ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第3話 ミナトとクチート! 雪の日の出会い・3

 それからまた、数日が経った。ミナトはショップでポフィンを買い込むと、下校道を歩いていた。

 

「雪でも降ってきそうな天気だなぁ」

 

 ミナトは空を見上げて言った。

 やがて、いつもの教会の前にたどり着くと、周囲がにわかに騒がしかった。

 

「行け! ヒトカゲ! かえんほうしゃだ!」

 

 ヒトカゲが炎を吐く。

 

「ク……クチィッ……!」

 

 その先にあったのは、クチートの姿だった。

 

「フシギダネ、つるのむちよ!」

 

 フシギダネがクチートに向かってつるのむちを打ち付ける。

 

「クッ……!」

 

 クチートの身体は地面へと投げ出された。

 

「クチートっ!」

 

 ミナトは走り出していた。

 

「やめろ! 三対一なんて卑怯じゃないか!」

 

 クチートを襲っていたトレーナーは三人、それぞれにヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネを従えていた。

 

「なんだなんだ? 俺たちの邪魔をしに来たのか?」

 

 リーダー格と思しきヒトカゲのトレーナーは言った。

 

「なんだって……みんなで寄ってたかって一匹のポケモンをいじめることないじゃないか……!」

「ねぇ、初歩的なこと、言わせないでよ」

 

 フシギダネのトレーナーの少女が肩をすくめる。

 

「ポケモンをゲットするにはまず、バトルで弱らせてからでしょ? だからこうして弱らせてるってわけ」

「ク……チ……」

 

 クチートは両手で地面を握りしめ、立ち上がろうとする。だが、身体に力が入らないようだ。

 

「衰弱してるんだ……。多分、僕が持ってきた食べ物以外はほとんど何も食べてないから……」

「行け! モンスターボール!」

 

 ゼニガメのトレーナーがモンスターボールを投げた。

 

「やめろ!」

 

 ミナトはクチートを庇うように立つとそのモンスターボールをはじき飛ばした。

 

「クチートはもう十分に弱ってるじゃないか! これ以上、何かしたら、僕が許さない……!」

「お前……」

 

 やがてヒトカゲのトレーナーが言った。

 

「お前、もしかしてミナトか? ほら、俺たちが旅に出る前、友達だった……」

「え……」

 

 ミナトは相手の三人の顔を改めて観察する。そういえば、すごく見覚えのある顔だった。

 

「お前……まだ、旅に出てなかったんだな」

「おいおい、聞いたぜ、こいつ……ポケモンのこと、好きじゃないんだってさ」

「ほんと、つまんない男よね」

「俺たちはこれからヤマブキジムに行くところだったんだ。ちょっとばかり、力試しにちょうどいい、ヒトカゲ! ミナトに向かってかえんほうしゃだ!」

「カゲ?」

「いいんだよ、こんなつまんない男。まだコイキングのほうが面白みがあるってんだ」

「カゲ!」

 

 ヒトカゲはトレーナーの言うことを聞いて口から炎を放った。

 

「わっ」

 

 ミナトは飛び退く。

 

「あっははは、面白ーい。次、あたしも行っていい? フシギダネ、つるのむちよ!」

「ダネ!」

 

 フシギダネのつるのむちがミナトを打ちのめした。ミナトは地面にうつ伏せになって倒れる。

 雪が、はらはらと降り始めた。

 

「へぇ、こいつは傑作だ。ポケモントレーナーでもないくせに、俺たちに意見しようとするから、そうなるんだよ。ゼニガメ、みずでっぽう!」

「ゼニ!」

 

 ゼニガメが口から水流を放ち、ミナトの身体を吹っ飛ばした。

 

「さぁ、そのポケモンと一緒に、ミナトにもトドメを刺してしまえ、ヒトカゲ!」

「カゲ!」

「駄……目だ!」

 

 ミナトはクチートを庇うように両腕を広げた。

 ヒトカゲの口内に火炎がうずまき始める。

 だがそこで、ボロボロだったクチートが動いていた。

 クチートは大顎を銀色に輝かせると、ヒトカゲに向かって打ち付けた。

 

「カゲーッ!」

 

 ヒトカゲは不意をつかれて後方に飛ばされる。

 

「わっ、ヒトカゲ!」

 

 ヒトカゲの身体はトレーナーの上に落ちてきて、トレーナーは地面に尻もちをついた。

 

「ク……チ……」

 

 クチートは三人のポケモントレーナーを睨みつけた。

 

「な、なんだよこいつ……さっきまで抵抗のひとつもしなかったのに、いきなり……」

「き、気味が悪いわね! こんなところで油を売ってる場合じゃないわ! 行きましょ、ヤマブキジムへ!」

 

 三人はポケモンたちを連れてその場から立ち去っていった。

 

「クチート。君は……」

 

 ミナトはクチートに声をかける。

 だがそこで、クチートはばったりと地面に倒れた。雪はだいぶ強まってきていた。

 

「クチートっ!」

 

 ミナトはクチートを助け起こす。クチートは全身が擦り傷だらけになっていた。

 

「熱い……」

 

 ミナトは言った。

 

「もしかして、熱が……」

 

 ミナトはクチートを抱き上げた。

 

「こ、こういう時、どうするんだったっけ、えーっと、えーっと。そっ、そうだ! ポケモンが怪我をした時や病気になった時は……ポケモンセンターに!」

 

 ミナトは雪の振る中、クチートを抱えて走り出した。

 雪の量は多くなる一方だった。もう既に、道の脇では降り積もり始めている。

 

「頑張れ……クチート。頼りないかもしれないけど……でも、僕は君を守りたい……から!」

 

 ミナトはクチートを安心させるようにそう言いながら走った。

 そしてポケモンセンターの前へとたどり着き、雪に足を滑らせて転んだ。咄嗟に左手を突き出してクチートを庇う。

 

「大丈夫か……? クチート」

「ク……チ……」

「ラッキ?」

 

 ポケモンセンターの前に出てきていた、センターのアシスタント用ポケモン、ラッキーがそんなふたりのことを見下ろしていた。

「ラッキー……! すぐに……ジョーイさんのところに……案内……して!」

 

 ミナトは再び立ち上がりながら言った。

 

「ラッキ!」

 

 ラッキーはミナトの前に立ち、ポケモンセンターへと先導する。

 受付にたどり着くと、雪と泥まみれになったミナトは、カウンターの上にクチートを置こうとして、膝から床に崩れ落ちた。

 

「ちょっと君、どうしたの? そのポケモン!」

 

 ジョーイさんがクチートを受け取り、カウンターの上に乗せる。

 

「クチ……」

「すごい熱……それに衰弱もしてる……。君、どうしてこんなんになるまで放っておいたの?」

 

 ジョーイさんは少し怒っているようだった。

 

「このポケモン……僕のじゃなくって……あのっ、助かりますか!? お金は……そのっ、いくらでも出します! 足りなかったら、バイトとかして……貯めますから!」

「君……」

 

 ジョーイさんは目を丸くした。

 

「そこまでする必要はないわ。だってうちは非営利でやってるんですもの」

 

 それからジョーイさんはクチートをストレッチャーに乗せた。

 

「ラッキ、ラッキ、ラッキ」

 

 ラッキーたちがクチートをポケモンセンターの奥へと運んでいく。

 

「あの……助けていただけますか?」

 

 ミナトは訊く。

 

「もちろんです。だってうちはポケモンセンターですから」

 

 それからミナトの格好を見て言う。

 

「それと、あなたも着替えて、擦り傷の手当てをした方がよさそうね」

「あ、えっと……そ、そうですね」

 

 ミナトは苦笑した。

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