ペンは剣よりも強し!   作:みかんフレーク

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カグラバチは本誌が偶にネーム掲載になるけど逆にレアだから好き


第17話 フレキシブル・シチュエーション

「出る時はひとこと言ってからにしんしゃい」

 

 刳雲による放電で雇われ妖術師達を一掃した後、柴さんが俺とMr.イナズマの元へ飛んで来た。

 

「ごめんなさい」

 

「はいちゃんと謝れて偉いね。──で?このまま突っ込みたいんやろ?」

 

 柴さんの言葉にコクリと頷く。

 流石は柴さん、俺のことをよくわかってくれている。

 正直、いきなり地下に行くよりも楽座市に関与している人の数を少しでも減らしておきたかった。

 どちらにせよ、全員始末しないといけないのだから。

 

「思ったよりも数が多い。俺は予定通り表から行きます。ミナトと一緒に」

 

「チヒロくん……でもな……」

 

 気付けばそこに居たチヒロ。

 こちらから何も言わずとも、俺の意志を汲み取ってくれる。

 

「大丈夫だよ柴さん。俺達2人なら、中にいるヤツらなんてどうってことない。処理するのが後になるか先になるかだけなら、今のうちにやっておきたい。すぐに地下に向かうから」

 

「……そうかい。なら何も言わへんわ……」

 

 半ば無理やり……と言ったところか。

 柴さんも何だかんだで俺達に甘い……。

 地下に向かうメンバーから俺が外れることになるけど、柴さんがいるなら大丈夫。

 

「Mr.イナズマ……」

 

 眼下の少年に声をかける。

 ゆっくりと顔が上がり、目と目を合わせる。

 

「顔が強ばってるぞ、大事な姉ちゃんが帰ってきた時にも同じ顔をするつもりか?」

 

 小さな男の子の表情を指摘。

 無理もない、まだこんなに幼いのに怖い思いをしたんだから。

 それに見せたくない光景まで……。

 

 でも、だからこそ……──。

 

「君の姉ちゃんは俺が助ける。絶対だ。だから君は、姉ちゃんをとびっきりの笑顔で迎えてあげるんだ。雷を落とされたくなきゃね」

 

「うん……!」

 

「よし。ほら約束、指切りしよう」

 

 Mr.イナズマと小指を固く結ぶ。

 この子の意志と頑張りは俺が繋ぐ。

 ここから体を張るのは俺でいい。

 

「柴さん、この子を車の中に」

 

「分かっとるよ。……2人とも気ぃつけるんやで」

 

 柴さんの言葉にチヒロと頷く。

 それを確認したら柴さんは、Mr.イナズマと一緒にその場から一瞬で消えた。

 会場の入口にヒナオさんやシャルが車の中で待機している。

 そこまで飛んで行ったのだ。

 ひとまずは安心。

 

「さて……と」

 

 ふぅと息をつく。

 入口付近の敵は掃討出来た。

 けど、まだ中には雇われ妖術師やヤクザが大勢いるハズ。

 賞金首をかけられた俺を狙って、どんどん湧いて出てくるのは想像に容易い。

 

「どうだ刳雲は?」

 

 隣に居るチヒロの問いに、刳雲の刀身を見つめながら答える。

 

「……チヒロが狡いと思ったよ」

 

「狡い?」

 

 チヒロが首を傾げた。

 

「やっぱり妖刀は特別なんだなって。こいつを使ってると、今までの数倍チカラを発揮出来るような気がする」

 

「そうなのか」

 

 平然と答えるチヒロ……。

 そうか、チヒロは淵天をずっと使ってきてるから比較対象が無いんだ。

 だから、通常の刀と妖刀の違いをあまり理解していないんだ。

 

「うん……。でもそれと同じくらい怖いなって思う。ちょっとでも気を抜けば、妖刀に身体を持っていかれそうな感覚もあるんだ」

 

 言いながら刳雲の柄をギュッと握る。

 妖刀……チヒロの父親が造り上げた唯一無二の刀。

 その業物には、"椿姫"などの刀とは違った何かが備わっているのかもしれない。

 

 妖刀を、刳雲を深く理解しようとすればするほど、繋がる感覚は強まっていく。

 だけど、少しでも気を緩めると刳雲に乗っ取られるような、そんな恐怖感も僅かに感じている。

 

「あくまで手綱を握っているのは俺なんだって、そこだけは間違えないようにしないといけない」

 

 自分の意志はしっかり持っておかないと。

 刳雲(コイツ)を活かすも、殺されるのも俺次第だ。

 

「──ミナト、増援が来てる」

 

 チヒロの言葉に顔を前に向けると、刀を持った荒くれ達が物凄い形相で走り込んで来ていた。

 いったい何人いるのか……数の多さに辟易しながらそれだけ楽座市が大きなイベントなのだと再認識。

 楽座市に出品される商品目当てのクズ共、その中に姉さんを狙っている奴も居ると思うと……。

 

 虫唾が走る──。

 

 刳雲を構えて玄力を解放させる。

 バチバチと稲妻が全身を駆け巡り、体から重さを感じなくなる。

 これが刳雲の真骨頂──全身の筋肉と細胞の活性化による身体能力上昇。

 併せて、人の体を操る電気信号に成り代わり、自身から放出する電流で体を動かすことによる契約者の性能(スペック)の底上げ。

 

 実感して分かる、妖刀の力のおぞましさを。

 手に取ってから思う、よく双城を倒せたなと。

 

 妖刀への理解、今なら双城の言うこともよく分かる。

 拡げるんだ、妖刀への解釈を。

 

 それが俺の力になるのだから。

 

「"(めい)"」

 

 極限まで高めた身体能力を駆使して、稲光の如く敵陣へ一気に攻め入る。

 1人、また1人と続け様に斬り伏せていく度に宙に鮮血が舞う。

 

 戦場ではよく血の雨が降ると言われるが、それはまさにこの事だ。

 俺にとっての敵を1人ずつ順番に、その命を確実に奪う。

 刳雲による身体能力の活性化のおかげか、敵が全員止まって見えた。

 

「……えげつないな」

 

 そんなチヒロの呟きも彼方に、ひたすらに地を蹴り腕を振るう。

 

 敵の頭数を半分程だろうか……減らせたなと思っていた時──。

 

「……何か来る!」

 

 ふと、そんな予感が頭をよぎった。

 強化された五感が遠くの音や匂いを感じ取ったのか、確実にこちらに向かって近づいてくる何かに肌がピリつく。

 

 鈍い爆発音と熱波が轟く。

 流石にその方向へ顔を向けると、炎熱で吹き飛ばされてくる妖術師が何人かいた。

 

「よぉ、初めましてだよな?」

 

「……アンタは」

 

 爆炎の中から現れたのは1人の人物。

 黒服を纏ったその人は、右腕に骨のような物を携え俺の前に降り立つ。

 

 肩より少し下あたりまで伸ばされた真っ黒な髪、両耳に付けられた赤い耳飾りが特徴的な女性(?)は、俺の頭のてっぺんからつま先までをジロジロと見てきた。

 

「ミナト、そいつは!」

 

「んだよ、やっぱ"淵天"も居るのか」

 

 ……なんだ?

 2人は知り合いなのか?

 今の口ぶり的にはそう判断出来るけど、いつどこで会ったんだろうか。

 

「……刳雲。道理で見つからねぇ訳だ……。まさかこんな学生風情がその刀ァ握ってたとはな……」

 

 吐き捨てるようにその女性は言う。

 

「前にそっちのガキにも言ったんだけどな、妖刀はお前らみたいなちんちくりんが自由に振り回していいもんじゃない。水が出る雷が打てる楽しい玩具じゃねーんだ。ウチら神奈備のモンなんだよ」

 

「だから?」

 

 そう返すと、神奈備の女性に青筋が立つのが見えた。

 

「大人しく寄越せってコトだよ!!」

 

 瞬間、爆炎が辺りを包み込む。

 熱波が顔に襲いかかってきて、思わず顔を顰める。

 なんて熱量だ……これが前にチヒロの言っていた"神奈備"の面倒臭いやつ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神奈備に1人、妖刀相当の戦力がある」

 

 前にチヒロとハクリの3人で鍋をした日に時は遡る。

 皆で映画を見ていた時、ふとチヒロがそう呟いた。

 

「妖刀相当……?めちゃ強いってこと?」

 

「ああ!俺が殴られたやつ!」

 

 ポン!とハクリが手のひらを握り拳で叩く。

 殴られたやつ……?俺の知らぬ間にそんな野蛮なことがあったの……?

 

「そうだ。少し前に淵天を狙って来て襲われた。神奈備も妖刀を集めてるらしいからな、恐らく楽座市で鉢合わせる」

 

 神奈備……それもそうか。

 真打が出品されるのであれば、神奈備もそいつを狙いに会場にやってくる。

 それにこっちには淵天と刳雲もあるんだ、激突は必至か。

 

「腕から骨のような物が生えてきて、それが燃えてるんだ。かなり熱いからあんまり相手にしたくない。もし会ったら気を付けろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──確かにこの熱は厄介だ。

 目も開けていられないほどの高温なうえ、視界も歪む。

 

 そして何より──。

 

「ぶっ潰れろォ!!!」

 

 息する間もなく浴びせられる連続攻撃。

 右腕に備え付けられた骨を振り回し、炎熱と併せて猛威を奮ってくる。

 近距離パワー型、見たところ女の人なんだろうけど、なかなか出会わないタイプ。

 

「オラァ!!!」

 

 そして何より顔が怖い──!

 

 叩きつけられる骨を回避し、玄力操作に意識を向ける。

 相手は炎、それなら刳雲のこの能力がうってつけだ。

 

(こう)

 

 そう唱えると、刳雲から勢いよく水が放出される。

 刳雲の2つ目の能力、水を放出して操ることが出来る。

 相手が炎使いなら、それを打ち消せる水が相性的には抜群に良い。

 

「しゃらくせェ!!」

 

 ──と、思ってたんだけどな。

 

 放った水流は、炎骨の熱で簡単に蒸発させられてしまった。

 気体となった水が頬に触れる。

 それもそうか……これほどの高温……水なんてすぐに水蒸気になってしまう。

 

「みずタイプだからいけると思ったか!?あめーんだよガキ!!ポ〇モンじゃねーんだから!!」

 

「みずタイプだけじゃないよ」

 

「言ってもこおりタイプだろ、ウチに有利だ。でんきは等倍だしな!」

 

「タイプ相性を熟知していらっしゃる……」

 

 刳雲の使用できる能力のうち2つは、炎に対して有効打が無い。

 それなら俺の打てる手としてはただ1つ……。

 

「──おっと、放電の溜めは時間がかかるんだろ?やらせねーよ」

 

 俺の考えに気付いたのか、神奈備の女性は一気に距離を詰めて炎骨を差し向けてくる。

 流石は神奈備、妖刀の事はだいぶ知られてるな。

 

「ウチを越えられると思うなよ?」

 

「超えるさ……意地でも……」

 

 ここでコイツに時間を使っている余裕は無い。

 切羽詰まってるのはこちら側なんだ。

 最短最速で物事を行っていかなければ。

 

 炎骨の熱は脅威。

 あの爆炎でこっちの取れる選択がかなり制限される。

 刳雲に刻まれた3種の可能性。

 1つ1つでは炎骨に及ばない。

 

 それなら──。

 

(ゆい)

 

 刳雲の力で氷の棘を顕現させ、神奈備の女性に撃ち放つ。

 氷柱(つらら)の弾丸が無数に射出されるのを見て、舌打ちの音が聞こえる。

 

「氷も水だろうが」

 

 俺の攻撃にウンザリしたのか、邪魔者を払うように炎骨を振るい飛ばした氷を簡単に溶かしてみせる。

 炎骨の熱で溶かされた氷が、水となり神奈備の女性にかかったのが見えた。

 

「ちょっとは頭が冷えた?」

 

「舐めてんのか」

 

「いいや本気さ。──"降"」

 

 再び発動させたのは水の御業。

 先程とは比べ物にならない量の水を発現させ、波のようにして神奈備に放つ。

 

 刳雲から放つことの出来る水、氷、雷は量や質の調整が可能だ。

 扱う玄力量や性質を少し弄ってあげることで、ある程度のコントロールが出来る。

 

 いま発動させた降は、玄力を大量に使った大放水。

 人なんて簡単に流せてしまう程の水流を神奈備に喰らわせる。

 

 波が神奈備の体を押し流していくのを見て、俺は地を蹴り宙へ舞う。

 

「室内プールじゃねぇんだぞ。こんなの……!」

 

 豪炎が生み出され、放出した水流が蒸発される。

 宙を舞い神奈備の頭上へやって来た俺は、刀を構えて口を開く。

 

「結」

 

「バカの一つ覚えか……!──ッ!?」

 

 その異常性に目を見開く神奈備。

 それもそのはず、いま彼女の目の前には特大の氷塊が降り注いでいるのだから。

 

 (めい)溜め(チャージ)の時間を作ることで、より強力な電撃を創り出すことが出来る。

 それと同じ要領だ。

 (ゆい)で顕現させた氷塊は、さっきの(こう)で神奈備の足を止めた時に溜めておいたものだ。

 

 氷柱を飛ばしたり床を凍らせるのが、双城も使っていた基本的な技。

 妖刀の能力(チカラ)は変幻自在、契約者の解釈次第で如何様にも成る。

 

「──クソ喰らえッ!!!」

 

 神奈備の怒号が響く。

 同時に爆音が轟き、今までとは比にならない出力の炎が射出された。

 "炎骨"の火力で一気に氷塊を溶融させる気だろう。

 そうだよな、自分が炎熱を使えるのなら氷が飛んで来たらまずそう判断する。

 けど、今度のはちょっと重いぞ。

 

 押し上げられた"炎骨"の大火力で、放った氷塊は水に変化する。

 大規模な氷塊を水分に変化させたんだ、辺りは既に水浸し。

 

 ──この環境形成が俺の狙いだ。

 

「"鳴"」

 

 玄力を雷に変換。

 本来であれば多少の溜めが必要なこの技も、ひと工夫することで煩わしい間を失くすことが出来る。

 それに、この神奈備の妖術師は実力者だ。

 バカ正直に雷を飛ばしても避けられてしまう。

 それなら、"鳴"を撃つ対象は……。

 

 刀の切っ先を神奈備の妖術師から、その立っている地面へと変える。

 放つ雷、濡れた地面、そこに足を付けている神奈備もびしょ濡れ。

 条件が揃っていれば、"鳴"を直接相手に叩き込む必要は無い。

 

「〜〜~っ!!!」

 

 放った雷は、地面を経由して間接的に神奈備の体の中を駆け巡る。

 回避不能の必中攻撃──1つ1つの能力も凄まじいが、組み合わせることでその脅威が何倍にもなる。

 "鳴"と"降"を組み合わせることで、敵に雷による麻痺を強制させることが出来るんだ。

 

「こんな静電気……!」

 

「ビリビリ痺れるでしょ、俺もそうだった」

 

 今なら体の痺れで身動きが取れないハズ──千載一遇の好機(チャンス)!!

 

「"凛"」

 

 慣れ親しんだ構えにシームレスに移行。

 "椿姫"では無いし"刳雲"は少し折れてるけど関係無い。

 

 やることは同じ、刀との()()()──。

 

 溜めた玄力を、放つ──。

 

 "鳴"のバフも上乗せした超速で神奈備に肉薄し、刀を振り抜く。

 "刳雲"の刀身が胴体を捉えかけたその時……。

 

 ──神奈備の体がその場から消えた。

 

 そして代わるように現れたのが、全く別の新たな刀。

 

 こっちの刀も既に振り切る動作に入っている。

 神奈備を斬らんとした攻撃。

 俺の一撃は、割り込んできた誰かの刀とぶつかり金属音が甲走る。

 

 

 

 

 とんでもなく硬い何かを斬ったのかと思った。

 "凛"の一撃を真正面から受け止められ、その衝撃が刀を通して俺の腕と全身にビリビリとした電流となって拡がる。

 

「綺麗な太刀筋だ、良い学びを享受しているな学徒くん」

 

「腕が痺れる……もしかしてアンタもでんきタイプ?」

 

 刀を振り切ってとりあえずバックステップ。

 また変なのが出てきた……いったい誰だこの男は……。

 鼻に眼鏡のパッドだけが付いてる……どういうお洒落だそれは……。

 

「事のあらましはだいたい把握している。ミナト……だな?」

 

「俺のことを知ってる……?どっかで会ったことあるっけ?」

 

「裏社会で貴様の知名度は高い方だ。それだけ人を斬ってきた証さ」

 

 ……そういうことか。

 俺やチヒロは裏社会の人間たちと何度もやり合っている。

 極めつけは双城を落としたことだろう……あいつも裏社会ではかなりの大物だと柴さんが言っていた。

 名前が知れ渡っていてもおかしくないか……。

 ──っていうか、いつの間にかチヒロがいなくなってる……。

 "炎骨"の人もパッと雲隠れしたし、一体どうなってるんだ……?

 

「剣士として是非手合わせを願いたい──が、その前に……」

 

「ん……?」

 

 鼻パッドの男がゴソゴソと懐を漁り始める。

 中から財布のような物を取り出し、ジャラジャラと小銭を出し始めた。

 

「返す!」

 

「はい?」

 

 元気よく出てきたお金に面食らう。

 え……なにこれ何のお金……?

 俺この人にお金貸してたっけ……?

 初対面のハズなんだけどな……。

 

「身に覚えが無いか?」

 

「いや無いけど……俺アンタにお金なんて貸してない……」

 

「俺じゃない、右嵐(うらん)からだ。代わりに返しといてって」

 

「もっと知らん人出てきた」

 

 うらん……?誰それ……?

 俺の友達リストの中にそんな名前は存在しなかった気が……。

 

「うん?人違いだったか、失敬失敬。楽座市で学ラン着た男の子を見かけたらと言われていたんだがな……」

 

「う〜ん、別人じゃないかなぁ……」

 

 そうか、と鼻パッドがボヤく。

 

「……」

 

「……」

 

 訪れる静寂……。

 なんだろう、どこか気まずいこの状況。

 さっきまでの殺伐とした空気が嘘みたいに消えている。

 鼻パッドもどこか居心地の悪そうな表情をしている。

 

「あの、俺急いでるから先行ってもいい?」

 

「えっ!?あ、いや、手合わせ!手合わせを所望する!」

 

「手合わせ……なんかそんなこと言ってたね……。でもゴメン、構ってる暇が無いんだ本当に」

 

 ただでさえ炎骨の人に時間を取られたんだ。

 ここから更にこの人の相手をして、時間を割かれる訳にはいかない。

 一刻も早く姉さんを救出しないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は"毘灼"の一員だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドクンと心臓が跳ねる。

 示されたその右手には毘灼のメンバーである証、2つの三日月で形成された紋章が刻まれていた。

 

 毘灼……チヒロの父親を殺害した妖術師組織。

 チヒロと俺でずっと追っている奴ら。

 その一員が目の前に……。

 

 チヒロの悲しみの原因が、今そこに在る──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玄力を一気に練り上げると、応えるように体から電気が発生する。

 バチバチと放電しながら、全身を雷が走り始めた。

 

()る気になったか……」

 

 鼻パッドの毘灼が刀を抜く。

 その構え、立ち姿から只者じゃないことを悟る。

 "凛"を正面から捉えてきたんだ、あの速度を追える目も持ち合わせている。

 

 姉さんは大切だ、本当なら目の前の毘灼を放っておいて先に進む選択も有る。

 だけど、姉さんと同じくらいチヒロも大事なんだ俺にとっては。

 チヒロの目的を達成させる為のキッカケに、目の前のこいつはなるかもしれないんだ。

 

『チヒロ、たった1人で復讐の道を進む必要は無いんだ。心配しないで、俺も一緒に隣を歩くから』

 

 そう誓ったあの日から、意志はブレていない。

 毘灼から情報を得る、姉さんも救う。

 どっちもやるんだ、俺になら出来る。

 やらなくちゃ。

 

「いいぞ、いい感じに"斬欲"が高まってきた……」

 

「意味不明な言葉使うの、やめてもらっていいですか?」

 

 時間は掛けられない、速攻で終わらせる。

 刳雲と俺ならやれる。

 理解を深めるんだ、刳雲の潜在能力を全て引き出せ。

 

 天災の力をモノにしろ──。

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