ポケモンサービスの業務日誌   作:まがみん

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第9話 ポケモン漂流記! バンギラスの島・1

 グレン島から一隻の船が出た。その船の甲板に、ミナトとクチート、サクヤとツキホ、そしてイーブイ所長の姿があった。

 

「今日もお仕事が終わって一件落着……だね」

 

 ミナトは伸びをしながら言った。

 

「まぁそうね。でも依頼内容、そんなに難しいものじゃなくってよかったわ。欲を言えばせっかく早く終わったんだから、グレンタウンの観光くらいさせてくれても良かったのに……」

「だーめだ」

 

 サクヤは言った。サクヤの腕にはイーブイ所長が抱えられている。

 

「ブイ」

 

 イーブイ所長も同意するように鳴いた。

 

「お前らの観光はせっかくものにした収益を全部使ってしまいかねないからな」

「ケチぃ……」

 

 ミナトは口を尖らせる。

 

「一応俺は、ポケモンサービスの会計係だからな」

 

 その時、イーブイ所長のお腹が鳴った。

 

「ブイ……」

 

 イーブイ所長は少し恥ずかしそうに鳴いた。

 

「あっ、所長、お腹がすきましたか?」

 

 サクヤが訊く。

 

「イ〜ブイ」

 

 所長は鳴く。

 

「そういえばご飯の時間よねぇ。よし、みんな、出てくるのよ!」

 

 ツキホがモンスターボール三つとプレミアボールひとつを投げた。シャワーズ、ロコン、コジョンド、そしてスピアーが出てくる。

 

「よし、僕も!」

 

 ミナトもモンスターボールを三つ取り出した。そしてそれを投げる。出てきたのはニューラ、パッチール、ブラッキーの三匹だった。

 

「俺もだ!」

 

 サクヤもモンスターボールをふたつ投げる。ジグザグマとサンダースが出てくる。

 ミナトはそれぞれのポケモンたちのためにお皿を用意すると、ポケモンフーズをそこに入れた。

 

「仲良く食べるんだよ。特にニューラは、パッチールのご飯をまた横取りしちゃだめだからね」

「ニュ……」

 

 ニューラは鳴いた。

 

 *

 

 ミナトたちが乗っているのと同じ船の貨物室を、ふたりの警備員が歩いていた。

 

「本当なのか? この船に、密猟者が捕まえたポケモンが載せられてるかもしれないっていうのは」

「グレンタウンのジュンサーさんが言ってたんだ。間違いないと思うぜ」

「しっかし、この荷物の量、片っ端から調べていくのか?」

「まぁ……地道にやっていくしかないだろうな」

 

 警備員はそう言って、いちばん近くの荷物にかかっていた幌をどけた。

 するとそこには、鋼鉄製のネットで拘束された、マルマインの群れの姿があった。

 

「ビンゴ……。一発目にして大当たりだ」

 

 警備員は言った。

 

「マルマインか。気をつけろ、迂闊に触ると……」

「え?」

 

 もうひとりの警備員はマルマインの身体に思い切り手を触れていた。

 

「マルゥ」

 

 マルマインが警備員のことをギロリと睨んだ。

 

「あ……」

 

 その瞬間、貨物室に閃光が走った。

 

 *

 

 ミナトたちのポケモンはポケモンフーズを食べていた。

 その時だった。どこかで爆発音が聞こえたかと思うと、甲板が引き裂かれ、そこから炎が吹き上がった。

 

「な、何事!?」

 

 ミナトは驚いて叫ぶ。だが爆発の連鎖は収まらず、甲板では次々と爆発が起こった。

 

「みんな、戻るのよ!」

 

 ツキホがモンスターボール三つとプレミアボールひとつを取り出して言った。ロコン、コジョンド、スピアーはモンスターボールに戻るが、シャワーズを戻す前にミナトたちの足元でも大爆発が起こった。

 ミナトは海面へと投げ出された。そして、海の底へとゆっくりと沈んでいく。だが途中でハッと我に返り、水をかいて水面へと向かう。水面近くにたどり着いたところで、ミナトに向かってニューラの右手が差し出された。ミナトは右手をぎゅっと掴んだ。

 ニューラは左腕をブラッキーによって口で掴まれ、必死にミナトを引き寄せていた。ブラッキーは海の上に浮かぶ、さっきまで甲板だった板切れの上に乗っていた。

 ミナトはニューラたちによって引き上げられた。

 板切れにはツキホ、サクヤ、そしてサンダースとイーブイ所長の姿もあった。

 船の方に目を向けると、船は沈みかけていた。何隻かの救命ボートが乗客たちを乗せて海の上に浮かんでいた。

 

「クチートは! パッチールは!?」

 

 ミナトは言う。

 

「わからないわ! シャワーズもジグザグマもいないのよ!」

 

 ツキホが言う。

 

「お、おい、あれを!」

 

 サクヤが流れの速い海流を見て言った。

 見ると、別の板切れに乗って、クチートとパッチール、それにシャワーズとジグザグマが流れていくところだった。

 

「クチーッ!」

 

 クチートは叫んでいた。

 

「くそっ、ジグザグマ!」

 

 サクヤはモンスターボールを取り出す。しかし何も起こらない。

 

「駄目だ、距離が遠すぎてモンスターボールに戻せない!」

「グレン海峡の流れじゃ、シャワーズでも泳ぎきれるかどうかわからないわ!」

 

 ツキホが言う。

 ポケモンたちを乗せた板切れはみるみるうちに、遠くへと流されていった。

 

「そんな……。みんな!」

 

 ミナトはクチートたちが乗っている板切れに向かって叫んだ。

 しかし板切れはみるみるうちにグレン海峡の激流に流されて見えなくなっていった。

 

 *

 

 一枚の板切れが海の上に突き出していた岩に叩きつけられた。そしてそこから、近くの砂浜に向かってポケモンたちが落下していった。

 クチート、パッチール、シャワーズ、ジグザグマの四匹だった。

 

「ク……チ……(いっ……たた……)」

 

 クチートは顔面をしこたま砂浜にぶつけ、顔を顰めながら立ち上がった。

 

「パーッ? (ここは?)」

 

 パッチールは起き上がると周囲をキョロキョロと見回した。

 

「ザグ、ザグザグ!(どうやらどこかの陸地に漂着したようですね)」

 

 ジグザグマは言う。

 

「シャワ……(島か? それともカントー本土なのか?)」

 

 シャワーズは周囲を見回す。

 

「ザグザグ(とりあえず、周囲を探索してみましょう。ここがどこなのかわかるかもしれません)」

「クチ? (いいの? ここを勝手に動いて)」

「ザグ? (と、言いますと?)」

「クチ……(だって……その……私たち……)」

 

 クチートは両手を合わせた。

 

「パーッ(迷子だからお迎えが来るのを待とうってことぉ?)」

「クチ! (ち、違うわよ! 私たちは別に迷子になったわけじゃなくって……迷子になったのはミナトたちの方でしょ? だから、ここであいつたちを待ってあげなくていいのかって話をしてるのよ!)」

「シャワ(確かに、それも一理あるな……)」

 

 シャワーズはジグザグマの方を見た。

 

「シャァァァズ(ジグザグマ、俺と一緒に周囲を探索しよう。それから、クチートとパッチールはここで待っているように)」

「パ〜ッ(了解だよぉ)」

「クチ……(なんでもいいけど、無事に戻ってきなさいよね)」

「パ〜ッチ(寂しいんだねぇ)」

「クチ! (そ、そんなことないわよ! どうして私が寂しがらなきゃいけないわけ?)」

「シャワ(行こうか、ジグザグマ)」

「ザグ! (はい!)」

 

 シャワーズとジグザグマは砂浜を歩き出した。

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