悪魔払いの祈祷師:Zoe   作:zaq2

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喰らう

 人の形すら変える浸食具合を見せられ、これは"手に負えなくなって"此方に話がきたな?と色々と察する。

 

 

 なにせ一大宗教様が此方に話を振る場合、大体が共通している点がある。

 

 

 それは、自分たちでは"手に負えない"状況になった時だ。

 ただ、その対処できない理由にも種々様々な理由がある。

 

 事件性の高いものもあれば宗教性が濃いものもあり、宗教性ならば例えば他宗教の関連の確執などが影響して手が出せないなどがある。

 

 それ以外の場合ならば、"人智を超えている超常現象"のケースというのも……

 

 

 今回の件、大手の宗教団体にもかかわらず最低限度の設備、さらに人里から離れた施設、そしてこの肉体が変貌する状況から鑑みれば、人知越えケースが入っていると確証できる。

 

 他宗教がらみという線も、無い事もないだろうが。

 

 

「こんな状況にするまで呼ばなかったか、ほぼ"手遅れ"な状況だぞ?」

「ええ、まぁ、その……はい」

「立場は分からんでもないが、重要度を勘違いしていると取り返しにつかない事になりうる。が、今は時間が惜しい、これ以上の説教は置いておいてだ、メアリー、まずは急ぎ拘束だ」

「はい、お嬢様」

 

 

 メアリーへと指示を出して持ち込んだ備品から、"特殊な処理"を施した黒い拘束具で縛り上げられる"患者"。

 

 その際に、同業者には洗礼となる聖水の類を周囲かけ続けてもらい、悪魔祓いの基礎的な結界行為をしてもらう。

 

 そうして、床には何かしらの模様を記載し続け……まぁ、これは"建前"な部分が多いので、それらしく記載しておくのがポイントでもあるが。

 

 特にこういう業種では、見た目?メンツ?はったり?そういうも必要とか何とか。

 

 

「ああ、それとだ、すまないがここからは企業秘密だ。全員外に出て行ってもらおうか」

「えっ?ですが見届け人として」

「いらん。正直、ここから先はどうなるか分らないからな」

「し、しかし……こちらもこちらで」

「立場的な話もわかるし、言いたい事もわかる。だが、これは譲れない点だ。でなければ、これ以上は何もせずに帰らせてもらう」

「で、ですが!彼の方は……」

 

 

 今の拘束具で固定された状態で、人か人ならざるものかの中間という状況で何とか維持できている。

 

 まぁ、その人物もどこかで見た顔のため、何かしらの"お立場"がある存在であるとは推測できるのだが……

 

 それよりも"自身が行う行為"を見られてしまうという面倒事に発展してしまう。

 過去には"悪魔の使い"やら"魔女"だと言われて凶弾された経験があるからだ。

 

 ので、少し威圧を込めて出て行ってほしいと言葉を発する。

 

 

「正直に言おう。いるだけで邪魔だ、足手まといだ。わかるだろう?」

「……」

 

 

 威圧に対して、怯まないという意思をもち、こちらを見据えてくる司祭様。

 

 肝が据わってるこってとも、忠義に厚いとも思いながらも、これからヤル事はやはり見せる訳にもいかない。

 

 というか、確実に精神汚染にもなる。

 そうなると宗教関連にそんな事を見られると後がとてつもなく厄介な事にもなりかねない。

 

 

 先ほどの言葉でも理解していただけない様であるならば、やはり、気を失うほどの圧をかけて、放り出してしまうしか……

 

 

「お嬢様。それ以上は……私が"お話"をしますので」

「……任せる」

 

 

 こちらの行動を読んだのか、メアリーが間に入ると言ってきたのでこれ以上言う事はないと判断しては、近くにあったパイプ椅子に勢いに任せて座り、脚を組んでは頬杖をついて見守る。

 

 

「大変申し訳ありません。これから行う行為において、彼のモノが抵抗をすると思われます。その際に、周囲への影響、特に気が狂うほどの状態に追い込まれる恐れがあり……現にそういった方々おられたかと」

「あ、あぁ、確かに精神が狂ったモノたちもいた」

「そうなると、そちらにも対応の手をかけなければならず、原因の"祓い"に手が回らなくなる恐れがあります」

「確かに……だが、依頼をした此方としては、その状況を」

 

 

 嘘と本音が混ざり合った内容を口から吐露していくメアリー。

 

 よくある嘘を混ぜるのならば本当も混ぜろとかいうお手本であり、"役者だねぇ"と感心してしまっていたが、それでも食い下がる司祭ではあった。

 

 

「その様なご覚悟では、簡単に死にますよ?それも治療を行う対象も含めて」

「なっ、それは、その、だが……」

「はっきりと申し上げます。邪魔です、と。そもそも、救済者を亡き者としたいのですか?」

「それは違う!だが、報告を上げる義務が私にも……」

「では後ほど、正式な報告書を此方から上げますので、其方でいかがでしょうか?」

「いや、それでは私の立場というものが……」

「それ以上おっしゃられる様でありましたら、この依頼をキャンセルさせていただきます。ですが、順守して頂ければ、お嬢様が"確実に"対応してくださるでしょう」

 

 

 閉じていた瞳が、うっすらとだけ開いたかと思えば、周囲の温度が下がった様な?

 いや、実際に冷気みたいなのがメアリーの周囲に薄ら纏っているようにも見え……

 

 

「っ……わかり、ました。一切お任せします。なので、彼の方をお救いください……」

「はい、それは必ず」

 

 

 メアリーが強気に出た後、一瞬は逡巡したかと思えば、しぶしぶという感じで了承をし、部屋から一人また一人と退室していった。

 

 

「準備が整いました。お嬢様」

「いや、まぁ、うん、そうだな……」

 

 

 結局、力づくだったのでは?お話とはいったい何だったのか?と思ったが、何も言わない事にした。

 

 

 

   *   *   *

 

 

 物理的な拘束がなされたままの対象をそのままに、人払いを済ませてメアリーと共に状況を再確認していく。

 

 そうして部屋の外の気配、否、地下のフロアからも人の気配が無くなった事も確認できては、パイプ椅子を粗雑に座りなおしては指を鳴らして影から奴を呼ぶ。

 

 

「およびでしょうか?お嬢様」

「デイモン、コイツはお前の知り合いか?」

「ん?こいつ?ああ、ダゴンが混じってる感じですね。ほんと磯臭さは変わらずで鼻が曲がりそうですよ」

「そういう感覚なぞなかったろうに。で、どうなんだ?」

「知り合い?下っ端?砂利?石礫?雑草?塵芥?」

「つまり、知らんという事か」

「そのようですね。この様な魚野郎未満の知識を持ち合わせる容量を、私は持っておりませんので」

「そうか」

 

 

 そう言葉が交わされた途端、魚人が横たわるベッドの影から現れた咢が対象を飲み込む。

 

 

「やっぱ、ゲロまずじゃねぇか!!……こういう奴らは腐りすぎた肉みたいでクソ不味いんだよ!!……お前知ってたな?知ってて黙ってたな?」

「はて、おかしいですね。この身体の記憶には、一切記録がございませんが?」

 

 

 執事の事をジト目で睨んでおきながら、やることはやっておく。

 

 部屋には固いものを嚙み砕く咀嚼音だけが響くが、それは"クソ不味い事象のみを嚙み砕き"、”それ以外の事象は以前の状況へと戻す”行為に他ならないが。

 

 ただ、そういう事象は、味としての不味さが際立つ。

 

 

 ああ、本当にクソ不味い……、特に"負の事象などを纏う"存在は、だ。

 

 

 そうして、影に沈んだ咢が静かになったかと思えば、ベッドの上に影から浮かび上がるように一つの存在が横たわっている。

 

 

「ほら、終わったぞ、メアリー確認しとけ。残ったお前は後片付けだ」

「「はい、お嬢様」」

 

 

 ベッドにはマッパのオッサンが横たわる。

 その状況を淡々と確認し、それがおわったメアリーから

 

「外、内ともに問題ありません。あと、この方、保守派の「ストップ、それ以上の情報はいらん、関わりを持ちたくない」」

 

 

 メアリーから聞きたくもない情報が吐露される前に静止させた。が、反対側からのぞき込んでいた存在から

 

 

「ああ、その人は貴族院の〇××※男爵様ですね。とある団体へのスポンサーでもあります。さすがお嬢様、みごとなお手前で」

「だぁぁぁ!聞きたくなかった!!やっぱ政争がっつり関わってるじゃねぇか!めんどくせぇ!!やっぱお前、もうかえれ!!」

「おや、よろしいので?では、またのお呼びをお待ちしております」

 

 

 聞きたくもない答え合わせを勝手に行ったクソバカ執事野郎は、してやったりな表情と心にもない言葉を吐いては影の中へと吸いこまれていった。

 

 

「あいつ、ことあるごとに嫌らしい事をしやがるな……再構成間違ったか?」

「あれが"ユーモア"というものではないでしょうか?お嬢様」

「えっ、あー、まぁ確かにそうかもしれないが、嫌らしい行為のTPOを見極めてくるのは何なんだあいつは」

 

 

 そうして、嫌らしい爆弾を投げつけてくる存在の愚痴をこぼしながら後片付けを行う。

 

 さっさとそうしないと、すっぽんぽんなオッサンが寝ているのが怪しい文字と魔法陣みたいな模様の真上に横たわるという、なんともはや、知らない人から見てもドン引きな危ない儀式にしか見えない状況だ。

 

 偽装という恰好で、毎回毎回こんな事をしてる此方としては、何とも言えない作業感を感じてしまうが、まぁ、これはユーモアの一環なので致し方ないだろう。

 

 

「よし、いいかメアリー。この人は名も、どういう人かも私は知らない。それ以上でもそれ以下でもない。いいね」

「わかりました。その様に」

 

 

 そうして、一通りの後片付けを終わらせて司祭を部屋に入ってもらえば、マッパのおじさんがベッドの上に寝ている状況を見ては聞きたくもない男の悲鳴を上げては、大忙しで担架を持ち出して運び出されていった。

 

 

 

 

 

 

 後日、入金も確認でき、テレビの議会ニュースで退院したというニュースを見かけたから、まぁ、元気になったようで、あの件は終わったと思っておこう。

 

 なお、あの時に身体の"悪い所も取り除いて再構成"したのは偶然の産物である。

 

「お嬢様、何か良い事でもありましたか?」

「いんや?世はこれ無事平穏ってな……お茶、おかわり」

「はい、お嬢様」

 

 

 




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お嬢様
・祓い方法は、その影に飲み込んで邪魔なところだけを喰らう。
・また、喰らった物を集めて再構成しすることも可能。
・その祓い方法があまりにも悪魔的というが邪神的という風にとらえられ
 発狂したり、怨敵といわれたりの過去がある。
・なお、魔女裁判の経験者で、影を使って死んだ風を装っていたりする
・偶然の産物である(意味深)


メアリー
・冷気関係(温度操作)は得意分野
・仕事中でも推し活中
 (表情が崩れたお嬢様"も"、カ○イイです!!)


デイモン
・お嬢様の感情が揺れ動く瞬間の機微が栄養価
・だいたい、マイナス方面に振り切った悪戯が多い


司祭さま
・上司から監督を強くいいきかされており、
 お嬢様の"やり方"を盗めとか何とか無茶ぶりされている中間管理職
・粘ろうとしたがナニカを察知して、それよりも救済を優先にした。


某議員
・嵌められて呪いをかけられた被害者
・後に、タカリにくる存在が出来た事をまだ知らない

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