ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第6話 マサトとキルリア! ポケナビ持って準備完了・4

 タクシーは走り去っていった。

 ミナトはクチートを地面に下ろす。そしてマサトと共にトラックの荷台扉に手をかけた。しかし扉は鍵が閉まっており、簡単に開けることはできない。

 

「ハッサム!」

 

 ハッサムが近くに飛んできた。

 

「ハッサム! バレットパンチ!」

「ハッサムッ!」

 

 ハッサムはマサトの指示に従い、右手のハサミを銀色に光らせると強力な一撃を打ち込んだ。しかし荷台扉は凹むだけで、破ることができない。

 

「すごく頑丈な扉だ……!」

 

 ミナトは言った。

 

「ちょっと……」

 

 とここでナツメが進み出る。ナツメは紫色のオーラを身にまとい、両目を白く発光させた。そして右手をトラックの扉にかざす。

 次の瞬間、トラックの鍵が外れた。

 

「凄い……! これがナツメさんの超能力!」

 

 ミナトは言う。

 

「ハッサムの攻撃で、トラックの精神波遮断装置が壊れてくれたおかげよ」

 

 ミナトとマサトはふたりでトラックの荷台を開けた。

 トラックの荷台の中では、ダミーのダンボール箱が散乱していた。そしてその奥に、鋼鉄の拘束具により捕らえられたキルリアの姿があった。

 

「キル……」

 

 キルリアはマサトの方を見て言う。

 

「今助けるからね、キルリア! 君がピンチになっても……僕は何度だって助けに来るから!」

 

 マサトはトラックの荷台に上がった。

 だがそこで、ふたりの人影が現れる。

 

「待ちたまえ!」

 

 ふたり組の男が言った。

 

「キルリアは我々のものだ!」

「なんなんですか! あなたたちは、他人のポケモンを……!」

「我々は……」

 

 とふたり組の男は言った。だがその真ん中に、しゅたっと新たな男が着地をする。

 その男はウェーブのかかった前髪をしていた。そして口には赤い薔薇を……。

 

「うげっ、あなたは……!」

 

 ミナトは思わず後ずさった。

 

「やぁ、また会っちゃったね。やはり僕と君は運命で結ばれているに違いない」

 

 ルミエール・ド・ローズはそう言った。

 

「結ばれてません! というか……こんなところで何をしているんですか」

「何って……それは僕が『サーナイト評論家』だからさ!」

 

 ルミエールは前髪をかきあげながら言った。

 

「サーナイト評論家……?」

 

 ナツメが聞き返す。

 

「いかにも!」

 

 ルミエールは左右の男を見てから言った。

 

「僕たちは『ポケモンだいすきクラブ』から分離独立した『サーナイトだいすきクラブ』のメンバーだ! しかし僕たちの中にはサーナイトもキルリアもラルトスも、それにエルレイドだってひとりもいない。だから偶然見つけたそのキルリアのトレーナーを道中、狙っていたというわけなのだ!」

「『狙っていたというわけなのだ!』じゃありませんよ! そんな身勝手な理由で他人のポケモンを……!」

「ミナトくん……」

 

 ルミエールは目を細めて言った。

 

「君は本当に可愛いよ。そうやって怒っている顔もね。でももっと可愛くなるには……女の子の格好をした方が……」

「それって、こんな感じかしら?」

 

 ナツメが指を弾いた。その瞬間、ミナトの衣服がメイド服へと変わる。

 

「えっ、わわっ、ナツメさん、なんてことしてくれてるんですか!?」

 

 ナツメはくすくすと笑った。

 その時だった。トラックの奥から、キルリアを担いでマサトが戻ってくる。

 

「な……お前、いつの間に!」

「キルリアは返してもらうよ」

 

 マサトはトラックの荷台から飛び降りた。

 

「卑怯な! 他人がミナトくんの女装を愛でている間に!」

「卑怯なのはそっちだよ! 女装が好きなのはミナトの勝手なのに! そんな他人の趣味をまるでおもちゃみたいに扱って……」

 

 マサトは言い返した。

 

「いや、別に、僕……これが趣味とかじゃ……」

「キルリア、サイコキネシス」

「キ……ルッ!」

 

 キルリアの両目が光り輝いた。

 トラックとルミエール、そして三人組の男は空中へと浮かび上がった。

 

「なっ、浮いてる浮いてる! 僕たち、浮いてるよ! あぁ……これがキルリアのサイコキネシスっ!」

 

 三人の男たちは手足をじたばたと動かした。

 

「それと、僕はね、三年前の旅で学んだことがあるんだ」

 

 マサトは新たなモンスターボールを取り出した。

 

「学んだ……こと?」

 

 ルミエールが訊く。

 

「それは……」

 

 マサトはモンスターボールを投げた。出てきたのはデンリュウだった。

 

「悪い人はいつも、10まんボルトで吹っ飛ばされるってことだよ! デンリュウ、10まんボルト!」

「パルゥ!」

 

 デンリュウは全身から電撃を放った。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ! しびれびれ〜!」

 

 ルミエールを含めた男三人組、及びトラックは空中へと飛んでいき、空の彼方へと姿を消した。

 

「うわぁ、よく飛んだねぇ」

 

 ミナトは小手をかざして、飛ばされていくルミエールたちを眺めた。

 

「キルリア、僕は何があっても君を守るよ……。初めて会ったあの時みたいにね」

 

 マサトはキルリアをぎゅっと抱きしめた。

 キルリアはマサトを抱き締め返す。

 

「うん、一件落着……。一件落着……だけどさ」

 

 ミナトは自分のメイド服を見下ろした。

 

「僕はいつまでこの格好で居なくちゃいけないんですか、ナツメさん」

「ミナトくんが満足するまで……ずっとそのままでいいわよ」

「だ、だから僕は別にっ!」

「もう、恥ずかしがらなくていいのに」

 

 ナツメは少し面白がっているような様子で言った。

 

「だからこういう時こそ、僕の心を読んでくださいって! 僕は別にこんな格好……」

「だーかーら、無闇矢鱈に他人の心を読むのは失礼にあたる行為でしょ」

 

 そう言いながらナツメは指を弾いた。ミナトの服装が本来の男物の服に戻る。

 

「はぁ……助かった……」

 

 ミナトは言った。

 

 それから数日後、まるで古代の神殿のような柱に囲まれたヤマブキジムのバトルフィールドで、ナツメとマサトは対峙していた。

 

「ヤマブキジムに挑むのに……しっかりとトレーニングは積んできたかしら?」

 

 ナツメは言った。

 

「うん、僕もキルリアも万全の状態だよ」

 

 

 マサトは答えた。マサトの傍に立つキルリアも頷いた。

「それはよかったわ」

「よかったのはいいんですけど……どうして僕はこの格好なんですか! ナツメさん!」

 

 バトルフィールドの脇から抗議したのは、両手に旗を持ったミナトだった。ミナトは青色を基調としたフリルのたくさん着いたドレスを着せられている。

 

「いいじゃないの。審判はポケモンバトルの花形のひとつよ」

 

 ナツメはくすくすと笑う。

 

「クチ!」

 

 ミナトの傍で、クチートも鳴いた。

 

「ナツメさん、もしかして僕をからかって楽しんでますね……」

「さぁ、どうかしら?」

 

 ナツメの瞳がいたずらっぽく輝く。

 

「まぁ、とにかく……ルール説明ですね。使用ポケモンは三体まで、交代は挑戦者のみ認められます。それでは……」

 

 ミナトは深呼吸した。

 

「バトルスタート!」

 

 マサトとナツメは頷きあった。

 そしてマサトは叫ぶ。

 

「キルリア! 君に決めた!」

「キルッ!」

 

 キルリアが飛び出す。

 

「頼んだわ! フーディン!」

 

 ナツメはモンスターボールを投げた。

 そこからフーディンが現れる。

 

「フーッ!」

 

 こうして、マサトとナツメのヤマブキジム戦が開始された。




【次回予告】

ミナト「ミヤビさんの『ポケモン学校』。そこは悪い人に使われていたポケモンたちを更生させる施設だった。ミヤビさんに言わせると『悪いポケモンはいない』そうで……。でも、そこに現れたのはポケモンハンターK! せっかく新しい道を歩み始めようとしているポケモンたちを、自分の戦力に戦力にしてしまおうなんて……絶対に許せない! 次回『ポケモン学校のミヤビ』をお楽しみに!」
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