機動戦士ガンダム00Pから始まる物語   作:影後

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第2話

「あ…あの、レイナード」

 

「シャル、ルイードはクルンテープの直掩だ。

敵は俺が殺す、何れは……何れは覚悟してもらう。

だが、それは今じゃない。イレギュラーから守る為、

俺が居るんだからな」

 

「俺達が…でしょ?」

 

「ふっ……だな」

 

妻にして相棒の言葉を受け、笑みが溢れる。

そこに居るのは普段の優しい教官役のお兄さんではない。

戦場で生きる一人のパイロットだ。

 

「クルンテープ、正面は開けておけ!

シャル、ルイード両名は機体に乗り込め!」

 

ディフェンダーに乗り込み、

機体をカタパルトに向かい移動させる。

何度もしてきた防衛戦だ。

それに、レイナードは理解している。

兵士として教育されていたからこそ、正直。

レイナードはシャルとルイードを戦わせたく無かった。

 

「レイナード・ハングドマン及び」

「アルマ・トリニティ」

「ガンダムディフェンダー。出るぞ」

 

模造太陽炉からGN粒子が噴き出し、ガンダムに火が灯る。

カタパルト内で高速に加速し、射出時には音速すら越える。

 

「エージェント・レイナード。

此方、マイスター・874。

接近する船の情報共有を行います」

 

ディフェンダーで宇宙空間に出ると、

すぐにマイスター・874からの通信が入る。 

ガンダム間の通信は主に視認信号が使われる。

相手のガンダムが「見えている」状態なら、

その装甲表面を微細に振動させ、それを見て情報を受け取る。

振動のパターンが暗号情報の役割を果たすのだ。

一般的な軍でも、発光パーツの点滅による視認信号は

各国共通方式が存在していた。

また、宇宙という漆黒の闇においてこの通信方式は実に

有益であり既存のマシーンに発光機能が標準的に搭載される。

だが、ガンダムはそんなものじゃない。

この通信方式で送られる情報を1とするなら、

ガンダムが行える信号通信では50を送る方式だ。

GN粒子、あの世界でのミノフスキー粒子の様に

通線を妨害できるその影響下での通信遮断を想定して、

ガンダムには搭載された。

 

「さて、アルマ。どこの軍艦だ」

 

「人革連ね、どうする?」

 

「『殲滅』さ、どうせヴェーダも同じだ」

 

「えぇ、『撃破』ね」

 

「やる事は、同じだろうに」

 

この時代、まだ人革連は宇宙用モビルスーツの開発に

着手しては居なかった。

モビルアーマーを主体とした軍艦での編成であり、

しかも当時のモビルアーマー『シャオショウ』は

一対の巨大な腕部があるものは作業用。

戦闘用は腕部を滑空砲に換装したもので、

機動性も良いものとは言えない。

さらに、事宇宙空間という上下左右にほぼ自由に

動ける空間において、ガンダムに匹敵する性能を

有する存在など居るはずもなく、

軍艦に武装が施されて居ようともレイナードにしてみれば、

ただの大きな的に過ぎない。

 

「GN粒子散布、通信遮断を行います。

エージェント・レイナード」

 

「ミッション了解、殲滅する!」

 

ディフェンダーが加速する。

音速を超えた世界をまるで鷲の様に自由自在に飛んでいく。

スペースデブリも超圧縮されたGNフィールドの前では

どれも等しく無力であり、

ディフェンダーが傷付くことはない。

 

「これが音速を超えた戦いだ!」

 

「待って……Gが……」

 

戦闘は呆気なく終わった。

シャルとルイードが準備する間もなく、

音速を超えた加速をしながらガーディアンの

所持するGNビーム・ライフルで貫かれ爆発四散する。

その中で、攻撃に気付いていたのが脱出艇が見えた。

 

「シャル、ルイード、マレーネ、これが俺だ」

 

それは任務を冷酷に、忠実に実行する兵士の側面。

ソレスタル・ビーイングの為、

戦争根絶の為に働くと誓った忠誠の証。

逃げる脱出艇をロックする。

そしてGNビーム・ライフルの引金を引いた。

発射された粒子ビームが脱出艇を貫き爆発する。

そして、ディフェンダーの中でせめてと十字架をきる。

 

「帰還する、シャル、ルイード、準備は良いな?」

 

「え………は…はい」

「…わかった」

 

帰還したレイナード、シャル、ルイードは

それぞれ反応が違った。

シャルとルイードは赤羅様に腕が震えている。

 

「……戦争じゃないのに、人殺し。

割り切れよ…組織に入った時点でな。

…なんて軽々しく言える立場じゃない」

 

「何で…何でレイナードは」

 

「シャル、俺は……俺の過去は話してなかったな。

俺は昔から人殺しだ、俺の母さんは親父に何時も打たれてた。

それでも親父を愛していたんだろう、ある時だ。

母さんに親父が拳銃を向けたんだ。

そう、母さんを殺そうとした。俺は母さんを助けたかった。

だから、親父をナイフで刺したんだ。

するとどうだ、親父から母さんを助けた。

助けたのに、母さんは俺の事を撃ち殺そうとした」

 

そう言いながら、心臓の位置を見せた。

そこには弾丸が貫通したような傷跡が残っている。

 

「俺は心臓が逆だった。だから死ななかった。

俺は母さんを殺した、生きるために。

正当防衛が認められたが俺は、軍に入るか、施設に行くかの

2択だ。シャル、お前達の反応が正しいんだ。

俺は壊れてるし狂ってる怪物だ。

他人を殺す事を何とも思えない怪物だ。

殺すのは良い、マイスターだ。それが任務にもなる。

でもな、慣れるな。人殺しを何とも思わなくなったら、

それは既に〘怪物〙だ」

 

その日の夜はまるで赤子を抱いた母親のようにアルマは

優しかった。普段から激しい事をする事はなく、

至って普通の関係であり、夫婦の筈。

だが、アルマは理解している。

愛した男の心の闇を、拭いきれない悲しさを。

 

「貴方の子を産めば、変わるのかしら」

 

「どうした急に」

 

「何でもないの」

 

今度は父に甘える娘のように、

レイナードの胸に頭を沈めた。

 

 

一機のシャトルが大気圏に再突入する。

機体はあるベンチャー企業の所属で、宇宙での新素材の開発実験を済ませ、地上に戻ってきたところだ。

ただし――それは表向きの情報だった。

実際はシャトルのコンテナには、三機のガンダムが搭載されており、ソレスタルビーイングのガンダムマイスターたちも搭乗していた。

シャトルは、予定していた時間、コースを守り、

ユーラシア大陸の南に位置するベンチャー企業の敷地へと降りる。

 

「地上……か……」

 

シャトルが格納庫へ移動するまでの間にシャルがそう呟く。

それに呼応するようにレイナードも窓の外を見る。

 

「……彼奴等、元気にしてっかな」

 

レイナードの友人、いや友人と呼べる人間は軍にしか居ない。

まともな家庭環境で過ごすことは出来ず、

幼いながらに施設に行くか、軍属へ進むかを選ばされた。

戦場こそが自分の居場所とは言わないが、

兵士にならなければ、

ソレスタルビーイングに参加することもなかった。

アルマ、ルイード、シャル、マレーネとも出会えなかった。

そもそも、兵士になり非情な現場を見たから『宇宙戦争』。

あの世界を元にした小説まで書いたのだ。

自分が殺す分には良いが、彼等が殺し、

背負う事になるのは苦しい。

三人は己のように壊れていないのだ。

 

「彼奴等って、レイナードの友達なの?」

 

事故の1件以降関係が近づいた為、

呼び捨てで話し合うようになったシャルとレイナード。

無論、隣にはほぼ必ずアルマがいるが。

 

「友達…とは、違うな。同期に近いと思う。

士官学校にいた頃、俺は周りから浮いていた。

自慢じゃないが、身体能力、学力、対G能力、

教官に言われたよ。

お前ほど素晴らしい人材は見たことが無い。

その上、命令に忠実で教官の受けも良いとなったら、

シャル。例えばだ、先生が居て凄く気に入った生徒が居たら、

周りはどう思う?別に特別扱いはしてない。

だが、ふと見た瞬間、褒められ、自分ができていないのに、

ソイツだけ終わらせ、周りに教えている」

 

「えっと……私は嫌じゃないかな。

その人も真摯に向き合ってくれるんなら」

 

「…優しいな、シャルの美点だ。

でもな、軍はそうじゃなかったんだ。

俺は特別扱いを受ける奴と言う意味で、『faveman』。

依怙贔屓男と呼ばれてた。嫌がらせばかりだったよ」

 

興味も何もない、ただ虚無がシャルの目には映った。

なら、何故あんな言葉を話したのか。

なぜ、ここでそんな言葉が出るのか。

 

「2人だけ居たんだ、そんな俺に付き合ってくれた馬鹿がな。

大変だった。勉強もできないし、記憶力もない。

なのに、パイロット技能だけは一級品の奴等でな。

三人で組んでた時、空じゃ負け無しだった。30戦11勝19敗。

毎回、戦闘演習だと俺達3人だけ残って、空戦するんだ。

バトルロイヤル形式で、全員が敵。最期まで飛んでた奴の勝ち」

 

そう話すレイナードは先程とはうってかわり、笑顔だった。

ソレスタルビーイングに向ける笑顔とは違う。

悔しさ、懐かしさ、色々な感情が入り混じった笑顔。

 

「不思議ねぇ…私、そんな話聞いたことないのに。

なんでシャルちゃんには話すなかしら?

ねぇ、貴方の妻は私なんたけど?」

 

「お前、人いるだろうが!くっつくな!やめ…首舐めんな!」

 

「お前らさぁ、お熱いのはいいけど、

シャルと俺もいるんだぜ?」

 

「なら、助けろ!」

 

「やだ、馬に蹴られたくねぇ」

 

「ふっふふ……」

 

マレーネもここに居たら笑っただろうか。

地上に降り立つガンダムマイスター達。

しかし、ここから先の悲劇を彼らはまだ知らない。

 

 

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