ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第8話 戦えニューラ! 必殺のれいとうパンチ・1

「このように、ヤマブキシティのポケモン保護局では『ポケモン学校』という取り組みが行われていて……」

 

 テレビ画面の向こうで、サクヤが話していた。彼はポケモンハンターKの襲撃から復旧したポケモン保護局をレポーターと一緒に廻っていた。

 

「へぇ、サクヤ、カメラの前でも緊張しないで、すごいなぁ」

 

 ミナトはそんなテレビ画面を見ながら言った。ミナトとツキホはポケモンサービスの事務所にいた。

 ミナトはクチートにポフィンをあげた。

 

「クチ!」

 

 クチートはそれを美味しそうに食べる。

 

「エリキ……」

 

 エリキテルが羨ましそうにそのようすを眺めていた。

 

「あっ、エリキテルもポフィン、欲しかった? じゃあはい、今日はいっぱい作ったからね」

 

 ミナトはエリキテルにポフィンをあげた。

 

「エリキッ!」

 

 エリキテルは嬉しそうにポフィンをむしゃむしゃと食べる。

 

「あんた……いったいいくつポフィン、作ったの?」

 

 ツキホが言った。

 

「うーんとねぇ……」

 

 ミナトは給湯室に行き、確認する。

 

「ざっと……僕たちのポケモン、全員がまかなえるくらいの量は作ったかなー……」

「まったく、計画性がないんだから……」

 

 ツキホはため息をつく。

 

「いいわ、みんな、出てきなさい! おやつタイムよ!」

 

 ツキホはモンスターボールを三つと、ジュンサーさんのサイン入りプレミアボールをひとつ、投げた。シャワーズ、ロコン、コジョンド、そしてコクーンが出てくる。

 

「……って、コクーンは何も食べられないんだっけ……」

「よし、僕も! みんな出てこい!」

 

 ミナトもモンスターボールを三つ投げた。パッチール、ブラッキー、ニューラの三匹が出てくる。

 ミナトはポフィンの山が乗ったお皿を事務所の方へと運んできた。

 

「パーッ!」

「ブラッ!」

「イ〜ブイッ!」

 

 パッチールとブラッキー、イーブイ所長が先を争うようにしてポフィンにありつく。

 

「コンッ!」

「ジョンドッ!」

 

 ロコンとコジョンドも負けじとポフィンにありついた。

 それに少し遅れて、シャワーズは落ち着いた様子でポフィンを食べ始める。

 ミナトは、その場に立ち尽くしたまま、ポフィンの方に向かおうとしないニューラに気が付いた。

 

「どうしたの? ニューラ」

 

 ミナトが言う。

 

「いつもの君なら、真っ先にポフィンの方に向かうと思ったんだけど……」

「ニュ……」

 

 ニューラは視線を落とす。

 

「ニューラ?」

 

 ミナトはポフィンの山からポフィンを一個取り、ニューラに渡す。

 

「ニュ〜……」

 

 ニューラはそれを受け取り、ゆっくりと口に運んだ。そしてひと口かじる。

 ミナトは笑顔になった。

 

「うんうん、それでこそニューラだよ。遠慮しないでどんどん食べてね。あっ、でも取り合いはだめだよ。目を離すとすぐにパッチールのご飯を横取りしようとするんだからさ」

 

 だがニューラはそのひとつのポフィン以上のものを食べようとはせず、ただ、呆然と他のポケモンたちが食事する光景を眺めるだけだった。

 

「ニューラ……どうしちゃったの? 一体……」

 

 ミナトはニューラのモンスターボールを手に取った。

 

「今日、朝ごはんもいつもより食べてなかったように見えたけど……」

「ニュ……」

 

 ニューラはミナトから顔を背けた。

 

「しょうがないなぁ、モンスターボールで休む?」

 

 ニューラは頷いた。

 ミナトはニューラをモンスターボールに戻した。

 

「ニューラ、元気ないの?」

 

 ツキホが訊いてきた。

 

「うん……でも原因がわからなくってさ」

 

 ミナトは言った。

 

「それは……いつから?」

「いつからって……」

 

 ミナトは考え込む。

 

「そういえば、僕たちがポケモン学校から帰ってきてからだったかも。あの時、ニューラはマニューラと戦って……」

「クチ?」

 

 クチートが、ポフィンを食べながら、ミナトの顔を見上げた。

 

「戦って……どうしたの?」

「手も足も出てなかったかもしれない。もしかして、ニューラはそのことで悩んでるのかも」

「でも、どんなポケモンでもバトルで負けることくらい……」

「ニューラは違うんだ……」

 

 ミナトはニューラの入っているモンスターボールをじっと見つめた。

 

 *

 

 ニューラとミナトとの出会いは、ある雨の日だった。

 その日、ミナトはポケモンサービスの仕事を終えて、森の中を帰っているところだった。突然の雨のため、ミナトは傘を持っていなかった。クチートと共に、雨の中、早足でヤマブキシティに向かっていた。

 そこでふたりは、森の中の広い空き地へと出た。

 ふたりは一匹のニューラを見つけた。頭にある赤い飾りが短い。メスのニューラだ。

 

「ニューラ……?」

 

 ミナトはその姿を見つけて立ち止まった。ニューラはどこか寂しそうに見えた。

 

「クチ……?」

 

 クチートもニューラに気がつく。

 

「あのニューラ……こんな雨の中、何もしないで佇んで……。野生ってわけでもなさそうだな、風邪をひいちゃうよ!」

 

 ミナトはニューラの方に向かうと、自身のジャケットを脱いで、ニューラに被せた。

 

「ニュッ……!?」

 

 しかしニューラは鉤爪を使ってそのジャケットをズタズタに引き裂いた。

 

「あぁっ! 僕のジャケットが……!」

「ニュ〜ラ」

 

 ニューラは警戒したような目でこちらを見ていた。

 ミナトはニューラの身体を観察した。よく見ると、擦り傷だらけになっている。

 

「君……怪我をしているのかい? 早くモンスターボールで休むか……ポケモンセンターで治療しないと……」

 

 ミナトは周囲を見回す。

 

「ニュ……」

 

 ニューラはミナトとクチートを睨む。

 

「クチ! クチクチ〜ト!」

 

 クチートが一生懸命になってニューラに話しかけた。

 

「ニュ〜ラッ!」

 

 ニューラは鳴く。

 

「クチ……」

 

 クチートはミナトを見上げた。

 

「聞く耳持たずって感じか……困ったなぁ」

「ニュ……」

 

 その時だった。ミナトの携帯に電話が入る。

 

「あっ、もしもし! ミナトです!」

 

 ミナトは電話に出た。

 

「あぁ、ミナトね!」

 

 電話の相手はツキホだった。

 

「ちょうど今から頼みたいことがあったんだけど……依頼の方は終わったところよね」

「うん、今は帰り道だけど、雨に降られちゃってさぁ……」

「帰る途中にポケモンセンターがあったはずよ。そこでアシスタントのラッキーが熱を出しちゃって、急遽手伝ってくれる人がいないかって連絡が入ったの。向かってもらえる?」

「う、うん!」

 

 ミナトは電話を切った。

 それからミナトはニューラの方に目を向けた。

 

「ごめん……ニューラ。でも僕……行かないと!」

 

 そしてミナトは駆け出していた。

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