ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第7話 ポケモン学校のミヤビ・1

「なーなー、エリキテル……」

 

 サクヤは、ポケモンサービスの事務所でエリキテルにポケモンフーズをあげながら言った。

 

「お前は……新しい持ち主、どんなやつがいいんだ? まぁそりゃ、ちゃんと育ててくれるやつを探すつもりではいるぜ? だが……あるだろ、性格とか、顔とか、年収とか……」

「エリキ?」

「そんな結婚相手を探すんじゃないんだから……」

 

 パソコンに向かって事務作業をしていたツキホが言う。

 

「イ〜ブイ!」

 

 イーブイ所長がサクヤの頭の上に乗ってきた。

 

「ん? 所長。『そんなことよりもフィーリングが大事だ』……って、そういうもんなんですか?」

「ブイ!」

 

 イーブイ所長は頷くと床に向かって飛び降りた。

 

「そーいや、ポケモンって、俺たちのこと、どう思ってるんだろうな」

 

 サクヤは言う。

 

「どう……って?」

 

 ツキホは聞き返した。

 

「ほら、俺たち人間はポケモンをモンスターボールでゲットするだろ? でも、どんなポケモンでもゲットできるわけじゃない。どんなにバトルで弱らせても、逃げる時は逃げる。それにポケモンが本気を出せば、俺たち人間なんて……」

「サクヤにしては、随分と難しい問いをしてくるのねー」

 

 ツキホは言った。

 その時、事務所の扉が開き、ミナトがクチートを抱えて帰ってきた。

 

「あっ、そうだ。今日はお客さんが来たよ!」

 

 ミナトに続いて部屋に入ってきたのは、茶色い髪をお下げにし、大きな丸メガネをかけた女の人だった。

 

「みっ、ミヤビさんっ!」

 

 サクヤが姿勢を正す。

 

「たまには……エリキテルが元気にしているのかどうか、顔を伺いに来ないといけませんからね」

「こ、この通り元気ですっ! 今日も俺が出したポケモンフーズをもりもり食べてくれて……」

「エリキ〜」

「わかりやすいやつ」

 

 ツキホはため息混じりに言った。

 

「良かったですね、エリキテルさん。優しい方たちにお世話をしてもらって」

 

 ミヤビはにこりと笑った。

 

「い、いえ、優しいだなんてとんでもな……」

 

 サクヤは照れながら言った。

 

「それで……今日はどうしたんですか?」

 

 ミナトはクチートを床に置くと、お茶を出しながら言った。

 ミヤビは応接室のソファに座る。

 ミナトとサクヤはその向かい側に腰を下ろした。

 クチートもミナトの隣に座る。

 

「私のポケモン保護局……は知っていますよね」

「えぇ、持ち主と訳あって別れてしまったポケモンや、捨てられてしまったポケモンたちの新しい持ち主を探したり、野生に返したりする活動をしている……」

 

 ミナトが説明する。

 

「えぇ、そうです。そして今回、テレビ局の取材を受けることになりました」

「へぇ、それはおめでとうございます! ミヤビさんの頑張りが認められたってことですね!」

 

 ミナトはにこりと笑って言った。

 

「はい、それはいいのですが……」

 

 とミヤビは視線を落とす。

 

「何か……問題点でも?」

 

 サクヤが訊く。

 するとミヤビは顔を赤らめた。

 

「私……カメラがその……っ、苦手で……緊張してしまうんです。世界中の……大勢の人から見られているって思うと……」

「そ、そうですかっ……」

 

 サクヤもミヤビにつられて顔を赤らめた。

 

「ですが……私たちの活動が世界中のみんなに知られるのはいい機会……だと思いますし……ですので……」

 

 ミヤビはサクヤとミナトの顔を交互に見た。

 

「テレビ局の取材を受けるのに……代役を頼みたいんですっ! こんなくだらない依頼で……申し訳ないんですけど……」

「く、くだらないだなんてとんでもないっ!」

 

 サクヤは言う。

 

「ミヤビさんのためなら……俺、なんだってやりますよ!」

「ありがとうございますっ」

「いえいえっ!」

 

 ミナトとクチートはそんなふたりの様子を見て顔を見合わせた。

 

「でも……代役としてサクヤがテレビに出演するとして……」

 

 とミナトは言う。

 

「やっぱり……ポケモン保護局のこと、もっと詳しく知らないといけませんよね」

「やっぱり……そうですよね」

 

 ミヤビは言った。

 

「あの……もし良ければ……改めて、ポケモン保護局を案内する……ということも考えているのですが……」

「改めて……ですか?」

 

 サクヤが言う。

 

「はい、改めて……です」

 

 ミヤビは頷く。

 

「『ぜひお願いしたいです!』……って、サクヤが言ってますよ」

 

 ミナトは言った。

 

「あっ、おい、ミナト……」

「えへへ……」

 

 ミナトは笑った。

 

「そうですか……じゃ、早速案内、しますね」

 

 ミヤビはにこりと笑った。

 

 ミヤビに連れられ、ミナトとクチート、そしてサクヤが向かったのはヤマブキシティの外れにある研究所のような建物だった。敷地内には広い運動場も備え付けられている。

 

「相変わらず広い敷地ですね……!」

 

 サクヤは芝生の中を進む一本道を歩きながら言った。

 

「はい、ポケモンたちの健康を考えて造られた運動場ですから」

 

 ミヤビは説明した。

 

「実は、持ち主の居なくなったポケモン……。捨てられてしまったポケモン……そういったポケモンの保護活動についてはもちろんなのですが、もうひとつ、世間の人たちに知ってもらいたい活動があって……」

「なんですか? それは」

 

 ミナトが訊く。

 

「その答えは……あの建物にあります」

 

 ミヤビは一棟の、赤い屋根の建物を指さした。

 

 ミナトたちはミヤビによってその建物の内部に案内された。内部には、檻に入れられたポケモンたちがたくさん収容されていた。どのポケモンも、皆こちらのことをあまり快く思っていなさそうな鋭い目付きで睨んでいる。

 

「クチ……」

 

 クチートは周りのポケモンたちのただならぬ敵意に少し萎縮したようで、ミナトの服の裾を掴んだ。

 

「ここは……?」

 

 とサクヤが訊く。

 

「ポケモン学校です」

「ポケモン学校?」

 

 ミナトが聞き返した。

 

「はい、ここにいるポケモンたちはみんな、悪人の手持ちとなり、その悪事に加担していたポケモンたちなんです」

 

 ミヤビは部屋の奥にある三つの檻の前で立ち止まった。その中には、それぞれ、バンギラス、オスのニューラ、そしてハッサムが収容されていた。

 

「私……ポケモンに悪い者はいないって信じています。ポケモンが為す悪事は、すべて人間のせいなんです。だからこの、ポケモン学校ではそんな悪人に使われていたポケモンたちを保護して……ポケモンたち本来のあるべき姿に戻すことを目的としているんです」

「ポケモンたち本来のあるべき姿?」

 

 ミナトは聞き返す。

 

「はい、人間たちと協力して……同じ目的を達成したり、あるいは……野生に帰って仲間たちと暮らしたり……」

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