「あなたは……」
ツキホは身構える。ロコンとコジョンドも相手を睨みつけた。
「僕の名前はK。ポケモンハンターKさ」
「ツキホちゃん!」
と、そこに傷だらけのストライクを背負ったジュンサーさんが現れた。
「どうして戦いになってるの!?」
「ジュンサー様! その……ごめんなさい、でも、このビードルに助けを求められて放っておけなかったの!」
「ミュ〜ン」
ビードルはツキホに身を寄せた。
「んん? ジュンサー……。なるほど、警察も動いてるのか。そうだ、ちょうど良かった。そこのふたりはやるよ」
「えぇ!?」
オニゴーリとヤジロンを倒されたふたりのポケモンハンターは驚いてそんな声を出した。
「そんな、K! 俺たちは協力関係に……」
「知らないねぇ、弱いやつは仲間じゃない。弱いポケモンもね」
「あんた……」
ツキホはビードルを抱えていない方の拳を握りしめた。
「言わせておけば……。だいたい何よ! 偉そうに言ってるけどポケモンハンターとしては三流じゃないの! 捕まえたポケモンたちを、こんなに傷つけて!」
ツキホはモルフォン、スピアー、バタフリー、パラセクトたち、そしてジュンサーさんに背負われたストライクに目を向けた。
「ミュ〜」
ビードルが鳴いた。
「くっ、くくく、あははははははっ」
Kは笑いだした。
「三流? この僕が? まさか。そのポケモンの傷、少し治療すれば素人でも治せるくらいの傷だというのが見て分からないかなぁ。僕はポケモンを無傷では狩らない。キズモノにならない程度に痛めつけ、そして人間に対する恐怖心をたっぷり植え付けてからクライアントに売りつける。それが僕のやり方なんだよ」
「どうして……そんな酷いことを」
「えぇー、それを訊いちゃうかなぁ」
Kはにやりと笑った。
「だって僕は、ポケモンたちが苦しむ顔を見るのが大好きなんだ」
「あんた……最低……よ」
ツキホはKを睨みつける。
「ポケモンハンター……K……。……って、もしかして!」
ジュンサーさんがハッと気がついたような顔をする。
「どうしたんですか? ジュンサーさん!」
「誰かに似た顔だと思ったけど……シンオウ地方で手配されていたポケモンハンターJ!」
「へぇ、姉さんを知ってるんだぁ」
Kは舌なめずりをした。
「ま、どうでもいいけどさ」
「あんたたち……姉弟揃ってこんなこと……してたわけ?」
「さて、どうだろうねぇ。僕は姉さんのこと、超えるべき踏み台としか考えてないから……。というか姉さん、今はもう生きてるんだか死んでるんだか……」
ツキホはロコンとコジョンドのモンスターボールを取り出した。
「戻って、ロコン! コジョンド!」
ツキホはロコンとコジョンドをモンスターボールに戻す。
「へぇ、もしかして、負けを認めちゃった感じ? 意外と骨がないんだねぇ」
「違うわよ」
ツキホは新たなモンスターボールを取り出した。
「あなたみたいな心の奥底から悪に染まりきったやつと戦うには……私のいちばんの相棒を使って本気にならなくちゃってこと。行け! シャワーズ!」
ツキホはモンスターボールを投げた。
「シャワッ!」
モンスターボールからシャワーズが出てきた。
「へぇ、シャワーズか。じゃ、僕も行かせてもらうよ」
そしてKはボールを取り出した。黒地に黄色いラインの入ったボールだった。
「それは……!」
ジュンサーさんは目を丸くする。
「ハイパーボール!」
ツキホが言った。
「多少費用がかさんでも、強いポケモンを確実に捕まえる。これが僕の主義でねぇ」
そしてKはハイパーボールを投げた。
「行けっ! マニューラっ!」
ハイパーボールからマニューラが飛び出してきた。
「マニュ〜ラ!」
マニューラは両手の爪を斜め後方に向けて構える。
「マニューラ、やれ! シャドークローだ!」
マニューラの両手の爪が漆黒の闇に包まれ、シャワーズに襲いかかった。
「シャワーズ! かわしてでんこうせっかよ!」
シャワーズはスピードを上げて走り出す、マニューラのシャドークローがシャワーズのすぐそばをかすめた。
「シャワーズ、それからかみつく!」
シャワーズは口を開いてマニューラに襲いかかった。
「マニューラ! あくのはどうだ!」
マニューラは口から黒と紫色の光線を発射した。
光線はシャワーズに命中し、シャワーズは後方に跳ね飛ばされながら、一回転をして着地をする。
「シャ……」
シャワーズはマニューラを睨みつけた。
「へぇ、大したことないな、君……。それでも正義の味方のつもりか?」
「そうよ! 悪い? 正義は必ず勝つのよ! シャワーズ、ハイドロポンプ!」
「シャワッ!」
シャワーズは口から水流を放った。
「ちっ、そういうのがいちばんムカつくんだよ。マニューラ、シャドーボールだ」
マニューラは両手を組み合わせて漆黒の球を生成した。
「ただし……シャワーズにではなく、あのガキに向かってだ」
「マニュッ!」
マニューラは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに頷くと空中に飛び上がった。マニューラが直前まで立っていた場所に、シャワーズの水流が命中する。
「マ〜ニュッ!」
マニューラはシャドーボールを放った。
「ツキホちゃん、危ないっ!」
ジュンサーさんが叫ぶ。
ツキホは目をつぶった。
「ミュッ!」
その時、ビードルが前へ飛び出していた。
「ビードル! そんな……!」
ビードルがあんなシャドーボールをくらったら、ひとたまりも……。
だが、一向に恐れていたような光景になる気配はなかった。気がつくと、シャドーボールは光に包まれていた。
「え……」
ツキホは空中に飛び出していったビードルの方に目を向ける。
ビードルは銀色の光に包まれていた。そしてみるみるうちに形を変えていく。
ビードルの身体は、コクーンへと変化していた。シャドーボールはコクーンの身体に受け止められ、消滅した。
「ビードル! 進化したのね!」
ツキホは言った。
「進化……だと?」
Kは舌打ちをする。
「あーあ、興醒めだな、そんな演出。マニューラ、戻れ」
Kはマニューラをハイパーボールに戻した。
「負けを認めるの?」
ツキホはコクーンを両手で抱えたながら言った。
「いや……ただ、面白くないんだよ。バトル中に進化されるってのはな。ジュンサー、そのふたりはやるよ。そんな弱いやつら、もう僕の仲間じゃない」
「待ちなさい!」
ジュンサーさんはKを追おうとする。だがKの傍にひとり乗りの小型ライドメカが飛んできて、Kはそれに乗った。そしてどこかへと飛び去っていく。
「ポケモンハンター……K……」
ツキホは呟いた。
そしてシャワーズをモンスターボールに戻す。
ポケモンハンターたちに捕まっていたむしポケモンたちも、森の中へと帰っていった。
「ストライク……!」
ストライクも傷ついた羽を動かしてジュンサーさんから離れる。
「コクーン、あなたも行くのよ、仲間のところへ」
ツキホは飛んでいくスピアーたちに向かってコクーンを掲げた。しかしコクーンはツキホの手をするりと抜けると、その胸元に飛び込んできた。
「どうやらそのコクーン、ツキホちゃんに懐いてるみたいよ」
ジュンサーさんが言った。
「ゲットしてみたら?」
「え?」
ツキホはジュンサーさんの顔を見てから、ふたたび、コクーンの方に目を向ける。
「そうなの。じゃ、よろしくね、コクーン」
ツキホはモンスターボールを投げた。コクーンはその中へと入った。
警察署へと戻ったツキホは、記念品のプレミアボールにジュンサーさんからサインを書いてもらっていた。
その傍にはシャワーズもいる。
「今日は大活躍だったわね、ポケモンハンターふたりを逮捕することができたわけだし……」
「でも……Kは逃しちゃいました」
「むしポケモンたちを助けることはできたし、大きな成果よ」
ジュンサーさんはサインを書き終わった。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
それからツキホはプレミアボールをシャワーズに向けた。
「これから、あなたの新しいお家はこのプレミアボールよ」
「シャワ」
シャワーズはプレミアボールに吸い込まれていった。
「さて、お疲れ様、ツキホちゃん」
ジュンサーさんは言った。
「私もこれから、ツキホちゃんのやってる『ポケモンサービス』にじゃんじゃんお世話になっちゃおうかな」
【次回予告】
ミナト「『ポケモンサービス』に飛び込んできた新たな依頼、それは潰れそうなメイド喫茶を立て直すことだった! ……って、どうして僕たちまでお店の手伝いをすることになってるんですか!? え、し……しかも、僕がメイドさんに!? わっ、やめてくださいっ! ひゃ、ひゃあぁっ! 次回『メイド喫茶でゲットだぜ!』をお楽しみに!」