ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第5話 メイド喫茶でゲットだぜ! ・4

「行け! マイスウィーティー、ロズレイド!」

 

 ルミエールはモンスターボールを投げた。そしてそこからロズレイドが飛び出してくる。

 

「バトルか……なら、クチート! 君に決めた!」

「クチッ!」

 

 メイド服に身を包んだクチートがミナトの前に進み出る。

 

「フン、クチートで来るか……まぁいい、くらえ……どくばり!」

 

 ロズレイドは両手の花から無数のどくばりを発射してきた。

 

「クチート! アイアンヘッドだ!」

「クチ!」

 

 クチートの大顎が銀色に光り輝いた。クチートはそれを振り上げ、どくばりを弾く。

 

「ロズレイド! はなふぶき!」

 

 ロズレイドは身体を回転させ、無数の花びらを舞わせた。花びらはクチートに襲いかかっていく。

 

「クチート、かわしてかみつく攻撃だ!」

 

 クチートは飛び上がってはなふぶきをかわすと、大顎を開いてロズレイドに襲いかかった。

 

「ロズレイド! タネマシンガン!」

 

 ロズレイドが両手から黄緑色に輝く光弾を無数に発射した。

 

「クチート! アイアンヘッドで弾き飛ばすんだ!」

「クチーッ!」

 

 クチートの大顎が銀色に光り輝いた。そしてタネマシンガンを弾き飛ばす。

 

「よし、そのままはかいこうせん!」

「クトーッ!」

 

 クチートは大顎を開き、そこからオレンジ色に光り輝く光線を発射した。

 

「なっ……!」

 

 ロズレイドに光線が命中し、その両目が渦巻き模様と化した。

 

「そ、そんな……僕のマイスウィーティーが戦闘不能に……」

 

 ルミエールは両膝から崩れ落ちた。そしてロズレイドをモンスターボールに戻す。

 

「これでわかってくれましたか? 『萌え』っていうのは、誰かに押し付けるものじゃないんです」

「誰かに……押し付けるものじゃ……ない?」

 

 ルミエールは顔を上げた。

 

「はい、萌えとは、それぞれが思う萌えを自分の心にしっかりとしまい込んでおくものなんです。自分の好きなもののために……誰かと誰かが争い、別の誰かが傷つくなんて……哀しいことですから」

 

 そしてミナトはにこりと笑う。

 

「萌え……だ」

 

 そんなミナトの顔を見てルミエールは言った。

 

「萌えだ! 君こそ、僕が長年追い求めていた萌えだよ! 男女の性別すら超越するその笑顔、そう! 君こそが萌えの神だ!」

 

 ルミエールはミナトの両手を握った。

 

「えっ、わっ、な、なんですか!」

「君……名前は!」

「ミナ……ト……です」

「ミナトくん! 僕の……僕の彼女になってくれませんか!」

「え、お断りします……」

 

 ミナトは断った。

 

「なぁぁぁぁぁぁぁっ! ミナトくん、これは運命なんだよ! 僕と君とは出会うべくして……!」

「クチ!」

 

 クチートが大顎でルミエールの頭に噛み付いた。そしてルミエールをメイド喫茶の外へと引きずっていく。

 

「ミナトくん……いい返事を期待している……よ」

 

 ルミエールはそう言って引きずられながら退場していった。

 五人のメイドたちがそれを見て拍手をした。

 

「ポケモンと人間が協力してメイド喫茶を守り抜く。それこそこのポケモンの街でのメイド喫茶の存在意義ではないでしょうか」

「私たちも……これからはポケモンと一緒に仕事をしましょう!」

 

 そして五人のメイドたちはそれぞれにモンスターボールを投げた。

 現れたのはエビワラー、サワムラー、ハリテヤマ、ゴウリキー、カイリキーの五体だった。

 

「んん? メイドさんたち、手持ちがすごくごっつい……」

 

 ツキホが目を丸くする。

 

「さぁみんな、メイド服に着替えさせるわよ!」

 

 メイドたちは自分たちの手持ちを更衣室に連れ込んだ。

 しばらくして、メイド服に身を包んだエビワラー、サワムラー、ハリテヤマ、ゴウリキー、カイリキーらが出てくる。

 

「店長さん!」

 

 メイドのひとりが言った。

 

「これからこのお店を……『ポケモンメイド喫茶』として生まれ変わらせようと思うんですけど、どうでしょうか」

「ポケモンメイド喫茶……」

 

 店長はその言葉を繰り返した。

 

「はい、人だけでも、ポケモンだけでも、私たちのメイド喫茶は完成できません。だから……ポケモンと人間が共に働く、そんなメイド喫茶こそが理想だと……私たちはこのポケモンたち、そしてミナトくんたちを見て気がついたんです」

「そうか……では……」

 

 と店長は腕を組んだ。

 

「今日この瞬間より、このメイド喫茶を『ポケモンメイド喫茶』としてリニューアルオープンすることとしよう」

 

 それから一時間ほど経った後、ミナト、クチート、ツキホ、サクヤの姿はメイド喫茶を出て、帰路についていた。ミナトとクチートは、メイド服姿ではなくなっている。

 

「はぁ……でもどうして僕がメイド服姿になんて……」

 

 ミナトは文句を言った。

 

「いいじゃないの。似合ってたんだからさ。それにお客さんからも好評だったわよ」

「だから良くないんだって! ナツメさんからは変な勘違いされちゃったみたいだし……」

「というか……ミナトって……ジムリーダーのナツメと知り合いだったのね」

「えぇ、まぁ、色々あって……」

「やめといた方がいいぜ」

 

 サクヤが言った。

 

「え?」

「あいつとあんまり親しくするのはな」

「どうして……」

「お前だって知ってるだろ? ヤマブキジムの色んな黒い噂は」

「でも……今のナツメさんは違います! それは僕が保証し……」

「何かあってからでは遅いのよ」

 

 ツキホも言った。

 

「ふたりとも……」

 

 ミナトは視線を落とす。

 

「でも、僕は……信じてますから。今のナツメさんは、昔とは違うって」

「ほんっと、お人好しよね……」

 

 ツキホはため息混じりに言った。

 

 *

 

 ヤマブキシティを見下ろせる丘の上に、ひとりの少年が立っていた。年齢は十歳ほど、黄緑色のシャツに濃い緑色のジャケットを羽織っている。そして黒髪に、黒縁の大きめな眼鏡という出で立ちだった。

 少年は右手にマップ搭載型の端末、ポケナビver.2.0を手にしていた。そしてその傍にはひとりのポケモンが佇んでいた。かんじょうポケモンのキルリアである。

 

「ポケナビによると……っと」

 

 少年は言う。

 

「次のジムがあるヤマブキシティはあの街で間違いないみたいだね」

「キルッ」

 

 キルリアは頷いた。

 

「それじゃあ行こっか、キルリア。カントー地方、六つめのバッジを手に入れるためにさ」

「キル」

 

 少年は丘を下り始めた。キルリアもそんな少年に続き、丘を下っていく。

 

「ヤマブキシティかぁ、どんな冒険が待ってるんだろうね」

 

 少年はキルリアにそう話しかけていた。




【次回予告】

ミナト「その日、僕が出会ったのはカントーリーグ制覇を目指して旅を続けるマサトとキルリアだった! ヤマブキジムでのジム戦に向かうふたりに付き合うことになった僕とクチートだけど……そんなマサトとキルリアを狙う怪しい影が迫っていて……。次回『マサトとキルリア! ポケナビ持って準備完了』をお楽しみに!」
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