そういう能力を作ってみた   作:風梨

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本日は1話のみ更新です。(次の次の話に苦戦中)




警戒心

 

 

 当然ながら、念能力にはリスクがある。

 それを知る故に、以前までの僕は、ここに全ての念能力が書いてあることを知ってはいたけど、それほど期待はしていなかった。

 

 当初こそ、いずれ色んな念能力を複数併用できるなんてチートすぎない? とは思ったけど、よくよく考えればそんな筈がないのだ。

 必ずデメリット、リスクが存在するのが念能力と考えていたから、冷静に俯瞰していられた。

 例えば1日に使える能力は1つだけとか、併用不可とか、能力はアンロック出来ても使えるのは使用者に許可を取ってからとか。

 

 取らせるだけ取らせて、後から『覚えた? 覚えたよね? でもでも〜、使うにはこういう条件が必要でした〜! ぷーくすくすー! あれれ〜リスクなしで使えると思っちゃってたのぉ〜? ぷくー! 使えなくって残念でした〜! 怒った? 怒った? う〜ん! ごめぇ〜んね⭐︎』となるパターンを想像したから、正直全ての念能力が書いてあっても、興奮どころか、あからさまな地雷が出て来たな、誰が引っ掛かるかよ、くらいの冷めた気持ちで見てたくらいだ。

 

 うん、自分の念能力に警戒しすぎじゃない? とは僕も思うよ……。

 でも、僕の念能力だよ? 過剰に条件が厳しすぎて、融通が効かなくて、使い勝手が悪くて、特に期待したら地雷でした、とか全然ありえそうだったんだもん。……自分で言ってて泣きそう。

 

 現実主義のくせにロマン好きでもあるから、悪いところが相乗したらそうなると思うんだ。

 ここぞで超高難易度のリーサルコンボを決めた時とかに拳握りしめて雄叫び上げるタイプでもあるから……。ピーキーな性能でもおかしくないなって。

 

 そんな訳で、僕は僕の念能力を、かなり警戒して使ってた。期待した結果が裏切られたらと思うと怖くて信じきれなかった。

『念を覚える』だけは、無条件に信じちゃってたけど……。その言葉通りの意味だろうしって。いま思えば、念を覚えられるって思って、かなり冷静さを失ってたなあ……。

 

 遠い目を、首振りキャンセルしつつ、僕はポツリと静かに続けた。

 

「……あんまり、期待はしないでおこうかな」

 

 改めて、冷めた目で眺めつつ。

 僕は能力の一覧をスクロールしていった。

 

 でも。

 ──もし仮に。そう、仮にだ。

 得られた能力が、十全に使えたとしよう。もしそうなら、どの能力が必要だ? そして複数の念能力を併用できるのなら、どの能力を取得していくべきだ? 

 

「……」

 

 そこから黙々と考えて、出した結論としては、まず得るべき能力。

 

 ──キルア=ゾルディックの『神速(カンムル)

 これに限る。

 

 初めに得るべき能力は、敵対する恐れのない、現時点で使用者がいない念能力。

 そしてその中でも利便性と汎用性、生存率、逃走成功率が高く、且つ戦闘能力に直結するもの。

 

 ──それに該当するのが、キルアの『神速(カンムル)』だった。

 諸々のリスクはある。先々では命の危険すらあるかもしれない。でも、それ以上に魅力的過ぎて、僕の手はつい伸びてしまった。

 

 ポイントが消費されて、『神速(カンムル)』がアンロックされる。

 見れるようになった詳細を読み込む。

 

 読み込んで。

 

 

 

「──ふぉおおおお!!!?」

 

 

 僕は、雄叫びをあげた。

 

 

『キルア=ゾルディック(神速(カンムル))』

 キルア=ゾルディックの念能力を習得する。必須である経験、技能などを含む。

 

「……いや。いやいやいや。お、おち、おちつこう落ち着いて」

 

 深呼吸をした。

 過呼吸になりかねないので、意図的に呼吸数を抑える必要があった。

 

「まあ、まだね。……文字だけですし? 本当のところがどうか、使ってみないことにはわからないし!? そそうだよね!!?」

 

 だめだ、全然落ち着けない。胸に手を当ててひっひっふーしてる。テンションが爆上がりすぎてやばい。

 とりあえず、僕は超高電圧のスタンガンを購入するために、これまでの人生で一番ってくらい全力で走った。

 

 ──お店が閉まってた。

 そりゃそうだ、カストロさんに色々教えてたから深夜だもん。人間って全力で膝から崩れ落ちることってあるんだね。そんなこと知りたくなかったよ。お店の前で咽び泣いた。

 

 乾電池ぶち折って充電できないか、真剣に考えたくらい必死な、あまりにも長い夜を超えて僕は電気屋さんに朝イチで並んで、お店で一番強力なハンディタイプのスタンガンを購入。

 身分証が必要だったけど、何とかした。

 

 重要なことなのでもう一度言うけど、身分証が必要だったけど、何とかした。

 お金って素晴らしいね……。

 

 気が急きながら、何とか天空闘技場にある自室にまで猛ダッシュで帰宅して、厳重な梱包箱を、急ぎすぎて中身をめちゃくちゃにしないように、これまでにないくらい慎重に開いた。

 たぶん梱包箱を丁寧に開く気持ちを比べる大会があったら、優勝できるくらいの気持ちの籠り方だったと思う。手は緊張しすぎてプルプルしてたけど。

 

「電圧は130万V……。よし」

 

 電池を装着して、スイッチを入れていない状態で腕に当てる。

 意外に思うかもしれないけど、電気ショックで気絶、死亡するレベルの製品は販売されていない。

 めちゃくちゃ痛くて数十秒間くらい動きを停止させる製品が最高レベルとなる。だからスイッチをオンにしても死ぬ心配はない。

 

 それはわかってるんだけど、少しだけ躊躇した。でも、そんなことで止まるなら購入してない。

 気合いを入れ直して、スイッチをオンにして。

 

「いっっってええええええええ!!!! ──けど耐えれる……」

 

 ビリビリと電気が貫通していくような、奇妙な感覚を感じた。もちろん痛みはある。めちゃくちゃ痛いけど耐えられるという妙な感覚になりつつ、僕は目を閉じた。ここから先はイメージが大切だ。

 

「オーラと、電気を融合するイメージ……」

 

 10秒ほどは融合していただろうか。

 徐ろに僕はスタンガンを投げ捨てる。

 

 次はためた電力を、一気に放電するイメージで、念を練る。

 

 ──バチリ、と電撃が走った。

 あまりにも僅かな電撃。オーラを電気に変換出来たというだけの、変化系能力の最低限。

 でも、ただそれだけのことが飛び上がるくらい嬉しかった。

 

「っっっ!!! ……よおおおおおおし……!! キタ、キタキタキタ……!!」

 

 嬉しすぎて足踏みが止まらない。

 握りしめた両手はたぶん、力が入りすぎて真っ赤に充血してる。それでも辞められなかった。

 わかってる。これが成功したからって、今後の念能力が保証される訳じゃない。新しい能力を覚えるのにリスクがあっても何も不思議じゃない。『神速(カンムル)』だって、今はただオーラの電気変化に成功しただけだ。ここから伸ばすのに、どれほどの代償を支払えば良いのかも不透明だ。

 

 だけど嬉しいのだ。

 僕の勝利の雄叫びと、繰り返される充電と放電行為は、すっかり忘れていた今日の試合の不戦敗通知が届くまで続けられた。

 ……口座を作った時に申請したの、完全に忘れてた。

 

 そして後ほど聞いた話だが、カストロさんも観戦に来ていたみたいで、試合前に観客席から僕の株を上げまくっていたカストロさんは、推していた選手が不戦敗になるという、賭博要素のある場所では、致命的にかなり居た堪れない──200階闘士という立場を考えれば、もはや刺されても文句は言えない空気の中で宇宙猫状態だったそうな。

 

 ご、ごめん。カストロさん……。

 

 

 ──そして、再度の昇格戦を経て。

 僕はついに100階闘士として試合に臨む事となった。

 

 死生観を一変させる程の、相手との、出会いが待っているとは露知らず。

 呑気に、喜んでいた。

 

 

 

 

 









続きは明日の18時に更新予定です。




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