモンたちがアンデッドの軍勢、それを束ねる首魁を討伐する前に、一行はンフィーレア自宅の工房へと向かっていた。月光の下で闇夜を駆ける一同は、崩れ去った家屋の前で立ち止まった。

 

「そんな、僕の家が・・・!」

「これは酷いですね・・・!他のポーションを扱う所も同じように潰されたらしいですが・・・!」

「用意周到であるな」

「でも、・・・使えそうな部品はある!薬草も倒されているけど、使えないことはなさそう」

 

 話には聞いてはいたが、実際に目にして絶句するンフィーレアと、渋い顔を浮かべるペテル。その仲間たちも一緒だ。

 ポーション製造している店や工房はこのように軒並み潰されたらしい。彼らがここに来たのは、少しでもポーション作成に使える素材が残っていないかの確認で来たのだった。

 

「あぁ、火を付けられなくてよかったな。まぁ自分たちも燃やされちまうから嫌ったんだろ。アンデッドは火が弱点だからな」

「急ぎましょう、ンフィーレアさん」

「は、はい!」

 

 まだショックのはずだが、ンフィーレアは絶望に鬱ぎこむことなく、警戒しながらも瓦礫をひっくり返した。続くペテル、ルクルット、ニニャ、ダインの四人も協力して行った。

 皆で壊されたンフィーレアの工房から、使えそうな薬草なり必要な道具を担いでいく。彼らが作業に集中できるのは後方でモモンという絶対的に頼れる存在が警護をしてくれるからだ。

 

 しばらくして、馬車の荷台に括り付けていく中で、作業が7割ほど完了したぐらいに。無言で警戒していた漆黒鎧のモモンが口を開いた。

 

「皆さんは作業を引き続きお願いします。私たちは討ち漏らしがないか、少し辺りを見回ります。それと、生存者がいないかも含めて」

「分かりました、お願いします」

「ハムスケ、皆の護衛を頼むぞ。何かあったらすぐに知らせるように」

「分かったでござる!殿!」

 

 漆黒の剣リーダーのペテルと、ハムスケに言葉を掛けたモモンは、美しい従者ナーベを連れて離れていく。数十歩進み、建物の陰に隠れた2人の冒険者は、誰もいないことを再確認してある魔法を発動させる。

 

「〈兎の耳(ラビッツ・イヤー)〉」

 

 ナーベの頭に可愛らしい兎耳がピョコンと飛び出した。

 聴力強化魔法のエフェクトが発動され、周囲にもし敵が接近してきたらすぐに察知できるようにして、ようやくナザリックの者としての会話が始まる。

 

「疑問に思ったか?ナーベよ、どうして私がリイジーを蘇生させたのか」

「はい。モモンさー・・・ーんがンフィーレア・バレアレを手に入れるため、ですよね」

「んん、まぁ良い。そうだ、ンフィーレアを手に入れるチャンスだと思ったからだ。恩で縛ればより離れられなくなる鎖となる」

 

 モモンガを──アインズとモモンを同一人物で知る人間、ンフィーレア。この際に叔母と共に懐柔してしまおうと動いた結果があの蘇生だ。

 先ほど、ギルド内でその奇跡を見せた。注目を浴びられるのと同時に、使い切りの一点物というマジックアイテムという理由で消費しておけば誤魔化せる。

 流れ者がわざわざ、エ・ランテルのためにそんな貴重なアイテムを使用するという、冒険者モモンの名声にも繋げられるという目論見もあった。

 

(召喚されたアンデッドに、特にバフは掛けられていないが・・・警戒するに越したことはないな)

 

 漆黒の剣のリーダーペテル曰く、スケリトル・ドラゴンはかなり強力なアンデッドらしい。魔法の絶対耐性がある、魔法職にとっては絶望的な相手とのこと。

 

 実際には、第六位階以下の魔法の無効化。そしてスケルトンが大抵持つ特殊能力と飛行能力を持つが、アインズからすればそれほど強力ではない。精々盾に使う程度の低級モンスターだ。

 この世界に置けるレベル的には、敵の主戦力を大幅に削ったのかもしれないが、100プレイヤーから簡単に召喚できる雑魚モンスターだ。かなり制限しているナーベラルでも物理で倒せるだろうほどに。

 

 しかし、背後にいるかもしれないプレイヤーの存在は0ではない。人間の都市を落とすならそのレベルのモンスターでも十分な脅威のため、МPやスキルの回数行使を節約した可能性もあるのだから。

 アインズとしても、不確定の相手にわざわざ上位のアンデッド召喚を行なわない。いると仮定して動いたほうが足元を掬われないだろう。

 

「ナーベラルよ。ナザリックに連絡を送ってくれ。プレイヤーの可能性があるため、アルベドにナザリックの軍勢を編成して派遣してくれとな。それと、私を守る護衛として来て欲しいとな」

 

 ナーベラルにそう指示を出すアインズ。もしもプレイヤーが関わっていたら可能ならコミュニケーションを取り、不可能なら最悪離脱して対策を考えねばならない。

 タンクとして最優のアルベド、八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)影の悪魔(シャドウデーモン)など、前もって用意した護衛を付けられればひとまずは安心だろう。

 

「今回の事件、上手くいけば冒険者モモンガとして名声を獲得できるかもしれないが・・・・・・今回は問題解決を優先しよう」

「かしこまりました」

 

 そうナーベラルが答えた瞬間、月光を背に現れた存在に、2人は注目する。彼女の探知系に引っ掛からなかった存在となると、途端に緊張が走った。

 

 上空から家屋の屋根に着地してくる、4体のモンスター。瓦と板を踏み壊して現れたそれらは、眼がないにも関わらずハッキリとした殺意の目線をターゲットに向けた。

 狙うは立派な全身鎧と、麗しい美人の冒険者たち。強者を狩るために仕向けられた暗殺者たちを、兜越しにアインズは赤い眼光で視認した。

 

「ほう・・・悪骨の侵略者(ボーンスカル)か。通常POPしないレアモンスターだ。やはり、プレイヤーが裏に控えている可能性が高くなったな!」

 

 イベントモンスターである、骨の装甲を外装として宿した黒い怪人。悪魔系とアンデッド系の双方の一部特性を併せ持つ、特殊な職業(クラス)でないと召喚できないシリーズ系統だ。

 ユグドラシルと同じく、自然POPしない仕組みであれば十中八九プレイヤーが関わっていると見ていいだろう。地の底から唸る悪鬼たちは、漆黒の英雄に我先にと襲い掛かった。

 

 

 

▲▼▲▼▲▼

 

 

 

「ほらそこ!さっさとその瓶を持ってきな!そこの男ども!もっとテキパキ材料をすり潰しなよ!いくら時間掛かってるんだい!?」

 

 リイジー・バレアレの怒号が飛ぶ。ギルド内にあったポーション作成の道具を用いて、薬草などをカッパーの冒険者たちに運ばせて、彼女は急ぎポーション作成を進めていた。

 調理用の大鍋を代用し、使いっ走りにした冒険者たちの素材を適量ブチ込み、手から魔術を組み込んで錬成していく。その表情は疲れを隠せていないが、彼女の手が休まることはない。

 

 それは、リイジーを蘇生させた人物による言葉に、応えたいと切に思うからだ。今でも思い出せるその言葉は、噛み締めるたびにじんわりとさせる。

 

『私はポーションを作れない。多くの命を救うためにあなたが必要だった。他の死んだ者、残された者たちの罵倒は私がしっかと受けよう・・・・・・頼む、協力してほしい』

 

 彼は聖人か?さては天使ではなかろうな。

 心優しき大英雄に応えるために、リイジーは全力を出して濁った液体を聖なるポーションへと変化させていく。復活直後の倦怠感など気にしている暇はない。

 

「あれほどの救世主に、命を救ってもらえて・・・休んでなどおれぬの、リイジー・バレアレ!私の寿命が削れても構わん!全身全霊を持って、ありったけのポーションを作るからの!英雄モモンよ!」

 

 エ・ランテルで一番の薬師の背中は、少しずつだが、確実に、冒険者たちの希望を湧き上がらせる。彼女の作ったポーションは、今日かなり冒険者の命を助けることとなるのだった。

 

 

▲▼▲▼▲▼

 

 

 

「タブラさんのせっかくの装備をさせてあげないのは残念だが、これで我慢してくれ。本当に非常時になったら、すぐ先ほどの装備に切り替えて構わないからな」

「いいえ!我慢など!?アインズ様から賜りしこの装備、しかと肌で感じられます!むしろご褒美ですとも!まるで御方の手で包まれているような至福の安心が・・・!くひひひひ」

「そ、そうか・・・それはよかった」

 

 ナザリックより現着したアルベド。本来はカルネ村に赴いた装備であるが、その姿は既にガゼフたちに見られている。アインズ・ウール・ゴウンと、冒険者モモンを関連されたくないため、《上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)》で純白の鎧を与えたのだった。

 

 漆黒の処刑人のようなアルベドの装備は、今は反対に天使の使者のような清らかさを感じる純白だった。全身鎧(フルアーマー)で肌の露出はないが、肉体のくびれはハッキリと分かる。

 己を抱きしめて腰を振るアルベドの姿に若干引きながらも、彼女と不可視の護衛モンスターを複数用意できたアインズは、少し安堵の息を吐いた。

 

「モモンさん!馬車へ乗せ終えました!」

「殿〜!お待たせしたでござるー!」

 

 ナーベラルに呼びに行かせ、馬車に乗って戻ってきたンフィーレアとペテルたち。ハムスケも隣にノシノシと歩いてくる。

 そして、当然ながら全員が見たことのない初見の人物に不思議そうな顔を見せた。この闇夜に似つかわしくない、汚れなき純白の女性騎士がそこにいたのだから。

 

「は、始めまして。漆黒の剣のまとめ役であります、ペテル・モークです。モモンさんのお知り合いと見受けしますが・・・モモンさん、・・・その方は?」

「はい。ご紹介します。彼女はまだ冒険者登録はしていないのですが、実は私の仲間です。すみません、説明すると長くなるため、詳しいことは後でお伝えします。名前は・・・」

「まさかその人、ナーベちゃんが言ってた、モモンさんの決まった相手、アルベド様!?つまり伴侶さんってこと!?」

「は、伴侶!?」

 

 ルクルットが叫び、アルベドが上擦り、アインズはしまったと内心でショックを受けた。そうだった、もう彼らにはアルベドという存在がいることを知られていたことを、失念してしまっていたということを。

 そしてルクルットに先に言われてしまった。まぁ確かに、モモンとナーベとの2人の関係がそうではないとすれば、お調子者のルクルットが声を上げるのは必然的か。

 

(やってくれたなぁ、ナーベラル・ガンマ!)

(やってくれたわね!ナーベラル・ガンマ!)

 

 両者の心の叫びは、それぞれ感情は違う。

 アルベドの存在を、実は前日の昼に口を零してしまったナーベラルの表情がハッとなる。情報の流出──つまり失態だ。モモンガに迷惑をかけたと即座に実感と判断をしたナーベラルの剣が引き抜かれ、彼女自らの首へと突き付けられる。

 

「すぐに!この命で謝罪を!」

「いい!しなくていい!」

「そうよ、モモンさんの言う通りしなくていいわ!」

 

 ナーベラルを止める理由もそれぞれ違う。いやまさかあの失言がここにも響くのかと、アインズは空を仰いだ。

 対してアルベドは外堀をこのまま固められればとハッスルである。涎を啜る音がヘルムから聞こえてきたのをアインズは聞かなかったことにした。

 

「ギ、ギルドに戻りましょう!ンフィーレアさんを送り届けたあと、私たちは黒幕を退治しに向かいます。手筈通り漆黒の剣の皆さんには、街の人々を守ってもらいますね」

 

 その後、「じゃあ俺がアタックできる可能性はやっぱりあるんだな!」と、再度プロポーズしたルクウッドは、「黙れ下等生物が」と再び撃沈されるのだった。

 

 

 

▲▼▲▼▲▼

 

 

 

 同時刻──悲劇の惨状と化した、城塞都市エ・ランテルから離れた森の中。とある男が、アンデッド騒ぎの黒幕である存在と対面していた。

 彼の名はブレイン・アングラウス。一見して細身だが、実戦で鍛えた肉体は鋼の様に引き締まっている。適当に散髪した蒼い髪に瞳の色は茶色。

 

 彼は剣の高みを目指す剣士であり。元々は農夫だったにも拘わらず剣の才能に溢れ、リ・エスティーゼ王国の御前試合でガゼフ・ストロノーフと戦うまでは、常勝無敗を誇るほどの実力者。

 そんな彼が森を駆けていたのは、己の無力を思い知り、自分の人生全てが無価値だったと悟り、絶望して逃げたからだ。あの化け物から逃げてきた先で、また別の化け物と出会ってしまったのが彼の不運であった。

 

「なるほどね、吸血鬼(ヴァンパイア)か」

 

 膝を付いた彼の頭に手を翳し、魔法で記憶を読み取る。この数十分ほど前に味わった彼の恐怖した光景を映像として視認したマトメルは、このブレイン・アングラウスをどうしようか考える。

 物言わぬブレインはまだ死んではいない。強力な魅惑に掛けられてトロンと、安心しきった顔で俯いているだけだ。仮に殺されるその直前まで、心を許せる親友のように、目の前のアンデッドには安堵を覚えるだろう。

 

「口封じに殺しちゃおうかな。その吸血鬼(ヴァンパイア)に殺されたってことでもいいし」

「確か・・・ブレイン・アングラウスだったかな。王国でも中々に有名な強者ではあるけれど、マーちゃん殺ちゃうのー?」

「あ、そうなの。じゃあ利用価値ありかなぁ?殺しちゃうのはもったいないか?」

 

 クレマンティーヌが教えてくれた助言を元に、マトメルは少し考え込む。殺すこと、生かすことのメリットを考えながら・・・正直どうでもいいかと思考を放棄する。

 別に思考が疲れているからとか、面倒だったわけではなく。単純に足元にいる虫がどうなっても構わないような、そんな感覚で。

 

「まぁ、情報吐いてくれたし。殺さないことを君への最大のお礼にしよう。この記憶と君の武器を徴収してトントンってことで。さっき美味いご飯食べてきたから気分がいいしね」

 

 そう言って、マトメルは軽くガツンと、ブレインから奪った刀の鞘で彼のこめかみを殴りつけた。一撃で意識を刈り取られた彼は悲鳴をあげることなく、地面に横から倒れ込む。

 そのまま殺してアンデッドの材料にするのかと思っていたクレマンティーヌは、どこかホッとした内心を隠しながらも意外だと口を告げる。

 

「へぇ、意外だねー。普通に殺しちゃうのかと思ったのに」

「んー?ふふふ、いやぁ部下にしてもよかったけどね。正直こいつが生きても死んでもどうでもいいし、案内役はクレマンティーヌだけでいいしね」

 

 記憶を弄ったら、街道に投げとけば誰か助けてくれるだろう。野党に襲われたとしたらブレインの運がなかっただけということで。

 そんな軽い感覚で、マトメルはあるモンスターを召喚する。

 

「〈第四位階死者召喚(サモン・アンデッド・4th)〉──衒影鎧(ロストメモリ)

 

 展開された魔法陣より、白い鎧を身に着けた幽鬼の騎士が現れる。レベルも低い下位のモンスターだが、高位の記憶操作魔法を行える特殊なモンスターだ。

 これは限定イベントをクリアした者が召喚できるレアモンスターであり、上位に衒影の悪魔龍(トゥルトゥル)もいるが、ブレインのレベル的にこのモンスターで事足りるだろうという判断だった。

 

「じゃあ君、記憶処理をよろしくね」

 

 マトメルの命令に頷いた純白のゴースト騎士は、頭を下げて気絶したブレインの記憶処理を行う。気絶したブレインに重なった両手から淡い光が灯り出し、たった今あった事実を解放させていく。

 

(にしても、シャルティア・ブラットフォールン・・・まさか名前と見た目が偶然一緒なんてミラクルないよね。君もこの世界に来てるのかな?モモンガ・・・!)

 

 まずは会ってみるべきだなと、マトメルは急ぎその人物へ、ブレインが逃げてきた道を辿り向かうのだった。

 

 

 

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