大地の守護者:魔法少女まどか外伝   作:革新的甲殻類

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第四話:「救出」

 

 

 

### ― 収容所内部 ―

 

 

カテリーナは収容所の外周フェンスに到達した。高さ4メートルの有刺鉄線が張られたフェンスは、頑丈で簡単には越えられない。監視塔からは定期的にサーチライトが辺りを照らしていた。

 

彼女は地面に手をつけ、魔力を注いだ。

 

「地下へ...」

 

土が静かに動き、彼女の前に小さなトンネルが形成された。フェンスの下を潜るための通路だ。

 

彼女はトンネルをくぐり、収容所の敷地内に侵入した。サーチライトの動きに合わせて、彼女は影から影へと移動した。

 

囚人収容施設は中央にあり、四方を開けた場所に建っていた。直接アプローチするのは危険すぎる。

 

「地下から...」

 

カテリーナは再び地面に手をつけ、今度はより大きなトンネルを形成した。地中を通って建物の下まで行くつもりだった。

 

トンネルの中は狭く、暗かった。彼女は四つん這いで進み、時折立ち止まっては上の様子を感じ取った。建物の基礎部分に達すると、彼女は上方向にトンネルを延ばし始めた。

 

「ここ...」

 

彼女の上には、建物の床があった。注意深く聞き耳を立てると、足音や話し声が聞こえてきた。

 

カテリーナは床を突き破るのではなく、壁の方向にトンネルを変更した。建物の外壁を内側から突破するつもりだった。

 

壁の裏側に到達すると、彼女は慎重に小さな穴を開けた。そこから部屋の様子を窺う。

 

暗い部屋。おそらく倉庫だろうか。人の気配はない。

 

彼女は壁を突き破り、部屋に入った。古い工具や備品が散らばる倉庫だった。彼女は慎重にドアに近づき、外の廊下を確認した。

 

廊下は薄暗く、一定間隔で薄い電球が灯っていた。巡回する兵士の足音が遠くから聞こえてくる。

 

「囚人はどこ...」

 

彼女は廊下に出て、静かに進んだ。建物の構造は複雑で、かつての工場設備の名残が残っていた。彼女は直感と足音に導かれるように進んだ。

 

角を曲がると、監視所があった。二人の兵士が座り、モニターを見ていた。彼らは退屈そうに会話していた。

 

カテリーナは立ち止まり、考えた。兵士を無力化する必要があるが、騒ぎを起こしたくはなかった。

 

彼女は地面に手をつけ、魔力を込めた。床から細い土の糸が伸び、兵士たちの足元に達した。

 

「眠れ...」

 

土の糸が兵士の足首を包み込み、徐々に体全体を覆っていく。彼らが反応する前に、土は彼らの口と鼻を覆い、空気を遮断した。完全に窒息させるのではなく、意識を失わせるだけの時間だけ。

 

数秒後、兵士たちは気絶した。カテリーナは土を引き戻し、彼らが呼吸できるようにした。

 

「モニターを...」

 

監視所のモニターには、複数の監房の映像が映っていた。彼女は画面を確認し、オレストを探した。

 

3番監房。画面にはオレストの姿があった。彼は壁に寄りかかって座り、頭を垂れていた。彼の顔には傷があり、服は血で汚れていた。

 

「見つけた...」

 

カテリーナは監房への行き方を確認し、急いで移動した。途中、彼女は別の兵士に遭遇したが、同じ方法で静かに無力化した。

 

監房区画に到達すると、重い鉄のドアが行く手を阻んだ。ドアには電子ロックがかかっていた。

 

「鍵...」

 

彼女は気絶した兵士から取った鍵カードを使ってみたが、反応しなかった。より高いアクセス権限が必要なようだ。

 

カテリーナは別の方法を考えた。

 

「壁を...」

 

彼女は隣の部屋の壁に手をつけ、魔力を込めた。壁の内部の構造を感じ取り、弱点を探る。この建物は古く、一部の壁は脆弱だった。

 

彼女は壁の弱い部分を見つけ、そこに集中した。土と石が彼女の意志に反応し、静かに崩れ始めた。穴が開き、彼女は監房区画の内側に入ることができた。

 

廊下には監房が並んでいた。各部屋には小さな覗き窓がついており、カテリーナはそこからオレストを探した。

 

3番監房。彼女は窓から内部を覗いた。

 

オレストは一人で座っていた。彼の状態は画面で見たよりも悪かった。顔は腫れ上がり、左目は完全に閉じていた。彼の手は背後で拘束され、足首には鎖がついていた。

 

カテリーナは監房のドアに手をつけた。鉄の扉だったが、鍵穴の部分に魔力を集中させた。金属が歪み、ロックが壊れる音がした。

 

静かにドアを開け、彼女は中に入った。

 

「オレスト...」

 

彼は顔を上げた。最初は恐怖の色が浮かんだが、カテリーナを認識すると、驚きと安堵の表情に変わった。

 

「幽霊...?お前...」

 

彼の声はかすれていた。乾いた唇からは血が滲んでいた。

 

「静かに。助けに来たわ」

 

カテリーナは彼の拘束を解いた。オレストはゆっくりと立ち上がったが、足元がおぼつかない。彼は壁に寄りかかりながら、カテリーナを見つめた。

 

「他のみんなは...」

 

「アンナとステパンは...」

 

カテリーナは言葉を選べなかった。オレストの表情に悲しみが広がった。彼は既に知っていたようだった。

 

「ヴァシルも...」

 

カテリーナは付け加えた。オレストは目を閉じ、深い悲しみに襲われたようだった。

 

「全部俺のせいだ...」

 

彼の言葉にカテリーナは驚いた。

 

「どういう意味?」

 

「奴らは...俺を尾行していた。お前との接触を...」

 

オレストの言葉は重かった。彼らの出会いが、レジスタンスの発見につながったのだ。

 

「だから...」

 

カテリーナの胸に痛みが走った。彼女の出現が、間接的にこの悲劇を引き起こしたのだ。

 

「後悔している時間はないわ。ここから出ましょう」

 

彼女はオレストを支え、監房を出た。しかし、廊下の突き当たりで、彼らは驚くべき光景に遭遇した。

 

空間が歪み、色彩が渦巻いていた。魔女の結界の入り口だった。

 

「あれは...」

 

オレストは恐怖に目を見開いた。彼は前日、カテリーナの戦いを目撃していた。魔女の存在を理解していた。

 

「魔女の結界...」

 

カテリーナは警戒した。なぜここに魔女が?

 

「避けて通りましょう」

 

彼女はオレストを支えながら、別の経路を探した。しかし、彼らが進むにつれ、結界は拡大しているようだった。

 

「なんてこと...」

 

カテリーナは気づいた。この建物全体が、徐々に結界に飲み込まれつつあった。

 

「選択肢がないわ。結界を通り抜けるしかない」

 

オレストは弱々しく頷いた。彼はカテリーナを信頼していた。

 

二人は結界の入り口に向かった。カテリーナはソウルジェムを握りしめ、準備を整えた。

 

「行くわよ」

 

彼女はオレストの手を取り、一緒に結界へと足を踏み入れた。現実が歪み、二人は魔女の世界へと引き込まれていった。

 

 

### ― 結界内部 ―

 

 

結界内部は、収容所とは全く異なる空間だった。無数の鉄格子と鎖が宙に浮かび、監房のような小部屋が立体的に連なっていた。まるで巨大な監獄のような結界。

 

「これは...」

 

カテリーナは周囲を警戒した。この魔女は、収容所の本質を反映しているようだった。

 

「何なんだ、これは...」

 

オレストは恐怖と驚きで言葉を失っていた。彼は弱っていたが、魔女の世界の異常さに気力を取り戻したようだった。

 

「魔女の世界。気をつけて」

 

カテリーナは前方を指さした。出口と思われる光が、遠くに見えた。二人はそれを目指して進み始めた。

 

鎖の橋を渡り、浮かぶ監房の間を縫うように移動する。時折、使い魔が姿を現した。彼らは獄吏のような姿をしており、鞭を持っていた。

 

カテリーナは大地の槍を形成し、使い魔を倒していった。しかし、彼女は魔女本体との正面衝突は避けたかった。オレストを安全に脱出させることが最優先だった。

 

「出口まであと少し...」

 

二人が出口に近づくにつれ、結界が震動し始めた。魔女が彼らの存在に気づいたのだ。

 

突然、巨大な存在が彼らの前に現れた。

 

「囚われの魔女...」

 

巨大な檻の中に閉じ込められた女性の姿。しかし、その檻は彼女自身の体の一部となっており、彼女は檻から手を伸ばし、鞭を振るっていた。彼女の顔は完全に包帯で覆われ、目の部分だけが空いていた。

 

「こっちを向かないで...」

 

カテリーナはオレストを守るように前に立った。彼らは出口に近かった。あと少しで脱出できる。

 

しかし、魔女は鞭を振るい、二人の行く手を阻んだ。

 

「くっ...」

 

カテリーナは選択を迫られた。魔女と戦うか、何としても脱出を試みるか。オレストの状態は悪く、長時間の戦闘に耐えられるとは思えなかった。

 

「もう少し...」

 

彼女は決断した。出口を目指す。魔女との直接対決は避け、とにかく脱出を優先する。

 

「オレスト、私の後ろに」

 

カテリーナは大地を操り、土の盾を形成した。盾は巨大で、二人を完全に覆い隠すほどの大きさだった。

 

「前に進むわよ」

 

彼女は盾を前方に押し出しながら、出口に向かって進んだ。魔女の鞭が盾に激突し、振動と衝撃が伝わってくる。一撃、また一撃。盾にはひびが入り始めた。

 

「持たない...」

 

カテリーナは额に汗を浮かべながら、魔力を注ぎ続けた。オレストは彼女の背後で息を荒げていた。彼の状態は悪化しつつあった。

 

突然、魔女が檻から完全に出てきた。その姿は巨大で、体の半分は女性の形、残りの半分は無数の鎖と鉄格子で構成されていた。彼女は両手に鞭を持ち、激しく振り回した。

 

「うっ!」

 

鞭の一撃が盾を砕いた。カテリーナは咄嗟に新たな盾を形成したが、魔女の攻撃はさらに激しさを増していた。

 

「このままじゃ...」

 

彼女の頭に閃きが走った。戦わずに逃げることはできない。しかし、完全に倒す必要もない。一時的に足止めするだけでいい。

 

「地面から...」

 

カテリーナは大地に魔力を注いだ。結界内の地面が盛り上がり始め、巨大な土の手が形成された。その手は魔女を捕らえようとした。

魔女は鞭を振るい、土の手を打ち砕いた。しかし、カテリーナはすでに次の手を形成していた。一つ、また一つと、土の手が次々と現れ、魔女に襲いかかる。

 

「今よ!」

 

カテリーナはオレストの手を取り、出口に向かって走り出した。魔女が土の手と戦っている隙に逃げるつもりだった。

二人は走った。オレストは弱っていたが、生存本能が彼に力を与えていた。出口までの距離はあと数十メートル。

背後では、魔女の怒りの咆哮が響いていた。土の手はすべて打ち砕かれ、魔女が二人を追いかけてきていた。

 

「間に合う...!」

 

カテリーナは最後の力を振り絞り、大地から壁を形成した。魔女の進路を阻むための壁。それは彼女の最後の防御線だった。

 

二人は出口に飛び込んだ。光に包まれ、彼らは結界から脱出した。背後で結界の入り口が閉じていく。魔女の怒りの声が遠ざかっていった。

 

 

### ― 収容所外部 ―

 

 

二人は収容所の外、森の中に立っていた。夜の闇が彼らを包み込み、遠くからはサイレンの音が聞こえてきた。収容所では脱獄に気づいたようだ。

 

カテリーナは変身を解き、普通の少女の姿に戻った。彼女は疲労で震えていたが、まだ動ける状態だった。

 

「大丈夫?」

 

彼女はオレストに尋ねた。彼は木に寄りかかり、苦しそうに呼吸していた。彼の傷は深く、早急な手当てが必要だった。

 

「ありがとう...」

 

彼の声はかすれていたが、感謝の気持ちは伝わってきた。彼の目には、カテリーナへの信頼の色が浮かんでいた。

 

「ここから離れなきゃ」

 

カテリーナは周囲を見回した。収容所からの追跡は確実だ。彼らは移動する必要があった。

 

「山に...隠れ家がある」

 

オレストは弱々しく言った。彼は東の方角を指さした。そこには低い山々が連なっていた。

 

「そこなら...安全」

 

カテリーナは頷いた。彼を支えながら、二人は東へと向かった。森の中を進み、収容所から離れていく。

 

オレストの体重を支えながら歩くのは容易ではなかった。彼は時折つまずき、カテリーナも彼を支えるのに苦労した。しかし、彼女の決意は揺るがなかった。彼を安全な場所に連れていく。それが彼女の使命だった。

 

「あと少し...」

 

夜が明ける前に、二人は山の麓に到達した。オレストの指示に従い、彼らは小さな渓谷を進んだ。渓谷の奥には、岩に隠された洞窟があった。

 

「ここ...」

 

洞窟は自然のものだったが、中は整備されていた。毛布や缶詰などの備蓄もあった。レジスタンスの秘密の避難所の一つだったのだろう。

 

カテリーナはオレストを毛布の上に横たえ、彼の傷を確認した。彼は意識を失いかけていたが、まだ呼吸は安定していた。

 

「休んで。私が見張りをするから」

 

彼女は洞窟の入り口に座り、夜明けを待った。ソウルジェムは半分ほど濁っていた。魔女との戦いで魔力を使いすぎたのだ。しかし、グリーフシードはもう一つあった。後で浄化すればいい。

 

夜明けまでの静寂の中で、カテリーナは考えた。レジスタンスは壊滅した。アンナとステパン、そしてヴァシルは死んだ。残されたのは彼女とオレストだけ。

 

「これからどうしよう...」

 

彼女は空を見上げた。夜明け前の空は、まだ星が輝いていた。その光は、彼女に小さな希望を与えるかのようだった。

 

 

### ― 山の隠れ家 ―

 

 

朝日が山の端から昇り始めた頃、オレストは目を覚ました。彼は痛みに顔をゆがめながらも、起き上がろうとした。

 

「無理しないで」

 

カテリーナは彼に水を差し出した。洞窟の奥から湧き出る清水だ。オレストは感謝しながら水を飲んだ。

 

「夜中に...昏睡状態に近かった時、彼らの会話を聞いた」

 

オレストの声は弱かったが、決意に満ちていた。

 

「何を?」

 

「奴らは...次の大規模な作戦の準備をしている。この地域の残存する抵抗勢力を一掃するつもりだ」

 

カテリーナの顔に緊張が走った。

 

「いつ?」

 

「三日後」

 

オレストは深呼吸し、痛みをこらえながら続けた。

 

「大規模な包囲殲滅作戦。重装甲部隊と航空支援を伴う。民間人の避難は許可されない」

 

その言葉の意味するところは重かった。町に残る人々、周辺の村々の住民たち、そして潜伏しているレジスタンスのメンバーたち。全員が危険にさらされることになる。

 

「他のレジスタンスのセルも?」

 

カテリーナは尋ねた。彼女が接触したのはステパンたちのグループだけだったが、他にも活動しているグループがあるはずだ。

 

「ああ。この地域には少なくとも三つのセルがある。それぞれ独立して活動している」

 

オレストは説明した。彼の話によれば、各セルは安全のため互いの正確な位置を知らないが、緊急連絡のための方法はあるという。

 

「警告を伝えなければ」

 

カテリーナは決意した。彼女は立ち上がり、洞窟の外を見た。朝の日差しが森を照らし、鳥のさえずりが聞こえてきた。平穏な光景の裏で、過酷な現実が待ち構えていた。

 

「どうやって?」

 

「あなたが言った連絡方法を使って」

 

カテリーナはオレストを見つめた。彼の顔には懸念の色が浮かんでいた。

 

「それは危険すぎる。通信は全て監視されている」

 

「他に方法はある?」

 

オレストは黙り込んだ。彼も答えを持っていなかった。

 

「時間がないわ。今日中に警告を伝えなければ」

 

カテリーナは決意を固めた。危険を承知で、彼女は行動する必要があった。

 

オレストはしばらく考えた後、頷いた。

 

「山の頂上に、古い通信塔がある。そこから特定の周波数で発信すれば、他のセルに届くかもしれない」

 

彼は弱々しく微笑んだ。

 

「でも、暗号を知らないとな」

 

「教えて」

 

カテリーナは彼の傍らに座った。オレストは暗号と周波数、そして警告を伝える具体的な方法を説明した。彼らは計画を練り、カテリーナは注意深く全てを記憶した。

 

「もう一つ問題がある」

 

オレストが言った。

 

「通信塔は敵に監視されている可能性がある。近づくのは極めて危険だ」

 

カテリーナは微笑んだ。彼女の目には決意の色があった。

 

「大丈夫。私には魔法があるもの」

 

オレストは彼女を見つめた。彼の目には感謝と懸念が混ざっていた。

 

「生きて戻ってくるんだぞ」

 

彼の言葉には、単なる指示以上のものが込められていた。彼は彼女を気にかけていた。孤独な戦いを続けてきたカテリーナにとって、それは新しい感覚だった。

 

「約束するわ」

 

彼女は立ち上がり、準備を始めた。食料と水を少量だけバックパックに詰め、ソウルジェムを確認した。まだ半分ほど濁っていたが、この任務に十分な魔力は残っていた。

 

「行ってくる」

 

カテリーナは洞窟を出た。彼女は山の頂上を目指して歩き始めた。通信塔まで約2時間の道のりだった。

 

彼女の孤独な戦いは続いていた。しかし今、彼女の心には微かな希望があった。彼女はもう完全に一人ではなかった。

 

 

### ― 山頂の通信塔 ―

 

 

カテリーナは山頂に到達した。息を切らしながらも、彼女は周囲を警戒した。山頂は開けており、隠れる場所は少なかった。

 

通信塔は古く、さびついていたが、まだ機能しているようだった。ソビエト時代の名残とも言える無骨な鉄塔は、周囲の美しい山々の風景に不釣り合いだった。

 

彼女は双眼鏡で周囲を確認した。塔の周りには監視カメラが設置され、定期的にパトロール車が通過していた。塔自体には兵士がいる様子はなかったが、電子的に監視されているのは確実だった。

 

「接近は難しいわね...」

 

カテリーナは計画を練った。正面からのアプローチは避け、死角から近づく必要がある。しかし、それ以前に監視カメラを無効化しなければならない。

 

彼女はソウルジェムを取り出し、変身した。魔法少女の姿となり、彼女は大地に手をつけた。

 

「地下から...」

 

彼女は大地を操り、通信塔の下まで地下トンネルを形成した。岩や土を動かす作業は労力を要したが、彼女の魔力は十分だった。

 

地下トンネルを進み、通信塔の真下に達すると、彼女は上方向にトンネルを延ばし始めた。通信塔の基礎部分を突き破り、内部に侵入するつもりだった。

 

基礎部分に到達すると、彼女は慎重に穴を開けた。鉄筋コンクリートの基礎は厚かったが、彼女の魔力で強化された土の槍はそれを貫いた。

 

穴から上に登ると、彼女は通信塔の内部にいた。古い機械と配線が並ぶ狭い空間。ほこりと錆の匂いが漂っていた。

 

彼女はオレストから教わった通り、特定の機器を探した。旧式の無線送信機。それは角に置かれていた。彼女は機器を起動し、周波数を合わせた。

 

機器のスイッチを入れると、機械音とともに古い真空管が温まり始めた。カテリーナは緊張しながら、オレストから教わった暗号を入力し始めた。

 

送信機からは、静電気音と共に断片的な信号音が発せられた。彼女は集中し、正確なメッセージを送った。

 

「三日後。大規模掃討作戦。避難準備。」

 

その後に、彼女は場所と日時の詳細を暗号化して送信した。送信が完了するまでの数分間、彼女の心臓は早鐘を打っていた。

 

「送信完了...」

 

彼女は安堵のため息をついた。しかし、その安堵は長く続かなかった。外から車のエンジン音が聞こえてきた。パトロールが到着したのだ。

 

「急がないと」

 

彼女は送信機の電源を切り、来た道を戻ろうとした。しかし、突然、塔全体が揺れ始めた。

 

「何が...?」

 

外から爆発音が聞こえた。彼女の不正送信が検知され、敵が攻撃を開始したのだ。

 

「くっ...」

 

カテリーナは地下への穴に戻ろうとしたが、塔が大きく傾き始めた。基礎部分が攻撃されていたのだ。彼女は壁にしがみついた。

 

「脱出するしかない」

 

彼女は窓から外を見た。塔の周りには兵士たちが集まり、塔の基部を攻撃していた。彼女が作ったトンネルが塔の構造を弱め、破壊を容易にしたのかもしれない。

 

塔は今にも崩れそうだった。

 

カテリーナは決断を下した。窓から飛び出し、大地の魔法で脱出する。それが唯一の選択肢だった。

 

彼女は深呼吸し、窓から身を乗り出した。50メートルもの高さから地面を見下ろす。彼女は恐怖を押し殺し、飛び降りた。

 

空中で、彼女は大地に魔力を送った。地面が盛り上がり、彼女の落下を受け止める準備をした。しかし、そのとき背後で大きな爆発が起こった。

 

爆風が彼女を吹き飛ばし、彼女の集中を乱した。地面の盛り上がりは不完全なまま、彼女は激しく着地した。

 

「うっ!」

 

強い衝撃と痛み。彼女の右足が不自然な角度に曲がった。骨折したようだ。

 

周囲には兵士たちが集まり、彼女を取り囲み始めた。

 

「動くな!」

 

兵士たちは銃を構えていた。カテリーナは痛みに顔をゆがめながらも、魔力を集中させた。

 

地面が動き始め、兵士たちの足元が崩れた。彼女は必死の思いで立ち上がり、森の方へ走り出した。骨折した足に体重をかけるたびに激痛が走ったが、彼女は魔力で体を強化し、前進を続けた。

 

銃声が背後で響いた。弾丸が彼女の周りを飛び交う。彼女は大地の盾を形成し、身を守りながら逃げ続けた。

 

彼女は森の中に入り、樹木の間を縫うように走った。追手の声と足音が彼女を追いかけてくる。

 

「このままじゃ...」

 

彼女は足を引きずりながら進んだ。徐々に追手との距離が開いているのを感じたが、彼女自身の体力も限界に近づいていた。ソウルジェムも濁りが増していた。

 

森の奥へ、さらに奥へと彼女は進んだ。やがて足音は遠ざかり、彼女は一時的に安全を確保できたようだった。

 

しかし、彼女の状態は悪かった。骨折した足は腫れ上がり、体中の擦り傷から血が滲んでいた。それよりも深刻なのは、ソウルジェムの状態だった。宝石は黒ずみ、もはや半分以上が濁っていた。

 

「浄化しないと...」

 

彼女はグリーフシードを取り出し、ソウルジェムに近づけた。黒い濁りがソウルジェムから流れ出し、グリーフシードに吸収されていく。ソウルジェムは再び輝きを取り戻した。

 

「これで...少しは...」

 

カテリーナは変身を解き、普通の少女の姿に戻った。傷は残ったままだったが、魔力による体の強化がなくなった分、痛みはより強く感じられた。

 

彼女は歯を食いしばり、山の隠れ家に向かって歩き始めた。オレストが待っている。彼女は約束を守らなければならない。

 

 

### ― 山の隠れ家 ―

 

 

夕方になって、カテリーナは洞窟に戻った。彼女は疲労と痛みで限界に近く、洞窟の入り口で倒れ込みそうになった。

 

「カテリーナ!」

 

オレストが彼女を支えた。彼自身まだ弱っていたが、カテリーナの状態を見て、彼は力を振り絞って彼女を助けた。

 

「任務...完了...」

 

彼女は弱々しく言った。オレストは彼女を洞窟の奥へと運び、毛布の上に寝かせた。

 

「無茶をしたな」

 

彼は彼女の骨折した足を見た。腫れは悪化し、紫色に変色していた。彼は急いで応急処置を施した。洞窟にあった医療キットから包帯と副木を取り出し、彼女の足を固定した。

 

「痛い...」

 

カテリーナは顔をゆがめた。

 

「じっとしていろ」

 

オレストは優しく彼女の額に手を当てた。彼の手は温かく、カテリーナは不思議な安心感を覚えた。

 

「メッセージは送れた?」

 

「ええ。でも...通信塔は破壊された」

 

「気にするな。重要なのはメッセージだ」

 

オレストは水と缶詰の食料を彼女に差し出した。カテリーナは感謝して受け取り、少しずつ口にした。

 

「これからどうするの?」

 

彼女は不安そうに尋ねた。二人だけでは、大規模作戦に対抗することはできない。

 

「他のセルが反応するのを待つ。そして...」

 

オレストは言葉を切った。彼の顔には決意の色があった。

 

「私たちにもやれることがある」

 

カテリーナは彼を見つめた。彼の目には強い意志が宿っていた。

 

「二人で?」

 

「ああ。お前の力と、俺の知識があれば、敵の作戦を妨害できる。完全に止めることはできなくても、民間人の避難時間を稼ぐことはできるはずだ」

 

彼の言葉には希望があった。カテリーナは頷いた。彼女はもう孤独ではなかった。戦いを共にする仲間がいる。それだけで、彼女の心は強くなった気がした。

 

「休みなさい。明日から計画を立てる」

 

オレストは彼女の傍らに座った。彼は彼女の手を取り、優しく握った。

 

「約束を守ってくれてありがとう。生きて戻ってきてくれた」

 

カテリーナは微笑んだ。彼女の目には涙が浮かんでいた。それは痛みからくる涙ではなく、感情の涙だった。長い孤独の後、彼女は仲間を見つけた。

 

「あなたを助けて良かった」

 

彼女は静かに言った。

 

洞窟の外では、日が沈み、夜の帳が下りていた。明日から、新たな戦いが始まる。しかし今夜、彼らは休息を取る。傷を癒し、力を回復し、そして未来を語り合う。

 

魔法少女カテリーナと元レジスタンス戦士オレスト。二人の戦いは始まったばかりだった。

 

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