私とホワイトルームを罰する方法   作:花音ゆず

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第5話

 時間になり、未グループの話し合いが始まった。

 Dクラスからは私と櫛田さん、そして鬼塚くんと吹石くん。 一方でAからCクラスは各3名で構成されていて、見知った顔でいえばBクラスには神崎くん、そしてAクラスには橋本くんと戸塚くんがいる。

 

 できることなら私が葛城くんや龍園くんに当たりたかったけど、これは学校の采配に依る部分。どうしようもないのは諦めて私は開幕一番に手を挙げる。

 

「時間も限られてるし、良かったらまずは自己紹介から始めない? 先生に配られた資料で名前は分かるけど、まだ顔と名前が一致しない人も多いし」

「賛成だ。名前を知らないと話し合いもままならない。苦手な人がいれば参加せずとも構わないが、せっかくの機会だ。俺は嬉野の案に乗らせて貰う」

「俺も賛成だぜ。戸塚もこれは文句ないよな?」

「……別に、俺は嬉野と馴れ合うつもりはない」

 

 厳しい言葉と共に、睨みを効かせる戸塚くん。

 私が悪いことをしたのだと分かってはいるけど、それでもここまで嫌われると私も心にクるものがある。

 

「……ごめんね、私の言葉は無視しても良いよ。でも良かったら軽くでいいから自己紹介できないかな? 私以外の人に向けてするつもりでいいから」

 

 帰ってきたのは無言。

 私はこれ以上は彼に言葉をかけることなく、戸塚くんを除いた12人で、私から自己紹介を始めていく。

 中身は簡潔にクラスと名前、趣味とかその辺だ。それ以上詳しく話しても一気に全員分覚えるのは難しいから、それぞれが適度なところで話を終える。

 

 やがて12人の自己紹介が終わり、生まれる沈黙。

 戸塚くんをチラッと見てみるけど口を開く気は無さそうだ。

 私はため息を引っ込めながら、再度声をあげる。

 

「……じゃあとりあえず、話し合いを始めよっか。って言いたいところだけど、まずは親睦を深めるっていうのどうかな? 鬼塚くんがトランプ持ってるっていうから、実はここに持ってきてもらったんだ」

「いいじゃん。先生も何するかは自由つってたし、最初から大真面目に議論を交わすのはつまらないからな」

 

 反対の声はこれまた無さそうだ。

 唯一、戸塚くんだけは参加する気がまたなさそうだったから、ひとまず12人でカードを分ける。最初は誰でも知っているババ抜きあたりでいいだろう。

 

 ゲームだから気楽にやってもいいんだけど、配られた手札の持ち方や表情に、各々少しずつ特徴がある。

 その部分に注力しながら、隣の橋本くんから私が引いたのはジョーカー。私がむっと眉根を狭めると、橋本くんはしてやったりという風に微かに笑う。

 

「っ、むう……」

 

 次にカードを引くのは櫛田さんだ。

 私は一旦シャッフルをして、6枚の手持ちの内、ジョーカーを右から2枚目という中途半端な位置に置く。

 目の前で右往左往する櫛田さんの手。

 だけど最終的に引かれたのはスペードのエース。

 

「ぐっ」

「あはは、嬉野さん表情に出すぎだよ?」

「こりゃ最下位は確定かもな」

「な―――いや、まだまだだから!」

 

 そこから工夫するも、橋本くんの予想通り私は最下位に。

 私はムキになった顔のまま手を挙げる。

 

「もう1回! 橋本くんの隣誰か代わって?」

「ははは、俺が代わってやろうか」

「服部くん? ぜひぜひ、ありがとう」

 

 私はBクラスの服部くんと位置を入れ替え、他の数人も場所を変えて、私のお願いでもう一度始まるババ抜き。それでも私の最下位は揺るがず、3回目に突入する頃にはグループの空気は温まっていた。

 午前の話し合い、その残り時間はあと10分弱。

 そろそろだろうか。同じように、部屋の壁にかけられている時計を見た神崎くんとちらと視線が合った。

 

「ひとまずこんなところだろう。嬉野のリベンジ戦はまた後にお預けにするとして、最後の数分で、各クラスのスタンスだけ共有できないか? 要するに、どの結果を目指して戦うつもりかという部分だ」

「私も賛成だよ。もちろんクラスによっては言えない部分もあるだろうから、その辺りは建前でもいいし」

「そういうことなら俺は構わねえぜ。早速で悪いがAクラスは結果3狙いだ。前回の無人島試験の影響で、今回良い結果を残さないと色々まずいからな」

 

 その発言に、心なしか視線を鋭くする戸塚くん。

 だけど最初のように掴みかかってくる気配はなく、私と神崎くんはその正直なカミングアウトを歓迎する。

 

「なるほど、確かにその考え方も理解できるな。俺たちBクラスは戦い方は各自に一任されている。その上で俺は今回、結果1を目指して戦いたいと考えている。同席してくれている他の2人も同じ考えだ」

「私も右に同じかな。全員が得する結果だと思うから、理想論かもだけど、結果1を目指せたらなって思う」

 

 櫛田さんたちも深く頷いて同意してくれる。

 

「Cクラスはどうだ?」

「えっと、私たちは……すみません、クラスとしての方針とかそういうのは、まだ分からなくって……」

 

 その返答に、私たちは顔を見合わせる。

 嘘を言ってるようには見えない。

 

「……あの男ならそうなってもおかしくないか」

「仕方ないな。だが龍園の思惑を抜きにして、私たちはこうしたいっていうのくらいあるんじゃねえの?」

「す、すみません。それもまだ固まってなくて」

「そっかそっか。大丈夫だよ気にしないで。話し合いは午後にもあるし、私たちは全然待ってるからね」

 

 にこやかに言うと、Cクラスの子はほっとした様子で肩の荷を下ろした。

 残り時間もあと数分。

 せっかく和やかな空気を形成できたのだから、ここでCクラスを詰めて雰囲気を悪くさせたくない。

 

 その思いはAクラスもBクラスも一緒なのか私の返答に頷き、あとは雑談で1回目の話し合いを消化した。

 

 

 

 

 

 

 その後は私の提案で、行きたい人だけで未グループの親睦会も兼ねてお昼ご飯をとり、12時を回ってようやく自室に着いた私は堀北さんに電話をかけた。

 

「もしもしー? 堀北さん今大丈夫そう?」

「ええ、むしろあなたからの連絡を待ち侘びていたところよ」

「あはは、お待たせしちゃったみたいでごめんね? チャットで連絡はしといたと思うけど、橋本くんとか神崎くんとかと思いの外話が弾んじゃって」

「話し合いの滑り出しは上々のようね」

「うん、割と雰囲気はいい方だよ。堀北さんは?」

「私は少し難航するかもしれないわ。Aクラスの葛城くんとCクラスの龍園くんが相手にいるんだもの」

「……え? まじ?」

 

 そういう大事なことは昨日の内に言ってよと思ったけど、確認しなかった私が悪かったかもしれない。

 

「大丈夫? 何か困ったことない?」

「困ったことではないけれど、雰囲気は最悪ね。前回の試験を見れば無理もないけれど龍園くんと葛城くんの仲が険悪よ。そのせいで AC両クラスの生徒はあまりコミュニケーションをとってくれないわ」

「……うわ、だいぶ幸先悪いねそれは」

 

 私でもげんなりしちゃいそうだ。堀北さんに見えないのは分かっていつつも私は大袈裟に肩を落とした。

 

「まあ、この話は後にしよっか。本題はこれから話すことだしね。昨夜私と話をしてから色々考えたことはあると思うけど、気になったことあった?」

「ええ、気になるのは結果3と4の違いよ。優待者当てに際して、正解だった時と外した時―――逆の立場から見ると当てられた時と当てられなかった時の、ポイント増減値の大きな違いが引っかかるわね」

「なるほどね。その心は?」

「当てた際のcpへの加算だけ20に留まっているわよね。他は50もの増減があるのに対して低く設定されているわ。考えすぎかもしれないけれど……、優待者を当てる試験のはずなのに、これではリスクをとって優待者を当てる人が少なくなると思うの」

 

 確かに、外したら−50なのに当てても+20。

 これでは当てない方にインセンティブが働く。

 リスクをとることを好む龍園くんや、もう後がない葛城くんにとってはそれだけでは歯止めにならないけど、私や一之瀬さんは守りに入りたくなる。

 

「どうして学校側はこんな設定をしたと思う?」

「そうね―――。私は勝手に優待者を当てる試験だと思っていたのだけれど、学校はこれを優待者を守る試験として考えている。こんなところかしら?」

「そういう考え方もできるね。だけどもっと踏み込んでみて、こんな考え方もできちゃうと思わない?」

 

 それは安易にクラス間で協力させないため。

 例えば一之瀬さんのBクラスと、Dクラスだったら、優待者を当て合うという方向の共闘だってできる。

 12グループだから優待者は各クラス3人ずつ。

 これがもし優待者を当てた時に得られるcpが50だったら、BクラスとDクラスで優待者を当て合うことで、得られるcpはプラスマイナス0になる。

 

「それだけじゃないよ。cpは貰えないけど、ppとrpは安全に貰える。その上で、私たちBDクラスは ACクラスによる策略を気にする必要がなくなってしまう―――。共闘によるメリットは計り知れない」

「それを抑制するため……ということ?」

「まあ、ただの想像だけどね」

 

 当てた時の獲得cpが今回のように20だったら、 BDクラスが優待者を当て合うことで以下のようになる。

 優待者を3人分当てた報酬−優待者を3人分当てられた罰で20×3−50×3=−90cp。こうなってくるとさすがに、共闘は避けたいというのが生徒の心理。

 

「私の気付きはあなたと同じだったかしら?」

「そうだね、だけど実はもうちょっとある」

「……もうちょっと?」

「難しい話じゃないよ。朝に送られてきたメール、優待者かどうかは厳正な調整の結果選ばれたと書いてあったよね。つまり何かしらの意図がある」

 

 ランダムなら厳正な調整という言葉は使わない。

 

「そしてもう1つ。別にグループ名は1から12でもAからLでもいいのに、なんで十二支になぞらえてるんだろう? ここにも何かしら意図があるかも」

「―――もしかして、優待者には法則がある?」

 

 堀北さんがたどり着いた結論に私は微笑む。

 もちろんこれは、現時点では可能性の話。だけどその可能性があるならまず最初にすべきことは1つだ。

 

「だからひとまず、今日中に、Bクラスにコンタクトをとるつもり。堀北さんも来るかな?」

「待ちなさい。さっきの話だと、共闘するのは難しい……っていう結論になったんじゃなかったかしら?」

「そうだね。だけど法則性があるなら話は別」

 

 計算によると、優待者を当て合う余地が生まれる。

 

 それに1クラス3人だけじゃ法則を導き出すのは難しい。もし頑張って見つけられたとしても、あくまでそのクラス内のみの法則の可能性もあるからだ。

 だから最低でも2クラスで協力したい。

 一方で同じように、ABクラスとCDクラスとで法則が違う可能性もある。そこまで考慮するなら3クラスで協力するのが理想になってくるだろう。

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