悪魔払いの祈祷師:Zoe   作:zaq2

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ひとときの……

「毎回思うが、この国の良い所はティータイム文化が素晴らしいという点だな」

「お菓子もお好きでしたよね?お嬢様」

「そりゃそうだ、いつもいつもクソ不味いモノを喰っていると、こういう物がより素晴らしく感じるからな。うむ、美味い……」

 

 

 甘いお菓子をその小さな口に含ませ、そして小さな咀嚼音を奏でた果てに、紅茶をゆっくりと口の中へ流し込む。

 

 その一連の動作は、気品を纏う淑女といえる所作でもあった。

(近くで控えているメアリーが、すこし身震いしていることはおいておくが)

 

 そうして空になったカップを静かにソーサーへと戻す。

 

 

「お代わりはいかがですか?お嬢様」

「ああ、もらおうか」

 

 

 先程まで身震いしていた給仕のメアリーも、すぐさまに体裁を整えては一切の無駄がない動きでカップへと注ぎ込む。

 

 二人だけが存在する庭園の一角にて、静かな時間が流れていた。

 

 そよ風に髪をなびかせては、久方ぶりの憩いの時間を楽しんでいたのだが、そんな中にドアノッカーの音が耳に入ってきた。

 

 

「来客でしょうか?アポイントの予定はなかったのですが……」

「まったく、無粋な輩もいたものだ、少し待たせて……いや、対応させるか」

 

 

 誰が来たのかを察しては、空いている方の手の指を鳴らす。

 すると、その足元の影が広がっては、中から若い紳士然とした存在が現れる。

 

 

「これはこれはゾーイお嬢さま、ご用命でしょうか?」

「予定のない来客だ。丁寧に持て成しておけデイモン」

「かしこまりました」

 

 

 相手は先ほどの闇の確認で「見知っている女」とわかっていたので、若い美丈夫をあてがっておけば、まぁ、これで時間は稼ぎはできるだろうとふむ。

 

 そうして、残っている紅茶を静かに飲みながら、菓子を口に含ませて咀嚼をし……

 

 

「やっぱりここにいた。ゾーちゃん!」

「はぁ、やかましい。もう少し静かにできんのか」

「あ、メアリーさん!こんにちは」

 

 挨拶をされたメアリーといえば、軽く会釈で返すだけであった。

 そして、迎えに行かせた執事といえば、来客の女性の後ろで薄ら笑いながらたたずんでいた。

 

 何やってんだお前はという視線を投げかけても、コイツ、ワザと連れてきたな?というのがあからさまだった。

 

 

「あ、おいしそうなお菓子!ゾーちゃん!私にもちょうだい」

「……はぁ、好きにしろ。メアリー、お茶を追加だ」

「はい、元から準備できております」

 

 

 そうしてテキパキと一人分をすぐさまに準備するメアリー。

 まさに、プロフェッショナルとでもいうのだろうか。

 

 

「メアリーさん、すごーい!」

「お嬢様の給仕として、当たり前の事ですので」

「で、お前は何しにきたんだ?」

「えっ?お友達がお仕事から帰ってきたんだよ?無事だったか心配になるじゃない」

 

 

 この子はカレン。

 10年来の付き合いのある女性だ。

 

 このお化け屋敷といわれていた古い洋館に引っ越しを決めた日に、肝試しというか度胸試しというのかで不法侵入していた子供たち一団の一人。

 

 当時は、おねえさん風で子供たちの一団を引き連れてきていた。

 そうして、実際に潜んでいたレイスからみんなを守るべく、一人しんがり奮闘をして……、レイスに憑かれては精神を汚染される前に元凶を排除して事なきを得た。

 

 その時から異様になつかれたというか、何というか……。

 

 彼女は私の仕事の内容を知っている。

 知っているが、秘密という事も理解している。

 

 そもそも、あのお化け騒動があった時から、彼女は「あちら側がうっすらと見える」存在になってしまっている。

 

 そういう存在は、そういったモノたちから狙われやすいし、憑きやすい。

 

 そうなる前にとお護り程度にロザリオを渡してやったら、受けがすごく良かった。

 今もそのロザリオは首からぶら下げているのを確認できて、ちゃんとしているなと思っていたら。

 

 

「ゾーちゃん、どうしたの?私の顔に何かついてる?」

「そうだな、見ないうちにそのソバカスの数が増えたのかと思ってな」

「ひっどーい!!これでもスキンケアしてるんだよ!みてよこのほっぺの柔肌を」

「はいはい、わかったわかった。メアリー、お菓子のお代わりをご所望だそうだ」

「やったー!メアリーさんの作るお菓子っておいしいから好き!」

「ありがとうございます。カレンお嬢様」

 

 

 あけすけのない感情を披露するカレン。

 太陽の様な子だな。と、つくづく感じてしまう。

 

 そんな中、キッチンへとお菓子おお代わりを取りに行ったメアリーにかわり、デイモンが給仕を買って出ていたが、こちらもこちらで様になっているが……何か違う雰囲気がするのは気のせいだろう。

 

 

 そうして、他愛もない世間話を交わし、談笑ともいえる時間が過ぎ去ろうとしていた時、カラスのひと鳴きが発せられたと思えば、その一羽がテーブルの隅へと止まる。

 

 その足には手紙を忍ばせている小さな筒をつけて。

 デイモンが、そのカラスから手紙を取り外しては此方に渡してくると、カラスは黒い煙となって消え去っていた。

 

 

「あ、お仕事?」

「その様だな。すまないが、お茶会はこれでお開きだ」

「ぶーぶー……って仕方ないよね、うんわかった。ゾーちゃんが辛そうな顔してないのを確認できたから、今日は帰るね」

「なんだそれは?私がそんな顔をしていたのか?」

「そうだよー?仕事から帰ってきたときって、たまにこういう顔してるときあるよ?こーんな皺つけてさ」

 

 

 そうして、眉間にしわを寄せた表情を作り出すカレン。

 いや、そんな顔をしていたことは……とメアリーに視線をむけるも、無表情のメアリーからは何も読み取れない。

 

 だが、思い当たる節が無い、とは言い切れないのもまた事実でもあった。

 

 

「そんなことは……いや、そうだな。そうかもしれん」

「うん、なら私に癒されなさい!甘えなさい!私がおねーちゃんだからね!」

「いや、それは何か違うと思うぞ?年齢的にも……」

「ぜんぜん違わない!」

 

 

 ない胸を精一杯張りながら主張してくるその行動は昔の友人を思い浮かばせる。

 そのバカな行動力(と権力)で、逆に此方を振り回してきていた存在を……

 

 

「くっ、くくっ……」

「あ、いまのとこ笑うとこじゃないよ!」

「ああ、そうだな、すまなかった、詫びとして……メアリー、お土産に菓子をくるんでやってくれ」

「はい、お嬢様」

「やったー!」

 

 

 こういう何事もない日常というものが、ありふれた世になってほしいと、ふと考えをよぎらせていた。




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お嬢様(ゾーイ) フルネームはまだ
・超常の存在で寿命がほぼない。
・片田舎の古い洋館に住んでおり、仕事がないときはこの洋館にてくつろいでいる


デイモン(執事)
・お嬢様の闇に喰われた(?!gqlk)を再構成した姿
・給仕のメアリーとは違い、物理的な方面より精神的な方面に特化しており
 洗脳・操作・催眠・混乱などなどを得意とする。
・元の影響が少しのこっているのか、やや悪戯気質がある。


メアリー(給仕)
・お嬢様がその小さな口でお菓子を咀嚼する姿を見たとき、
 悪魔なのに雷に打たれたかの衝撃(鼻血を出すという現象)を経験してしまう。
・その後、お菓子作りとお茶に関しては、プロも舌を巻くほどになった。


カレン(田舎娘)
・10年以上前に、お化け洋館に突撃した地元子供グループのボス
・しかし、その根底には仲間を守らねければならないという意思がつよかったため
 みんなを逃がすためにシンガリを務めた、が……
・レイスの餌食になりかけたところ、ちょうど依頼で来ていたお嬢様に助けられる
・レイスに憑依された為か、アチラのことがボンヤリと認識できるようになる。
・お嬢様の事は、真っ黒い何かという存在ともうっすらと見えてはいるが、
 それでも物怖じせずに付き合っているのは、その悲しそうな雰囲気も感じ取り、
 庇護欲というか母性というのが働いてしまっているから。
・ちなみに「お嬢様のお茶会を見守る会」の会員№2(№1はいわずもがな)

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