ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第6話 マサトとキルリア! ポケナビ持って準備完了・1

 よく晴れた日だった。ミナトはヤマブキシティを見下ろすことのできる丘の上でレジャーシートを広げていた。レジャーシートの上に置かれたバスケットの中にはたくさんのサンドイッチが入っている。

 

「今日はポケモンサービスがお休みの日、休暇はたっぷり楽しまないとね!」

「クチ!」

 

 クチートもレジャーシートの上に座って言った。

 

「うん、それにしてもいい天気だ。みんな、食事にしよっか」

 

 ミナトはモンスターボールを三つ取り出した。

 そしてそれを宙に向かって投げる。

 

「みんな出てこい!」

 

 現れたのはパッチール、ニューラ、そしてブラッキーの三匹だった。

 

「ほら、みんなのご飯、あるよ」

 

 ミナトはクチートのものも含めた四人分の皿を草地の上に並べた。皿の上にはポケモンフーズが乗っている。

 

「平和だなぁ」

 

 ミナトはレジャーシートの上に大の字になって寝転ぶ。

 その時だった。

 

「パ〜ッ!」

 

 パッチールの悲痛な鳴き声が聞こえてくる。

 

「ど、どうしたの!?」

 

 ミナトは起き上がった。

 見るとパッチールは、ニューラによってポケモンフーズを取り上げられていた。

 

「あっ、ニューラ! だめじゃないか! 他人のご飯を奪っちゃ」

「ニュッ」

 

 ニューラはパッチールのポケモンフーズを口の中に流し込む。

 

「あーあーあー」

「パ〜ッチ!」

 

 パッチールは涙を流しながら駆け出した。

 

「あっ、パッチール!」

 

 ミナトは立ち上がって靴を履き、パッチールを追いかける。

 

「クチート、ブラッキー! ニューラが悪さをしないように見張ってて!」

「クチ!」

「ブラッ」

「パ〜ッ!」

 

 パッチールは泣きながら走っていた。だがそのふらつく足取りのせいでやがて石につまづき、斜面を転がっていく。

 

「パッチール!」

 

 ミナトは叫ぶと地面を蹴って跳躍した。そしてパッチールを抱きとめる。

 ミナトはパッチールを抱いたまま地面を転がっていく。

 

「わっ、止まれな……!」

 

 そしてハッとする。ふたりが転がっていく先は崖となっていた。

 

「わあぁっ!」

 

 ミナトとパッチールは空中へと投げ出された。

 しかし次の瞬間、ふたりの身体はふわりと宙に浮き上がった。

 

「えっ、僕たち……浮かんでる……? ねぇパッチール、僕たち、浮かんでるよ!」

「パ〜?」

 

 パッチールは周囲をキョロキョロと見回した。

 

「凄い! もしかして僕たち『そらをとぶ』を使えるようになったのかな!」

「パーッ!」

 

 パッチールの顔も明るくなった。

 ふたりはそのままふわふわと移動し、崖上の草地へと降ろされた。

 

「あれっ、僕たちの意思と関係なく、草地に降ろされちゃった」

 

 ミナトとパッチールは顔を見合せた。

 

「おーい!」

 

 そんなふたりの所へ駆けてくる人がいた。

 年齢は十歳ほど、おそらくポケモントレーナーになるための授業の旅へと出たばかりの少年だ。黒髪に、大きめの黒縁メガネをかけている。黄緑色のシャツの上から深緑色のジャケットを羽織っていた。

 

「大丈夫だった? 君たちがすごい勢いで斜面を転がっていって、崖下に飛び出していくのが見えたけど……」

「うん、大丈夫だったよ、僕たち、そらをとぶを……」

 

 言いかけて、ミナトは少年と共に駆けてくるポケモンに気がついた。かんじょうポケモンのキルリアだ。

 

「キルリアはエスパー、フェアリータイプだから……さっき、僕たちが空中に浮かんだのはサイコキネシスによるもの……か」

 

 ミナトは呟いた。

 

「残念、そらをとぶを覚えたわけじゃなかったんだね」

「良かったよ、僕のキルリアのサイコキネシスが間に合ってさ」

 

 少年は言った。

 

「うん、ありがとう」

 

 ミナトはにこりと笑った。

 

「君の名前は?」

「僕はトウカシティのマサトっていうんだ。今はカントーリーグ制覇を目指してジムめぐりをしている最中でね」

 

 マサトと名乗った少年も笑って答えた。

 

「じゃあ……次はヤマブキジムを?」

「うん、六個目のバッジだよ」

「そっか」

「君は?」

 

 パッチールを抱き上げて立ち上がったミナトに対し、マサトは尋ねる。

 

「あぁ、僕はミナト。ヤマブキシティで『ポケモンサービス』をやっていてね」

「ポケモンサービス?」

「ポケモンたちの力を借りて、依頼人の悩みを解決する……そんな便利屋さんだよ。今日はお休みだったから、ポケモンたちを連れてここにピクニックをしに来てたところなんだけど……」

 

 ミナトはレジャーシートの敷かれている場所を指さした。そこではクチートとブラッキーとニューラが待っていた。

 

「へぇ、そのピクニック、僕も参加していいかな」

 

 マサトは言った。

 

「うん、いいよ」

「よし、みんな出てこい!」

 

 マサトはモンスターボールを三つ投げた。

 出てきたのはリーフィア、デンリュウ、そしてハッサムの三体だった。

 

「へぇ、リーフィアにデンリュウにハッサム、それにキルリアかぁ」

 

 ミナトは四体のポケモンを見て言う。

 

「あれ、でもポケモントレーナーの修行の旅をしているのに……初心者用の三体は貰わなかったの? 確かトウカシティはホウエンだから……初心者用ポケモンはキモリとミズゴロウと……あとは……」

「アチャモ、だよ」

 

 マサトは答えた。

 

「そうそう、それそれ」

「僕は旅に出る前から……最初のポケモンはこのキルリア、ううん、僕が初めに出会った時はラルトスだったけど……とにかく、彼女にするって決めてたんだ。約束があったからね」

「約束?」

「そうだよ」

 

 マサトはレジャーシートに腰を下ろした。

 

「三年前……まだ僕がポケモンを持てる年齢になる前……トップコーディネーターを目指すお姉ちゃんや、その仲間たちと一緒に旅をしていたことがあってね。その時……病気になったラルトスを助けたことがあったんだ。ラルトスは元気になったんだけど……僕たちは約束してね『もし、僕がポケモントレーナーになったら、その時は君を迎えに行く』って。だから、僕は十歳になったあの日、真っ先にラルトスを迎えに行ったんだ」

「へぇ……じゃあ、そのラルトスが進化して、今はキルリアになっていて……えーっと、このキルリアはマサトの最初のポケモンってこと?」

「うん、そうなるね」

「僕も、最初のポケモンはクチートだけど」

「クチ!」

 

 クチートがミナトの傍にやってきて座った。

 

「キル……」

 

 キルリアがクチートのことをまじまじと観察する。

 

「クト?」

 

 クチートはキルリアを見つめ返した。

 

「そっちは……どんな事情があったの?」

 

 マサトは訊く。

 

「うーんとね」

 

 ミナトは言った。

 

「話せば長いけど……聞きたい?」

「うんうん、気になるよ」

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