そういう能力を作ってみた   作:風梨

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本日3話投稿
1話目
約2400字おまけつき



初めましての念能力者

 

 

「──銀行口座ですか? はい、こちらから開設できますよ」

 

「え? そうなんですか?」

 

 場所は天空闘技場。

 その受付だった。ニコニコと笑って説明してくれているのは、お世話になっている天空闘技場の受付のお姉さんだ。

 明日の試合日程を組むために訪れた受付で、銀行口座の話を試しに振ってみると得られた回答だった。

 

「はい。リオ様は、100階の闘士の方ですよね?」

 

「そうです」

 

「ファイトマネー『の』入金先としての口座であれば、こちらで開設を承っています。ご本人確認の書類も特に必要ありません。もちろん、お好きな時に引き出すことも出来ますよ。専用のクレジットカードもご用意できます」

 

 望んでいた回答なのに、何故か含みを感じてつい質問で返した。

 

「──それはまたなんで……?」

 

「色々ですよ〜。福利厚生の一環ですね」

 

 ニコニコ笑っているお姉さんから、ほんのりと、聞いちゃいけない空気を感じた。

 僕はそれ以上聞くことは出来ずコクコクと頷く。世の中、知らない方がいいことは多いのだ。たぶんきっと。

 

 

 

「──なんというか、あっという間に解決してしまった」

 

 貰ってきた通帳を手に部屋に戻ってきて、残高の200万円、じゃなくて200万ジェニーを眺める。

 お金を盗まれる心配は消えた。ひとまずこれだけのお金があればひもじい思いをする心配もない。となれば、やることは一つ。

 

 ──美味しいご飯を、お腹いっぱい食べたい。

 

 天空闘技場の内部は様々なサービス施設がある。レストランもその一つだった。

 この1ヶ月は爪の先に火を灯すような思いで食事をしてきたから、お腹いっぱい食べられる幸せに頬が緩んでしまう。美味しくて量のある食事を山ほど食べ続けても、箸が全く止まらない。念を覚えたおかげだろうか。いくら食べてもお腹が膨れた気がしない。フードファイターとしてもやっていける気がする。美食ハンターもいいかもしれない。

 

 お会計時に、明細を見て引き攣った顔をする店員さんを尻目に、作ったばかりのクレジットカードで支払いを済ませて、ついでに他のサービス施設に寄ってみる。

 興味があるのは、トレーニング施設だった。

 

「おお〜、さすが天空闘技場。いろんな機材が揃ってる」

 

 受付で会員登録を済ませてから月額の利用料金の説明を受けて、さっそく中に入った僕を待ち構えていたのは、唸るほどの量を誇るトレーニング器具と、それを活用する会員たちの姿だった。

 利用客に闘士が多いかと思えば、実はそうでもない。

 

 格闘の聖地(メッカ)と言えども、その大半は観客たちだ。

 観戦をした流れでせっかくだから身体を鍛えていくか、となる人も多いようで、結構な数の一般の人たちが観光感覚でトレーニングに励んだりもするらしい。受付の人が言ってた。

 

 もちろん闘士の人も利用している。

 ──でも、この人までいるとは思わなかった。

 

 視線の先ではトレーニングマシンで汗を流している優男がいた。

 遠巻きにしている周囲の利用者たちが、声を掛けるかどうかで悩んでいる。それは、彼がこの天空闘技場では知名度のある存在だという証明だった。

 さらさらのロングヘアに優しげな風貌を持った男で、女性からの人気が高そうな甘いマスクを持っている。

 僕の名前の元になった人であり、転移した当初の新聞に載っていた人──カストロさんだった。

 

 

 そんな彼は周囲には目もくれず、一心不乱にトレーニングに励んでいる。

 とんでもない重量を苦にもせずに上げていた。

 腕の見た目は筋肉質ではあるものの至って平均的だ。筋肉で膨れ上がったりはしていない。

 だというのに、少し離れた場所にいる、筋骨隆々の男よりも、断然重量は多くて重い。

 どこにそんな力があるのか、と思うほどだけど、理由は彼のオーラを見れば一目瞭然だった。

 

 彼も僕と同じ様に念が使える。

 原作通り、1ヶ月ほど前にヒソカに敗北したとき、洗礼を受けて念を使える様になったのだろう。

 

 ……彼に、話しかけてみるべきだろうか?

 でも僕は原作でしか彼のことを知らないから、少し不安があった。

 念能力者の本能かもしれない。オーラを見るだけで、なんというのだろうか、警戒心が刺激されるのだ。

 

 少し考え込んで、それでもプラスの材料として原作でのカストロさんを思い出す。

 ……ちょっと思い込みが強そうだったけど、キルアにも優しく接していた彼なら、大丈夫だろうか。

 

 ──決めた。

 僕の念能力。『神様の贈り物(ギフテッド)』に達成報酬があることは、先日ハッキリとわかった。

 だからポイントが手に入りそうな行動は出来るだけ取っていきたい。

 ……もちろん念能力者に話しかけるのは少し怖い。でもここはリスクを負うべき場面だと思う。

 

 そうと決まれば、僕の動きは早かった。

 器具によって、上げられる重量の上限と下限が違う。トレーニングマシンによって重量別に分けられているのだ。

 だから、相当の重量を上げている彼──カストロさんの両隣は空いている。

 

 その片方に座って、僕は重量を盛っていく。

 カストロさんの上げている重量よりも少しだけ上の重さに設定。

 

 僕のやることは単純。

 彼と同等、あるいはそれ以上の重量を『念』を使いながら目の前で上げて見せるだけだ。そうすれば彼はきっと興味を持ってくれる──はず。

 

 器具に寝そべってトレーニングを始める。腕に掛かる負荷は大きい。

 それでも、あえて『練』をしながら上げれば苦もなく挙げられた。

 何度かガシャンガシャンと器具を動かして、十数回を超えたところで、一旦器具を置いた。

 視線を感じたからだ。

 

 横を見れば、驚いた、という表情を浮かべるカストロさんが居た。

 

「──その若さで、君は『使える』のかい?」

 

「っ!はい! カストロさんも、ですよね」

 

「ああ、そうだよ。もう知っているみたいだけど、私の名前はカストロだ。君は?」

 

「リオって言います」

 

「リオくんか。……この後に予定はあるかい? もしなければ、少し話さないか?」

 

 気さくな笑みを浮かべるカストロさんに、内心のガッツポーズを隠しながら、僕は満面の笑みで頷いた。

 

 





次話は本日20時に投稿です。


・初めての天空闘技場

(うーん。せっかくだし、新しい名前をつけたい。何かないかな)

並んでいるのは天空闘技場の参戦を申し込むための列だった。
多くの武闘家、大人たちに混じって子供の僕も並んでいた。
そんな時に、僕は自分の名前を考えていた。

元の世界の名前は日本名だ。悪くは無いけど、心機一転する意味も込めて新しい名前をつけたいと思う。
でも適当な名前をつける気にはならない。
列が徐々に進む中、うんうんと頭を捻り続けて、ふと思い出した。
つい先ほど顔に張り付いてきた新聞に書いてあった名前。

カストロ……。
名前の由来を考えてみて、パッと思いついたのは名作アニメ映画の『カリオストロの城』だった。
試しに残った文字を思い浮かべてみる。

(……リオ?あ、悪くないかも)

──では、こちらの用紙に記入してください。

順番が来て、そう言われて差し出された紙に、僕はさっそく先ほど決めた名前を書き込んだ。

──リオ、と。


・教えて受付のお姉さん
Q.なんで口座が簡単に作れるんですか?
A.天空闘技場の死傷率はそこそこ高いんですよ〜。……ここだけの話ですが、口座作成時の規約をしっかり読んでおいてくださいね。特に死後にその口座がどうなるのか、ですよ〜。ここが大切ですよ〜^^

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