泣葱は切ると涙があふれてくる。これは葱の刺激成分が鼻を通って目を刺激するためである。
笑葱は焼くと笑いがこみあげてくる。これは葱の笑気成分が熱によって揮発するためである。
ある意味使いづらい食材だが、味の方は格別だ。そのため店で安く手に入るのは助かる。
今回はグラタンスープ風に仕上げてみた。大陸西では、出汁は獣からとるので、西風出汁は東風出汁には無い濃厚さがある。それが熱された葱と合わさって最高のオーケストラのような味を奏でるのだ。
また、使ったパンはカレッサ地方で焼かれる田舎パンである。これは都会のパンにはない濃い風味あるため、グラタンスープによく合う。
作り方
・泣葱と笑葱を薄切りにして、小鍋に入れキャラメル色になるまで炒める。ひたすら炒める。泣こうが笑おうが炒めるのだ。
・炒めた物に、西風出汁を加えつつ、炒めた時に鍋についた焦げ目を出汁の中に溶かすような感じで混ぜる。西風出汁は粉状の物を買うのが最も簡単かつ間違いない。一から作るのは家庭ではかなり難しい。
・このままではただの葱スープなので、これにカレッサ風パンを切ったものを入れ、熱するとねっとりとろけるタイプのチーズを入れる。
・じっくりチーズ表面に焼き色を付け完成。小鍋から器に移すときにチーズが伸びれば最高だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
トリップとは、西方の言葉で煮込みの意味。寒い時期にはこのトリップを食べなければ凍えてしまう。
今回は白猪の戸魔戸トリップを用意してみようと思ったが、せっかくなので、普段捨てる部位を使用してみた。
白猪の内臓やすね肉は、固い、臭い、処理が超面倒の三拍子がそろった食材だが、味が美味しい事には間違いない。
そして、固くて臭い食材は、トリップ料理にするのがよく合うのだ。
戸魔戸はしっかりとしたうま味の強い果実で、白猪の内臓のうまみに負けず、味の相乗効果が期待できる。
作ってみようと気軽には言えない手間だが、ハレの日に向けて作ってみるのもいいかもしれない。
作り方
・塩漬けにした白猪のすね肉とベーコンを用意する。すね肉は一口サイズに切りわけ、ベーコンは短冊に切る。あまり大きく切ると多少煮込んでも嚙み切れないので気持ち小さく切る。
・白猪の内臓は買ってきたものを丁寧に処理する。難しそうなら肉屋で頼めば処理してくれるので、その方が安牌だが、それでも一回は水洗いしたい。それを茹で、冷まし、茹で、冷まして、一口大に切る。
・茹で内蔵は猪の出汁で弱火で煮込む。半日以上は煮込みたい。
・内臓を一旦取り出し、同じ煮汁ですね肉とベーコン。それに赤戸魔戸のペースト、泣葱などの香味野菜を加え、しっかり火が通るまで煮る。
・香草類と煮込んだ内蔵を加え、さらに二時間煮る。これを5日程度冷暗所で寝かせる。寝かせなくても美味しいが、真の美味は寝かせた先にある。