ペンは剣よりも強し!   作:みかんフレーク

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第10話 お金は自分で払え

「なかなか洒落たトコ知ってんじゃん」

 

 街のとある甘味処、そこで俺は見知らぬ女の人と団子を食らっていた。俺がみたらしで目の前の女性は三色団子。温かいお茶も付いてきていた。最近少し冷え込んできたから有難い。

 

「んー、美味しい!やっぱ団子だよね〜!」

 

 三色団子を頬張りながら嬉しそうな声を上げてる。めちゃめちゃ女子だな……。一体今何歳くらいなんだろ?姉さんとだいたい同じくらいかな?見た目はだいぶ若々しいし。

 

「どした?食べないの?」

 

「ああ、いただきます」

 

 言われて初めて、自分がまだみたらし団子に手をつけていなかったことに気が付く。串に刺さった1つ目の玉を口に入れると、香ばしい醤油の風味が広がった。

 

「なに?もしかして私に見惚れてた?」

 

 からかうようにニヤケ面をしてくる。確かに顔は整ってるとは思うが、のめり込むほどでは無い。しかし、ここは敢えて反撃をしてみよう。

 

「まあね。こんな綺麗なお姉さんと甘味を堪能出来ると思ってなかったから」

 

 そう答えると、ツインテールのように輪っかになっていた部分が兎の耳のようにピョコンと跳ねる。

 

「お上手だね〜、誰かに仕込まれてるのかな?」

 

「まっさか、俺は嘘でもそんなこと言えないからね」

 

 嘘である。いや、こういう時は嘘じゃなくてジョークだと言っておこう。だがしかし、そういう台詞回しはヒナオさんに教えてもらったことがある。なんて言ってたかな……なんかこう駆け引きは出来るようになっておけというアレだった気がする……。

 

「ウソツキはみんなそう言う」

 

 ま、見抜かれてるっぽいけどね。

 

 お茶を啜って場を濁す。さて、これからどうしたもんか。楽座市や漣ハクリの事もあって、頭の中が中々にごちゃついてんだけど。甘い物食べてリフレッシュ!っていう気分でもない。皿に盛られた団子をじーっと見つめる。

 

「学ラン着てるってことはさ、高校生なの?」

 

 飛んできた質問に顔を上げた。すると目の前のお姉さんは、ニコニコしながら俺の回答を待っていた。まぁ、ここでこの見知らぬ人と談笑に応じるのも悪くないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ〜ん、最近の学生って大変なのね〜」

 

 お茶を啜りながらそう言われた。あれから俺の通っている学校の話や、勉強の話なんかを色々とした。特に課題関連。流石に刀振り回して戦ってますなんてことは口が裂けても言えなかったし、別に言う必要も無い。そう、あくまで俺は善良な学生として一般人には接するのだ。

 

「だからか、何だか君の元気が無さそうに見えたのは」

 

「え?」

 

 お姉さんのその言葉につい首を傾げる。

 

「最初に君と目が合った時、すんごく暗い瞳をしてたからさ」

 

「……まじ?別に学校が辛いとかでは無いんだけど」

 

「あら、じゃあ他に理由がありそうだね」

 

 相変わらず口角を上げながら、詮索するような顔でそう言う。何だろうこの人。何か独特な雰囲気がある。

 

「行動指針は自分の信念に基づいてるかどうかで決めた方が良いよ」

 

「なんの話……?」

 

「いやなに、やけに迷ってるような目をしてるからさ。なにで迷ってるかは知らないけど、君より長く生きてる先輩からの助言ってやつ」

 

 ふふん、と鼻を鳴らす。君より長く生きてるって、見た目からしてそんなに年齢は離れていないだろう。いやでも、最近の女性は実年齢より若く見えるって言うしな。

 

「後悔しない方を選んだ方が、自分の為になるからさ。ま、当たり前のことだけどね」

 

 それだけ言うと、お姉さんはガタッと席を立つ。そのままじっと俺の目を見つめ、最後に花のように笑った。

 

「また逢えるといいね」

 

 ヒラヒラと手を振りながら、お姉さんは店の外へと消えていった。……一体なんだったんだ、あの人は。急に甘味処を紹介させられたと思いきや、意味不明なことを口走って帰るって。団子は綺麗に平らげてる。

 

 そこで、俺はあることに気が付く。

 

「え……?あの人の分も俺が払うの……?」

 

 食うだけ食って言いたいこと言って、満足して帰ってきやがった。許すまじ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〇

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん……!」

 

 漣ハクリが深々と頭を下げると、雪のように真っ白な髪が揺れた。

 

「えーと……?」

 

 ヒナオさんの店に戻った直後、俺の顔を見るやいなや漣ハクリが俺の元へ突っ込んできた。そのまま今の目の前の状況のように、地面に着くぐらいの位置まで頭を下げているハクリ。凄い……おでこがつま先に着きそうだ。

 

 困惑した顔でチヒロを見ると、相変わらずの無表情で事情を話してくれた。

 

「見て見ぬふりをしていたんだ……。おかしいと思ってたけど、変えたいと思ってたけど俺には力が無い。そんな時にヘマして家から逃げ出して、チヒロに会ってその強さにビビった。こいつがいたら楽座市は終わらせることが出来るかもって思った。虫がいい話だって自覚はある……!けど、なんにも悪いことしてない人が悲しい思いをするのは、絶対にいけないと思うから!」

 

 ……嘘は言ってない、と思う。こいつの言動からは必死さが見て取れたから。逆にこんな全力で嘘をつく奴なんていないと思う。

 

 漣ハクリ……イカれた祭典、楽座市を取り仕切る憎き一族の1人。本当なら許しちゃおけない存在だが、漣家全員がクズという訳でも無いかもしれない。もしかしたら、他にもハクリみたいに現行の体制に疑問を抱いている奴もいるかも……いや、よそう。そんなことを考えるのは。今はどちらかと言うと、チヒロが連れて来たこいつに対しての評価を改めた方がいいかもしれない。

 

「俺はハクリを信じる」

 

「そか」

 

 チヒロの言葉はいつも強い。自分の意志や指針が明確だからだ。だからチヒロは迷ったり間違えたりしない。そんなチヒロの瞳はいつも真っ直ぐだ。だったら俺はチヒロの意見を尊重できる。

 

「顔を上げてよ。俺の方こそごめん、いきなりドライブシュートなんかカマして」

 

「……ッ!!いいよ、あれくらい……!当然の報いだ……!」

 

「当然の報い……」

 

 リアルでそんなこと言う奴初めて見たけど、まぁそれはいいか。

 

 面と向かって改めて、ハクリと顔を合わせる。白髪に海のように綺麗な真っ青な瞳だった。こいつ、こんな綺麗な目をしていたんだな。漣家というフィルターがかかって、ちゃんとハクリの事を見れていなかったことを実感する。

 

「ミナト、ハクリは良い奴だ。前に神奈備とぶつかった時も、俺の事を身をていして守ってくれた」

 

「わーったよ、皆まで言うな!俺はチヒロを信じてるから、そんなお前が信じてるハクリを信じることにするよ」

 

 ……当然、漣家への恨みが消えたわけじゃない。それでも、いま目の前にいるハクリの事は信じようと、信じてみたいと思った。ただそれだけだ。

 

「準備出来たで」

 

「柴さん」

 

 3人で話していた所に、柴さんが「よっ」と手を挙げながら入って来た。

 

「ハクリ君のおかげで座標の特定が出来た。行くで、敵の本拠地。ハクリ君ちにな」

 

 その言葉に思わず拳が硬くなる。

 

 漣家への、姉さんへの道が少しづつ、確実に繋がってきている気がした。

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