オ"ッッツベルと象おじさん   作:万年赤字一般傭兵

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第1ニチッ曜日

 

 

 

 あのオツベルと来たら大したもんだ。

 ASMR器械を6つも据えつけて、ザコザコザコザコザコザコ…とぞくぞくする囁きを立ててMを飼い慣らしてやっていた。

 

 まいにち、まいにち、懐は満たされているのに頭は寂しい19匹のイヌたちが顔を真っ赤にしながら踏まれて煽られて、小山のようになったズボンを片っ端から片付けていく

 

 

 

 もちろん、そんな仕事場は加齢臭に男臭さに…オツベルは入るのも嫌だったが、イヌを飼い慣らすためには仕方がなかった

 

 

 なぜかって?オツベルは見栄っ張りメスガキなんだ。

 おじさんだけじゃない。

 他のメスガキにも、飼っているイヌの数でオツベルは煽りに煽っていたんだ。

 

 だけどな、ここで辞めれば仕返しとばかりに馬鹿にされる。

 見栄を張って6寸くらいあるビフテキを何とか食べる程に、尊大な自尊心があるオツベルには我慢ならない事だ。

 

 

 とにかくそうやってザコザコザコザコザコザコ…

 煽ってきた

 

 

 

 そしたら、そこへ何故か…その、履歴書が真っ白な象みたいなおじさんがきた。

 白いクレヨンで塗り潰したわけじゃないぜ。

 

 どういう訳かは分からない。

 40を過ぎていそうで職歴も高校からの学歴もない、シミとシワだらけな服の、体だけ大きいおじさんだ。

 

 家からぶらっと出て他者と触れ合おうとするだけでも、その勇気は計り知れない。

 

 

 

 そいつが仕事場に、しばらく風呂に入らずに汗が結晶化した顔を出した時、19人のM達はぎょっとした。

 

 

 なんでギョッとしたかって?

 決まってる。何をしだすか分からないじゃあないか。

 

 M達は尊厳を投げ捨てているものの、積み上げた社会的地位は手放さない誇り高きイヌだが、このおじさんは違う。

 

 積み上げてきたものは無く、故に失うものはない。

 それでいて象みたいにでかいんだ。

 刺激したら大変だから、みんな目を壁に向けて口を閉じてじっとしていた。

 

 

 

 そんな中背が低くてイヌたちに埋れていたオツベルが、やっと顔を出した

 

 臆病なイヌ達とは違い、小さいおてての可愛らしい汗の粒をスカートでひっきりなしに拭きながらも短い足幅でトコトコと、無敵の象みたいなおじさんに近づいていく

 

 外面だけは自信満々なオツベルに比べ、おじさんは突然現れたメスガキに挙動不審である

 

 

 

 

 

 

 だが、火蓋を切ったのは意外にもおじさんだ。

 赤子よりも密度が高い握り拳を更に握りしめ、脂肪に埋まりそうな口を開いた

 

 

「ど、どど 、どうししし、したたたの?」

 

 

 納豆を腐った牛乳で混ぜたような臭いを放ちながら、飛び出してきた稲扱器械みたいな吃音。

 

 オツベルは瞳孔を開き、僅かな冷や汗を猫みたいな額に流しながらも…

 

 

「おじさん、ここにすまない?」

 

 

 その顔に笑みを浮かべて勝負を仕掛けた。

 

 

 

「ぼぼぼ、ぼくくが ?」

 

 

 汗と脂の区別がつかないような、悍ましい懸濁液を垂らしながら放たれる返答を前にしながらも、オツベルは全く態度を崩さなかった。

 

 

「そうだよ、ここは面白いでしょ?」

 

 

 オツベルはメスガキだ。

 

 だが最初からは煽らない。

 メスガキ中最多のイヌを飼うオツベルは、決して安易に分からせを誘発しないのだ。

 

 

「どどど、どうしししよよようかな、?」

 

 

 ラインを見極め最初は褒めながらも、徐々に煽りを始めていく。

 

 そして、最後には自分のイヌへと堕とす。

 それがオツベルのやり方なのだ。

 

 

「おじさん、おっきくて頼もしいな〜いて欲しいな〜」

 

「ほほっほほ、ほんとう?なな、ならいようかかなぁ?」

 

 

 どこかニチャニチャした吃音を聞きながらも、オツベルは勝利を確信した。

 

 

 どうだ。そしたらこのおじさんは、俎上のオジサンだ

 オツベルに、どんどんどんどんどんどん調教されちまうだろう。

 

 

 オツベルにとっては棚からぼたもちだ。

 

 他のメスガキもこんなイヌは持っていない。

 やがて、誰もが羨む特別なイヌになるに違いない

 

 そう思って、オツベルは小さい顔を綻ばせた。

 

 

 





ここまで読んで頂きありがとうございました

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