ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第8話 戦えニューラ! 必殺のれいとうパンチ・2

 ポケモンセンターのアシスタント業務は大忙しだった。三匹いるラッキーのうち、二匹が風邪をひいてしまったようでミナトとクチートは慣れない仕事ながらも、ジョーイさんの指示に従って、薬の用意をしたり、怪我をしたポケモンを治療室に運んだりと息を切らしながら業務に勤しんだ。

 ポケモンたちの治療がひと段落ついたところで、ジョーイさんがポケモンセンターのロビーに缶ジュースを二本、運んできてくれた。

 

「今年の風邪は悪性みたいですからねぇ」

 

 とジョーイさんは言った。

 

「風邪でポケモンセンターに運ばれてくるポケモンもたくさんいましたけど、まさかうちのラッキーたちまで感染してしまうなんて……」

「ジョーイさんも気をつけてくださいね」

 

 ミナトはジュースを受け取りながら言った。

 

「それと、ジュース、ありがとうございます」

 

 ミナトは二本のジュースのうち一本のプルタブを開けて、クチートに渡す。

 

「クチ〜」

 

 クチートは美味しそうにジュースを飲んだ。

 

 その時、ロビーでくつろいでいたポケモントレーナーたちの会話が聞こえてきた。

 

「で、俺はあのニューラを捨ててきたってわけよ。あいつのことだから……多分今でも雨の中、立ち尽くしてるんじゃないかな。弱いくせに負けず嫌いだったからさぁ」

「え……」

 

 ミナトは思わずジュースをカウンターに置いた。

 

「ニューラを……捨ててきたんですか……?」

 

 ミナトはそのトレーナーたちの会話に割り込んでいた。

 

「ん? そうだけどなんだ?」

「バトルに全然勝てないあいつが悪いんだって」

「でも、ニューラは雨の中ひとりぼっちで……。負けず嫌いって知ってて、それなのにどうしてあんな山の中に!」

「なんだよ、お前なんかには関係のない話だろ?」

「関係なくないよ! 僕は見たから! あのニューラが雨の中、たったひとりで佇んでいる姿を! バトルの傷も癒してもらえなくって、雨の中、風邪をひくかもしれないのに……」

「大変!」

 

 とここでジョーイさんが窓の外を見て言った。ピシャリと雷が鳴った。

 

「この大雨……あっちの山の方で、山崩れが起きるかもしれないわね……」

「あっちの山……って!」

 

 ミナトはハッとした。

 あのニューラがいた山だ。

 

「ジョーイさん、僕、行ってきます!」

 

 ミナトは思わず駆け出していた。

 

「クチ!?」

 

 クチートがジュースの缶から口を離し、ミナトを目で追った。

 そしてミナトがポケモンセンターから出ていくと、ジュースを置き、ミナトを追いかける。

 

 *

 

 森の中を走り抜け、あの場所へとたどり着くと、ニューラはまだ立っていた。

 

「ニューラ、君は捨てられたポケモン……だったんだね」

 

 ミナトは話しかける。

 

「クチ!」

 

 クチートもミナトに追いついた。

 

「ニュ〜……」

 

 ニューラはやはりこちらに心を開いていない様子だった。

 

「ここは危険なんだ。山崩れが起きるかもしれない。だから……僕と一緒に行こう!」

 

 ミナトはニューラに向かって手を差し出した。しかしニューラは警戒した目つきで後ずさる。

 雷が鳴った。そして、地面から轟くような音が聞こえ始める。

 

「こ、これは……!」

 

 見上げると、近くの山の木々が土砂によって押し倒されてくるところだった。土石流は木々を押し流しながらこちらへと向かってくる。

 

「ニューラ! 危ない!」

 

 ミナトは咄嗟に動いていた。そしてニューラを抱きしめると、前方に向かって跳躍した。クチートもそれに続く。直後、三人がさっきまで立っていた場所が土石流によって押し流されていった。

 

「よかった……助かって……」

 

 ミナトは言った。

 

「ニュ……」

 

 ニューラはミナトの顔を見上げた。

 

「やっぱり、ずっとここにいるのは危ないよ。僕と一緒に……ポケモンセンターに来ない?」

 

 ニューラは何も答えなかった。

 ミナトはニューラを抱えて立ち上がった。

 

 *

 

「それで……ニューラはミナトのポケモンになったの?」

 

 ミナトが話し終えると、ツキホは訊いた。

 

「ううん、そんな簡単な話じゃないよ」

 

 ミナトはニューラのモンスターボールをじっと見つめながら言った。

 

「あの後、僕はニューラをポケモンセンターに運んで、ジョーイさんに治療をしてもらった。ジョーイさんは僕に、ニューラをゲットするように言ってくれたけど……でも、そんな簡単にはいかないってこと、クチートはわかってたみたいで……」

 

 とミナトはポフィンを食べるクチートに目を向けた。

 

「バトルをしたんだ。クチートとニューラで。結果は引き分けだった。でもニューラはそれで、僕やクチートに本当の意味で心を開いてくれてね。ようやくゲットできたってわけ」

「ミナトらしいわね、心を開いてくれないポケモンに、根気よく接してからの友情ゲットなんて」

「そうかなぁ」

「クチ!」

 

 クチートがミナトの方へとやって来た。

 

「あっ、もうみんなポフィンを食べ終わったの?」

 

 ミナトはポケモンたちの方へと向かった。

 

 その夜、ミナトはポケモンサービスの事務所と隣接している宿舎のベッドで眠っていた。その傍では、クチートが同じ布団に入り、寝息をたてている。

 ベッドの反対側にあるデスクの上には、ミナトのモンスターボールたちが置かれていた。

 そんなモンスターボールのひとつから、銀色の光とともにニューラが出てくる。

 

「ニュ……ラ」

 

 ニューラはミナトが眠っているのをじっと確認すると、部屋の扉へと向かった。

 そしてそっと扉を開けて、部屋を出ていく。だが、扉を閉める時にバタンと音を立ててしまった。

 

「クチ……?」

 

 クチートが目を覚ました。

 そしてそっとベッドを抜け出し、部屋の扉へと向かう。

 クチートは扉を開けた。部屋の外にある通路に、歩き去っていくニューラの後ろ姿が見えた。

 

「チ〜トッ!」

 

 クチートは慌ててミナトの方に戻ってくると、彼をゆり起こそうとした。

 

「チ〜ト! チトォ!」

「ん? なんだよクチート……」

 

 ミナトは眠そうに言う。それから薄目を開けてビリリダマの形をした目覚まし時計を見て、ため息をつく。

 

「まだ夜中の一時じゃないか……」

「クチ〜ト! クトォ!」

 

 クチートはさらに激しく、ミナトを揺さぶった。

 

「どうしたのさ、僕はまだ眠って……」

 

 ミナトは枕を抱き寄せる。

 

「クチ……トォ!」

 

 クチートは大顎を開き、ミナトにかぶりついた。

 

「痛ぁぁぁぁぁっ!」

 

 ミナトは飛び起きる。

 

「どうしたの? クチート、こんな真夜中に……」

「クチ……!」

 

 クチートはミナトを先導するように歩き始める。

 そして部屋を出ていった。

 

「クチート……?」

 

 ミナトはクチートについて、パジャマ姿のまま外へと出た。

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